インタビュー

「オーバーウォッチ」、「ソンブラ」実装は11月末前、全機種同時を目指す!

「ソンブラ」はなぜ“オフェンス”か? 副社長兼ディレクターに直撃インタビュー

11月4日、5日 開催

場所:Anaheim Convention Center

「Overwatch World Cup」会場。すぐに入場が制限され、待機列が長蛇となっていた
圧倒的大差を見せつけた韓国チームが優勝となった

 「BlizzCon 2016」では各タイトルのe-Sports大会も様々に開催されているが、発売後「BlizzCon」に初登場した「オーバーウォッチ」もその1つで、盛大な盛り上がりを見せていた。

 「オーバーウォッチ」の大会は「Overwatch World Cup」と銘打たれ、各国の選抜代表チームによる対抗戦が開催された。会期2日間にわたって開催された大会は大盛り上がりで、特設のアリーナ会場は超満員、入場のための待機列を多く作っていたほか、会場内の他の大画面による中継にも大勢の人が足を止め、即席の“会場内パブリックビューイング”も試合の行方に一喜一憂という感じで大いに盛り上がった。

 なお大会の結果は韓国チームの圧勝で、ロシアと対戦した決勝戦では全7戦、4勝先取のところ4-0でストレート勝ち。試合内容もあっさり勝ちを拾うものばかりで、「オーバーウォッチ」のe-Sportsシーンは最強の韓国勢をいかに追うかがトレンドになっていくだろう。今回は惜しくも日本チームが予選落ちとなってしまったので、次回開催の際はさらなる活躍を期待したい。

 この「BlizzCon 2016」では、「オーバーウォッチ」は新ヒーロー「ソンブラ」の発表や、プロリーグ「Overwatch League」の設立が発表されるなど、コンテンツも競技性もますます成長していくことが宣言されている。

 今年末から来年にかけて、いち「オーバーウォッチ」ファンとしても見逃せないシーズンが続いていくこととなるが、今回会場ではBlizzard EntertainmentのVice Presidentで「オーバーウォッチ」のGame Directorを務めるJeff Kaplan氏に話を聞くことができた。ソンブラから「Overwatch League」に至るまで、様々に聞いてきたのでぜひご覧いただきたい。

「ソンブラ」から「Overwatch League」までたっぷり聞く!

Blizzard Entertainment Vice President、「オーバーウォッチ」Game DirectorのJeff Kaplan氏

――「オーバーウォッチ」は発売から半年経ちましたが、現時点での手応えは?

Kaplan氏: 開発時点から、本作には大きなポテンシャルがあるとわかりながら進めていたものの、実際にはどのような結果になるのかわからなかったので、現在のように多くの人に楽しんでもらえて嬉しい。

 段階としてはようやく一息ついたところなので、これからはプレーヤーの意見を参考にしつつ、ヒーローの追加やモードの追加、マップの追加など、コンテンツをもっと良くするように注力していきたい。

――一息つくに至るまでの間に、開発を優先したものはあるか?

Kaplan氏: ライバルプレイ。競技モードは最初は予定していなかったが、プレーヤーの強い要望があったために入れることになった。ただベータ版のフィードバックが良くなかったので、発売からシーズンの開始まで時間が空き、さらに次のシーズンでも大幅な変更が入った。

――ライバルプレイの変化とは?

Kaplan氏: 当初は6人でチームを組んでからの参加にしていたが、ソロでも参加したいという要望が多かったので変更した。

 またレートの変動についてもプレーヤーからの意見の影響が大きく、勝敗だけで決めるのではなく、マッチの中でのプレイスキルによってレートが決まるようになった。

ソンブラ
会場で公開された最初期のデザイン

――新ヒーローの「ソンブラ」だが、能力のデザインの狙いは?

Kaplan氏: もともとステルス能力がほしいと言っている人が多かったのですが、ステルスを持たせて攻撃力を高めてしまうと、アンフェアなキャラクターになってしまう。

 そこで暗殺をさせるのではなく、除去や潜入といった、敵の防衛戦を乱すような能力としてデザインした。

――役割の分類がオフェンスというのが面白い。その理由は?

Kaplan氏: 良い質問。当初はサポートのヒーローとして開発していたが、回復を持っていないので、プレイテストでは「ルシオやゼニヤッタでいいではないか」と評判が良くなかった。

 ところが、アビリティはあまり調整せず、分類だけをオフェンスにした途端に、プレーヤー側の受け取り方が変わって使い方を考えるようになったので、オフェンスとすることにした。

――ソンブラのコンソール版の実装時期は?

Kaplan氏: 目指すところとしては、PC版とコンソール版は同時に出したい。PC版についてはPTR(Public Test Region)向けの実装を来週に予定しており、何もないことを願うが、そのフィードバックに問題があると遅らせるかもしれない。コンソール版についてはファーストパーティーの承認が取れ次第だが、できる限り同時にできればいい。

 時期については、休日になる11月末の感謝祭時期に入ってしまうと人手が足りなくなるのでここまでずれ込んでしまうと難しいが、可能であれば、それより前に出したい。

――11月4日のセッションで公開した初期のコンセプトアートでは手首からナイフを出る設定になっていた。あの格好でサポートだったのか?

Kaplan氏: あれは最初期のデザインで、すぐに変わっている。手から武器が出るというアイディアは、ゲンジのデザインに活かされている。

――サポートの開発は不安定さが伴っているのではないか。

Kaplan氏: ソンブラでは、プレイテストではサポートとして受け取られなかったので、オフェンスに移したとういこと。

 ヒーローの開発自体は、最初から役割を決めているわけではない。例えばソルジャー76は「バイオティック・フィールド」というサポート的な能力を持っているし、ロードホッグはプレイスタイルによっては暗殺者のようにもなる。そういうことからも、役割に固執する必要はないと思っている。

 そもそも、開発当初は役割の分類自体がなかった。ただ、そうするとチーム編成の際に上手い構成になりづらかったので、そのガイドとして役割を設けることにした。

――役割によっては、使われないヒーローもいる。その点はどう考えているか?

Kaplan氏: 実際にプレイするとわかるが、たとえばシンメトラを使ったとして、使い方によっては上手く作用することが実感できると思う。

 なので、ヒーローの性能を調整するのではなく、役割を変えるのが有効なのではと思っている。サポートについて言えば、マーシーやルシオなどをヒーラーとして、シンメトラなどはユーティリティとするなど、分類を見直すということもあり得る。

――発表された新マップ「Ecopoint: Antarctica」と「Oasis」の特徴は?

Kaplan氏: 「Ecopoint: Antarctica」は、アーケードモードの1対1、3対3で使用される小規模のマップ。コンパクトになっているので、より激しい戦いが予想される。

 またこの場所はメイに関連する場所。メイは南極で天災に遭い、生き残って設定があるが、その背景もこのマップでは見られる。

 「Oasis」は、拠点の占拠率100%を目指す「コントロール」マップ。イラクの外にある砂漠だが、モダンで美しい都市になっている。この都市は科学者によって発見され、政治ではなく科学で動く。

 またマップ内には乗ると空高く飛べるジャンプパッドもある。最初はタワーを登る目的があっただ、マクリーの「デッド・アイ」やソルジャー76の「タクティカル・バイザー」など、アルティメットを空から使うことで面白いプレイが生まれていた。そういう点でも楽しめると思う。

【Ecopoint: Antarctica】

「Overwatch League」ロゴ

――アーケードモードの1対1、3対3のルールについて今一度教えてほしい。

Kaplan氏: 1対1は、9ラウンド5先取ルールで、ヒーローは選択できず、ランダムでの選択。ヒーローはお互いに、必ず同じものが選択される。

 3対3は、5ラウンド3先取ルールで、ヒーローは自由選択だが、チーム内で同じヒーローは選べない。また倒れると復活できず、次のラウンドまで観戦に回ることになる。

――以前の開発者へのインタビューでは、「オーバーウォッチ」開発の際して競技のことは意識せず、ファンを楽しませることにフォーカスしたいという話を多く聞いた。この「BlizzCon」では「Overwatch League」も発表され、競技用タイトルとしてシフトしているに感じる。何か変化があったのか?

Kaplan氏: 開発チームとしては、「面白いゲームを作る」という思いが根底にある。e-Sportsに重きを置きすぎて、コアが良くなかったゲームを多く見てきたので、その思いは変わっていない。今回発表したアーケードモードも、競技用ではなく、カジュアルに楽しめるように作ったもの。ストレス発散用のモードになっている。

 ただ早い段階から、本作をプロゲーマーたちが高いレベルでプレイしていることを考慮して、今回のような施策が打ち出された。「面白いゲーム作り」という軸は変わらず、そこに競技という軸も生まれて、2つの軸をもって進化させていきたい。

――競技用のモードの開発を進めることで、カジュアルな部分を犠牲にすることはあるか。

Kaplan氏: 「オーバーウォッチ」はむしろ逆を行っていて、バスティオンやトールビョーンはわざとカジュアル向けに調整を入れている。そのためプロの試合では滅多に使われないのだが、今回の「Overwatch World Cup」の3位決定戦で珍しくバスティオンが使われて、しかも大活躍したので、とても嬉しかった。

――「Overwatch League」だが、サードパーティー開催のリーグとは差別化するのか?

Kaplan氏: シーズンが長いとツカれるので、より短いシーズンで行なうようにしたい。ただ差別化というよりは共存することを考えていて、他のリーグと共に、「Overwatch League」も並行して行なっていく。それがe-Sportsシーンを促進させることにも繋がる。

――「Overwatch League」と「Overwatch World Cup」は異なるものでしょうか?

Kaplan氏: 違う施策としてやっていくことになるだろう。「Overwatch World Cup」は普段は違うチームで活躍する選手が集まる国際的な試合になり、「Overwatch League」はプロフェッショナルなものになっていく。

――「Overwatch World Cup」は今後どのようなスパンで開催されるのか?

Kaplan氏: まだ決まっていない。今回が初のワールドカップで、実験のような部分もあった。今回の反応、超満員の会場やその前の長蛇の列を見ても、間違いなく成功だったと言えるので、まずは持ち帰って、今後の展開に活かしていきたい。

――「Overwatch League」の最初の開催規模は?

Kaplan氏: 最初は小規模で始めることにはなるが、次第に大きくしていく。どの都市で開催するかは日本を含めて未定だが、最終的にはグローバルな展開として、リーグの認知や世界の都市の参加を目指していきたい。

――PC版とコンソール版で、パッチ開発やバランス調整はわけているのか?

Kaplan氏: 基本的にはわけていない。開発スタッフは当初60名、いまは100名ほどに増えていて、PS4でプレイする人もいればPC版でプレイする人もいる。

 コンソール版のみの調整としては、トールビョーンとシンメトラのタレットのダメージ低下があるが、これのみ。コンソール版のエンジニアには専属でやっている者もいる。

――ありがとうございました。

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