インタビュー

再生してはいけない動画の恐怖は現実にも……。YAMI GAMES第1弾「たろうくんはいってきました」開発陣インタビュー

「メタホラー」で目指した、ゲームならではの怖がらせ方

【たろうくんはいってきました】
8月28日 発売
価格:1,500円

 「行方不明展」や「恐怖心展」など、リアルの場を活用した様々なホラーコンテンツを手がけてきた株式会社闇(以下、闇)が、新たなゲームレーベル「YAMI GAMES」を始動した。その第1弾タイトルとなるメタホラーゲーム「たろうくんはいってきました」が8月28日にリリースされた。

 本作は、行方不明となった弱小配信者「たろうくん」が最後に投稿した動画を手がかりに、動画とWebページを行き来しながらその真相を探っていくホラーゲーム。画面内だけでなく、プレイしているユーザー自身を怖がらせる「メタホラー」を掲げている。筆者も実際にプレイしたが、動画とWebページを行き来しながら少しずつ異変に踏み込んでいく感覚は印象的だった。

 さらにYAMI GAMESは、9月11日より東京ドームシティで開催される「東京ホラー特区!!2026」や、東京ゲームショウ(TGS)への出展も予定している。今回、本誌ではプロデューサーの藤田翼氏と、「たろうくんはいってきました」の開発チームである「BeforeHomeWorks」の松明氏・T氏にインタビューを実施した。YAMI GAMES立ち上げの経緯から、本作が生まれた背景、「メタホラー」という新たな恐怖表現、そして今後の展望まで話を聞いた。

【【たろうくんはいってきました ゲームトレーラー】】

「行方不明展」の株式会社闇が、なぜゲーム事業へ

――まず、YAMI GAMESの立ち上げと「たろうくんはいってきました」のリリース、おめでとうございます。最初に、闇のこれまでの活動についてお聞かせください。

藤田氏:会社が知られるきっかけになったところでいうと、「行方不明展」や昨年の「恐怖心展」といったホラー展示が、一番名前が残っているんじゃないかなと思います。

 あそこから、いろいろなホラー展みたいなものも増え始めました。そこから様々に自分たちの作品をもっと作ろうというフェーズに入っていて、いろいろな事業が生まれています。その中の一つとして、私が主導でゲーム事業を立ち上げ、進めているというところです。

――新しいコンテンツに進出する中で、ホラーゲームに着目した理由は何でしょうか。

藤田氏:ホラーゲームはリアクションが取りやすいジャンルなので、配信でも取り上げてもらいやすい。そういう予想のもとで「じゃあ、ホラーゲームをやりませんか」と提案しました。

――今回ゲーム事業を立ち上げるにあたって、藤田さんと開発チームのお二人、それぞれこれまでどのようにゲーム制作に携わってきたのでしょうか。

藤田氏:僕は過去にゲーム業界で働いていて、その時はどちらかというと、すでに運営中のサービスで、運営を担当するディレクターのような形で現場にいました。なので、キャリアとしてはゲームのサービス運営の方が長かったです。

 ただ、当然0から1をやりたいという気持ちもあって。その後は別の会社に移って、ゲーム業界ではなくVtuber事務所を運営する会社に入りました。そこである時「ホラー企画をやろう」という流れになりまして。そこでホラーゲームも作ろうと企画したことがあって、それが僕にとって0からホラーゲームを企画した最初の経験だったと思います。その経験が、闇に入るきっかけの一つになっています。それがなかったら、逆に闇には入っていなかったかもしれません。

松明氏:僕たちはゲームの専門学校の同級生で、専門学校を卒業した後はそれぞれ別のゲーム会社に入社しました。僕は複数のRPGなどに携わって、その合間に二人でプライベートでもゲームを作っていました。制作歴としては、UnityやUnreal Engineなどを使って、プライベートでは今回を含めて2本、仕事を含めると7本ぐらい作ってきた形になります。

T氏:僕も松明と同じようにゲームの専門学校を卒業して、ゲーム会社に入社しました。僕の方はアクションゲームに携わることが多かったですね。それを経て今に至ります。

――お二人は専門学校時代から、一緒にゲームを作っていたんですね。

T氏:そうですね。何回か同じチームで作りました。専門学校内でグループ制作をする機会があって、2回ぐらい同じチームになったと思います。

松明氏:卒業する前ぐらいに、「将来的には一緒にゲームを作りたいよね」という話もしていました。ただ、やるなら5、6年ぐらいしてからかな、と。今がそれからちょうど5年後ぐらいという感じです。

弱小配信者「たろうくん」はどう生まれたのか

――まず、読者向けに、本作がどのようなゲームなのか、その魅力や面白さを紹介していただけますか。

松明氏:本作では、プレーヤーが「たろうくん」のチャンネルに最後に投稿された動画を見るところから始まります。その動画は「最後まで見ることができない」という触れ込みで投稿されていて、本当に再生できないのかを確かめるために再生する。

 すると実際に最後まで再生できないので、「その理由は何なんだろう」とWebページを読みながら原因を探して、見つけた情報を動画で試し、少しずつ最後まで再生していく形になります。

 Webページの中に隠された情報と、動画内から得られる情報を組み合わせていくことで、一つずつ真実が浮かび上がり、動画の裏に隠された謎が分かってくるゲームです。

本作は「動画を再生する」という形で、たろうくんを操作するパートが進行。動画が再生できなくなったらWebページで情報を調べ、打開策を探すこととなる

――本作の魅力や面白さ、どんな怖さを感じられるかという点はいかがでしょうか。

松明氏:まずは、たろうくんの「ウザさ」ですね。相当うざいキャラクターなので、そのキャラクターがどんなひどい目に遭うのかというところ。

 そして動画を再生していくと、今度はプレーヤーにどんなことが起きていくのか。そこを楽しみにしていただければと思います。

本作の主人公・たろうくん。軽薄な印象だが、どこか憎めないキャラクターとなっている

――そもそも、お二人はどのように「たろうくんはいってきました」を作り始めたのでしょうか。

松明氏:僕らがゲーム会社に入って2、3年目ぐらいの時です。一本目のゲームの仕事が終わって、仕事にも慣れてきた頃でした。当時、Unreal Engine 5を使っていて、プライベートでもそのゲームエンジンを使ったゲームを作ろう、というところから始まりました。

 何を作ろうかと考えた時に、当時のUnreal Engineにはリアルな人間のキャラクターを作れる機能があったので、それを使ったゲームにしようと。リアルなキャラクターなら、今だったら配信者かな、というところから作っていきました。

――リアルな人間キャラクターを作るところから、配信者の「たろうくん」が生まれたんですね。配信者という設定にした理由をもう少し教えてください。

松明氏:まず「リアルなキャラクターが洞窟に行く」というコンセプトがありました。その時、「普通の人は洞窟なんて行かないよな」と考えたんです。

 行くとしたら、配信などで何かをする目的で行く人がいるんじゃないか。そこから、たろうくんというキャラクターを思いつきました。人気のある配信者ではキャラクターとして違うと思ったので、弱小で、ちょっとうざい感じのキャラクターにしています。

――実際に「たろうくんはいってきました」を少しプレイしましたが、かなり配信映えしそうだと感じました。開発初期から、配信者に取り上げてもらいやすいことは意識していたのでしょうか。

松明氏:そうですね。このプロトタイプを作り始めたのが3、4年ぐらい前なんですけど、その頃からホラーゲームを実況者さんがプレイしているのを見ていました。

 今回の「たろうくん」という弱小配信者を見た時に、実況者さんがゲームを遊んでくれたら、たくさんツッコミを入れてもらえるだろうな、そうしてもらいたいな、ということは考えていました。

――実際、配信者の方が体験版をプレイしてくださっていますね。

松明氏:やっぱり、たろうくんを気に入ってくれる人がすごく多いですね。もともとキャラクターやストーリーを考えた時は、あまり好かれるようなキャラではないと思っていたので意外でした。うざいキャラを書いたつもりが、結構人気になっていて、ちょっとびっくりしています。

――イケメン主人公というタイプではないですし、逆に目立ちますよね。プレイしていると、小声で「今回はこれでバズるんだ」みたいなことを呟いていて、なんだか応援したくなりました。

松明氏:ずっと喋っていますからね。体験版の時はちょっとうるさすぎたので、少し減らしました。製品版では、いい塩梅で喋ってくれていると思います。

――そもそもYAMI GAMESとBeforeHomeWorksの共同開発はどのような経緯で決まったのでしょうか

藤田氏:弊社のブランドでは、パートナーさん、クリエイターさんと一緒にゲームを作るというやり方を、去年から始めています。その中でたくさん応募をいただきました。

 僕の中で「この方たちとだったら売れるものを作れるかな」という視点で見ていたんですけど、お二人はプロトタイプのデモまで持ってきてくださったんですよね。企画書だけではなく、「動くものもあります」という形で応募してくださったチームは、全体でも2、3チームぐらいしかありませんでした。

 実際にものがあって分かりやすかったですし、僕と一緒に並走して開発していくことになるので、人柄や「一緒にやっていけそうか」という部分も見ていました。そこも大丈夫だろうと。

 プロトタイプを見た時点では、もう少し頑張った方がいい部分もありましたが、そこを一緒に改善して、今に至るという感じです。

――最初から、現在の「たろうくんはいってきました」のベータ版のようなものが持ち込まれていたわけですね。

藤田氏:そうですね。最初から「こういうものがあります」という形でした。そこから僕がボリュームやアイデアについて話して、増やしてもらい、完成に持っていっているという感じです。

――動画とWeb検索を行き来する独特なゲームシステムは、当初からこの形だったのでしょうか。

松明氏:当時はもっとシンプルでした。洞窟の部分だけを持っていって、動画を見る、洞窟から脱出する、主人公がたろうくん、というコンセプトです。本当に「動画を見る」というだけでした。

 そこから藤田さんと話しながら仕様を練っていく中で、最後にやりたいオチがありまして。そのオチが唐突にならないようにするために、Webページで検索するシステムを取り入れました。

――本作をYAMI GAMES第1弾タイトルに選んだ理由は何でしょうか。

藤田氏:シンプルな理由でいうと、開発チームの二人がすごく早かったからです。

 プロトタイプのデモを持ってきてもらった段階から、「これぐらいのものにできたら発売できるよね」という話をした時に、一番早く完成させられるスケジュールを組んでいただいたので、「じゃあ、こっちを最初のタイトルにしよう」と。単純に、すごく速いスピードで開発していただいたということですね。

画面の外にいる「自分」を怖がらせる「メタホラー」

――本作のジャンルが「メタホラー」とされています。この言葉にあまり馴染みがない方も多いと思いますが、どのようなジャンルとして定義しているのでしょうか。

藤田氏:「メタホラー」という言い方自体は、あまりされていないと思うんです。逆に、これを「メタホラーってこういうものだよ」というジャンルにしてしまおうかな、という気持ちが当初ありました。

 「たろうくんはいってきました」全体でいうと、動画の中でたろうくんに起こることは、どちらかというと前振りなんです。そこが恐怖の本質ではない。

 パソコンでゲームをプレイしているプレーヤー本人を、直接怖がらせに来る。画面を越えてこちら側に来るような演出や流れを考えると、メタフィクション、いわゆる「第四の壁」を越えてくるホラーなので、「メタホラー」と呼ぼう、という感じですね。

――プレイ前に自分に身近な情報を入力させられた時点で、「何かが起こるんだ」と覚悟しました……。ゲームと現実を行き来するという意味では、ARG※にも近い印象がありますね。
(※ARG(Alternate Reality Game):代替現実ゲーム。現実世界をゲームの一部として取り込み、複数のメディアや情報を手がかりに、物語や謎を追っていく体験型コンテンツ

藤田氏:そうですね。ARGが流行っていますけど、本作はARGそのものではありません。ゲーム画面の中にいる主人公と一緒に怖がるのではなく、今プレイしている「自分」を怖がらせてくるゲームになっています。そう考えると、「メタホラー」という言い方が一番しっくり来るかなと思います。

本作ではまず、簡単なアンケートに答えることに。プレーヤー側でも何かが起こることが予感される

――先ほど挙げたアンケートなどが、本作における「メタホラー」ならではの体験になるんですね。

藤田氏:そうですね。自分で入力した情報が、そのまま演出に転用される仕組みになっています。より自分の身近な情報を入れれば入れるほど、気持ち悪くなると思います。

――そうした「メタホラー」ならではの恐怖を、開発側ではどのようにゲームシステムへ落とし込んだのでしょうか。

松明氏:ゲームは映画や小説と比べると、プレーヤーが能動的に動かないと出来事が発生しないものです。そう考えると、ゲームの恐怖は「自分事」にしやすいと思っています。

 僕たちのゲームでは、Webサイトを閲覧したり、動画を再生したりと、現実にもある行為をそのままゲームに使っています。普段から馴染みのあるものを、ゲーム内でもプレーヤー自身が操作して、その結果として反応が返ってくる。そうすることで、より「自分事化」しやすい形で作っています。

――その表現のために、特にこだわった部分はありますか。

松明氏:TさんがWebページの部分を作っているんですけど、Webページの操作方法は、基本的に現実のWebページと変わりません。違和感がないように、現実に近づけています。

T氏:最終的にやりたい演出があって、そこに向けてUIをプレーヤーにとって馴染みのあるものにしておくことが大事でした。

 メタ的な表現では画面そのものに対する演出が多くなりますが、UIが突然出てきて「なんだこれ」となってしまうと成立しない。だから、YouTubeっぽいUI、ChromeっぽいUIにして、まずプレーヤーに馴染ませる。その下準備は大事だったと思います。

――検索エンジンの仕組みも、文字を直接入力するのではなく、選択式になっています。あそこを違和感なく見せることも意識しましたか。

T氏:そうですね。検索エンジンなので「検索できる」ということは大前提です。ただ、ゲームとして何でも入力できるようにすると、こちらとしては困ってしまう。

 現実的でありつつ、ゲームとして迷いづらい仕組みは何だろうと考えた時に、選択式でキーワードを与えた方が、ユーザーはスムーズに進行できるだろうということで、選択式にしています。

――本作の開発にあたって、意識したゲームや参考にした作品はありますか。

松明氏:僕たちが開発していた時に発売されていた「佐藤さん暇つぶしチャット.exe」というゲームがあります。やり方が少し似ていたので、「ユーザーはどこで迷うんだろう」「どこでつまずくんだろう」という部分を、その作品を見ながら参考にしていました。

T氏:僕の場合は、特定のタイトルではなく、検索エンジンやブラウザ自体が参考の対象でした。普段アクセスしているWebサイトのUIを改めてじっくり見て、「ここで何ができるか」と考えていました。

「尖ったもの」を作る、「闇流」のゲーム開発

――クリエイターと仕事をするにあたって、「株式会社闇らしさ」と呼べる一貫した思想はあるのでしょうか。

藤田氏:そこまで明確に決まっているわけではないんですけど、創業者の言葉を借りるなら「尖ったもの」ですね。ホラーというジャンル自体が尖っていると思うんです。その中でも、テンプレが悪いという話ではないですが、すでに流行りきって、100回擦られたようなものをそのまま出したくはない。

 本作も、最初のデモを見た時は、いわゆるウォーキングシミュレーター系に近かったので、「もう少し、あまり見たことのないシステムでも演出でもいいので、新しい怖がらせ方を考えてみてください」と二人にオーダーしました。それが現在のWebシステムなどに生きていると思います。

本作では、過去にあった出来事を追体験するようなシーンも存在
動画にノイズが走るような演出も

――そうした「尖ったもの」をクリエイターと作るうえで、株式会社闇らしい制作の進め方はありますか。

藤田氏:ゲーム以外のコンテンツでも、作家さんが表現したいことをいかに引き出して、それをビジネスとして成立する形に落とし込み、作品として出すか、というやり方はどのコンテンツでも共通していると思います。自分もそれを引き継いで、基本的にはお二人がやりたいことをやってもらう。ただ、「ここだけはどうしても変えてほしい」というところだけ僕が言う。しいて言うなら、そういった「クリエイターファースト」なやり方は「闇流」といえるかもしれません。

――YAMI GAMESでは、クリエイターの自主性を重視する方針なのでしょうか。

藤田氏:時と場合によると思います。今回のお二人のように、ちゃんと自分のやりたいことや作家性がある方たちであれば、その人たちが一番よく動けるようにしたい。逆に、本当の意味で0から僕が企画を作って開発まで進めるのであれば、僕が主導でやると思います。

 開発者の人たちが自主的に「こうしたい」と言ってくれるなら、それをやってもらった方がいい。一番いいものが上がるやり方を、その都度考えて選ぶと思います。

――怖がらせ方のアイデアについて、株式会社闇側から「BeforeHomeWorks」の2人にアドバイスすることもあったのでしょうか。

藤田氏:基本的には二人から「ゲームの中でこういう演出をしたいです」と上がってきたものに対して、「こうすると、もっと気持ち悪いですよ」と話すぐらいです。

 基本的には二人が作りたいホラーを尊重しつつ、商品としてより良くするにはどうするか、という視点でアドバイスしていました。

松明氏:もともと僕がおまけ要素としてやりたかったオチが一つあったんです。それを藤田さんに話したら「それ、めっちゃいいですね」と言ってもらって、そこを中心にいろいろ練り直しました。それが一つの転換点だったと思います。

――実際に闇と組んだお二人から見ると、これまでのゲーム開発との違いはどう感じましたか。

松明氏:自分から闇さんに「こういうことをしたい」と提案しながら、能動的に動いていく。それは会社員時代とはまったく違うなと感じています。これまでは、上からいただいた作業をやっていく形だったので。

 全部が自分事というか、「自分のやりたいように」と言うと語弊がありますけど、全部自分で判断して考えられる。それを隅々までできるのは、やっぱり楽しかったですね。

T氏:自分たちだけで考えるわけではなく、闇さんからホラー的な演出などについてフィードバックをもらえたお陰で、作業や仕事にハリが出たのはよかったと思います。

――藤田さんは、お二人と組んでみてどのように感じましたか。

藤田氏:僕も大したアドバイスをできたつもりはないんですけど、「こうした方がいいと思う」と言ったことを真摯に考えて、自分なりに噛み砕いて取り入れてくれる。

 自分たちの作品として、僕のアドバイスをどう反映させればクオリティを上げられるかを自分で考えている。そういう人は珍しいと思いますし、素晴らしいなと思います。

6カ月かけた洞窟を10日で作り直す――少人数開発の舞台裏

――本作の開発にあたって、初めて挑戦したことはありますか。

松明氏:ほとんど全部ですね。会社ではプログラムを担当していたんですけど、大規模な開発ではセクションごとに分かれていて、アーティストさん、サウンドさん、プランナーさんなどとやり取りしながら作るのが当たり前でした。

 今回はマップも自分で作るし、モーションも、フェイシャル、つまり顔の表情も含めて全部自分で作っています。自分がやらないと何も進まないというところは、大きな挑戦でした。

T氏:僕も基本的には同じです。プログラマーとして働いていたので、今回でいうとUIだったり、プロジェクト全体のデータ管理だったり。普通の会社では上の立場の人がやっているようなところも、自分でやらなければいけなかったので、初めてのことが多かったですね。

――大変な一方で、少人数で開発するからこそのメリットもありましたか。

T氏:そうですね。自分たちだけでやるので、プレッシャーは感じています。ただ、全部自分たちでやっているので、「分からない部分があまりない」というのはいいですね。ブラックボックスが生まれないというのは。

――藤田さんは、本作の制作で「これはチャレンジングだった」と感じる部分はありますか。

藤田氏:ちょっと恥ずかしい話かもしれないですけど、今、このブランドを運営しているのは僕一人なんですよね。事業の種を作っているのも僕だけなので、全部やらなきゃいけない。

 普通のゲームプロデューサーも開発をまとめたり、マーケティングを考えたりはすると思うんですけど、それ以外の細かい業務も、大きい会社ならアシスタントプロデューサーやアシスタントディレクターに頼むようなことまで含めて、全部一人でやっています。

――すごい業務量になりますよね。

藤田氏:それに加えて、もう一つ開発中のチームがあります。その人たちとも打ち合わせをしつつ、ブランド全体で見た時に同じようなコンセプトにならないようにしないといけない。

 お客さんから見て、似たものが続かないように、ハンドリングやコントロールをする必要があります。プロモーション上の差別化も僕の方で考えているので、今後タイトルが増えていくことを考えると、ここはずっと大変だろうなと思います。

――BeforeHomeWorksのお二人が、今回の開発で一番苦労したことは何でしょうか。

松明氏:当初の想定より作業量は多くなってしまったので、そもそもの物量で苦労をしました。個別の箇所でいうと、洞窟のマップです。プロトタイプの時に半年ぐらいかけて作ったものを、10日ぐらいで新しく作り直したんです。

藤田氏:最初のプロトタイプで洞窟のエリアを見せてもらった時は、正直「ただの洞窟」だったんです。これだと地味すぎるなと思って、「可能だったら、もう少しおぞましい洞窟にしてほしい」と伝えました。

 それで一度全部壊して作り直してもらったんですけど、判断も早いし、出来上がるのも早い。「こうした方がいい」と言ったこともすぐに反映してくれて、結果的にすごくいい洞窟になりました。

本作ではまず、村を探索することになる。この時点で十分怖いのだが……
神社の奥にある洞窟へ入るとより不気味な雰囲気に。恐怖体験はここからが本番

――実際にプレイしてみましたが、洞窟は歩いているだけでも怖かったです。洞窟以外に、松明さんが苦労した部分はありますか。

松明氏:フェイシャルですね。表情アニメーションも自分の顔を撮って取り込んでいるので、自撮りしないといけなくて。嫌な気持ちになりながらアニメーションを撮っていました(笑)。深夜に撮っていて、恥ずかしかったです。

――Tさんはいかがでしょうか。

T氏:やっぱり、プロジェクト全体のデータ管理ですね。会社員時代は、データのバージョン管理などのベースになる環境を上の方が最初に作ってくれて、僕はそれを使うだけでした。今回はそこから一から全部やらなければいけなかった。Unreal Engine 5がちゃんと動作する環境をチーム全体に共有したり、アプリを出力する段階で発生するいろいろな問題を解決したり。もともと上司たちがやってくれていたことを自分でやる部分が、一番大変だったと思います。

 逆にプログラミングに関しては、いつもとあまり変わらなかったですね。Unreal Engine 5自体も業務で使っていたものなので、抵抗なく使えました。

「普通のものはやらない」YAMI GAMESが目指すもの

――今後、YAMI GAMESからどのようなゲームを送り出していきたいですか。

藤田氏:ホラーゲームは、ウォーキングシミュレーター系が多いですよね。作りやすいし、早いので、そうなる理由も分かります。ただ、僕自身はゲーマーなので、それだけではなくて、「ゲームとしてちゃんと面白い」上に、ホラーとしてしっかりした演出が入っているゲームが理想です。

 今流行っているものでいうと、マルチプレイホラーなども、そもそもゲームとして面白い。その上で怖いコンセプトや演出、モンスターがいる。そういう「単純に遊んでいて楽しいゲーム」に、しっかり怖い要素がある作品を作りたいですね。

 あとは、一般的なゲーム会社が出さないようなものやアイデアでも、「闇なら出せますよ」ということは売りにしたいです。

――YAMI GAMESでは、早くも次のタイトルとして「報連喪症候群」が予告されています。こちらはどのようなゲームなのでしょうか。

藤田氏:あちらは、どちらかというと物語やテーマ性が重い作品です。パワハラだったり、サラリーマンが経験するような嫌な気持ちだったり、鬱のようなものを扱うので、かなりシリアスなゲームになると思います。

 テーマや題材まで含めて、「こういうものは普通の会社だと選ばれないですよ」ということが伝わればいいなと。他の会社だったらNGになるような題材でも、逆にうちならやれる。そこは強みにしたいですね。

「報連喪症候群」

――ホラーゲーム市場やインディーゲーム市場は、かなり競争が激しくなっています。その中で、闇ならではの強みはどこにあると考えていますか。

藤田氏:そうですね。ただ広告を打つだけではなく、作品に合わせてWebサイトを作ったり、コンテンツそのものでプロモーションしたりできるのは、うちならではだと思います。ゲームクリエイターの方にも、「こういうことがやりたいなら闇と組みたい」と思ってもらえるようにしたいですし、僕たちのブランドからホラーゲームをリリースできたこと自体が、「怖いものとしてお墨付きをもらっていますよ」という価値になればいいですね。

「東京ホラー特区!!2026」、そしてTGSへ

――9月11日より開催される「東京ホラー特区!!2026」にも出展します。YAMI GAMESではどのような展示を予定していますか。

藤田氏:こちらでは2タイトルを出しますが、それに加えて、別のプロデューサーが担当している、体験型のブースも同じ区画に併設されます。ゲームを遊ぶだけでなく、ちゃんと怖い体験もできるようになっていると思います。

――さらにTGSにも出展されると思います。コンセプトムービー以外に、闇ならではの体験や展示は予定していますか。リアルイベントに強い会社という印象もあります。

藤田氏:ブースのサイズもあるので、体験型のものまでは難しいんですけど、TGSのブース自体に少し設定を持たせようと思っています。

 ゲームの展示なので「ゲーマーの部屋」を作って、何かが起きた後の部屋のようにする。そこで何があったのかを想像させるものが置いてあって、その中に今回の2タイトルがなぜか残されている、みたいな見せ方を考えています。

TGSのブースでは「報連喪症候群」のコンセプトPVが先行公開予定

――最後に、読者に向けて一言お願いします。

藤田氏:ぜひゲームをプレイしてください!

松明氏:「たろうくんはいってきました」というタイトルも、いろいろ言われているんですけど、最後までプレイすると「どういうタイトルなのか」が分かると思います。ぜひプレイしていただければと思います。

T氏:僕も同じです。たくさんの方にプレイしていただき、本作ならではの体験を楽しんでもらえたら嬉しいです。色んな反応をお待ちしております!

――ありがとうございました!