インタビュー

iOS/Android「ロックマン クロスオーバー」開発者座談会

少数精鋭! 個性派&実力派揃いの開発スタッフたち

少数精鋭! 個性派&実力派揃いの開発スタッフたち

【座談会出席者】
(左)松浦広和氏……「ロックマンクロスオーバー」プロデューサー。/(右)内田武邦(ウッチー)氏……PRサポート(ロックマンユニティ ブログ管理者)
青木征洋氏……「ロックマンクロスオーバー」サウンドコンポーザー
水野佳祐氏……「ロックマンクロスオーバー」デザイナー

――まず最初に、お1人ずつ「ロックマン クロスオーバー」(以下、「ロックマンXO」)への関わり方と、これまでの経歴を簡単にご説明願えますか。

松浦氏:「ロックマンXO」のプロデューサーをしております松浦です。これまではモバイル用の「ストリートファイターIV VOLT」や「ストリートファイター×鉄拳 MOBILE」などを担当してきました。「ロックマン」シリーズは初めてですが、四半世紀続いている長寿タイトルなので、関わることができてとても光栄に思います。プレーヤーだった時代もカプコンのゲームは好きで、「ロックマンX」や「バイオハザード」でよく遊んでいました。

ウッチー氏:「ロックマンユニティ」という、ブログベースのコミュニティサイトの管理人をしていますウッチーです。ゲームを作るカプコン側と、ユーザーさんの間に立って取材にいったり、記事を作成したりして皆さんに楽しんでいただけることをやっています。だから取材することは多いんですけど、される側ってのはなかなかないんです。こんなカッコしてますけど、これでも緊張してるんですよ!

一同:(笑)。

ウッチー氏:経歴としましては、映像系を中心に何でも屋みたいなことをやっていました。最近では「カプコンアーケードキャビネット」の座談会の撮影や編集とか、「ゴーストトリック」の映像企画などですね。こういった感じの人間なので、ばかばかしい映像も多いです。カッコイイ真面目なPVは作れません(笑)。もちろん、カプコンのゲームはずっと遊んできました。「ロックマン」シリーズはもちろん、昔はゲーセン小僧でしたので「サイドアーム」とかもやってました。「ロストワールド」でローリングスイッチをぐるぐる回したり。

――年齢がわかっちゃいますね(笑)。

ウッチー氏:あー、そうか。でもまあ、ウソはつけませんね(笑)。

松浦氏:彼は「ロックマン」シリーズの裏番というか、ある意味では最大の功労者の1人ですよ。ウッチーさんがロックマンユニティなどで開発とは別の形で盛り上げてくれているおかげで、今でも「ロックマン」というIPを続けることができていると思っていますから。……と、こうやって持ち上げておきます(笑)。

ウッチー氏:(ヒソヒソ声で)あとでジュースおごりますね。……でも改めて思うのは、やはり「ロックマン」はユーザーさんの愛がものすごく強いシリーズだということです。25年も続いていますから、本当に多くの方々に支えられているなと、いつも感じています。

青木氏:サウンド開発の青木です。「ロックマンXO」では楽曲全般を作っています。カプコンに入社したのは2008年で、これまでは「戦国BASARA」シリーズをずっとやっていました。「戦国BARASA3」、「戦国BASARA クロニクルヒーローズ」、「戦国BASARA3 宴」あたりですね。あとはサウンド的な演出を考えています。

松浦氏:ほかのプロジェクトでは、複数のコンポーザーが関わることも多いんですが、「ロックマンXO」はすべて彼1人で作っているんですよ。「もう俺しかできない」みたいな(笑)。青木自身、「ロックマン」シリーズが昔からすごく好きなんですよ。とくに「ロックマン2」が好きなんだっけ?

青木氏:そうですね。「ロックマン2」なら、Dr.ワイリーステージでE缶を3つ持っているパスワードを未だに覚えてますよ(笑)。

――それはまたコアな(笑)。すごいですね!

青木氏:入社試験の面接でも、「『ロックマン』の音楽を作らせてほしい」と要望を出したんです。そのせいでうかったのかどうかはわかりませんが、こうして今作ることができて感無量です。やっと夢がかないました(笑)。

水野氏:クリエイティブサポートチームの水野です。よろしくお願いします。「ロックマンXO」では、販促用のイラストと、一部のキャラクターデザインを担当しています。

――具体的にはどのキャラクターを担当されたのですか?

【OVER-5】
水野氏が手掛けたのは、「OVER-5」以降のアーマー。現在は属性つきの「OVER-9」まで登場している

水野氏:OVER-5以降です。カプコンに入社したのは2004年で、「ロックマン エグゼ5」から「流星のロックマン」、「ロックマンロックマン」に「イレギュラーハンターX」など、ここ数年の「ロックマン」シリーズでイラストを描いています。

――「ロックマン」シリーズにずっと関わられてきたんですね。

水野氏:はい。ほぼ「ロックマン」がメインですね。

松浦氏:水野さん的には、「ロックマン」の思い出が何かないですか?

水野氏:作品自体は昔からずっと好きで、入社試験のときの応募作品では、「ロックマン」の絵をたくさん持っていきました。

松浦氏:でも、そのおかげで「ロックマン」しか描かせてもらえない、みたいな感じになってるよね(笑)。

――では本音としては、ほかの絵も描きたいというご希望もあるんですか?

水野氏:いいえ、実は特にないんですよ。本当にもう、「ロックマン」さえ描ければ……という感じです。

120万ユーザーを突破し、好調の波に乗る「ロックマンXO」の魅力とは?

――「ロックマンXO」の概要やセールスポイントを改めてお聞かせください。

松浦氏:「ロックマンXO」は、ロックマン25周年を記念して制作したタイトルで、初代「ロックマン」から、最新の「流星のロックマン」までのすべてのロックマンが一堂に集合したお祭り的なタイトルになっています。ゲームの特徴としては、“バトルメモリー”と呼ばれるカードを装備して、自分だけのロックマンをカスタムできるのが特徴です。スタンダードなソーシャルゲームの仕組みも取り入れていますが、その中で「ロックマン」らしさを最大限に追求したつもりです。「ロックマン」のファンの方から見ても、これは間違いなく「ロックマン」だ、と言っていただけるものになったと思います。

ウッチー氏:25年も続いていると、年代によって好きなシリーズも変わってきますからね。私のようなおっさん世代はやはり初代が好きですし、「X」が好きな方、「エグゼ」が好きな方、世代によっては初代を遊んだことがない方もいらっしゃるでしょう。逆に最近のシリーズがわからない世代もいると思います。でも、「ロックマンXO」には、バトルメモリーをカスタムするときにいろいろな作品のイラストが出てきたり、シリーズごとのステージも登場します。そこで知らなかったタイトルにも興味を持っていただけるとうれしいですね。そうした橋渡しをするタイトルでもあると思います。

松浦氏:「ロックマン」シリーズの登竜門としてもいいゲームだよね。

ウッチー氏:誰でもフックになる部分が必ずありますし、ステージの音楽は当時の音源を使っていたりします。そこで時代を遡って、あえて昔の「ロックマン」や新しい「ロックマン」で遊んでみる、というような現象も実際に起きているんですよ。

――ちょうど上手い具合に、すべての「ロックマン」シリーズが交錯するバイパスみたいな働きをしている感じですね。いろんなところから入ってきて、出て行くような。

松浦氏:そうですね。例えば最近ですと、「ロックマンX8」のステージを追加しました。そこで初めて興味を持って、プレイステーションを引っ張り出して「ロックマンX8」で遊んでいるユーザーさんもいらっしゃいます。それと、今まではシリーズごとに固定のファンがついていて、逆にユーザーの好みが大きく分かれていた印象がありました。例えば「X」のファン層は、「流星~」は認めない傾向があるとか。

――世代によっていろいろなこだわりがありそうですね。

松浦氏:そういう垣根みたいなものを、「ロックマンXO」が取り払って、うまく1つにまとめられたという実感はあります。

ウッチー氏:それは私も感じますね。

――逆に、今までのシリーズを全部まとめるのは、大変だったのではないですか?

松浦氏:正直、苦労は多かったですね。開発期間は1年半ほどかけてますし、構想の時点からゲームに落とし込むまでには、相当な苦労と戦いがありましたね(笑)。

――具体的には、どこがどう大変でしたか?

松浦氏:まず、絵柄をどこに合わせるかは相当悩みました。最終的には「ロックマンXO」のメインターゲット層を、だいたいモバイルで「ロックマン」シリーズを1番多くダウンロードして頂いたアラサーの世代を想定したんです。それで、過去にはガラケーでも初代、「X」、「エグゼ」の3シリーズを出しているんですが、「X」の人気が非常に高かったんです。そのあたりを参考にして、「X」に近いタッチにしたという経緯があります。

――個人的に違和感は感じませんし、成功だったと思います。

松浦氏:ほかには、ソーシャルゲーム的なクエストと、「ロックマン」をどう融合させるかも苦労しましたね。「ロックマン」は普通のアクションゲームで、企画が立ち上がった段階ではまだガラケーが全盛でした。当時のソーシャルゲームのクエストはブラウザでボタンをポチポチ押していくスタイルが主流で、そこに「ロックマン」をマッチングさせるのは非常に難しかった。結局は、誰がやっても結果は変わらないけれども、「ロックマン」をしっかり体験できる。そんなゲーム性に落とし込めたと思います。

――クエストは、アクションゲームの操作感覚が味わえるものになっていますね。

松浦氏:純粋なアクションゲームではないけれど、アクションゲーム“っぽい”雰囲気にできました。基本的なコンセプトとしては、子どもでも、例え赤ちゃんでも、遊んだ結果は変わらないようになってるんですよ。攻撃しようがジャンプしようが、ダメージを受けようが受けまいが、ゲームオーバーになることはありません。入手するゼニーとかは変わりますが、クエストは遊べば必ずクリアーできます。そこについては、今までの「ロックマン」とはコンセプトが大きく違う点ですね。今回は、職人気質のコアなアクションゲームファンを狙っているわけではなくて、あくまでソーシャルゲームですからね。たくさんの人に「ロックマン」シリーズの魅力を知ってもらうことが目的でもあります。それで遊び方を簡単にしつつ、「ロックマン」本来の雰囲気を味わっていただけるゲームとしてデザインしたんです。

(氏家雅紀)