コーエーテクモ、PS3/Xbox 360「NINJA GAIDEN 3」
早矢仕プロデューサーにスペシャルインタビュー!


3月22日 発売予定

価格:8,190円(通常版)
   13,440円(コレクターズエディション)

CEROレーティング:D(17歳以上対象)


株式会社コーエーテクモゲームスは、プレイステーション 3/Xbox 360用アクション「NINJA GAIDEN 3」を3月22日に発売する。価格は通常版が8,190円で、コレクターズエディションが13,440円。CEROレーティングはD(17歳以上対象)。

 「NINJA GAIDEN 3」は、主人公のリュウ・ハヤブサが「人殺しの業」や、「忍びの宿命」に悩み苦しむ一面が描かれ、大人でも楽しめるしっかりしたストーリーが用意されている。また、ハードなアクションゲームとしての一面も健在だが、一方で誰もがクリアできるようオートガード、オート回避が発動するプレイスタイル「HERO」を用意するなど、アクションゲーム初心者にも優しい面も備えている。

 今回は、発売に先駆けて本作のプロデューサーを務める早矢仕洋介氏のインタビュー記事をお届けする。末尾には、初回限定特典として収録されている「DEAD OR ALIVE 5 体験版α.ver」に関するコメントもあるので、ファンの方々はぜひチェックしていただきたい。


【パッケージ】
PS3版Xbox 360版



■ さらなる進化を目指した「NIJNA GAIDEN」 ~忍者には、もっとポテンシャルがあるのではないか ~

早矢仕洋介氏

GAME Watch編集部: アーケード「忍者龍剣伝」から始まり、スーパーファミコン「巴」で2Dジャンプアクションのシリーズ総括、そこからXbox「NINJA GAIDEN」で現シリーズの新たな潮流が築かれたように思います。「2」までは先鋭的な作りが印象的でしたが、「3」は間口の広さ、ドラマ性や現代的なフィーチャーなど、従来とは異なるアプローチでシリーズの幅や奥行きに変化を与えているように感じられます。このあたりは、意識的に行なわれているのでしょうか?

早矢仕洋介氏(以下:早矢仕氏): 先鋭化という言葉で「あぁ、そうだな」と思ったんですけど……先鋭化していくほど、プレイできる方は限られていってしまうんです。特に「NINJA GAIDEN」は、クリアすることに満足感を得てもらうということ構造でしたが、その裏でクリアできなかった方々も沢山いる。そこで「もう『NINJA GAINDEN』にはチャレンジしなくてもいいや」っていう方々が一杯出てしまっている現実がある。このまま先鋭化していっても、我々として未来がないなと考えました。

 我々は「忍者」という題材をゲームに使っていますが、「忍者」ってもっとポテンシャルがあるんじゃないのか? みんなが熱中できる、そんな存在にできるんじゃないのか? っていうのがありました。そこを今回しっかり挑戦みようということと、今まで支えて頂いた「NINJA GAIDEN」ファンの皆さんに満足いただけるもの、その両方を両立できないかと考えました。「NINJA GAIDEN 3」を触っていただくと、その狙いをわかっていただけるんじゃないかと思います。

編: 初代アーケード版は、ベタなアメリカという世界観で忍者が戦う……いわゆるファンタジックというか、バカゲーっぽいといいますか。

早矢仕氏: コンティニュー画面で、丸ノコで殺されそうになる?(笑)

編: まさにそれです。お気楽さというか、やわらかい発想というか。元々はそこが出発点なんですよね。

早矢仕氏: その当時のコンセプトが、「アメリカン忍者」。Xboxになってから「スーパー忍者」と表現するようになったんです。いわゆる水遁の術を使う忍者ではなく、別の忍者像を作ろうという。それが先鋭化してきたんで、「NINJA GAIDEN 3」で“ジャパニーズ・ダークヒーロー”という忍者にしようと。アメリカン忍者からスーパー忍者になって、ジャパニーズ・ダークヒーロー。同じ忍者なんですけど、だんだん我々の描き方、捉え方が変わってきています。

編: それが、ストーリーで主人公リュウ・ハヤブサが「人殺しの業」、「忍びの宿命」に悩み苦しむ一面を描こう、というところにつながっていったんでしょうか?

早矢仕氏: 例えとして開発スタッフに出して納得してもらえたのは、スパイ映画のジェイムス・ボンド。私が生まれる前にもう「007」は存在してて、その描かれ方は「ポマードでガッチリ固めた髪形」、「バーで格好良く酒を飲む」、「女性にはモテモテ」、「敵に弱みを見せない」、それで任務をまっとうしちゃう。私が大学生や社会人になったときも、それが綿々と受け継がれてきていた。ピアース・ブロスナンが演じた「007」は、こういってはなんなんですけど……これが「007」だとは理解しているんですが、本当に面白いか? って言われると、何か違うんです。本当にその時代の人が熱中できるものではなくなったと感じていました。

 でも、近年の「007」で、主演がダニエル・クレイグになったとき、髪の毛はポマードではなくザンバラ状態、泥もかぶるし、女にはフラれちゃうし、ひとりの女性だけが好き……全然描かれ方が違います。最初は「これはジェイムス・ボンドじゃない!」という反応がありましたが、それが熱中できる今の時代に相応しい「007」だったんです。我々にふりかえってみると「NINJA GAIDEN」の主人公も、そうなってしまっているんじゃないかと。スーパー忍者って、こういうものだよね。でもそれで今、ゲームを遊ぶ人が、本当に満足できるのかっていうと、その人の人間性というか、もう少し身近な人間として感じてもらうことが、今の時代に1番あっているんじゃないかと信じて、「NINJA GAIDEN 3」はそういう方向のエンターテイメントを目指しました。

編: 「3」では断骨アクションが大胆にフィーチャーされています。ズブリと刀が食い込むタメ、震えがコントローラーを通して感じられますが、これを作り上げる際、なにか参考にされたものはあるのでしょうか?

早矢仕氏: 海外では「ハック&スラッシュ」、日本でいうと「ソードアクション」と言われるジャンルで、色々なゲームが出てはいますが「本質は、大きく変わっていない」と感じていました。敵を打ち上げたり、何百人も吹っ飛んだりというのはあるんですけど、じゃぁ10年前から大きく変わったかといえば……。

編: 強いていえば、ラグドールとか物理演算くらいでしょうか。

早矢仕氏: 翻ってFPSやTPSを見てみると、物凄い進化を遂げている。10年前と今で比べると、物凄く洗練されているし、敷居は低いけど熱中できるようになっている。なんで我々のソードアクションゲームは、何も変わらずここにいるんだろう? と。単純にリアル……リアルという言い方は誤解があるかもしれないんですけど、より「現実感のある領域に一歩踏み込むソードアクション」って何かないのかなと思ったとき、「本物の刀で人を斬ったら、多分その手になにか手応えがあるはずだ」と。

 よく、刀で人を斬ると骨にあたって刃こぼれするとか、一人斬るともう人が斬れなくなるとかいわれる。それくらい凄いことがおきている。では、それをゲームで表現してみないか。10年間、一切進化しなかったものを僕らでもう1歩未来にもっていけるんじゃないのか? というゲーム開発者視点がひとつ。あとは、「NINJA GAIDEN」って凄く“速い”ゲームです。カメラを寄せて迫力ある絵を見せる暇がない。グッと表情をバストアップで見せられるようにしたい、と思って。だから、何かを参考にしたというよりは……。

編: 必要に迫られて生み出されたものですか?

早矢仕氏: そうですね。我々のジャンルも置いていかれちゃいけないよねっていう危機感はありました。

編: 1対1の戦いならともかく、複数の敵と戦うとき、いちいちカメラが寄っていくとユーザーのストレスになりかねませんよね。

早矢仕氏: そこの演出と、それこそフレーム単位で調整して、気持ちいいし迫力もあって邪魔にならないよう、丁寧にやりました。それをお客様に動画で見ていただいたとき「QTE(Quick Time Event)」って言われたのは凄くショックだったんです(笑)。

編: 昨年のTGSミニインタビューの際も、相当気にされていましたよね。

早矢仕氏: そこでゲームというコンテンツのいい意味での面白さだなと思ったのが、決して動画だけではわからないじゃないのかなと言うことです。ゲーム画面は同じでも、コントローラーを持っている人、映像を見る人で、こんなにも反応が違う。やっぱりゲームって見るだけじゃ完結しない、「体感する娯楽」なんだなぁと。これから発売されて実際に触って体験していただくのが、逆に楽しみになりました。

編: それと関連する事柄かもしれませんが、本作にはインフォメーションにない操作を要求される場面がありますよね。たとえば、序盤で降参した兵士が後ずさりして命乞いをするシーン。結局ボタンを押して斬ってしまったんですけど、あそこも操作している人、見ている人で印象が全然違うだろうなぁと思いました。

早矢仕氏: こちらから押せっていうんじゃなくて。あの瞬間はもう、みなさんどれが攻撃ボタンかわかってますよね。我々は別に何も指示してないんだけど、プレーヤーのみなさんが“自分の意志で押してもらう”ということが大事だった。「プレーヤーのみなさんが、人を殺したんですよ」っていう……先ほどのテーマにも重なるんですけど、モニターのこっち側にいるのではなく、みなさんにもリュウ・ハヤブサと同じ立ち位置になって欲しかったんです。

編: 印象付け、ですよね。自律的にやったんですよっていう。

早矢仕氏: ボタンを表示しないってことは、プレーヤーのみなさんが自分の意志で押した、ということ。あなたがそう考えて、そういう行動に出たんでしょ? と。そこはゲームとして、というか“ゲームでしかできないキャッチボール”という気がしました。

編: ちなみにこのシーン、斬らずに済ませることはできないのでしょうか?

早矢仕氏: できないですね。ダークヒーローなので、逃げられないというふうにしました。

編: ずーっと放置してたら、そのうち逃げるんじゃないかなーと思って5分くらいほったらかしにしてたんですけど(笑)。

早矢仕氏: それも受け入れたいんですけどね。やっぱりみんな、いい人でいたいじゃないですか(一同笑)

編: 日本人のヒーロー観だと、「去るものは追わず」でさっと手を振って見逃すのがセオリーなんでしょうけど。でも、主人公はこういう人である、ということを改めて印象づける大事なシーンではありますね。

早矢仕氏: いい人でいたいけれど、誰かがやらなければいけない事がある。彼自身も「別に好きで殺しているわけじゃないんだ」というところとリンクして、凄く面白い感情の体験になってくれるんじゃないかな、と思います。

編: 今回はストーリー、事件への巻き込まれ方も印象的ですよね。最初に拒否したら「いや、原因はお前(リュウ・ハヤブサ)だから」っていう。

早矢仕氏: アクションゲームは、ストーリーとアクション部分が切り分けられているものが多いかなと思っているんですね。1面クリアしました、評価が出ます、じゃぁムービーです、また次のステージですって。そうではなくて、アクションゲームなんだけど“一体感”を感じてもらえるよう考えた手法を、みなさんに提示させていただきました。

編: 昨年のTGSミニインタビューで「エンターテインメントとして本当に楽しめる、大人向けのゲーム」というコメントがありました。大人向けのエンタメを実現するために不可欠な要素をあげるとしたら、なんでしょうか?

早矢仕氏: 作っている側がすべての答えを提示しない事。先ほどの例のように「斬りたくないな」って思わせるとか。なにかを投げかけて、プレーヤーのみなさん自身で考え、感じてもらう。その結果、自分だったらどうするとか、ゲームが終わったときに「ああいうことだったのかな」と考えるとか。「今回のゲームの答えはAです」といったわかりやすい答えは一切出さない。お客様とのキャッチボールが必要なんじゃないかなと思います。なにが正解か不正解かではなくて、答えはそれぞれでいい。やっていただいた方々、それぞれ感想が違う状態でいいのかなと。それを考えて、なんとなく記憶に残してもらえることが大事なんだと思います。

編: そういう意味では、今回はストーリーに対して相当な比重を置いているということでしょうか?

早矢仕氏: アクションゲームの「NINJA GAINDEN」ですから、やりごたえがないと「NINJA GAIDEN」じゃないとは思うんです。触っていて気持ちいいというのは、もちろん今回も大切にしています。ただ、それだけでは、やっぱり……物足りない人もいます。遊ぶときの動機は、ひとつにまとめられないんです。だから難易度選択を、「プレイスタイル」という名称にしたのも、みなさんの「ゲームとの付き合い方」で、好きなほうを選んでください、と。従来のように遊びたい人はNINJAでいいし、最後までカジュアルに体験したいのであればHEROでいいよ、っていう用意の仕方にしました。どれがいいという順位付けはしてないので、みなさんで選んでくださいというスタイルです。

編: プレイスタイルは、凄く大胆なシステムですよね。折々のタイミングで、何度かコンティニューしていると突然「プレイスタイルを変えますか?」ってきかれます。

早矢仕氏: ゲームというエンターテインメントも歴史を重ねてきて……私もゲームと共に20年、30年と育ってきているんですけど、たとえば今の私と同世代の人が「ファミコンから一切ゲームやってないけど、子供もできたし、もう1回ゲームを触ってみよう」となったとき、20年のブランクって圧倒的に違います。そこはもう、ひとつの答えじゃ出せないので、我々からそういうアプローチをさせてもらったほうがいいかなぁと思いました。

編: 従来シリーズであれば「その難易度を選んだお前が悪い」で終わりなんですけど。凄く親切で驚きました。本当に優しい作りだなぁと感じました。

早矢仕氏: エンターテインメントも歴史ができてきたぶん……私もゲームと共に20年、30年と育ってきているんですけど、たとえば今私と同世代の人が「ファミコンから一切ゲームやってないけど、子供もできたし、もう1回ゲームを触ってみよう」となったとき、2~30年のブランクって圧倒的に違うじゃないですか。そこはもう、ひとつの答えじゃ出せないので、我々からそういうアプローチをさせてもらったほうがいいかなぁと思いました。

編: 熱心な顧客を擁する老舗シリーズほど、そういったアプローチをするのは、より勇気がいることだと思います。

早矢仕氏: 「NINJA GAIDEN」は硬派なアクションゲームといわれますが、別に硬派な人でも、おじいちゃん、おばあちゃんに優しくてもいいじゃないですか(笑)。両立できる。難易度「NINJA」を選んでもらえると途中どんどん難しくなるので、凄く硬派です。だから、ゲームとしてはあくまで硬派なんですよね。でも、さっきの例えじゃないですけど、硬派だから人に優しくできないかっていうと、そんなことない。そういうことかなぁって思います。

編: でも「お風呂の温度は43度以下は認めない」的な人もいますし。

早矢仕氏: でも優先席は譲らなきゃダメです(笑)。そういう方々のプライドは傷つけないようなゲームデザインになっていますから、気にせずプレイしていただきたいと思います。トロフィー、実績はHEROを遊ばずにそろえられます。補助輪はつけられますけど、外せますっていうのがこのゲームです。

編: 最初に選べるスタイル(難易度)は3段階ですが、クリアするとさらに難しい難易度が出現するなどの隠し要素はありますか?

早矢仕氏: そりゃもう「NINJA GAIDEN」ですから! もちろんあります。

編: 実は、事前にNORMALで始めたんですけど……わりと最初のほうの山場で、泣きを入れちゃったんですよね。そこだけHEROにしちゃいました(汗)。

早矢仕氏: ほら、みんな「硬派」とか言いながら!(笑)。そういう心の奥底をすくうように作らないといけないですよね。

編: それを言われると返す言葉が……。ちなみに、高難易度でプレイしているときは途中で難易度が下げられないとか、そういったことはありますか?

早矢仕氏:  「NORMAL」と「HERO」は自由に行き来できますが、上の難易度は自分で道を切り拓かないと前には進めない。そこはチートできません。「HARD」から「NOMAL」には戻せますが「NORMAL」から「HARD」には、いけません。

編: 「NORMAL」でも相当な手ごたえがありますよね。わかっているつもりでも、なかなか……。スライディングも間合いがつかめるまで苦戦しました。

早矢仕氏: 今までって、回復アイテムやレベルのサポートがあったので、難易度がいい意味でファジーだったんですよね。我々が計算できないゲームデザインになっています。回復アイテムを、その人が3個持っているのか、10個持っているのかわからない。とりあえず5個くらいでギリギリで作っておくと、3個の人は難しいし、10個の人は簡単になってしまう。今回はアイテムもないし、武器に関しても一定レベル、閉じられた世界が作れる。我々のほうからすると、わかりやすい挑戦状を突きつけられる。この攻撃は3回くらったら死にますよ、とか。そういうレベルデザインが凄くやりやすくなっていて、そのぶん敵の思考を工夫した。従来はランダムに技を出していたんですけど、今回はそこを意識的にこちら側から技を出す。1回死んで勉強してもらうと、次にチャレンジしやすくなる。今までが反射神経重視だとすると、今回はちょっとアタマのなかに戦略というか。「次、こうしようかな」とみなさんに考えてもらえるように作ってあります。

編: 盾を持った敵の配置や、安心した頃に突然横から飛び道具で撃たれたりとか。

早矢仕氏:  最初それで死んじゃっても、次にプレイするときは先にあいつをやっつけておけば楽とか、そういうのがわかってもらえると先に進めるようにしています。「ここは難関だな」と感じても、やりこんでパターンを知っている人には「いや、こうやれば簡単だったんだ」みたいに攻略法が見つける喜びがあります。我々が開発側が意識してないパターンもあるかもしれませんし。

編: 先ほどお話に出た武器ですが、ストーリーモードは刀1本で進んでいくのですか?

早矢仕氏: ストーリーを体感していただく際、刀の存在自体を主役においています。そこで自由に武器を変えられると、ストーリーとゲームプレイがかみ合わなくなるので、刀1本にさせていただきました。ただ色々な武器で遊ぶという今までの「NINJA GAIDEN」の遊び方もあると思うので、ハヤブサの武器は無料ダウンロードコンテンツとして発売後に配信させていただくことになっています。

編: えっ! じゃぁとある場所で刀を渡されるデモシーンがありますが、そこが鎌になったり!?

早矢仕氏: そこは作り変えられないので……刀のままです(笑)。刀でクリアした人が、それでもう1回遊びたくなるような遊び方を想定しています。

編: 無料配信される武器の種類は?

早矢仕氏: 今回我々が提示している“斬り応え”というのがあるので、それに見合ったものということで「大鎌」と「爪」。「NINJA GAIDEN 2」の1番人気、2番人気なんですけど、それを今回は配信させていただきます。

編: 見た目と実用性の1番、2番がきましたね。

早矢仕氏: 過去作での大鎌は、ちょっと強すぎましたけど(笑)。大鎌で人を斬るとか、爪で人をガリッと斬るのは感じてもらえる。それ以外の、たとえばヌンチャクとかはゲーム性にあわないので止めました。

編: もしかして、大鎌のときはコントローラーの振動が違ったり?

早矢仕氏: それぞれの武器の「斬り応え」の違いを感じてもらえるような、調整はしてあります。

編: 刀だけでなく、弓のアクションも面白いですよね。ターゲッティングで相手を向くのが凄く気持ちよくて、つい多用してしまいます。ジャンプ中に撃つとか、超楽しいですよ。

早矢仕氏:  たとえば「Call Of Duty」でも、構えるだけで敵に照準があってくれる。じゃぁ、うちも照準をあわせる必要ない!と考えました。そもそも近距離が物凄く激しいバトルになっているので、その瞬間に構えて撃つ、その隙を見つけるというのが結構難しい。リアルタイムだとカメラがバタバタして何をやっているかわからなくなるからスローにして、その間ちょっと調整ができるようにしている。そこでヘッドショットを狙うと1発で倒せるといったオマケはつけていますが、基本はターゲッティングしてそのまま撃っていただければいいかなと思います。

編: スローのかかる部分とか、凄く行き届いた配慮だと実感します。

早矢仕氏: アクション部分を大事にしていないと捉えられがちですけど、そこは丁寧に作っています。基本は遠くの敵を、いつ倒すか。ここも難易度を変えると、色々シビアなゲームになっていると思います。

編: シリーズ初のマルチプレイモード「SHADOWS OF THE WORLD」を入れようと考えた理由は?

早矢仕氏:  先ほどのアクションゲームの停滞じゃないですけど「マルチオンラインはシューターのもの。アクションゲームには必要ありません」みたいな常識ができていて……。「でも『NINJA GAIDEN』の操作でみんなでアクションやったら面白そう!」と思いますよね。別にオンラインマルチプレイはシューターの専売特許ではないし、じゃぁチャレンジしてみようよ! っていうのは自然な流れでした。作りながら色々な障害はありましたけど面白いものに仕上がったと思います。私が感じているのが、アクションゲームというものが、「スラッシュの気持ちよさ」もそうだし、「オンライン」もそうだし、大きな変化を求めずにそこに留まろう、留まろうっていう……。

編: 成功した範囲のなかで……。

早矢仕氏: そこから飛び出ようとしない。それをこのNINJA GAIDEN 3で新しい未来をお見せしたい、と思っていました。最初に発表したとき、たぶん非難されるだろうなとは思ったんです。「要らない!」というご意見があるだろうなと。

編: 「そんなモードを作る時間と手間があったら、シングルのほうにつっこめ!」と?

早矢仕氏:  そうですね。でも、我々としては、まだだれも触ったことがないものを開発して、みなさんに新しい体験を提供したい。なんで「要らない」って言うんだろう? って思います。今回凄く楽しみなのは、我々の開発間では(マルチプレイモードが)流行ってて、暇があればみんな遊んでいるんですね。いい意味で“多くを期待してくれていない”ぶん、触ったときに衝撃を感じてもらえるのではないか。「アクションゲームのマルチプレイって、面白い!」といってもらえるんじゃないかなと思っています。

編: 「NINJA GAIDEN」はシングルプレイに特化してきたぶん、よりインパクトがあるかもしれません。逆に、だからこそ作り手側のなかにも「えっ、マルチプレイを入れるの?」という反応もあったのではないでしょうか?

早矢仕氏:  開発初期段階でいうと「NINJA GAIDEN」で歴史を重ねてきたシリーズなので、じゃぁ次はどうしようとなったとき「武器を増やそう」、「ゴア表現をより激しくして更に物凄く難しくしよう」と、今までのものに“プラス”で話をしていたんですけど、やっぱりそうじゃなくて“掛け算”になるものを我々は用意しなければいけないんじゃないか。「NINJA GAIDEN」ってクリアできなかった人のほうが多いシリーズなのに、クリアできた人しか見ちゃいけないということはない。もちろん、クリアされた方にも満足していただくのは当然なんですけど、そう思いました。

編: そういう難易度の高さが神格化されるというか、そこに揺らぎを生じさせたくないという意識が働くのは、自然というか仕方がない面もあると思います。

早矢仕氏: でも、我々開発もその先鋭化された先端にいるわけです。みんな当然「NINJAGAIDEN」シリーズをクリアして、やりこんでいる。その我々が納得できるものを形にできれば、そういった尖った部分を好きでいてくれたプレイヤーの皆さんもも納得してくださるだろうというのがありました。新しい方向性に関しては我々も手ごたえを感じていたので、途中からはあまり迷いもなくなりました。

編: マルチプレイは最大8人でプレイしますが、人数は色々試されたのでしょうか? もっと大人数がいいとか、あるいは4人くらいがいい、とか。

早矢仕氏: 60フレームでマルチプレイをやるとなると、もちろん人数制限の課題は色々ありました。ただ、やはり「最低8人はクリアしよう」ということで、4対4=8人を実現しました。

編: プレス向けのマルチプレイ体験会で、実はこっそりうかがっていたんですが……通信が結構シビアで、北米など遠方のプレーヤーとマルチプレイは難しいとききました。アメリカの忍者たちと一緒に遊びたいなぁと思うのですが、やはり厳しいのでしょうか?

早矢仕氏: 地域サーバーではなくて、基本は世界統一でつながります。ただ、マッチングの際に回線が強いところが優先されるので、たぶん見えないことがほとんどだと思います。

編: 60フレームの実現は相当揉まれたと思います。オンライン対応としては、相当ハードルが高いですよね?

早矢仕氏:  斬りあいの細かいところを作り込むとかではなく“もっと大きな世界を遊ぶ”というふうにしていました。空から飛んできたり、透明になって暗殺したりとか。我々の合言葉としては「“忍者ごっこ”をできるように」として開発していました。あまりストイックな作りを目指してはいません。

編: 判定とか処理的にはギリギリまでつめているけど、遊ぶ側には大勢でフランクにやって欲しいということでしょうか?

早矢仕氏:  我々は対戦格闘ゲームも作っていますから。ストイックに対戦したい人は、そういうゲームを遊んでいただく。「NINJA GAIDEN 3」は、「原っぱでみんなで遊んでいる」というようなオンラインゲームができればなぁと。

編: オンラインの対戦ルールですが、当初は色々なものを考えられたんでしょうか?

早矢仕氏: ルールに関しては、色々なものを沢山用意して「どれか選んでね」とやると、だいたい「チーム戦」か「デスマッチ」で9割以上みたいな状態になってしまう。あとは、本当にそれに飽きたときにちょっとやる。それは何か変だなと思ったので、我々は入り口をひとつにして、フレンドだけじゃなく見知らぬ人とやってもらうのであれば「途中何が起こるかわからない」という作りののほうが新しいのではないか。そして、ストイックに競い合いたい場合、フレンド同士でルームをつくれば、ルールをオフにしてシンプルなチーム戦にする事もできるようにしてあります。

編: それで“密命”というフリーミッション的な、変化するルールが生まれたんですね。

早矢仕氏: 基本、見知らぬ同士で集まるなら、たまに裏切られてもいいし(笑)。さっきは勝ったけど、次は「皆殺しにしろ」といわれて、さっきまで仲間だった人たちと殺し合いが始まる。そのほうが面白いよねって。入り口をひとつにして、中身(密命)が毎回変わるという作りにしたんです。今回は初めてのチャレンジでしたので、先人と同じルールのゲームをつくってもつまらない。我々の独自色を出そうということを考えました。「忍者ってそもそも、誰かに命令を受けて行動してる存在です。ということは、誰かプレーヤーの意志ではなく、勝手にルールが変わってもいいのではないか」というそういう意識で作りました。

 「あずみ」という「くのいち」の漫画がありますが、冒頭で一緒に育った子供たち同士「お前ら、殺しあえ!」と命令されるエピソードがあるんです。あれをオンラインでやったら面白いよね、みたいな話をして「じゃあ途中でみんな殺しあうこともあるようにしよう」と。さっき助けてもらったやつにズバッてやられる。うわぁ、これ「あずみ」だとなればいいな、って(笑)

編: 体験会でも驚かされました。突然変わるから、密命が「殺し合い」になってることに意外と気づかない。突然襲い掛かられて「えっ?」ってなる。あれは新鮮でした。ちなみに、「SHADOWS OF THE WORLD」にも、ちょっとした仕掛けなどはあるんでしょうか?

早矢仕氏: 遊んでいると、新しいことが起きるようにいま作っています。

編: 先日発表された「NINJA TRIALS」ですが、チャプター6のステージをそのまま再現しているのでしょうか? それとも構造などが新しくデザインされている?

早矢仕氏: 「NINJA TRIALS」用に、ちょっとだけ調整しています。「NINJA GAIDEN」も3作目なので、今までの総決算ではありませんが、遊んできてくれた方々に喜んでもらえるような要素は色々用意しています。出てくる敵モンスターに関しても、せっかくなのでみなさんのなかで思い出があるようなキャラに出てもらおう、と思っています。

編: 「NINJA TRIALS」はCO-OP前提ですが、ひとりでもプレイできますよね? で、いやらしい話ですが……ひとりでプレイしたときは、ふたり分カルマがもらえたりしますか?

早矢仕氏: ふたり分もらえます。ひとりのほうがよりレベルが上げやすい。戦い方によっても、色々変化がありますが。

編: 貢献度みたいなものがあるのでしょうか?

早矢仕氏: そうですね。基本は、もらえる経験値にあたる「カルマ」は一定です。ひとりで総取りか、ふたりで半々か。今までのモードのようにひとりでストイックにも遊べるし、CO-OPでもいい。ひとつのモードに、遊び方をふたつ用意している感じです。

編: オンラインマルチプレイもそうですけど、自分のなかでは「NINJA GAIDEN」のイメージが結構変わりました。以前のシリーズは、買ったら速攻で家に帰って部屋にこもって黙々とひとりでプレイする、そんな感じでした。

早矢仕氏: このゲームが今の時代、アクションゲームとしてトップランナーだよねって言われるものでいたい、というのがありました。「NINJA GAIDEN」が最初に出た頃はそのように評価していただいていたんですが、それが歴史を重ねるにつれ「『NINJA GAIDEN』だから、こうあるべきだ」みたいな固定的な価値観が出来てしまった。「時代の最先端のゲーム」と比べてくれない。置いていかれている感触があった。そうじゃなくて、今の時代、シリーズを遊んだ人、そうでない人も、パッと手にとってもらったときに「面白い!」と思ってもらえるゲームじゃないといけない。だから、必然的にそうなったのかもしれないですね。

編: 早矢仕さんのなかで、今作のアプローチは自然な流れだったんですね。

早矢仕氏:  はい。あと「運命」なのかなと思ったのは、今回ストーリー、アクションに力を入れてますけど、ファミコン「忍者龍剣伝」も当時「アクションゲームなのに、シネマチックな演出がある。ストーリーがあるアクションゲームです」っていうゲームだったんです。「テクモシアター」と呼んでいて。開発中は意識してなかったんですけど、作り終わってみると「あぁ、当時と同じ方向性なんだな」と気付かされました。

編: ダウンロードコンテンツは、どれくらいのスパンで展開される予定ですか?

早矢仕氏: お待たせしないで用意したいと思っています。長らくお待たせするのではなく、みなさんがストーリーをクリアして他モードをある程度遊べたかな? という頃合にご用意したい、とは思っています。

編: それでは、発売を心待ちにしているファンの方々にメッセージをお願いします

早矢仕氏: 今、据え置きゲーム機で遊んでくださる大人の方々が満足してもらえる日本発のゲームって、少ないと感じるんです。「ゲームで育ったんだけど、いま遊びたいゲームがそんなに見当たらない」っていう方にもしっかり満足していただけるアクションゲームになっています。ぜひ触ってみていただけると、今の時代のアクションゲームを感じてもらえるのではないかな、と思います。

編: 本日はお忙しいところを、本当にありがとうございました。私も発売日を楽しみにしております!




■ 「DEAD OR ALIVE 5」に「バーチャファイター」シリーズのアキラが参戦! ~早矢仕氏のコメントを掲載~

 本インタビューは、3月5日に収録された。3月5日は、“とあるサプライズ”とともに、全世界一斉に「DEAD OR ALIVE 5(以後:DOA5)」発売日が発表されている。サプライズとは、「DOA5」に「バーチャファイター」シリーズのアキラが参戦するという、あまりにも刺激的な内容だ。

 既に弊紙記事に目を通しておられる読者の方がほとんどかと思われるが、実は筆者もインタビュー現場でムービーを先に拝見させていただいた。特に前置きもなかったので「あぁ、収録される体験版のPVかな」と油断していたら、「DOA5」それ自体の美しさもさることながら、独特の乱入SEで即「!?」となってしまい、あとは全身全霊が画面に釘付けの状態。本シリーズのゲストキャラといえば「マスターチーフ」が思い出されるが、まさか3D対戦格闘の先駆者「バーチャファイター」シリーズ、その象徴ともいうべき「アキラ(結城晶)」を招聘してくるとは……。

 ムービーの再生終了と同時に「これはどういうことですか!?」と早矢仕氏に色々な質問を浴びせてしまったのだが「それはまた次の機会に」ということで、今回は早矢仕氏からのコメントを掲載させていただいた。気になる方々は、ぜひご一読願いたい。


早矢仕氏:  格闘ゲーム「DOA5」は「格闘エンターテイメント」とコンセプトと掲げているんですが、それは我々として「3D格闘ゲームの新しい時代を創ろう」という決意表明でもあります。そんな「DOA5」ですが、同時に当然「本格的な3D格闘ゲーム」でもあるわけです。ですから「3D格闘ゲームの象徴」となるキャラクターに出てもらいたい。まさに彼は“象徴”ですよね。

編: いつ頃から、このコラボ企画を進めていたんですか?

早矢仕氏: 1年くらい前です。

編: このムービーは「NINJA GAIDEN 3」に収録されるんでしょうか?

早矢仕氏: それとは別です。今のタイミングで発表したのは、格闘ゲーム同士のコラボレーションですから、そういったタイトルが出た同じ時期に盛り上げたいなと出させてもらったんです。そしてもうすぐ発売される「NINJA GAIDEN 3」の初回版には、「DEAD OR ALIVE 5α.ver体験版」がついてきます。格闘ゲームとしての我々の新しい挑戦をすぐに実際に体験できるようにと、ご用意しました。

編: 既にファンの方々は、色々な妄想が頭を巡っていると思うんですが……。

早矢仕氏: 今回のコラボレーションに関しては「VS」や「クロス」ではなく、あくまでも「DOA5」にゲストで来ていただくという形です。ただ……今のタイミングで発表して発売の9月まで何もない、ということはないと思うんです(にやり)。

編: 今の時点で、何か明かせる事柄はありますか? 次の大きなイベントまで、ちょっと間が空きますし。

早矢仕氏: そうですね……現役稼動中の「バーチャファイター」ですから、たとえばアキラを今まで遊んできた人が、すんなり入っていけるように、コマンドに関しても、極力「バーチャファイター5」のまま動かしています。「バーチャファイター」シリーズしか遊んだことがない人も、今回のアキラがキッカケで、触ってもらえれば新しい格闘ゲームの世界を感じてもらえるんじゃないかな、と思います。「NINJA GAIDEN 3」もそうですけど“大人のエンターテインメント”として、ゲームが大好きな方々がワクワクするようなゲームをこれからも作っていきたいな、と思います。

編: 了解いたしました。今後の続報にも心から期待しております!!


【スクリーンショット】

(C)コーエーテクモゲームス Team NINJA All rights reserved.

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(2012年 3月 19日)

[Reported by 豊臣孝和]