「ドルアーガの塔 ~the Recovery of BABYLIM~」スーパーバイザー遠藤雅伸氏インタビュー
原作者とプレーヤーという2つの視点からのアドバイス。今後はよりコミュニケーションに注力


8月18日収録


  株式会社ロッソインデックスは、現在正式サービス中のWindows用オンラインRPG「ドルアーガの塔 ~the Recovery of BABYLIM~」において、大型アップデート「大魔導の結界」を近日実装する。

 今回、実装に先がけ本作のスーパーバイザーを務めるモバイル&ゲームスタジオ取締役会長の遠藤雅伸氏と、本作のプロデューサーを務めるロッソインデックス企画運営部門ゲーム運営部の大槻林太郎氏にインタビューを行なった。

 遠藤雅伸氏はナムコ(現バンダイナムコゲームズ)で、「ドルアーガの塔」、「ゼビウス」、「グロブダー」を手掛け、現在でも様々なモバイルゲームやソーシャルゲーム、さらには玩具なども企画している。「ドルアーガの塔 ~the Recovery of BABYLIM~」では1プレーヤーとして参加し、さらにはギルドも設立している。遠藤氏のプレーヤーとしての意見は様々な点で活かされているという。

 今回実装される「大魔導の結界」、そして7月に実装された「キシュア」は“遠藤雅伸監修”として大きくアピールされている。新コンテンツにおいて、遠藤氏はどう関わってきたのか、また、プレーヤーとして遠藤氏はどのようにゲームを楽しんでいるのか、そういった遠藤氏の思いを中心に、今後の展開も含めて話を聞いた。



■ 遠藤氏の作る「ドルアーガの塔」の世界観に密接に関わる新コンテンツ

スーパーバイザーを務めるモバイル&ゲームスタジオ取締役会長の遠藤雅伸氏
本作のプロデューサーを務めるロッソインデックス企画運営部門ゲーム運営部の大槻林太郎氏
キシュアの村。隠れ里のようなイメージだという
巨大モンスターと戦いを繰り広げる「大魔導の結界」

編: 最初に遠藤さんは「ドルアーガの塔 ~the Recovery of BABYLIM~」のスーパーバイザーとして本作に関わっているとのことですが、具体的にはどういったことをなさっているのでしょうか。

遠藤氏: 主に世界観やストーリーです。アーケードの「ドルアーガの塔」は大きなストーリーの1部分を切り出したゲームでした。他にもいくつものストーリーが作られているのですが、アニメーション作品との連動の中で、改めて1つにまとめたストーリーを書き上げまして、それに合わせた本作のストーリーのすりあわせるために、アドバイスをしています。

 ストーリーは大まかなシノプシスを書き直した形になっています。僕自身「ドルアーガの塔」に関するゲームは4本作っているのですが、僕以外の方もいろいろなゲームを作っています。これは僕の4作目の「ザ・ブルークリスタルロッド the Destiny of GILGAMESH」(スーパーファミコン向け、1994年発売)がマルチストーリー・マルチエンディングを採用したため、「正史」がどんなものかわからなくなってしまっているからです。1つの話が1時間くらいで、合計48パターンのエンディングがあるため、受け取る人によって物語の終わりが変わってしまうものになりました。

 その中で最も皆さんが愛してくれるストーリーが「ギルが周辺を統一し、偉大なるウルク王になる」というもので、アニメもこの歴史を正当なものにしようと大筋は決めていました。しかし、アニメは「ドルアーガ」から80年後のストーリーを描くのですが、ドルアーガがギルに倒されて敵がいない。そこで、次に人気だったエンディング「ギル自身が新たな悪魔ドルアーガになってしまう」から、“ドルアーガの呪いでギルは善と悪に分離してしまう”という設定にし、悪のギルが強大な敵となっていく、という形にしていきました。こうしてもう1度作り出した設定を、誰にでも語れる1つの物語としてアニメの1期と2期の間に執筆しました。

編: 遠藤氏が世界観とストーリーを提示し、それに添って「ドルアーガの塔 ~the Recovery of BABYLIM~」は展開していくというところですね。一方、7月に実装された「キシュア」、そして近日に実装される「大魔導の結界」では、“遠藤雅伸監修”を前面に出しています。これは、、「ドルアーガの塔 ~the Recovery of BABYLIM~」 への遠藤さんの関わり方が変化してきたのでしょうか。

 

遠藤氏: それは僕を使ったプロモーション方法が変わったからじゃないですか、というのは冗談ですが(笑)。実際は、「キシュア」は僕のMMORPGに対する不満点を解消するために意見を提示し、実現したコンテンツです。僕自身は実装されるアイテムやテストスケジュールなどは公式ページで初めて知ることが多いという、プレーヤーに極めて近いスタンスです。コンテンツの企画などは運営・開発のスタッフがやっているのですが、「キシュア」は、「こういうふうになったほうがいいんじゃねえの」という意見を積極的にぶつけました。

 「キシュア」は神の血を引く人々が暮らす隠れ里で、ストーリー上からも「迷いの森」の先にある、聖域の先にある村でした。ストーリーの必然として、キシュアの村は作る必要がありました。ゲーム的には中心にプレーヤー達が基地とできる村があり、近いフィールドに各レベル帯の狩場が配置されています。これは僕自身の要望からそのような構造にしました。

 このゲームではいくつかのレベル帯で狩り場に行くまで時間がかかり、修理に帰るだけでもかなりの距離を歩かなくては行けない狩り場があります。この“つらさ”がなんとも言えず、そのための「中継地点を設けた」という意味合いもあります。もう1点は、初心者にも新マップを見てもらいたかったんです。これまでは新マップは高レベル向けユーザー向けのもので、限られたユーザーしか見れない。実装直後に多くの人に来てもらいたかったのです。

編: 遠藤さんは毎週ロッソインデックスで打ち合わせをしていると言うことですが、プレーヤーとしての不満を運営・開発側に伝える、という側面もあるのでしょうか。

遠藤氏: そうですね。しかし、プレーヤーの不満という部分では、僕は「遠藤雅伸★」というキャラクターでゲーム内でプレイし、街中では特別なスーツを着ています。そのときにユーザーから話しかけられるのですが、ほとんどがコンテンツに対する不満ですね。このとき、僕にしか聞こえない「ささやき」で送ってくる人が多いんですよ。

 僕はこの姿勢に反対でして他の人がちゃんとわかる形で話しかけて欲しいですね。「ささやき」で送られるメッセージに答えていると、周りの人達は僕が何をしているのかわからない。しかもやりとりがその人にしか伝わらない、というのは僕としてはできません。だから返事はシャウトでします。そうすると「ひどい」とか言われて、僕はGMじゃないですから、無視してしまうこともあります(笑)。僕に一方的に不満をぶつけてくるプレーヤーの「俺ルール」と僕がそのやりとりをシャウトしてしまう「俺ルール」がぶつかることもあります。それもまたコミュニケーションの1つじゃないかと。

編: 「キシュア」とともに、「大魔導の結界」も遠藤さん監修とのことですが、こちらではどういった意見を出したのでしょうか。

遠藤氏: 「大魔導の結界」へ向かう「エルブルズの岩穴」は“自らの能力を高める修行場”という意味があります。ここは“闇の力”がわき出す場所で、挑む者はそれを征することで自らの能力を高めるのです。MMORPGではその設定がまだ活かされていなくて、ユーザーを即死させる強力なモンスターが出てくるような場所になっていますが……。

 ここは、これから強大な力を持つことになる「黒のギル」が力を蓄えている場所でもあります。今回実装される、「冥(くらやみ)の裂け目」、「力の間」は己の力を高めるために闇の力と戦うという設定で追加していくコンテンツです。プレーヤーはあふれ出ている闇の力に立ち向かうことになります。

 ゲーム的な側面では「無謀な戦い」というのはやはり楽しい。以前実装したレベル69のマップでは、いきなりレベル100のボスが出てきて、プレーヤー達は力を合わせて立ち向かった。「みんなで倒そうぜ」というイベントが起きて、とても楽しかった。それで今回は、そういった大きなものに立ち向かう大規模戦闘コンテンツを実装したかったんです。

 もともと本作はプレーヤー達がお互いに争うPvPは好ましくないと考えています。日本人は他のプレーヤーを倒して持ち物を奪うという行為に何とも言えない罪悪感を持っている側面があり、逆にそういった殺伐としたものに匿名的に同調する部分もあるので、協力できる、仲良くできる方向性にした方が良いのではないかと考えました。普段は別々に戦っている人達が力を合わせて強大な敵に立ち向かう、というのは「人間的だなあ」と思うわけですよ。

大槻氏: コンテンツの具体的な説明をさせていただきますと、「冥の裂け目」、「力の間」は両方とも巨大ボスが出てきて、これにたくさんのプレーヤーが立ち向かう、という構図になります。「冥の裂け目」はいつもオープンしている場所で、数日間常にフィールドにモンスターがいる状態になります。一方、「力の間」は土曜の夜1時間しか開放されない場所でここに登場するモンスターと戦いを繰り広げることになります。

編: レベル20くらいから上級者まで参加できるというコンテンツとのことですが、レベル20のプレーヤーはどんな活躍ができるのでしょうか、モンスターになでられただけで死んでしまいそうですが。

遠藤氏: その感じが良いんじゃないですか(笑)。レベルの高い人達が正面切って戦っているところで、後ろからチクチク加勢する。その感覚がいいんですよ。

大槻氏: 今回のボスは今までなかった「範囲攻撃」をしてきます。このため苦しい戦いになるとは思いますが、位置取りが重要になってくるので、遠くから槍を投げるようなキャラクターが活躍できる場面もでてきます。

 ここの戦いはデスペナルティーがないので思いっきり参加して欲しいですね。一太刀でも与えることができれば、モンスターを倒したとき報酬が与えられます。デスペナルティーをなくして欲しい、というのも遠藤さんの要望が実現したのですが、報酬も「移動の手間を省いて欲しい」という遠藤さんの要望を活かしたものになっています。

 「ドルアーガの塔 ~the Recovery of BABYLIM~」では「ドルアーガの塔」に挑戦するのが大きな楽しみなのですが、ワープポイントは5階おきにあるため、例えば「14階に行きたい」となると10階から長時間かけて登っていかなくてはダメでした。今回入手できるアイテムは、7階や13階、といったさらに細かく階数を刻めるワープアイテムになります。また、ボスを倒したプレーヤーには「称号」が与えられます。

編: 一方「キシュア」についてはユーザーからどのような反応がありましたか。

遠藤氏: 「便利になりました」、「実装初日に新地域に行けて楽しかったです」といったことは言われました。後は「入口がわかりにくい」というのは僕のせいじゃないです(笑)。「キシュア」は感覚的にはエルフの隠れ里なんです、神の血が混じるラマン神を守る聖域を作っている人々の村なのです。ですが「隠れすぎだろ」という感じで、僕自身も入口見つけられずに山を登ってしまいましたからね。「あれ、まだねえの?」みたいな(笑)。ただ世界観的には合っていると思います。

 他には、レベルが離れたプレーヤーは出会いにくいですが、「キシュア」は冒険者の拠点として様々なユーザーが交流してくれていると思います。「レベルキャップまで上げているプレーヤー達をこれだけ見たのは初めてだ」という意見も聞きました。




■ オフ会にも参加!? 積極的にユーザーの輪に入る遠藤氏のプレイスタイル

遠藤氏は、時には冗談も交えたぶっちゃけトークを展開する。オフ会にも積極的に参加する気さくさは魅力的だ
ゲーム内での遠藤氏のキャラクター「遠藤雅伸★」。この他にも何人ものキャラクターでプレイしているという

編: 遠藤さんはプレーヤーとしても「ドルアーガの塔 ~the Recovery of BABYLIM~」をプレイなさっていますが、本作の感触はいかがですか。

遠藤氏: 「レベル上げがめんどくさいなぁ」、「塔の敵が強すぎてやんなっちゃうなあ」というのはありますね。特に塔の敵は強すぎですね。もう2段階くらい敵が弱ければ楽しく攻略できると思うのですが、現在の塔は「いかに効率よく敵から逃げるか」というゲームになってしまっています。

大槻氏: 難易度の高さは、当初の開発の狙いでもありました。5人のパーティーが力を合わせることを前提としています。しかし、「5人のフルパーティーを揃えるのが大変」という現状があります。今後は塔の戦闘難易度を下げる方向性で検討しています。

遠藤氏: 「別の塔」でもいいですけどね。「裏ドルアーガの塔」といったものもありましたし。

編: 遠藤さんはゲーム内でギルドも作って活動しているということですね。現在は7つのギルドになっているとのことですが、どういった活動をなさっているのでしょうか。

遠藤氏: ギルドは、組織の基本だけ作って、後はメンバー任せにしました。リーダーの任命の決まりの提示はしたのですが、後はメンバー達が動いています。レベル20以上のキャラクターで、アクティブにギルドチャットにも参加する人で、リーダーをやっていない人はとにかくやる、というのが決まりです。

 このため、リーダーの入れ替わりも早いです。メンバーのみんなが「そろそろ○○はリーダーじゃないの?」、「いやそんなまだ僕は……」、「そういう奴がリーダーをやらなくちゃ意味がねえじゃん、がんばれよ」といったやりとりがあって、リーダーが変わっていっています。僕自身がいないところで回っています。

 ギルドは最大100人しか入れないので、人数が増えてきて現在の7つのギルとなりました。7つのギルドのうち、4つがメンバーの巡回用に使われていて、アクティブなメンバーがそこに動くようにしています。リーダーはアクティブな人が選ばれるので、初心者を助けるなど一生懸命動いてくれます。

 リーダーができる仕事は、ギルドメッセージを書き換えることと勧誘をすることだけです。リーダーシップが目的ではなく、ギルドのために色んな事をするのが目的なのです。ギルドのことを考えて活動することで、はじめてギルドというものがわかってくる。そういう形でリーダーが変わっていっています。

 現在の僕はギルドマスターでもなく、ログインしてメンバーに声をかける程度です。コンテンツへの要望も言われるんですが、そこは「知らない」と。「こんどは熱いお茶が一杯欲しいなぁ」なんて発言すると「おっ、マジですか今度そんなアイテムが実装されるんですか!」、「わからん」といったやりとりも楽しんでいます。ゲームに対しての要望が盛り上がるときもありますが、そういったことを話すのはオフ会ですね。

編: 遠藤さんがオフ会に参加するのですか。

遠藤氏: 僕も行ける限りは参加します。オフ会も多いですね。7つあるので頻繁にオフをしているところもあります。コミケの機会に集まったり、現在の全体のギルドマスターが名古屋なので名古屋でやろうか、大阪もいいな、といった話もしています。

編: オフではどんなことを話されるのですか?

遠藤氏: 信じられないことに、ずーっとゲームの話しかしないんですよ(笑)。しかも今の話しかしません。「あれどうなってる?」、「素材の確率下がってない?」、「あいつのレベルならやってくれるかも」みたいな。僕自身はそこまでゲームに詳しくないので「そうなんだ」と(笑)。

編: 名前を出してゲームをプレイしていると、強いアイテムをプレゼントされたり妙に“優しく”されませんか。

遠藤氏: 優しくされてもつまらないんですよ。また、文句を言えなくなってしまう。最近新しい武器にオーブをつけたとき、これが付かない。「2,000円かけてこの確率はどうなっているんだ! やったことがあんのかお前らは!」と運営に文句が言えるのは、ちゃんとプレイしているからです。

大槻氏: (苦笑)

編: 遠藤さんは何キャラクターぐらいお持ちなんでしょうか。

遠藤氏: いくつもキャラクターを持っていて、その中でレベルが40以上のキャラクターを3キャラクター持っています。結構僕とパーティーを組んだ、というユーザーさんも多いと思います。「コメントボード(パーティー掲示板)」ができてパーティーが組みやすくなりましたね。特別なスーツを着れる「遠藤雅伸★」でもプレイしています。ただスーツは狩りに行くときは脱いでいますね。戦闘中に話しかけられたりすると他のメンバーに迷惑がかかりますので。

編: 現在は1日どのくらいプレイしているのですか。

遠藤氏: 毎日というわけではないですが、集中するときには3時間とかプレイすることもあります。それは、3時間の経験値アップアイテムがあるので(笑)。1時間アイテムを作ってくれと言う声が最近また大きくなっているので、対応してもらいたいですね。

編: 課金アイテムも積極的に使われているようですが、以前はアイテム課金型のビジネスモデルに批判的な意見をお持ちだったと思うのですが。

遠藤氏: みんなが使っているならば、そのくらいのお金をかけてプレイしないと意見が言えない、というところもあります。ただユーザーがお金をかけるガチャにはお金は使わず、キャラクターや武器の強化、消耗品にお金をかけています。3キャラ分なので結構お金はかけています。

編: 名前を出されてオンラインゲームをプレイをしている、「ゲームクリエーター」というのは、遠藤さん以外あまりきかないですね。

遠藤氏: 自分の作品をけなされるとへこむクリエーターが多いからかもですね。それに対して立ち向かう強さが必要なのかもしれないです。

編: ただ、スーパーバイザーという立場として、十分すぎるほどに遊んでいる印象ですが、ここまでハマっている理由は何でしょうか。

遠藤氏: やはりコミュニティーだと思います。話があったり、同じ事に興味があったりで話をします。ゲームの開始時は大学の教え子が誘ってきたりもしたんですが、最初はあまりやっていなかったのですが、やはりギルドを作ってからですね、積極的にプレイするようになったのは。

 ギルドができてから、組織をどうしていく、ある程度組織ができたら僕はやめるというのも最初から決めていました。1人に頼っているような組織は弱いので、ギルド自体を辞めることは決めていました。離れて、ギルドがきちんと回るようになってから戻ったんです。

 5人の女キャラクターを持っているのですが、「5人いるのに4姉妹」というフレーズが気に入っています。これはアニメで「ドルアーガ参人衆だ」というキャラクターが4人いるんですよ(笑)。これが第1話に登場して面白かったんです。

編: 何故女性キャラクターをたくさんお持ちなんでしょうか。

遠藤氏: 女性の方がカリスマ性が高そうだから、かわいらしい服も多いですしね。「結局みんなエロが好き」というところはあると思いますね。いろいろ考えてアイテムを出しているのですが、「危ない水着」とかの方が売れちゃったりする。

 アバター要素が進みすぎるとコンテンツが「ゲーム」というところからから離れてしまうけれども、ゲームじゃない楽しさの部分で世界観がどうだ、というのは言っても野暮なので。この感覚は極めて日本的なのかな、という感覚はあります。「小汚いオッサンがいかつい格好をして出てくるのを否定する」というのが日本の美学のような気がします。

 とはいえ、メインは男性キャラクターで、自分なりの格好良さを追求しました。髪の毛は緑で髪型も「キシュア」の住人と同じにしています。皆さんにとっては違和感があるかもしれないですが、僕にとっては「ラマン神の血を引いている証」みたいなことも思っています、ロールプレイしている部分ですね。

編: 遠藤さんは、1プレーヤーであり、原作者、運営サイドの人間、そしてギルドの「僕らの仲間」という、すごく複雑な立場でゲームしていますがこのことに関して、どういった感想をお持ちですか。

遠藤氏: 通常のプレーヤーと感覚が違うのは「やっちゃいけないことが多い」というところでしょうか。他のプレーヤーに暴言を吐いてはいけない。そこは気をつけています。逆の部分では「運営ブログを書いているやつは絶対MPK(モンスターをぶつけてのPK)してやる」みたいなことは言ってます。そうすると「言って良いことと悪いことがある」と2ちゃんねるに書き込む人もいて、2ちゃんでは平気で反論しますが(笑)。ゲーム内では運営に迷惑はかけないように気をつけています。

編: 「ドルアーガの塔 ~the Recovery of BABYLIM~」は遠藤さんにとって、「新しい遊び場」という感じなんでしょうか。

遠藤氏: そうですね。MMORPGはいろいろプレイしています。「FINAL FANTASY XIV」がプレイできる環境ができたらプレイしたいと思います。ただ、高性能なPCを買い換えてまで、という気がないのが現状です。

 「ドルアーガの塔 ~the Recovery of BABYLIM~」は開発・運営側に「高性能パソコンに対する考え方の違いに気がつけ」というところから意見を言いました。低スペックのPCで動かなくては仲間が増えないじゃないですか。そういう最初から顧客を絞るようなビジネスはどうなんですかね。

編: 「ドルアーガの塔 ~the Recovery of BABYLIM~」ではパーティーが組みにくい、という問題も出てきていますが、これに関してどう思われますか。

遠藤氏: 「コメントボード」ができて、僕自身は組みにくかったと言うことはありません。ただ、ソロ指向の人は多いですね。アニメの主役だったガーディアンの人達や、効率を求めるローグ職の人達もいます。

編: ユーザーからは職業バランスが取れていないのではないか、という声も大きいようです。

遠藤氏: それはあります。名前を「ローグ・オンライン」に変えた方が良いんじゃないかとか(笑)。しかし、プレイしていると、そこまで職業のバランスが取れてない、というのは違うんじゃないかと思っています。たしかにやっていると他の職業がよく見えてくる部分はあります。

 それはプレーヤーにとって、職業に対するこだわりがあるんだと思います。そのこだわりは大事にしてあげればいいと思うんですけど、「自分でやるんなら1つで行くや」とも思いますね。今、自分で作っているゲームは職業はありません。携帯電話向けコンテンツで、WEB・Flashベースでコンテンツを作っています。




■ コミュニケーションを活性化させるためのコンテンツ作り、ドルアーガの塔は60階では終わらない?

コンテンツの仕様資料を見る遠藤氏。ゲームの情報はプレーヤーと同じ公式ページの告知などで知ることも多いという

編: 「ドルアーガの塔 ~the Recovery of BABYLIM~」の体験は、今後の遠藤さんの活動にどのような影響をもたらしそうですか?

遠藤氏: 2年近くプレイして、勉強をさせてもらいました。影響という意味では何でもそうじゃないですか。ツールや道具は使えばわかる。1つやれば他のこともわかってきます。「選択肢が少なければ少ない方が良い」というのが今のライトゲームの流れだと思っています。

編: 2006年に弊誌がインタビューをしたときには「ボーイミーツガールをテーマにしたオンラインゲームを作りたい」とおっしゃっていましたが、それは今後も挑戦していかれるのでしょうか。

遠藤氏: やはりそのテーマは好きですね。「ドルアーガの塔 ~the Recovery of BABYLIM~」でも、女性もプレイしていて、男性メンバーが仲良くしていたりするのですけど「シュートを打たない」(笑)。そこでやきもきするところもありますね。

 今度CEDECで「ライトゲーム」に関して話すのですが、これまでの体験でかなりわかってきたという感覚はあります。女性に受けるもの、女性が面白いと思うものは何か、に対してわかってきた。それに対して男の子がどこをつまらなく思うか、というところもわかってきました。

 CEDECではゲームデザインを語ります。「ゲーム業界は冷えている」と言われることがありますが、ゲームのプレイ人口全体は現在でも増加している。ただゲームをプレイする場所が変わってきている。ゲーム業界が統計を取っているところとは違うところでユーザーが増えている。だからこそその話をしなくてはいけない。オンラインゲームも、携帯も、Facebookアプリも手掛けた人間、というところで今回僕に話が来たんです。

 ソーシャルゲームもプレイしたり作っています。ソーシャルは面白いですよ。人と人のプレイが面白いです。やはり知っている人とプレイしているのは面白いですね。こちらはゲームデザイン的なこだわりなく楽しんでいます。人気の高いものをプレイするスタイルです。ゲームデザインへのこだわりは他のところでやっています。

 そういう意味で現在オンラインゲームで作りたいのは、「ボイス系」ですね。ボイスチャットのような、声を出してプレイできるオンラインゲームです。

編: 実際に声を出すオンラインゲームですか?

遠藤氏: そうです。その人の声がわかる、文字のチャットは信頼性や密度が低く、伝えきれないものがある。それならボイスでコミュニケートしたいと思っています。プラットフォームなどはまだ未定ですが、例えばドライブゲームでも、ボイスチャットがつけばかなり面白いと思うんですよ。現在はXbox Liveが魅力ですね。ボイスはニュアンスが伝えられ、そして大事なのは「男女の区別がはっきりわかること」ですね。

 例えばボイスのチャットルームでも、女の子の声が聞こえるだけで全然集まりが違って来るじゃないですか。「コミュニケーションがゲームより上位にある」というテーマはここ数年で僕が“決めた”ことです。数年前、立命館の細井浩一教授に「コンテンツはコミュニケーションを凌駕できますか」と聞かれたとき、「ゲームでコミュニケーションの楽しさを超えるものを作りたい」と僕は答えてがんばってきたんですが、がんばるほど「コミュニケーションの方がいいや」と思うようになって、「コミュニケーションがゲームより上位にある」いう結論に達しました。

 だから今は、コンテンツがコミュニケーションの楽しさを加速する方向性に持って行きたい。その方がお互いに幸せなものがあると思っています。その方がコンテンツが育つんです。MMORPGではオフ会でずっとゲームの話をしているように、ゲームによって共通のコミュニケーションが作成されている。そういうものがすごく大事で、例えばデートで映画を見たとき、ドライブをしたとき、その共通体験が2人の距離を縮めるわけです。ゲームもそういうものであると思っています。

編: MMORPGでユーザーが集まるのは「そのゲームが好きだから」ですよね。ユーザーを惹き付けるためにはゲームは重要なコンテンツだと思うのですが。

遠藤氏: それは切り口ですよね。ゲーム性がもっと低くても、話題を維持できる“濃さ”があれば、それはコミュニケーションを維持できるツールになると思っています。濃さに関しては、男の子と女の子で違いがあって、男の子は「数字」です。何%上がるとか、力のパラメーターいくつとか、ダメージどのくらいとか攻略的な話ばかりです。

 女の子的には数字はどうでも良くて、重視するのはかわいらしさとか、数字に出ないものです。この2つをできるだけ同じ線上に並べることができれば、素晴らしい「ボーイ・ミーツ・ガール」のコンテンツになると思うんです。コミュニケーションの密度を上げるために、ボイスが必要だと思います。

編: 声が出せない人は、特に女性に多いのではないかと思います。

遠藤氏: それは話の内容、共通の話題で生きてくると思います。女の子同士だと行けるんですよね。「女性専用車両」を作ると、女の子は集まってくる。そこから強い子が男の間に出てくる。反対に女性専用車両に男が紛れ込むのも面白いかなとも思っています。階層的なルームを作るのもアイデアの1つです。そういうのを今後やっていきたいですよね。

編: 「ドルアーガの塔 ~the Recovery of BABYLIM~」に話を戻したいと思います。遠藤さんは今回2つのコンテンツを監修したわけですが、今後はどういった形で関わっていかれるのでしょうか。

遠藤氏: 新しく設定した、ギルやカイの話が伝わる形で提供していきます。どういった形になるかは、開発側と決めていきます。設定上の質問に対して答えていくという感じですね。断片的な形にはなると思いますが、ギルとカイが何をしているかが、様々なストーリーで語られていきます。様々な質問を開発側がぶつけてきますね。

 遊びの幅を広げるという意味では、コミュニケーションをより取りやすくして欲しいという要望は出していきます。多くのユーザーが集まるコンテンツの他、ギルドが集まれるギルドハウスや、友達を呼べる自分の部屋というものがあっても良いですね。また、イベント用のフィールドなどもあればいいと思います。この他、きちんと管理された安全な掲示板もあっても良いと思います。

 スーパーバイザーとして今あるものにどうやって付け加えていくか、制約がある仕事が面白いという部分もあります。最初から僕が作るならこんな大きなマップにしない、といったところもありますが……狩り場まで行くのに寝オチしてしまう事もありますね。

大槻氏: ゲームのスケジュールとしては「キシュア」の次のマップ「エデール峠」を11月頃に予定しています。こちらも「キシュア」同様、幅広いプレーヤーを対象にした場所になる予定です。特徴的な建造物を回っていくような新しいクエストも用意する予定です。こちらも遠藤さん監修となっています。

 この他、これまで実装されていなかったレベル60以上のスキルを順次実装していく予定です。こちらはかなり遅れた形になってしまったのですが、これらのスキルにより職業間のバランスも変化していきます。

編: 今後、遠藤さんは「ドルアーガの塔 ~the Recovery of BABYLIM~」をどのようなオンラインRPGにしていきたいですか。

遠藤氏: きりきりと、殺伐とした、上へ上へ、ユーザーを引っ張っていくだけのゲームにはしたくないですね。ドルアーガの塔の59階では1パーティーでは戦えないほどに強い敵を出したいですし。そこまでよりそこから先が面白いので関わっていきたいですね。塔も60階で終わりにしたくありません。100階や、200階でも。

 「ドルアーガの塔」が作られたときは、サンシャイン60が高い建物の代表だったので、60階にしたんです。現在は1,000メートルを目指すような建物の計画もある。スカイツリーも630メートルとかいってる。アニメを作るときにもまず言いたいことがある、といって「塔の高さを3Km位にしてください」といったら、「ええっ?」と驚かれました。階数でなくても良い、外の光が入る明るい場所にして欲しいと要望を出したんです。現在のゲーム内の塔は初期のイメージそのままですが、60階以降は大きく変化する可能性もあります。

大槻氏: 現在の塔はレベルキャップの半分の階まで、といったシステムの制限に囚われている部分もあります。どこかのタイミングで見なおしても良いと思いますが、まずはモンスターの強さを改善し、エニグマを増やして、みんなで解いたりとか、ゲーム的な楽しさをもっと詰めていきたいです。今はスピード上げて一気には作れませんが、いつかは登場するであろう59階、60階はユーザーの期待に応えられるものにしていきたいと思いますね。

遠藤氏: ユーザーからエニグマを募集するのも良いと思います。後は、新規のユーザーさんが初期から感じている塔を昇る上で感じるを「何とも言えないあのつらさ」を感じないようなシステムが欲しいですね。マップは変えたくないけど、快適さは求めていきたいですね。レベルキャップに行くまでのつらさを何とかしたいとは思っています。

 塔が本来1番面白いコンテンツなのに、敵が強すぎるとか、時間がかかりすぎるとか、問題が多い。「今回はどことどこの階をいこう」と気軽に楽しめるような、もっともっと謎解きも増やして……そんな方向性にこのゲームを進ませていきたいと思います。

 世界観、ストーリーも、アニメはパラレルワールドという設定ですが、80年後の世界を描いていると言うことで、設定やストーリーなどで近づけていきたいと思っています。ストーリー的なところでも組み込んでいきたいです。

編: 最後にユーザーへのメッセージをお願いします。

遠藤氏: 「FINAL FANTASY XIV」が動かないユーザーはぜひ「ドルアーガの塔 ~the Recovery of BABYLIM~」をプレイしてください、というのは冗談ですが、「グラボって何?」というようなユーザーのためのゲームであり続けたいと思います。コミュニティーや、共通の体験をもっと強化できるような、ライトゲーマーのためのゲームとして「ドルアーガの塔 ~the Recovery of BABYLIM~」をやっていきたいと思います。

大槻氏: コミュニティー部分をやはり強化していきたいとは思います。遠藤さんが参加することで軸となるストーリーや世界観が強化されていき、軸があることで共通の体験が生まれやすくなりますので。ずっと時間がたってから「あの時一緒に遊んで楽しかったよね」とプレーヤーさん達に言ってもらえるようなタイトルにしていきたいと思います。

(C) NBGI / イズミプロジェクト All Rights Reserved. Published by ROSSO INDEX K.K.

(2010年 8月 30日)

[Reported by 勝田哲也]