インタビュー
PS4&PSVRへの好材料続出! SCEWWSプレジデント吉田修平氏インタビュー
日本からアジア市場へ。今世代の凄いゲーム体験を幅広く届けたい!
(2015/9/19 15:49)
TGS 2015において、ゲームハードのプラットフォーマーとしては唯一の大規模ブースを出展し、国内外で躍進するプレイステーション 4とPlayStation Vitaの魅力を積極アピールするSCE。特に今年は国産タイトルの充実度が急激に増してきており、PlayStationブースは試遊を求めるファンの列で終始大きな賑わいを見せている。
特に2016年上半期にローンチ予定のPS4用VRシステム「PlayStation VR」(開発コードネーム Project Morpheus)の展示は、昨年の2倍以上となる試遊台の出展に、好きなタイトルを選べる新しい予約システムの導入など特に力が込められており、TGS 2015全体におけるハイライトのひとつだったと言えるだろう。
本稿では、そのPlayStation VRを熱心に推進してきたSCEワールドワイドスタジオのプレジデント吉田修平氏への合同インタビューから、PlayStation VRについての話題、アジアの市場変化を踏まえての戦略、今後のシステムアップデートによる強化点など、PSプラットフォームが目指す将来の展望にフォーカスして、インタビューをお届けしたい。
国内大手の参入も本格化した「PlayStation VR」。各コンテンツのファンにこそ体験して欲しい
──「Project Morpheus」の正式名称が「PlayStation VR」と発表されましたが、これはやはり来年の発売に向けての準備がさらに進みました、というメッセージであると考えて良いでしょうか。
SCEワールドワイドスタジオ プレジデント 吉田修平氏:そうですね、VRについては広く注目していただいていますが、このままやっちゃうとProject Morpheusの名前が浸透しちゃいます。発売が近づいてから改めて新製品としてプロモするよりは、名前に関しては先に言っちゃいましょうと。発売日や価格、タイトルラインナップについてはもうちょっと時間をかけないとわからないですけれども、名前に関しては早くから「PlayStation VR」に決めていました。今回たくさんのメディアさんの報道もあり、一般の方にも伝えていただけるので、もうこのタイミングで「PlayStation VR」だと、みなさんに言っていただきたかったというのが狙いです。
名称そのものに関して言うと、Morpheusというのは、開発チーム自身が付けた名前なんですよね。そういうのが好きな人にはよく分かる、非常に刺さる名前ですよね。ですが、いざ一般化に向けていくときにはちょっとわかりにくい名前であると、伝わりにくい恐れがありますから、みなさんが簡単にイメージしていただける言葉を選びました。社内で名称の候補がでた時にも、議論も何もなく、わりとサッと決まりました(笑)。
VRっていうのは、やっぱりメディアじゃないですか。最初はゲームを中心に行きますけど、なんにでも使えますよね。そういうことも考えたときに、やっぱり「PlayStation VR」という名前のほうが使いやすいですよね。
──今回出展されているタイトルについては、ゲームというよりは技術デモ的な印象のものが多いですが、ローンチの時点ではいろんなゲームが出ると期待して良いですか?
吉田氏:今回は日本の大手さんからもたくさんのコンテンツが出てきていますよね。これまでは現場のデベロッパーの方はVRをやりたい意思があっても、会社がなかなかウンと言ってくれないという状況がありましたが、ここにきて「ちょっとやってみようか」という会社さんも増えてきました。それで反応が良ければ、商品化も考えましょうと。そこまで踏み出していただけているかと思いますね。
そこで今回SCEJAが頑張ったのは、これまでの出展では、たくさんの方に触れていただく上でユーザーさんが試遊するコンテンツを選ぶことができなかったんです。ですが今回は予約システムを工夫しました。
例えば今回は「ダンガンロンパ」とか「初音ミク」とか、「ファイナルファンタジーXIV」とか、固定ファンをたくさん持たれているIPが多くありますよね。やっぱり、そのファンの方が体験すると、全然違うんですよね。この間も初音ミクのイベント(マジカルミライ2015)で展示したのですが、体験された方がもう一発で「買います!」みたいな(笑)。
それくらい全然反応が違いますので、やっぱり初音ミクのデモはミクファンに体験していただきたいですし、「FFXIV」のデモは「FFXIV」をいつもやっている方に体験してもらって、それを他の方に伝えていただきたいなと。それが今回一番大事だと思ってまして、すごく楽しみですね。「サマーレッスン」も、去年の日本人の女の子版と、今年のE3のアメリカ人版と両方出すということで原田さんも気合入ってますから、反応が楽しみです。
──今回も大きな反響が期待できそうですね。
吉田氏:去年、「サマーレッスン」だけの体験イベントを何日間かやったんですよね。そのときに、体験を終えてアンケートを書いてもらった人が一番奥の部屋に入ると私と原田さんが待っているというシチュエーションになってたんですが、そこで「どうでしたか」って聴くんですよ。そうするとね、言葉が出てこないんですよ(笑)。「……スゴかったです……」、「……ヤバいです」みたいなね。そんな感じでしたね、帰ってこれないみたいな。それが今回も凄く楽しみですね。
他にはカプコンさんの「KITCHEN」や、ウチの「London Heist」もそうですけども、VRを使ったストーリーテリングはこうなるのかな、というのを想像させますよね。ゲームかどうかににかかわらず、そういった分野もこれから伸びていくと思いますね。「KITCHEN」はまだどうなるかはわかりませんが、私としてはバイオみたいなゲームになるといいなあと思ってます。ホラーはVRと非常に相性がいいですね(笑)。
──「Bloodborne」を試遊していたら、ちょうど後ろに「KITCHEN」のブースがあって、そこから悲鳴が聞こえてきました。
吉田氏:やっぱり既にそうなっていましたか、それですね(笑)。
日本&極東アジアを一つの巨大市場として捉えるSCE。VR世代には中台勢のコンテンツも躍進?
──無理に海外受けを狙うよりも、日本人が日本人のために作ったゲームが海外でも売れるようになってきている、という認識が出てきているかと思いますが、その点で言うと、中国のマーケットがコンソールマシンに対して開放されたというのは、PlayStation VRの展開にとっても非常に大きなことではないですか?
吉田氏:そうですね、今年はChina Joyに行って、上海や台湾のデベロッパーさんとも話をしたのですが、すごくVRに興味があって、「もう既にOculusで作ってます、見てください!」と、そういう人たちがいらっしゃるんですよね。普通のPSのゲームってあまりアジア発のものってなかったんですけども、ここにきて初めて、ちゃんと作れますと、しかもVRに関しては世界と同じ時期に出してくださいみたいな、そういう意思を凄く感じましたね。
それはチャンスだとも思います。やはりアジアのデベロッパーにっとっては、日本もそうなんですけども、普及台数の多い世界に出していくというのが一番いいパターンじゃないですか。そ特にVRのタイトルは最初はあまり数が出ないと思いますので、その中でテーマをうまく選べば、全然知られていないデベロッパーさんでも全世界に出ていけると。
一つ例としては、今回は出展していないんですけども「Head Master」というサッカーのゲームがあるんですよ。あれは全く、どこの国の誰でもわかるじゃないですか。ボール飛んできたら、説明がなくてもヘディングしますよね。ああいうテーマを選んで作れば、今からスタートしてもローンチに間に合いますよね。そういうことをアジアのデベロッパーさんに伝えたら、そうですよね、やります!と、言う所があるんですよ。まだ名前は出してませんけども、そのうちアジア発のPlayStation VRデモとか出てくると思いますね。
そこで面白いのが、特に中国のデベロッパーさんというのは、日本と違って、とにかくお金はものすごく持ってるんですよ。モバイルでものすごく儲けてらっしゃるらしく(笑)。そういった会社さんはいま30代の経営者が多いんですね。その人達はやっぱり、子供の時はPlayStationを遊んで育ったんです、という方が多くて。でもこれまではモバイルとPCしか市場がなかったですけれども、これからはやっとPlayStationのゲームをやっと作れますと。そういうふうに言って下さいますね。こういうことがあると、やっぱりこの事業を長くやっててよかったなと思います。
──加えて、中国のユーザーってわりと日本のコンテンツが好きじゃないですか。それは日本のゲームデベロッパーにとっても、マーケットが広がるという意味で、もっと積極的にVRをやっていく後押しになるんじゃないでしょうか。
吉田氏:と思いますね。最近はうちでも、SCE JapanがAsiaと合併しました。そういう意味では、日本市場というよりは、日本とアジア市場というふうに考え始めています。例えば今年セガさんが「龍が如く」を中国語にして出されたら、売り上げがバンと伸びたんですよね。スクエニさんもFFの中国語版とかを出されていて、やっぱり、ローカライズしたら売れるんだ、ということがわかってきています。
しかもPS4で言えば、けっこう無視できない数がアジアで売れるんですよ。それで、先日のSCEJA Press Conference 2015でも、日本語、繁体中国語、簡体中国語、韓国語と、全部出しますみたいなタイトルが多かったですよね。ですからアジア市場はもはや全く無視できないですし、ユーザーさんの好みから言っても、非常にいい市場になりますね。しかも今回は不正コピーがありませんから、ソフトを作る側からしたら凄く大きいですね。
強力な国産タイトルラインナップとPlayStation VRで、家庭用ゲーム機の面白さをもういちど広めたい
──PS4本体の価格が34,800円に値下げされましたが、それを通じての普及の目標値や狙いについて教えて下さい。
吉田氏:具体的な数字は出せないんですけども、日本国内についていうと、PS2のときは2,000万台、PS3その半分くらいで、コアユーザーさんが中心になってきていました。カジュアルユーザーさんはスマホとかタブレットですね。そんな中で、今回はもう一度、昔PS1やPS2でゲームを遊んでた方にも遊んでいただけるようにしたいなと。今のゲームって本当にすごいですよ、こんな面白い、楽しいことができるんですよ、ということを時間がかかっても継続的に訴えていきましょう、というキャンペーンの第1弾が、この値下げなんです。
特に今年末から来年にかけては日本のタイトルがすごくたくさん出てきますので、興味をもっていただいた方の背中を押すという狙いでもあるんですけども、キャンペーンとしてはもっと先まで考えています。PlayStation VRも含めて、もういちど家庭用ゲームの楽しさを広く伝えていく、それは我々がずっと言い続けるしかない、そういった宣言の意味合いが含まれています。
──PS2世代からですと、2世代離れていますから、凄い変化がありますよね。
吉田氏:そうなんですよ。「Uncharted 4」とか是非見て欲しいですし、「ドラゴンクエスト XI」もスゴかったですよね。
──PS Vitaに関しては「マインクラフト」を契機に10代を中心とした若い世代が大勢入ってきているというふうに伺っています。そういった若い層に据え置きの面白さを伝えるという意味でも、良い機会ではないですか。
吉田氏:そうですね、「ドラゴンクエストビルダーズ」ですとか、今回の「エアシップQ」ですとか、ああいうタイトルが本当に好きなんだなと。うちの息子達もそうですけど、YouTubeとかでプレイを見ているわけじゃないですか。そういう、共感するとか、シェアするといった遊び方は世界共通なんだなと。それはPS4の一番コアなコンセプトでもありますから、今後システムアップデートで関連フィーチャも増やしていきますけど、ユーザーさんのコミュニティ交流ですとか、パブリッシャーさんがイベントを仕掛けやすくするようなサポートをやっていこうと思っています。
──PlayStation VRも、「PLAYROOM VR」に見られるように、多人数でVRの面白さをシェアするというところに力を注いでいますね。
吉田氏:ほんといい質問ありがとうございます(笑)。PS4もVitaもVRも、我々ワールドワイドスタジオのメンバーと、SCEIのハードウェアのメンバーがずっと一緒に作ってきているんですが、あのフィーチャー(HMD+ソーシャルスクリーンでの非対称対戦プレイ)を欲しいと言ったのはウチの、ロンドンのチームとジャパンスタジオのチームなんですよね。やっぱりVRは、孤独で暗い感じがしますが、そうではなくみんなで一緒に遊べるものにしたいと。そこで、HMDをかぶっているひとと違う視点をテレビ側に映し出せればそういう遊び方ができるから、という提案をしたら、システムのチームが入れてくれたんですよね。それがPSVRならではの我々がやりたいことですし、これからVR機器がいろいろ出てくる中で、PSVR独自の特徴になるかなと思っています。
──リビングルームに置かれるVRマシンであると。
吉田氏:そうなんですよ。だから、家族の人に「ジャマ!」と思われたくないですよね。そうじゃなくて、これがあるから人が集まった時に一緒に遊べますよっていう。そういうものになってほしいということですね。
システムアップデートで更に進化を続けるPS4&PSVR。「PlayStation Now」も好評!
──PlayStation VRについて、価格等のについての発表は今回もありませんでしたが、2016年上半期のローンチという予定については変わっていませんか?また、価格については「本体より高くはしたくない」という発言もあったかと思いますが、そのあたりも?
吉田氏:2016年上半期のスケジュールは変わってないですね。価格についてはSCEAのアンディ社長が言ったことがありますね、私は言ってないですけど、どうなんでしょうね(笑)。でもまあ、値段も発売日もタイトルラインナップも最後の決め事ですので、もう少し時間を見ていこうかなと。ハードの開発の方はもう順調でほとんど終わっていますし、いまはシステム・ソフトウェアの開発を頑張っている所です。
実は今回も地味にスペックリストをアップデートしているんですよ。ご覧になると、従来の120Hzに、90Hzを追加しているんですよ。今年のGDCの段階ではネイティブで120Hzが出せます、60Hzのゲームも120Hzにリプロジェクションできますよというふうにお伝えしてきて、そこは変わっていないんですが、ただデベロッパーからしてみると、120Hzのネイティブってパフォーマンス的に相当キツイんですよね。だから90Hzネイティブが欲しいというリクエストがありまして、それに応えた形です。
実際、90Hzネイティブでやってみるとけっこういいんですよ。今回セガさんの初音ミクがそうなんですけども、90Hzネイティブで非常に綺麗な画を出しています。そこはやっぱり、システム・ソフトウェア担当のスタッフが頑張っていて、他にもPSVRをかぶってPS4の電源を入れたら何が見えるかとか、VR専用以外のコンテンツにも使えるのかですとか、それも発売までにはお見せする機会を作りたいと考えています。
──90Hzネイティブは、例えば「RIGS」みたいなe-Sportsタイトルにもかなり合っているんじゃないでしょうか。ヘッドトラッキングが120Hzで反映され、キャラの動きが60Hzだと、速い動きのブレがお大きく見えるというか。
吉田氏:合っていますね!「RIGS」は今のところ60Hzのりプロジェクション120Hzだったかと思いますけけど、ちょっと飛んだ感じはあるんですよね。90Hz、120Hzネイティブで一番感動するのはアニメーションの細かさですよね。
──「サマーレッスン」のようなコンテンツですと動きがあまり早くないですから120Hzリプロジェクションが合っているかと思いますが、そこはもうデベロッパーさんの選択に応じてということですか。
吉田氏:そうですね、あまり大きく振らないですからね。おっしゃるとおりだと思います。あとはデベロッパーさんがどこまで頑張れるかですね。120Hzリプロジェクションに比べると、90Hzネイティブってすごくいいんですよ。120Hzネイティブになるともっといいんですけど、90Hzも非常に良いことがわかりましたので追加したという感じですね。デベロッパーさんとしても120Hzは無理だけど90Hzならいけるというところがもっと出てくると思います。
──TGS前日から始まった「PlayStation Now」について、反響などはいかがでしょうか。
吉田氏:もう社内では盛り上がっていますよ。メールが一時間ごとに飛び交っています(笑)。1日後の結果でいうと、技術的な問題は全く無いですね。テスト段階からユーザー体験としては大変高く評価を頂いていまして、唯一心配だったのはWi-Fi環境でプレイされる方なんです。特にPS Vitaユーザーさんが日本には多いので、その中では途中で途切れたとかの報告もありまして。
テスト期間中にはそういった方のお家に訪問したりもしたのですが、実はホームルーターが古いもので、新しい物につなぎ替えると全然問題なかったとかもありました。なので、Vitaユーザーさんで、どうもうまくいかないという方は、ルーターが古くないかを気にしていだただければと。最近は性能の高いルーターも安いですから、これを機会に買い換えていただければと思います。
そういった環境についてはユーザーさんごとに幅広い違いがありますが、悪い意味で評判になるということはなくて、よかったです。実際にどの機器で使われているかというのもこちらで把握できるのですが、Vitaユーザーさんも非常に多いんですよ。それでいろんなタイトルをつまみ食い的に試していただいているようですね。今後どうなっていくか楽しみですね。
──最後に、今回のTGSにあたって、ユーザーさんに特に見ていただきたいものがありましたら教えて下さい。
吉田氏:もういっぱいあります(笑)。タイトルでいえば、「GRAVITY DAZE」のPS4版ですとか、「アンチャーテッドコレクション」ですとか、「Bloodborne」のDLCですとかね。各サードさんのタイトルもいっぱいあるんですけども、でもやっぱり一番、個人的に期待しているのは、PlayStation VRです。ご自分の好きなタイトルを是非体験していただいて、その感想を聞きたいなというのが、一番気になるところです。