インタビュー

最難関「アビスレイド」到来!「ロストアーク」、嶋田Pに聞く1か月の歩みとこれから

年内は毎月大型アップデート。どこまでもやり込める最新MMORPG

【ロストアーク】

開発元:Smilegate RPG

運営元:ゲームオン

ジャンル:MMORPG

プラットフォーム:PC

価格:基本プレイ無料(アイテム課金制)

 サービス開始1か月を迎えるPC向けMMORPG最新作「ロストアーク」(LOST ARK)。年内のロードマップも公開され、最初の大型アップデートとして最難関コンテンツ「アビスレイド」の実装日も10月28日と明らかになった。

 「ロストアーク」は、韓国Smilegate RPGが開発を手掛けるMMORPG。韓国では約2年間サービスを継続しているタイトルだが、日本では「オープンサービス」として2020年9月23日よりゲームオン運営のもと提供を開始したばかりの最新作となる。見下ろし型の視点(クォータービュー)を基本とし、手に汗握るボスとの戦いや仲間との協力プレイが楽しめることはもちろん、生活コンテンツにハウジング、アチーブメント型の収集要素も多数備える骨太タイトルだ。

 10月21日に、年内のアップデート予定を示すロードマップが公開された。今回、サービス開始1か月というタイミングで、「ロストアーク」国内運営の指揮を執るゲームオン・嶋田真人氏に、「ロストアークのこれまでとこれから」についてお話を伺った。なお、筆者自身同作にどっぷりハマっていることもあり、本稿はかなり玄人向けのテイストになってしまうことはご了承願いたい。その分重要な話題も出てくるので、既存プレーヤー諸氏には是非ともご回覧頂きたいところだ。

今回お話を伺ったゲームオンの嶋田真人氏。同社運営のMMORPG「RED STONE」運営プロデューサーを担い、モバイルタイトル部門を手掛けた後、「ロストアーク」運営チームのリーダー(プロデューサー)に就任

サービス開始1か月の手応えを嶋田氏に聞く

 「ロストアーク」の日本サービスが9月23日に開始され、約1か月が経過した。サービス開始に先駆け制作・公開されたCMは、総再生回数が300万回(※インタビュー時。23日時点では430万回を超えている)を突破。“あの頃のMMORPG”を意識した映像となっており、評判も上々なのだという。「青春」を掲げる最新MMORPGの手応えを聞いた。

【[LOST ARK公式]この世界は、青春みたいだ。[Pmang]】

業界初(?)サーバーダウンや緊急メンテナンスがない順調な滑り出し

――まずはサービス開始1か月、おめでとうございます。いちプレーヤーとしてはサーバーダウンなどで遊べない時間がほとんどなく、初動はすこぶる順調にうかがえました。運営チームとしては1か月間サービスを提供しての感想はいかがですか?

嶋田氏:ありがとうございます。これまでいくつかのタイトルを手掛けてきた経験上、MMORPGのサービス開始直後にはトラブルはつきもので、何らかの致命的なバグが発見されて緊急メンテナンスもやむなしというものです。

 幸いなことに「ロストアーク」の場合は致命的なバグというのはこの1か月、全くと言っていいほどありませんでした。サーバーが重くなったり、プレーヤーの皆様のアイテムがロストしたりということもここまでほとんど報告が上がっていません。臨時メンテナンスも計2回実施させていただきましたが、いずれも事前告知に十分な時間を取ることができ、点検内容も軽微なもので済みました。大きなトラブルがないというのは、運営チームとしても嬉しく思っています。

――「カオスゲート」など千人単位で人が集まるゲーム内イベントもありますが、あれだけ人口を集中させてもサーバーに異常がないのはすごいですよね。

嶋田氏:エリアをチャンネルで分けて負荷を分散する設計が効いていますね。「ロストアーク」では1つの地域を複数のチャンネルに区切って1エリア内に滞在できる人口を制限しています。一定以上の人口がいる場合に新しいチャンネルが随時生成されるという仕組みですね。日によっては1地域に100個以上のチャンネルが生まれていることもあります。

 1箇所に人が集中してしまうと、サーバーはもちろんプレーヤーの皆様のPCにも限界がきてしまうので、チャンネルによって分割する方式をとることで千人規模の大型コンテンツもストレスなくご利用いただけるようにしています。もちろん、お友達同士で集合しづらいなどご不便をおかけする点もありますが、そこはパーティを組んで空いたチャンネルに移動頂くなどで対処いただければと思います。

毎晩複数回開催されている大人数イベント「航海協同」。今作のテーマの1つである航海を代表するコンテンツの1つで、プレーヤー同士で協力して漁を行なったり時にはレースで争ったりと様々なミニゲームを楽しめる。チャンネルあたり約50人程度が参加可能だが、この回は第7チャンネルまでが満員で全21チャンネルが生成される盛況ぶり

――7月のCBTからサービスインまで2か月と期間が空いた印象です。この間には何をされてたんでしょうか?

嶋田氏:CBTの時点でレベル制限などを設けずフルオープンで比較的長い期間テストを実施したというのが今回ユニークな点です。CBTからオープンサービスに移行するには、CBTと同じ実装内容ではいけないということで、新規クラスの追加を含めたコンテンツの拡充と調整を行なっていました。

――サービス開始にあたって苦労された点はありますか?

嶋田氏:個人的にはCBT準備段階のテストプレイが一番大変でしたね。私自身、ゲーム内容を把握するためにレベル1から50までのテストプレイをトータル20回ほど行ないました。とにかくコンテンツが多いゲームなので、スタッフ一同現在進行形で全体の把握に努めています。

 ほかにはローカライズも大変な作業でした。社内には韓国語ネイティブで構成された専任の一次翻訳チームがいて、彼らが作った文書をさらに校正するチームもいます。とにかくワード数が多かったのですが、日本語としても自然でありながら随所にジョークもちりばめて面白く仕上がったと思います。

 ローカライズに含まれますが、ボイスの収録も非常に大規模な作業になりました。収録は音声スタジオにお願いしているのですが、ボイス収録が必要なキャラ数が約5,000人もいるので大変でしたね。

今作のボイスはパートボイス制で一部ムービーなどはフルボイス。メインキャストには梶裕貴さんや中村悠一さんなど有名声優も出演する。町中を歩いていると名も無きNPCが声をかけてくるが、音声付きなので町の印象が耳に残りやすい。中にはストーリーの進行状況によってボイスが変化する名無しNPCもいる
メインストーリーはもちろん、サイドクエストやNPCの好感度クエストといった細かなものでもフルボイスのカットシーン演出が仕込まれていたりする。普段は俯瞰視点で細部を確認しにくいが、カットシーンでは3Dグラフィックスを生かした美麗な映像が見られる

――そこまでローカライズに力を入れた理由はありますか?

嶋田氏:私がテストプレイで最初に「ロストアーク」を遊んだとき、韓国サーバーだったので当然言語はすべて韓国語なんですが、映像を見てるだけでもストーリー展開がなんとなく分かるんですよね。MMORPGとしての各コンテンツの完成度はもちろん、RPGとしての演出が素晴らしい。それは開発元のSmilegate RPGの技術力の高さで、「傑作に出会った」という感想を持ちました。

 こんなすごいゲームをMMORPGファンだけでなく、より多くの人に伝え、提供するのが我々のミッションです。普段スマートフォンやコンシューマ機でしかゲームを遊ばない一般層にもこのゲームを知って遊んでもらいたいという思いでローカライズには多くの力を注ぎました。

 さらにCMは一般層にも広く認知してもらえるようなプレーヤー視点の感動を伝えると共に、今はMMORPGをやめてしまったような人にも刺さる“あるある”ネタを仕込んでみました。映像自体かなり好評いただいていて、CMを見てゲームを始めたという声も聞きますね。

――選んだクラス(職業)によって行なえるアクションが大きく異なる本作ですが、1か月経ってクラス人口の分布はいかがでしょうか?

嶋田氏:オープンサービス開始前の時点では、CBT時に未実装だった4つの新クラス「デストロイヤー」、「ソウルマスター」、「アルカナ」、「ホークアイ」の人口が増えると予想していました。サービス開始から1か月経った現在、アクティブプレーヤーの半数程度がレベル50に達している状況です。クラス人口の偏りとしては、予想していたよりも大きな偏りはなく、極端なクラス人口差は出ていません。

 新規4クラスに関しては、低レベル層ではたしかに人口が多いです。新クラス故に試しに作ってみた、というプレーヤーが多い様子ですね。

オープンサービスではCBTで選択可能だった8クラスに加えて4クラスが新たに追加。全12クラスが選択可能

――オープンサービス当日から課金アイテムが解禁されました。課金ユーザーの比率はどうでしょうか?よく売れているアイテムなどありますか?

嶋田氏:想定よりも多くの方に課金アイテムをご購入頂いているという印象です。「ロストアーク」はゲーム内にゲーム内通貨と課金通貨の取引が行なえる仕組みを設けていたり、課金をしなくても遊べるコンテンツも豊富にあるため、そこまで課金が必須というタイトルではありません。

 そんな中で、よく購入されているのがアバターですね。オープンサービス記念ということで、10月末までの期間限定で「一騎当千」シリーズを日本限定で販売していますが、これが特に人気を集めています。日本でしか実装されていないこともあり、“出来が良い”ということでSNS上でも注目を集めています。

オープンサービス記念アバター「一騎当千アバター」。クラスによって見た目が異なり、各3色のカラーリングが用意されている。アバターには性向値というステータス向上効果が設定されているが、ゲーム内でドロップするアバターアイテムでも同等の効果を得られるため、基本的には見た目のカスタマイズ要素

――アバター関連で言うと、プレーヤーキャラクターはもちろんNPCにもアバターを買い与えることができるのは面白いですよね。しかも自分の領地に招くことができて、自由に配置できたり。

嶋田氏:一部のNPCには好感度が存在していて、最大まで上げるとプレーヤーの領地に配置することができるんですが、やり込み要素の1つですね。領地に椅子やベッドを配置すると、その上にNPCを座らせたりもできるので、撮影してSNSに投稿数という遊び方もできます。

――おすすめのNPCはいますか?

嶋田氏:個人的にはアルデタインのサーシャを推しておきます(笑)。今後アップデートで好感度NPCが増えたり、すでに登場しているけど好感度対象じゃないNPCに好感度が追加されたりということもあるのでご期待ください。

キャラクターレベル50を達成しメインクエストをある程度進めると領地を与えられる。自分の領地では各種アイテムの製作やハウジング機能を利用でき、家具や施設はもちろん好感度を高めたNPCやプレーヤーキャラクターも自由に配置できる。さらに一部のNPCにはアバターが用意されており、着せ替えまで楽しめる。領地に友人を招いて晩餐会を催すことも可能だ
嶋田氏イチオシのNPCはアルデタイン財務長官のサーシャ(CV:森なな子さん)。筆者も全力で推している。交流を深めていくと仕事モードとオフの時のギャップが素晴らしく、Sっ気があるところもいいのだ

航海コンテンツは難易度の改善も検討。不正対策は鋭意実施中

折角の機会なので、プレーヤー目線での改善点・疑問点も伺った。

――レベル50になると画面左上にタイマーが追加されて、時限解放系の航海コンテンツが解放されますよね。ほとんどのコンテンツは開始10分前の時刻が表記されているんですが、ものによって3分前だったり開始時刻ぴったりだったりして、混乱することがあります。ここはどうにか見やすく改善してほしいと思っています。

嶋田氏:タイマーよりもさらに上、現在時刻が表示されているバーの中に「カレンダー」があります。こちらからアラートの時刻を「開始時」「5分前」など調整できるので個人的なカスタマイズに関してはこの機能を利用いただければと思います。「カレンダー」自体はログイン時にも表示される機能です。

ゲームログイン時に表示される「カレンダー」機能。日によって開催されるイベントが異なる本作で、日ごとのイベント内容を事前に確認、必要に応じてアラートを設定することができる

――レベル50未満のサブキャラクタープレイ時に日程が確認できないというのも少々困った点です。アラートを見て早めに現地に着いたので、隙間時間でサブキャラの育成を進めようとして、そのまま日程を忘れてしまうということが多々あります。

嶋田氏:たしかに不便ですね。遠征隊単位で機能がアンロックされている場合にはタイマー表示を有効化するなど、オプション機能として対応可能か開発チームと検討してみます。

――さらにスケジュール関連で、「プロキオンの羅針盤」というコンテンツがミニマップ下に用意されていますが、この中の一部コンテンツがカレンダーやタイマーに載っておらず見落としやすくなっています。具体的には「死の峡谷」と「フォルペ」がタイマーに表示されません。

嶋田氏:航海コンテンツはいろいろと種類ごとに分かれていたりするので、そこで表示の統一感がなくなっている場合もあります。こちらも要検討ということで対応させていただきます。

見落としがちな「プロキオンの羅針盤」。キャラクターの戦闘レベルが50に達すると、初期設定でミニマップ下部左から2番目のアイコンよりアクセスできる。「冒険島」関連のスケジュール・報酬内容は主にここに表示され、通常の航海コンテンツよりも良い報酬が提供される。毎日14時・21時にランダム開催。日程が合えば可能な限り参加すべし

――プレーヤーの人口が多すぎて達成難度が跳ね上がっているコンテンツが出てきています。たとえば「新月の島」が顕著で、ここ数日は狩猟対象のウサギよりもプレーヤーの数が圧倒的に多い様相です。難易度の緩和などは検討されてますか?

嶋田氏:一部の島はチャンネル移動を任意に行なえない仕様になっています。もちろん不便なところは直していく方針です。実施の可否についてもお約束はできませんが、開発元とは検討していきますので、そのうち改善されるかもということでご期待いただければと思います。

――また航海コンテンツについて、チュートリアルで体験した「難破船」をそれ以来見かけていないのですが実装されてるんでしょうか。港のメニューには存在する「幽霊船」も見かけないので実装されているのか気になります。

嶋田氏:「難破船」は現在実装されていますが、まだ相当レアな状態です。「幽霊船」はロヘンデル時点から実装されますので、12月のロヘンデル大陸アップデート時点で確認できます。

ゲーム内の船舶メニューからプレーヤーが利用可能な船舶として「幽霊船エイボン」の存在は示唆されている。「幽霊船」との遭遇がキーとなるようだが、いつか乗れる日が来るだろうか

――プレーヤーとしては、不正行為への対策も気になるところです。ある程度人気のMMORPGだと、ゲーム内通貨の販売業者の宣伝で広域チャットが埋め尽くされているという状況を度々目の当たりにしてきました。「ロストアーク」では、ゲーム内でそういったノイズを見かけませんでした。こうした不正行為・迷惑行為の対策には力を入れられているんでしょうか。

嶋田氏:具体的にどうしているというのは申し上げられませんが、監視と対処は精力的に行なっています。ゲーム内マネーやアイテムの流れを見て、状況を観察しつつ、適宜対処を行なっている状況ですね。力を入れている部分ではありますので、チームの頑張りの結果として快適だと言って頂けるのは嬉しい限りです。今後も注力して参ります。