【特集】

ゾッとしたい夏にぴったり! 「都市伝説解体センター」の面白さと怖さをあらためて紹介

ホラーが苦手でも安心の“ちょうどいい恐怖”

【都市伝説解体センター】
2月13日 発売
価格:
パッケージ版 3,740円
ダウンロード版 1,980円
「都市伝説解体センター」

 夏といえばホラーの季節。恐怖で背筋がぞっとする快感を求めている人は多いのではないだろうか。

 そこで今回オススメしたいのが、集英社ゲームズ販売、墓場文庫が開発を行なう形で2月13日に発売されたプレイステーション 5/Nintendo Switch/Steam用ミステリーアドベンチャー「都市伝説解体センター」だ。

 本稿では同作の大まかなストーリーや面白いポイントに触れつつ、「どれくらい“コワい”ゲームなのか」を紹介していきたい。

【「都市伝説解体センター」ローンチトレーラー】

「都市伝説解体センター」って? 怪異を“解き明かす”アドベンチャー

 同作は「和階堂真の事件簿」シリーズで知られるクリエイターチーム・墓場文庫が開発を手掛けた作品。「怪異を解き明かすミステリーアドベンチャー」と銘打たれており、ドット絵によって描画されたレトロな雰囲気のビジュアルが特徴となっている。

 また発売直後には、マイニンテンドーストアでダウンロードランキング1位にも輝いていたほか、発売3カ月で累計の販売本数が30万本を記録するなど、注目を集めるアドベンチャーゲームとなっていた。

 ゲーム内容としては、「都市伝説解体センター」という組織の一員となり、普通の警察では対応できない“怪異”絡みのトラブルを解決していくというもの。

 ゲームの進行はいくつかのパートに分かれており、まず「SNS調査」によって該当の依頼にまつわるインターネット上のウワサをリサーチし、その後は実際に事件が起きた現場に出向き、情報を進めていくことになる。

SNSには事件の関係者だけでなく、さまざまな人が書き込んでいる
検索ワードを手に入れることで、より多くの情報に触れられる

 なお現場での調査は、たんに関係者の証言を集めたり、物証を探したりするだけでは終わらない。主人公の特殊能力「念視」を活用することも重要だ。この能力は現場に残された人や物の痕跡を捉えるというもので、事件の輪郭を立体的に捉えるためには必要不可欠となっている。

「念視」を使うことで、普通は目に見えないものが浮かび上がる

都市伝説を特定、解体! 主人公は「念視」を使う女子大生

 同作の物語は、生まれた時から“変なもの”が見えるという女子大生・福来あざみが「都市伝説解体センター」を訪れるところから始まる。そこで出会ったセンター長・廻屋渉(めぐりやあゆむ)に目を付けられたあざみは、現場調査員のジャスミンとともにさまざまな事件を捜査していく。

 全体を通して1つのストーリーとなっているが、それとは別に章立てがあり、それぞれである程度独立した話が展開される。ここではネタバレを避けつつ、ざっくりと各エピソードの内容を紹介しておこう。

 まず第1話では、あざみの友人である女子大生・佐藤美桜と、就活コンサルを名乗る女性・清水栄子がメインキャラクターとして登場。ある夜、美桜の部屋に得体の知れない「影」が出現したという事件の調査を依頼される。

あざみは美桜を守ってみせると宣言するが……
美桜の部屋で異様なものを発見
正体不明の恐怖が襲い掛かる

 また第2話では、オカルト系の動画配信者・谷原きのこから依頼を受け、「幽霊の存在を明らかにする」というミッションに挑むことに。きのこがとあるアパートの1室で霊を呼び出す儀式を行なっていたところ、動画に女性の幽霊が映り込んでいたという。調査を進めるなかで、この部屋が“いわくつき”であることが明らかになっていく。

動画撮影中に映り込んだ怪しい人影
幽霊の存在を明らかにするため、調査へ
お隣さんは何かを知っている様子

 第3話では、参加者が行方不明になるというウワサがあるミステリーツアーにあざみとジャスミンが参加。謎めいたツアー主催者の正体とその目的を暴こうとする。ツアーの参加者は、何やら隠し事がありそうな人物ばかり。そこで7年前に起きた殺人事件との関係も浮かび上がってくる。

いかにも怪しげなミステリーツアー
ツアーの参加者たちにも謎が多い
徐々に浮かび上がってくる7年前の事件

 さらに個別のエピソードとは別に、未来で起きる出来事を予告する「イルミナカード」絡みの壮大なストーリーも展開する。

行く先々で現われる「イルミナカード」の謎

 話の流れはミステリー仕立てとなっており、まずは事件が「どの都市伝説に当てはまるのか」を特定。さらにそこから推理を進めていき、真相を突き止めることで都市伝説の“解体”に至るというのが基本的な展開だ。

 いずれの事件でも超常現象が次々襲い掛かってくるが、捜査を進めることで、その裏に隠された真相が暴かれていく。いわゆる考察系のホラーに近いストーリーと言えるだろう。

クセになってくる都市伝説「解体」のポーズ

 また作中には、誰もがよく知るメジャーなものからマニアックなものまで、さまざまな種類の都市伝説が登場。呪物やネットロアの類など、オカルトモチーフで溢れかえる世界観にどっぷり浸ることができる。

事件に関わるもの以外にも、さまざまな都市伝説と遭遇

 さらに、ミステリアスで個性的な登場人物たちにも興味を引かれるはずだ。「千里眼」によってすべての出来事を把握するセンター長の廻屋、腕っぷしの強い先輩調査員のジャスミン、そして依頼を通して出会うクセの強い人々……。物語の進展とともに、彼らの意外な顔が暴かれていくかもしれない。

「千里眼」によって都市伝説を特定するセンター長
相棒として事件の捜査に奔走するジャスミン

コワさのレベルはほどほど! “嫌な感じ”を味わう人怖系ホラー

 それでは同作のホラー要素はどれくらい強いのだろうか。結論から言うと、「ホラーはあまり得意ではない」という人もある程度安心して楽しめる内容だと思われる。

 というのもゲームの主なコンセプトが怪異を“解き明かす”ことにあり、プレーヤーに恐怖を与えることを第一の目的としていないからだ。たんに怖い話を追体験するのではなく、「なぜ不思議な現象が起きたのか」を推理することで、恐怖を乗り越えていく構成となっている。

 基本的には「人怖」(ヒトコワ)と呼ばれるジャンルに近く、人間の心の闇や悪意、狂気などに焦点を当てた物語となっているため、ある程度ホラー要素にブレーキがかかっている。

 また急にプレーヤーを驚かせるような演出も少なめなので、よほどジャンプスケアが苦手な人でなければ、問題はないはずだ。

集めた情報をもとに怪異の正体を探る

 とはいえ、もちろんホラー要素もしっかり存在。ドット絵によって醸し出される独特の雰囲気、あざみに襲い掛かる超常現象、「念視」発動中の不気味な影やおどろおどろしいBGMなど、ここぞというポイントは抑えられている。

 飛び上がるほど怖いわけではないが、ぞわぞわと背筋を撫でられるような“嫌な感じ”を味わえるゲームと言えるだろう。

 ここ数年、さまざまな界隈でホラーブームが巻き起こっており、ゲーム業界でも「8番のりば」や「パラノマサイト FILE23 本所七不思議」などのホラー要素を取り入れたヒット作が生み出されてきた。そんななかで怪異の“解体”というテーマを打ち出した「都市伝説解体センター」は、独特の輝きを放っている。

 そしてストーリーを最後まで進めることで、驚くべき体験をさせてくれるのも同作の魅力。ホラーに苦手意識がある人にこそプレイしてみてほしい一作だ。