【特集】
Keyが守り続ける“泣き”の根幹に迫る「アネモイ」開発者インタビュー
2026年4月23日 00:00
泣きゲーの現在地と「anemoi」のこれから
――発売日が1月30日から4月24日に延期となりました。どの部分のブラッシュアップを図ったのでしょうか。
魁氏:シナリオの方で全体を統合するにあたって、納得のいかないところが多々ありました。各ライターが好きに書いたシナリオをひとつの作品としてまとめる作業は絶対に必要で。各ヒロインたちを貫くテーマをもう1本通しながら、最終ルートに繋げていく。その調整に時間がかかってしまいました。
佐雪氏:魁さんが調整された最後のメインルートのシナリオを読ませていただいた時は、「なるほど、こうまとめたのか」と驚きました。プロローグの主人公のモノローグにまで繋がっていく構成になっていて……。
魁氏:最後のところは自分でも「降ってきた」感覚がありました。書き進めていくうちに、すべてが繋がった瞬間があって。演出込みで、良い着地ができたなと感じています。
――体験版では、スローライフものかと思いきや世界観が一気に変わる展開が話題になりました。あの構成は意図的なものですか?
魁氏:かなり悩みました。体験版でそこまで出すべきかどうか。考えた結果、世界観そのものは驚きの対象にしなくていいだろうと。もっと深いところに驚きを置いておいて、世界観は先に提示してしまう方がいい。体験版の段階で「1発殴っておこう」という感覚でした(笑)。
□「anemoi」の体験版配信ページ
――2025年12月に体験版が配信されましたが、ユーザーからのフィードバックで印象に残ったものはありますか。
魁氏:ほっとしたのは、体験版のラストで見せた内容に対する反応です。あそこでユーザーさんが引いてしまうかどうかは、我々としても結構賭けだと考えており、結果的にはいい方向に転んでくれました。
佐雪氏:あらゆる方の配信を拝見しましたが、やっぱりあの一番の驚きポイントでのリアクションは非常にいい化学反応を起こしていました。後半に入ると配信のコメントがどんどん伸びていくのが見えて、うまくいってよかったなと。
魁氏:「Summer Pockets」からのユーザーさんにとっては、急に世界観がこんなことになって驚く部分はあると思いますが、新しいことをちゃんと見せるのも大事かなと。日常のキャラクターとの遊びをしっかり描いた上でのあの展開なので、「サマポケとは違う何か」という印象づけはできたんじゃないかと感じています。
――Keyは「泣きゲーの総本山」とも称されます。2020年代に泣きゲーを作る難しさと面白さを、どう捉えていますか。
魁氏:世の中に感動できるゲームや物語はたくさんあると思っています。その中でKeyが「Keyの泣き」として成立しているのは、独自の空気感と作り方があるからだと考えていて。その根幹にあるのは日常です。日常がいかに面白いか、どれだけ馬鹿なことができるか。そこを忘れてしまうと、おそらくKeyではなくなってしまう。
佐雪氏:あの高低差がジェットコースターになっているんですよね。あんな馬鹿なことを言っていたのに、その一言が後半に効いてきて……。
魁氏:「ギャグじゃなかったのかよ、これ」ってなる(笑)。僕らは実のところ、何も変わっていないんです。むしろ変えちゃいけない場所をちゃんと守っている。そこにちょっと時代のものを加えて、少しずつ進化させていくという形ですね。
佐雪氏:僕も入社する前に1人のファンとしてKeyを見ていた頃からそれがKeyだと感じていたので、今作でも強く意識しました。シナリオと音楽――ここがKeyの一番の強みで、その格は守り続けたいなと思っています。
――発売前から積極的にイベント展開をされていますが、手応えはいかがですか。
佐雪氏:プロローグパーティーは多くの方に見ていただきました。TVアニメ「Summer Pockets」と連動する形でいろいろ展開しようというお話があって、店舗イベントやトークショーも何度か開催しましたが、「Summer Pockets」の熱をそのまま持ってきてくださるユーザーさんがすごく多かった印象です。
魁氏:そこは狙って動いていました。今ちょうど劇場編集版を毎週限定公開しながら、「anemoi」の宣伝もさせていただいていて。
佐雪氏:リリース後もNa-Gaさんやきみしまさんのサイン会を設けていますし、ネタバレありのライタートークショーも予定しています。今年1年はけっこうイベントが多いんじゃないかなと。
――イベントを通じて見えるユーザー層の変化はありますか。
魁氏:「Summer Pockets」の段階で意外と若い方が多くて。おそらく「Angel Beats!」のアニメ放送あたりで一気にユーザー層が変わったんですよ。「ヘブンバーンズレッド」のイベントでもお客さんと触れる機会が多いんですが、半分くらいは20代という印象です。
佐雪氏:「Summer Pockets」から入ってくださるユーザー層は20代ないし30代前半の方が多い印象です。海外のファンの方も増えましたね。中国のノベルゲームファンの方々の熱量はすごくて。
――メディアミックス展開についてはいかがでしょうか。
佐雪氏:Steam版など多言語対応やコンソールへの移植は準備しています。それ以外のメディアについては、今はとにかく製品版のクオリティを上げることに注力していたので、まだ明確には動いていないのが実情です。
魁氏:これまでKeyは、アニメ化などはお声がかかるまで待つという姿勢でしたが、これからはこちらからアプローチしていってもいいのかなとは思っています。
――最後に、発売を楽しみにしているファン、そしてまだKeyを知らない方に向けてメッセージをお願いします。
魁氏:「anemoi」は、「Summer Pockets」をプレイしてくださったお客さんをさらに楽しませたいというのがひとつのテーマです。特にアニメから入ってくださった方には、「ゲームってこんなに面白いんだよ」ということを知ってもらいたい。往年のファンの皆さんには、「大丈夫、Keyはまだちゃんとゲームを作っているよ」とお伝えしたいです。
テーマとして、ゆっくりでもいいから未来に向かって歩いていこうというメッセージを込めていますので、プレイすることで何か得られるものがあるんじゃないかなと思っています。ぜひお楽しみに。
佐雪氏:今回、大きくプレッシャーを感じているところが2つあります。ひとつはKeyというブランドで初めて自分のルートを持ったこと。もうひとつはフルプライスのディレクターとしてのプレッシャーです。自分のルートは、今でき上がっている演出を見ていて個人的にはとてもいい完成度になっていると感じていますが、それが好意的に受け取っていただけるかはユーザーの皆さんのご判断にお任せしたいところです。
そしてディレクターとしては、今後何年もKeyの看板として残る作品になり得ているかどうか。でき上がっているシナリオはどのルートもとても良いものになっていると思っているので、それを最高の形で皆様にお届けできるよう、最後の最後まで気を抜かずにいきたいと思います。ぜひお楽しみいただければ。
――ありがとうございました。
(C) VISUAL ARTS/Key
















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