インタビュー

発売迫る「ファイアーエムブレム無双」について、早矢仕プロデューサーと臼田ディレクターに直撃

今だから言える秘話や、開発者の“心のキャラクター”も明らかに

9月21日~24日 開催

会場:幕張メッセ

プロデューサーである早矢仕洋介氏(右)と、ディレクターの臼田浩也氏(左)

 9月28日に発売を控え、東京ゲームショウ会場でも大人気の的となっている「ファイアーエムブレム無双」。そのプロデューサーである早矢仕洋介氏と、ディレクターの臼田浩也氏に話を聞く機会を得たので、制作のきっかけから2人のイチオシキャラクターまで、あれこれと伺った。発売前に一読すれば、より本作を楽しめること間違いなしだ。

【「ファイアーエムブレム無双」TGSトレーラー】

プロデューサーとディレクター、それぞれのイチオシキャラは?

――そもそも、「ファイアーエムブレム無双」制作のきっかけは何だったのでしょうか?
早矢仕氏:我々、2年前に「ゼルダ無双」というタイトルを任天堂さんと一緒に開発し好評を得た中で、次の新しい取り組みとして「ファイアーエムブレム無双」はどうですか? という提案をさせていただいたのがきっかけです。同時に任天堂さんが「Nintendo Switchという新ハードを出しますので、それを含めてやっていきましょう」となり、今回はNintendo SwitchとNewニンテンドー3DSというマルチに決まりました。

――「ゼルダ無双」を作っている最中に「ファイアーエムブレム無双」の話が出たと聞きました。

臼田氏:ボクは、「ゼルダ無双」を何も知らずに作っていました(笑)。

早矢仕氏:最初の企画書は、臼田にも見せずに作業していました。彼は「ゼルダ無双」をやっていたので絶対作ってもらえると思い「ゼルダ無双」の進行中盤ぐらいに、「こんなプロジェクトがあるよ」という話をしました。

――「ファイアーエムブレム無双」には、オリジナルキャラクターのシオンとリアンがいますが、作るにあたり苦労した点は何でしたでしょうか?

臼田氏:主人公の双子を中心に「ファイアーエムブレム」シリーズのキャラクターたちが集まり、双子は英雄たちに助けてもらい成長していくという流れのストーリーにしましょう、というのは決まっていました。しかし、主人公キャラクターを作っていくうえで他の英雄と被るのは良くない。主人公として立つように、でもほかの英雄より目立って活躍を潰してもダメ。それらをふまえての、主人公キャラクターの性格や見た目や台詞回しなどに気を遣いました。

【スクリーンショット】

――そうして最終的に主人公を含めたプレイアブルキャラクターが決まったと思うのですが、その際の苦労はどのようなものだったのでしょうか?

臼田氏:開発スタッフと「誰が良い?」という話から始まりまして、100人ぐらいの名前が挙がりましたが「そんなに作れないよ!」と(笑)。

――自分はこのキャラを入れたいから収録する! とはなりました?

早矢仕氏:選考キャラは、一本筋が通っていないとお客さんにも説明できないというのがありました。スタッフが好きなキャラにしても、それはダメ。納得感がある理由を持ち、その上でバランスを取りましょうというのを任天堂さんと決めて、それでも主張する開発スタッフには1人1人説得しました。

――それらキャラクターが同じ世界に登場しますが、世界観や会話内容などを合わせるのは苦労したのでしょうか?

臼田氏:集まってきている英雄キャラ全員を大事にすることと、全体の雰囲気や世界観はオリジナルで用意し、その中に英雄キャラクターたちが、ちゃんとそのキャラクターとして違和感のないように入ってくる、というところに気をつけて作りました。オリジナルストーリー&世界の中で英雄キャラたちを描く、というかたちでキャラとしての違和感が出ないようにしました。

――それらのプレイアブルキャラクターの中で、1番好きなのは誰になりますか?

臼田氏:元々から好きだったキャラクターはマークスです。性格や、ストーリー上のバックボーンに引かれるものがありました。マークスは、本作でも馬に乗って駆け回り敵を吹っ飛ばすことができるので、爽快なキャラクターに仕上がっています。あくまで“個人的には”で、全キャラクターとももちろん楽しいです(笑)。

早矢仕氏:私はマルスですね。子供の時に遊んでいた「ファイアーエムブレム」シリーズ作品を自分が作ることになるとは思わなかったので、とにかく感慨深いです。子供の自分に言ってやりたいです。

臼田さんのイチオシ・マークスと、早矢仕さんイチオシのマルス。誰で遊ぶか決めていない人は、この2人のうちのどちらかで初めてみてはいかがだろうか?

――プレイアブルキャラクターを決めるにあたり、インテリジェントシステムズさんとの間で「これだけは譲れない!」となったことはあったのでしょうか?

臼田氏:1度、ルキナを外すかどうかという話があったのですが、インテリジェントシステムズさんから「流石にルキナは残した方が良いです」と。

早矢仕氏:「ファイアーエムブレム」シリーズはワールドワイドで人気があるので、リンは絶対入れてくださいという話もありました。

――それらキャラクターや世界観、またはゲームシステムに関して、泣く泣くボツにしたというものはありますか?

臼田氏:武器に使用回数制限を付けるシステムですね。「ファイアーエムブレム」だから、武器は何回か使ったら壊れるんですよね? と言われましたが、「無双」というゲームシステムとは相容れず……。武器も自分で育てるという要素があるのに、せっかくカスタマイズして育てた武器が、あと1回殴ったら壊れるというのは……。

早矢仕氏:無双というゲームなのに振るのをためらっちゃう(笑)。ということで、ボツにしました。

【スクリーンショット】

やり込み要素も充実している自信作に仕上がっています!

――無双シリーズは爽快感が大事だと思うのですが、「ファイアーエムブレム」に求められるのはじっくり考えるシミュレーションRPGなので方向性が違います。この辺りは、両方のプレーヤーを意識して作られたのでしょうか?

臼田氏:はい、そうです。じっくり考えるゲームとして作ると、アクション時に考えないとダメ。考える時間を減らすと、アクションが得意ではない人は“考えても無駄”と感じてしまいます。悩みましたが、最終的にはどちらでもちゃんと遊べる形に落とし込めました。アクションで遊びたい人はアクションで突き進んでも大丈夫だし、戦略でやりたい人は作戦画面を開いて考え込むと凄く数多くの要素が入っていますので、アクションが得意ではなくても戦略で攻略していけます。

――マップ画面でユニットに指示を出すというシステムですね。

臼田氏:そうです。これは1番入れなければならない部分だろうと思いました。「ファイアーエムブレム」での感覚をそのまま「ファイアーエムブレム無双」に持ち込めるという。原作でマップを見ながら考えていたであろう事は、今作でもマップ画面を開けば戦略を立てられるというふうにしました。

――「ファイアーエムブレム」らしさという部分では、レベルアップ時の効果音などでニヤリとできますが、開発側が「ファイアーエムブレム」愛を込めたぞ! と思い切り主張したい部分はありますか?

臼田氏:SEなど特徴的な音は、そのままの印象になるように使わせてもらってますし、音関係はBGMなども含めて“原作でもこの曲あったよね”、“このステージに入って彼らが出てきたときに、この曲が鳴ったらテンション上がるよね”という楽曲をドンドン選んでアレンジし収録したので、音関係は原作のイメージに浸れるのではないかと思います。ほかにも“あったあったこの台詞”となるような場面を、ムービー中やシナリオを含めて入れられるだけ入れています。それら台詞はフルボイスで収録させていただいてますので、できるだけいろんな所をプレイして、探しだしてニヤリとしてもらえればと思います。

――ボイス収録も、凄い量の台本があったと伺ってますが……。

臼田氏:はい、あれは本当に大変でした(笑)。

――トータルでは、どのぐらいかかったのでしょうか?

臼田氏:期間でいうと、丸3カ月かかりました。

――3カ月! そこまで長いのは、そんなにないですよね?

臼田氏:私も初めてでした。昔作っていた「NINJA GAIDEN」はフルボイスでしたが、台詞の量はここまで多くなかったです。「ファイアーエムブレム無双」では、かけあいの台詞が増えたのと、絆会話で台詞が増量されたものをフルボイスにしたので非常に多くなりました。

――その収録時に、面白かったネタはありますか?

臼田氏:演技をしていないときの、声優さんの声が聞けるとかというのは良かったです。また、休憩中にウォームアップされているときに「そろそろいきまーす」と声をかけると、キャラの声で「はーい!」と返ってきたりしたのも凄かったです。あとは、キャラクターがフルボイスで喋っている様を、そこで初めて聞けるのも楽しかったですね。みなさん、自分のキャラを愛してくださっていましたし。

――「ファイアーエムブレム」シリーズにはやり込み要素が欠かせないと思いますが、開発した側としてぜひ遊んで欲しいやり込み要素を教えてください

臼田氏:いろんなやり込み用のバトルがたくさん用意してあり、原作の話を追想しながら楽しんでいける“ヒストリーモード”というやり込み用のモードがあります。バトルに挑戦しつつ話を楽しめるように設定してあるので、ぜひ最後まで遊びきっていただければと思います。

早矢仕氏:ヒストリーモードの前身は、「ゼルダ無双」のアドベンチャーモードというやり込み要素として収録していまして、好評だったので進化させました。前よりも更にオマージュが効いていているだけでなく、今回はいろいろなマップがあるので、相当やりこんでいただける自信作になっています。

臼田氏:「ゼルダ無双」比較で言うと、アドベンチャーモードはひたすらマップを探索して進んでいくだけだったんですが、今回は合間に原作の話が入ったりするので、楽しみやすくなったかなと思います。

――「ファイアーエムブレム」要素もたっぷりですが、新作の「無双」作品としても魅力が詰まっていますよね。

早矢仕氏:はい。せっかくコラボレーションさせてもらったので、「ファイアーエムブレム無双」プレイ後に「ファイアーエムブレム」が面白そうだなと思い本編に戻ってきてもらうお客さんがいてくれたら、我々としてもすごくありがたいですね。

【スクリーンショット】

無双化してほしい作品のご要望、お待ちしております!?

――最後に、待っているユーザーさんにメッセージをお願いします。

臼田氏:発売まであと1週間を切りましたが、東京ゲームショウではさまざまな情報を発信していきますので、それを楽しみにしてください。ゲームショウ後も、発売日まで情報を公開していきます。あと、できればぜひみなさん会場に来ていただき、試遊台でゲームを遊んでもらいたいです。よろしくお願いします。

早矢仕氏:「ファイアーエムブレム」シリーズは、「無双」化してほしいタイトルとしてずっと声があがっていたので、待っていたお客さんが納得いくゲームになっているかというのを、ぜひ手にとって確かめていただきたいです。我々としては、1つの答えを提示できたと思っています。今後も皆さんの反応には、応えられるものに関しては応えていきたいと思いますので、引き続き応援お願いします。

――「無双」化してほしいタイトルがあったときは、早矢仕さんにお願いすればバッチリですね!

早矢仕氏:お待ちしています(笑)。

――ありがとうございました。

【スクリーンショット】