カプコン、「モンスタハンター3(トライ)」開発者インタビュー
“これから「トライ」ならではの発見が出てきて流行するのが楽しみ”
目に見えない部分の変化から、各種モード、開発秘話など満載!


8月6日 収録

場所:カプコン東京支社内


 全国のハンター待望の最新作「モンスターハンター3(トライ)」(以下、「モンハン3(トライ)」)。今この瞬間も狩猟に熱中している人もたくさんいると思うが、新しい手応えになかなか苦戦している方も多いのではないだろうか。今回は「モンハン3(トライ)」を手がける開発陣にインタビューさせてもらうことができた。

 お話を伺ったのは、プロジェクト全体を手がけるプロデューサーの辻本良三氏と、開発をまとめるディレクターの藤岡要氏のお2人。開発中の話からコンセプトの根本にあるもの、「モンハン3(トライ)」の内部にある要素、各種モードについてなど、様々な質問にお答え頂いた。今まさにプレイ中の人も、これから挑む予定の人も「モンハン3(トライ)」がどんなゲームなのかを感じて頂ければ幸いだ。


■ 2人もネットワークモードで遊んでる!変化のキーワードはモンスターの“スタミナ”

開発の中心となったディレクターの藤岡要氏。発売を迎えてひとまず落ち着いたという様子
「モンハン3(トライ)」の全体を統括するプロデューサーである辻本良三氏。発売は通過点で、今後の展開を含めここからが始まりという感想だった

GAME Watch編集部:発売直後の今のお気持ちはいかがでしょうか?

ディレクター 藤岡要氏:僕は発売のイベントも様子を見に行ったんですけど、買ってもらえているのを見ると「あぁ発売したな」っていう実感が沸きましたね。ユーザーの物になるんだと思いました。発売前までは自分たちの手の中で、良い悪いを考えて作るのですが、発売後は開発側はできることが少ないですし、どちらかというとユーザーにどう捉えてもらえるかというターンですから。楽しんでもらえたらいいなという気持ちですね。

 「モンハン」をきっかけにいろいろな人と仲良くなったり、誰かと話すのが楽しくなる。コミュニケーションのきっかけになってくれたらいいなと思います。

プロデューサー 辻本良三氏:僕はプロデューサーという立場上、発売日はいつもスタートだと思っています。ネットワークゲームでもあるので、これからどれだけユーザーの方に展開していけるか、伝えていけるかというターンに入っていきます。発売は1つの区切りではありますけど、これからこのゲームをどれぐらい伝えていけるかの始まりでもあります。

 そういった意味でもまだまだ「トライ」の事をいろいろと考えていきたい。ネットワークゲームとして、じっくりと遊んでもらえるような完成度にはなっていると思うので。じっくり味わってもらえる人を増やしていきたい段階ですね。

編:辻本さんはネットワークをかなり重視されていますか?

辻本氏:ネットワークゲームってやはり独特というか、発売したら終わりではないので。僕は携帯機のゲームでも同じように考えているところがあります。発売後にこちらがどれだけ盛り上げられるかがすごく重要なポイントだと思っていて、それがないと伝えきれない部分もあると思います。いつもそういう気持ちで「モンハン」シリーズは長期的にずっと考え続けています。

藤岡氏:僕ら開発はそれに応えられる物を作っておくという感じですね。

編:最近はゲームのサイクルが短くなってますけど、その中で「モンハン」は本当に息が長いです。

辻本氏:協力ゲームやネットワークゲームって、コミュニケーションが常に生まれますよね。ゲームの面白さ以外にコミュニケーションの楽しさもあると思うんです。そういう話題が生まれるようにオフィシャルでも動いていきたい。コミュニティの中で「モンハン」が共通のワードになっているところに、こちらからもいろいろと提供していって、その話題で盛り上がってくれると嬉しいです。

辻本氏と藤岡氏は、ネットワークモードで毎晩のように一緒にプレイしているという

編:イベントでも辻本さんが実際に協力プレイでいろんな遊び方を見せていますよね。ちょっとお笑いに走ったプレイをしてみたり(笑)。

辻本氏:あれは僕の素のプレイなんで(笑)。

藤岡氏:いつもああいう感じです(笑)。

辻本氏:発売して2日目から、ネットワークに繋げて夜に藤岡と遊んでいるんですけど、ふざけあってますね(笑)。ひどいんですよ、クエストが始まって僕が「ちょっとトイレ行ってくるわー」と言って、戻ってきたら支給品が地図だけになっている(笑)。

 それで、「ちょっと待て。このクエストの支給品は地図だけか?」と聞いたら「そうです」って冷静に返されて。「そんなわけないやろー!」ってツッコミましたけどね(笑)。

編:楽しく遊んでらっしゃいますね(笑)。ユーザーと一緒にプレイしたことはありますか?

辻本氏:ありますよ。

編:正体を知ったらびっくりするでしょうね。お2人は武器は何を使ってます?

藤岡氏:僕はランスですね。

辻本氏:僕はハンマーです。シリーズでいろいろと変えてますけど今はハンマーを使ってます。

編:ランスとハンマーのそれっぽい動きをしている人がいたらお2人かもしれないと(笑)。

藤岡氏:特定されますね(笑)。でも今はランスを使っているユーザーが多いですからね。

辻本氏:ランス多いですね。今回のランスはちょっと派手になっているんですよ。カウンター突きが加わって、すごく爽快感が上がってますし。それで気に入ってもらえてるのかなと思ってます。

斧と剣の2つのモードを持つ新武器「スラッシュアックス」。コンセプトはそのまま変形で、使いこなすと気持ちいい武器だ

編:新武器スラッシュアックスのコンセプトなどを教えてもらえますか?

辻本氏:変形ですね(笑)。

藤岡氏:変形です(笑)。一言で言い切れるコンセプトが1番伝わりやすいので。ガシャンガシャンと変形するのが楽しくて、うまく立ち回れるようになればかっこいい武器です。

編:攻撃に特化した武器だなと感じているのですが。

藤岡氏:タイプ的には攻撃型だと思います。様子を見つつ変形させながらうまく攻めていく感じだと思います。

編:そのほかの武器の変化についてはいかがでしょう?

藤岡氏:シリーズを経験している人にも、1つ1つあらためて触ってみてもらいたいと思います。新しい要素が入ったことで立ち回りが変化して、遊び方が変わっている部分もありますので。今回武器の種類は絞ったのですが、そのぶん1つひとつが骨太になりました。もう1度触りなおしてもらうと、新しい楽しさを発見できると思います。

 そういう部分が発見されると、ユーザー間で流行の立ち回りが生まれてくると思います。今はこれが旬というような。そういう要素を随所に用意しています。新しさという面ではスラッシュアックスを使ってみて欲しいと思いますけど、今までのシリーズをプレイされている方にも色んな武器を再度触ってみて欲しいです。

辻本氏:まだいろいろあると思いますよ。こういう動きができるということは知っていても、それをどう使えばいいのか。例えば大剣で言えば、蹴りから横殴りが繋がりますが、それをただの蹴りからのコンボだと思うか、攻略的に活用できるかと思うかで結構変わってくるはずです。

藤岡氏:細かな変化を活用していくことで大きく変わる部分もあります。そういう部分を意識することで、よりうまく狩れるようになると思います。そこでまた、立ち回り方の旬がユーザー間で出てくるだろうと思います。

編:格闘ゲームみたいですね。技の1つ1つの使い道が再評価されて流行したり。思いがけない動きをする人が突然現われるかもしれませんね。

藤岡氏:今はモンスターをどう攻略するか、モンスターが何をしてくるか、それに対して自分たちがなにをするべきかを考えている段階だと思うのですが、次の段階として「もっとこうしたほうが終盤楽なんじゃないか」とか、「実はこのアイテムは使いすぎると良くないね」というのが、じわじわと発見されるだろうと想像しています。

編:今のお話を伺っていると、シリーズ経験者でも今までの知識ではなく新しいものとしてプレイしたほうがいいのかな?と思うのですが。

藤岡氏:先入観は無くしたほうがいいかもしれません。アイテム1つにしても、今まではこうだったからこうに違いないという考えを持たずに遊んでもらえると、変化に気づけるかもしれません。

編:わかりやすい例を1つ教えてもらえないでしょうか。

藤岡氏:今回からモンスターにもスタミナという要素が加わっています。スタミナが減ると動きが鈍るので、そのときに罠を使うと拘束時間が延びます。スタミナを減らしたほうが効果的に使えますね。

辻本氏:閃光玉などのアイテムについても、何度も使っているとモンスターに耐性が付いてしまいます。毎回同じようにアイテムの効果を得られるわけではないんです。

藤岡氏:バランスよくアイテムを使ったり、モンスターのスタミナを減らして最も効果的に使えるようにタイミングを変えるなど、いろいろと工夫してみて欲しいです。

編:本当の狩りみたいですね。

藤岡氏:本当の狩りでどうやっているかはわからないですけど、モンスターを追い込んでいく感覚は味わえると思います。そのあたりのロジックがハマってくると、攻略しているという実感が高まるかもしれません。そういう意味では武器にもいろいろな要素が加わっていますので、それらを含めて探っていただきたいです。

編:「モンハン3(トライ)」では、内部的にもいろいろと変わっているのですね。

藤岡氏:いろいろな新しい要素を入れているので、そういう要素によってモンスターの状態が変化します。モンスターはお腹が減ったらご飯を食べに行くんですけど、それを予測できればさらに狩りが楽しくなるかもしれませんね。

今作の大きなポイントになるのが「モンスターのスタミナ」。スタミナが減ると動きが鈍り、攻撃も弱まる

編:モンスターはスタミナが減ると動きも鈍くなりますよね。

藤岡氏:スタミナを削れば、動きが鈍くなって狩りやすくなることもあります。その辺を意識してプレイするのも遊び方の1つだと思います。

編:モンスターのスタミナを減らすにはどうしたらいいのでしょうか?

藤岡氏:打撃属性の攻撃がスタミナを奪います。例えばハンマーを使っている人がいるとスタミナを速く減らせます。ほかの武器でも切断属性の攻撃の間に、打撃属性の攻撃を混ぜると展開が変わることがあります。ボディーブローを打って足を止めるみたいな感覚ですね。

辻本氏:スタミナは、ほかにもいろいろなところに影響します。細かな部分ではケルピの角は、普通に倒すのではなく一旦気絶させると剥ぎ取りやすくなります。それがわかると今度は、どうやったら気絶させられるのかを考えますよね。

スタミナを奪ったり気絶させるなど、モンスターの状態によって様々な変化が起こる。そのヒントはモンスターリストからも読み取れるという

藤岡氏:モンスターリストにヒントが書いてあります。そういう要素を発見した人に、ネットワークモードで広めてもらいたいです。

辻本氏:発売前によく「初めて発見した人が第1発見者ですよ」と言っていたのですが、そういう要素はたくさんあります。

藤岡氏:ネットワークモードでは、人から人へ口コミで伝わりますから。自分はこうしてるということを、ほかの人とどんどんやりとりしてもらいたいです。口コミの中には、ただの思い込みで実は違うこともあるかもしれませんが、でもそれもコミュニケーションの1つだと思います。「モンハン」という共通言語を共有する流れの1つというか。僕らはそれに応えられるように、できる限りいろいろと裏に仕込んでいこうと考えています。

編:1つの発見が遊び方を大きく変える要素が、見えないところに仕込まれているんですね。本当に格闘ゲームのムーブメントみたいですね。

辻本氏:そうですね。ゲーム的な要素の発想の根本には、格闘ゲームもありますね。

藤岡氏:僕らは対戦ゲームを作った経験もあるので、ユーザー同士が起こすムーブメントが1番面白いと思うところもあります。ネットワークゲームは似ている部分があるので、そういう流れが起きやすいようにさまざまな要素を考えるようにしているんです。

辻本氏:僕たちから正解は言いたくないんです。それが正解と決まってしまうとコミュニケーションの面白さが無くなってしまうので。いろいろな遊び方を見つけてもらいたいです。


■ 構想含め開発期間は3年半。実際にサバンナや湿地帯に足を運んで“空気感”を取り込んだ

「モンハン3(トライ)」をどこから作り始めたという区切りはなく、いつも常に考えているという。開発中に2シリーズの展開もあったため、そこからのアイディアや要素を加えつつじっくりと作られたのが「モンハン3(トライ)」だ

編:開発期間はどれくらいでしょうか?

辻本氏:構想を含めると「モンスターハンター2(ドス)」の発売後のあたりから……正式な構想かはちょっと不明瞭ですけど、頭の中にあった頃からで3年半だと思います。

藤岡氏:実質、作り出したのは2年半前ぐらい?

辻本氏:正直よくわからないんですよね(笑)。どこから始めたとしていいのかよくわからない作り方をしているので。

編:頭の中では何かしらアイディアを考えている感じなんですね。

辻本氏:えぇ。水中を舞台にすることと、生態の表現にこだわるという点は「モンスターハンター2(ドス)」の直後くらいからありました。

藤岡氏:ずっと頭の隅っこに考えを置きながら生活している感じです。帰り道に何かアイディアが浮かぶこともありますし。そういう感じでずっと寝かせているものがあって、使おうと決めた時点でそれを形にしていきました。その間にも「モンハン」シリーズとしては、いろいろとリリースしましたので、そちらをやりつつという感じでした。

辻本氏:そういったところからも「モンハン3(トライ)」は、オリジナルの物を新たに作ったという感覚が開発陣にありますね。

藤岡氏:新しいものになっているというインパクトがあって、でも遊んでみるとこれは「モンハン」だなと思える安心感。遊んだ時に「モンハン」じゃないと嫌じゃないですか。新しいけど違うものになってしまうのをユーザーは望んでいないと思うので。新鮮さを持ちつつ安心感もあるものという感覚を常に意識していました。

南国の漁村を思わせるシングルモードの拠点モガの村。実際にポリネシアンの地域に足を運んで空気感を取り入れている
こちらはフィールドエリアの水没林。ブラジルの湿地帯へ足を運んだ経験が活かされている

編:「トライ」は色彩が鮮やかというか、水の色がいろいろなところで目に入ります。モガの村も水上に浮かぶ村で、南国のような印象を受けました。

藤岡氏:水という要素をうまく表現するために、実際に水辺で生活する文化を見に行きました。個人的にですけど、ハワイに行って島を周ったりして、そういうところからアイディアのヒントをもらってきました。肌で空気を感じると、それをゲームに活かせるので。あとは書籍や映像でイメージを固めていきました。

辻本氏:何も見なくても、頭の中にできあがっているイメージもあります。それが本当にイメージ通りの物なのかを確かめに、いろいろな場所に行きました。ブラジルの湿地帯にも行きましたね。

藤岡氏:開発スタッフ自らがサバンナを見に行ったこともあります。そこでの経験が、砂原や水没林を作ることに活かされています。

編:今回は夜空がすごくキレイだと感じました。月が大きくて印象的で、日本の空とは質感が違うなと。

辻本氏:夜空がキレイって結構言われますね。確かに日本の空の感触じゃないですね。サバンナとか自然の多い地域の夜空ですね。

藤岡氏:海外の自然の多い地域に行くと本当にすごいんですよね。フィルターが少ないというか、くっきり見えるというか。そういうところで得た感覚を使っていますね。


■ 楽な姿勢で遊べるフリースタイル操作。Wiiリモコンでハンターデータを持ち歩くこともできる

Wiiリモコンとヌンチャクで操作するフリースタイル操作に注力した藤岡氏。楽な姿勢でプレイできるフリースタイル操作で実際にプレイしている

編:Wiiリモコンとヌンチャクを使うフリースタイル操作はこれまでのシリーズになかったものですが、苦労や工夫などがあったのではないでしょうか?

辻本氏:正直苦労しました。藤岡を中心に操作系の作りこみをすごく頑張ってくれて。でも傍から見てると、藤岡は苦労しているのが(クリエイターとして)むしろ面白かったんだろうなぁと思いましたね(笑)。

藤岡氏:面白かったですね。新しいインターフェイスで何か作るということでチャレンジ精神に火がつきました。最初は、Wiiリモコンを見て「さすがにボタンの数が足りない……」と思いましたけど、そういうほうが逆にやりがいがあると思うんです。クラシックコントローラだと全部のボタンが必要になるゲームで、いかにWiiリモコンとヌンチャクにまとめるか。

 普通に考えるとクラシックコントローラもあるんだし、対応しなくてもいいと思うかもしれませんが、でも、それをWiiリモコンとヌンチャクに落とし込むことができたら、すごく面白い操作が完成するのではないかと思って。

辻本氏:現に僕と藤岡はフリースタイル操作でやってるんですよ。それはもちろん1つの結果でしかないですし、当然向き不向きもあります。ただその中で僕らはフリースタイル操作で遊んでいます。

藤岡氏:生理的に嫌な感じを与えないように気を遣いながらキーアサインを考えていきました。

辻本氏:正直に言えば慣れは必要です。まずWiiリモコンとヌンチャクのボタン配置を覚えてもらうところから始まりますから。それを乗り越えた先に、フリースタイル操作ならではの良さがあるんです。

編:コントローラーが違えばプレイ感覚も面白さもかなり変わりますよね。クラシックコントローラで長時間遊んだ後に、フリースタイル操作に挑んでみるのも面白そうですね。

藤岡氏:フリースタイル操作はすごく自由な姿勢で遊べます。クラシックコントローラでプレイすると集中しやすいですけど、いつの間にか肩に力が入っているんです。フリースタイル操作は本当に自由な姿勢でプレイできるのが楽で、あまりに楽なのでだらけすぎて気づいたら力尽きていることもあります(笑)。だから、大型モンスターが相手の時はちゃんと座り直しています。

編:モガの森でのんびり遊ぶときに良さそうですね。

辻本氏:採集だけが目的なら片手だけでいいんですよ。ヌンチャクのレバーで移動して、採取できる場所でヌンチャクを振ればいいですから。そういうメリットもあります。

藤岡氏:僕がすごく横着なんですよ(笑)。どうやったら楽に遊べるかを考えて作りました。

辻本氏:横着な人でも遊べるのがいいと思うんです。極論を言えば、取扱説明書のいらないゲームがベストだと思いますし。でも現実には、なかなかそうはいかないんですけど。極力、面倒なところを排除しながらも、かといって浅すぎない物を作りたいと思ってます。

闘技場モードでは、画面分割による同時プレイが可能。オフラインでも一緒に遊べるモードを用意したかったという気持ちからの初の試みだ。また、Wiiリモコンに自分のハンターのデータを入れて持っていけば、友達の家で一緒に遊び手に入った報酬を自分のデータに戻すことができる

編:闘技場モードではじめて画面分割での同時プレイを採用されていますが、どういった考えで導入されたのでしょうか?

藤岡氏:今までは兄妹や友達と一緒に遊びたいと思っても、誰かが遊んでいるのを後ろで見ているしかなかったのが少し気になっていたんです。その時だけでも、一緒に遊んで「モンハンってこういうゲームなんだ」と感じてもらいたいと思ったので。

 Wiiというハードは、リビングに置かれていることが多いだろうと思うんです。子供が遊んでいるのを両親が見ていたり、逆にお父さんが遊んでいるのを子供が見ている。そこから、面白そうだから一緒に遊ぶことになったときに、手っ取り早く遊べるモードがあるといいなと思ったんです。

辻本氏:今までも、例えば友達が遊びにきて「それちょっと遊ばせて」と言われた時に、(ハードとソフトが1つずつだと)コントローラーを渡す以外に方法がなかったんですよね。それだと、友達が持っているコントローラーを指しながら操作の仕方などを説明することになります。それはすごく面倒だろうなと思っていたんです。

 今回は、同じシチュエーションになったとき「一緒に遊ぼうか」と言えるモードがあります。お手本の動きを実際にやりながら教えられれば、「一緒に遊ぶ?」と声をかけやすいだろうし。なんか歯がゆいじゃないですか。教えづらいというのは。それを少しでも解決できるのが闘技場モードです。モンスターを狩るという、ゲームの中でも最も瞬発力のある部分を楽しめるようになっています。

編:今回の闘技場モードは、Wiiリモコンに自分のハンターのデータを入れて友達の家に持っていって遊べますよね?

辻本氏:闘技場モードは装備が固定なので、データを持っていっても自分の装備では遊べないのですが、報酬でもらったアイテムなどの一緒に遊んだ結果を持ち帰れます。

編:Wiiリモコンで自分のハンターのデータを持ち歩くのは面白いですね。Wiiリモコンでデータを持ち運ぶ機能は、馴染みのない人が多いと思うのでぜひ試してもらいたいです。

藤岡氏:その機能を使ってみたらどんな感じになるだろうと思って、今回は闘技場モードで試してみることにしました。それで、ユーザーの遊びの幅が広がるならやる意義がありますし。ですから、使ってくれ!というよりは、こういう遊び方もできますというあくまでも選択肢の1つです。

編:報酬を目指して一緒に盛り上がれるのはいいですね。

藤岡氏:基本はタイムアタックに挑戦するモードで、設定されているクリアタイムよりも早くクリアするとより多く報酬がもらえる可能性があります。最初はまず、友達と一緒にクリアを目指してプレイして、慣れてきたら少しでも速いタイムでクリアすることを目標にする。一緒に遊んだあとは、そのデータを家に帰って自分のWiiに戻せば、自分のデータに報酬が反映されます。


■ モンスターの挙動を1から再構築。開発陣が“今の知識”で作った最新の「モンハン」

新たに1から作り直したというモンスターの挙動。お馴染みのモンスターにも新たな攻撃方法が加わるなど、大幅に変化している

編:モンスターの動きがダイナミックになったと感じます。今作ではモンスターの挙動が今までのシリーズと根本的に違うと感じているのですが、実際はどうなんでしょうか?

藤岡氏:モンスターの挙動は結構ブラッシュアップしていて、移動しながらグッと向きを変えるような動きを入れています。そういうモンスターの動きを見ると、常に動いているように感じるかもしれません。その辺の動きは今までの知識や挙動にプラスしています。

 シリーズとして5年前のモーションをベースにしていた部分を、今回は1から作り直しています。僕らも昔に比べると知識が蓄積されているので、1つ1つのモーションに対して今の知識を加えていきました。動きの幅が増えていて生々しく感じてもらえると思います。

編:新しいモンスターだけでなくお馴染みのモンスターについてもそうなんでしょうか?

藤岡氏:そうですね、従来のモンスターも体型から1から考え直して設計しています。今までと同じような動きもしますが、今の感覚で作り直しています。なんか今までと違う感触があると思います。

序盤にハンターに洗礼を浴びせる大型モンスター「ボルボロス」。防具はこまめにステップアップしていかないと痛い目を見ることを教えてくれる先生だ

編:大型モンスターが登場する順番も面白いですよね。ドスジャギィで群れが襲ってくる面白さがあって、クルペッコにモンスターを呼ばれ、ロアルドロスで水中を体験して、ボルボロスでドーン!と痛めつけられる。

藤岡氏:ボルボロスは序盤の武闘派モンスターなので。防具を一気にステップアップしたいと考えてそれまでに作らないできた人を、ドーンと吹き飛ばします(笑)。

辻本氏:大型モンスターが登場する流れには気を遣ってます。特にシングルモードは流れに気をつけて作ってますね。

編:クエスト情報に狩猟環境という項目が加わっています。ここに安定、不安定とありますが、これはどんな変化が起こるのでしょう?

藤岡氏:狩猟のメインモンスター以外に、別の大型モンスターが登場するようになります。想定していなかった出来事が起こるという意味で不安定と付けているのですが、急に出現したモンスターも狩猟すればフリーハントボーナスとして報酬がもらえます。

辻本氏:不安定だとハプニングが起こりやすいということですね。力関係が弱い方のモンスターにこやし玉を投げれば追い払うこともできます。不安定の時にはこやし玉持っていくといいですね。僕は1度、ラギアクルスを狩っているときにチャナガブルがきましたから(笑)。あのハプニング感はすごいですよ。

藤岡氏:大型モンスターが2頭いる状況は、見た目にはすごく楽しそうですが難度がすごく上がってしまうので、それは根本的に解決したいと思っていました。そこで大型モンスター同士にもお互いを意識させて、強いモンスターと弱いモンスターの挙動に差がでるような仕組みを考えてみました。

編:モンスター同士が争うこともあるのでしょうか?

藤岡氏:モンスターは、基本的にはハンターを襲うように動いてきますが、判断自体は平等にしています。モンスターにとってハンターが嫌だと感じたらハンターを襲いますし、別のモンスターが嫌だと思ったらモンスターを襲うこともあります。

 モンスターリストに「危険度」という項目があるのですが、危険度の低いモンスターほどその場から逃げやすいです。こやし玉を使うと追い払うことができるなど、ユーザーの手で危機を回避できる方法も用意したので、大型モンスター2頭が入り乱れる状況を思い切って入れてみました。

編:今作では昼夜がゲーム内の時間経過によって変わりますが、それもクエストに影響するのでしょうか?

藤岡氏:まずフィールドによっては気温が変化しますし、先ほどの狩猟環境が不安定なときに出てくるモンスターの傾向が若干変わります。昼ならこのモンスターが、夜ならこのモンスターが出やすいということですね。あまり強く影響しすぎると、昼じゃないとダメとか夜のほうがいいという風になってしまう可能性があるのでそこまで激しくは変わりませんが、傾向が変わるようになってます。

編:オルタロスやギィギがものすごく気持ち悪くて、正当派なモンスターよりある意味怖いです。

藤岡氏:虫はやっぱりこう、わさわさっといるほうが怖いじゃないですか(笑)。

辻本氏:僕は、ギィギは結構かわいいと思ってるんですけど(笑)。

藤岡氏:ギィギは、ハンターの体にくっついてどんどん大きくなります。ある程度大きくなったらボトッと落ちて毒を吐きますが、火を近づければかわいいもんですよ(笑)。


■ 入り口は気軽に、そして奥深く。気軽にそして楽しく挑んで欲しい「モンハン3(トライ)」

編:今後のイベントクエストについてはいかがでしょうか?

藤岡氏:ネットワークモードでは、定期的にイベントクエストを開催します。当面は何かしら新しいイベントが見られると思います。

辻本氏:イベントクエストは、ネットワークゲームとして長く楽しんでもらえる要素の1つですから。長期的にやっていきますよ。

藤岡氏:8月23日より「モンスターハンターフェスタ'09」が開催されます。そこで「MH3(tri-)狩王決定戦」を実施しますが、その予選と決勝のクエストもネットワークモードで開催されますので、練習してもらえればと思います。

気軽に形にとらわれずに楽しんでもらいたいと語ってくれたお2人。今後の展開も長期的に用意されており、まさにこれから始まっていくという印象を受けた

編:最後にユーザーのみなさんに向けて一言お願いします。

藤岡氏:シングルモードには据え置き機ならではの楽しみ方をたくさん入れてあります。ストーリー、いろいろなキャラクターなどからも「モンハン」の世界を楽しんでもらいたいです。このゲームにある程度慣れてきたら、ネットワークモードでいろいろな人と遊んでみてください。末永くみなさんに楽しんでもらいたいです。

辻本氏:このインタビューでもいろいろな要素について説明させてもらいましたが、操作もWiiリモコンとヌンチャク、クラシックコントローラに対応しました。モードもシングルモード、ネットワークモード、闘技場モードと幅広く用意して、すべての面で楽しんでもらえるように作ったつもりです。どのモードから始めても、どの操作から始めてもいいと僕は思っています。ぜひ気軽に遊んでみてください。ネットワークモードに繋ぐことをためらっている人もいるかもしれませんが、まずは繋いでみてください。ネットワークモード20日間無料お試しキャンペーンもそういう意味を込めて実施していますので。

編:ありがとうございました。

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(2009年 8月 17日)

[Reported by 元村真宮 ]