【第19幕】
Report / manga:ジョン・カミナリ
logo design:フランチェスコ・アッカッターティス

電遊。辞書に載っていない造語である。電気的な遊び。いわゆる、テレビゲーム。道。その道を、自分の価値観だけを信じて最後まで歩むのが、侍精神である。電遊道は、妥協を許さないサムライゲーマーが歩むべき道。他人に影響されることなく、自分のゲーマーとしての信念を貫き通せばいい。たとえ、ゲームが別の道に進んでも、自分の好きな道をずっと信じ続けるのみ。たとえ、“これこそがゲームの未来形だ!”と言われても、自分の好きなゲームライフを思う存分楽しむのみ。

 この連載記事では、毎月1回、僕のゲーマーとしての物語、そしてゲーマーとしての哲学や信念を独特なスタイルで紹介していきたいと思う。日本のゲームに大きく影響を受けた僕のゲーマー人生を、イタリア人としての個性を生かして面白く語りたいと思う。あるときは、話題沸騰中のニュースについて掲載ギリギリのところまで正直な感想を書いたり、またあるときは、今でも心に大切にしまっている過去の作品を振り返ってみたいと思う。

 1番注目して欲しいのは、「イタヲタのレトロなゲームライフ」というコーナー。僕のオタクとしての青春を文章と漫画を交えて懐かしく振り返りたいと思う。連載の途中で新しいコーナーも生まれるのかもしれない。回を追う毎に中身が変わったり増えたりするのかもしれない。とにかく、サプライズたっぷりの連載を目指しているので、末永くこのページの中で付き合って欲しい!

ジョン・カミナリ(芸名)
国籍:イタリア 年齢:36歳
職業:俳優、声優、タレント、テレビゲーム評論家
趣味:テレビゲーム、映画鑑賞、読書(山田悠介)、カラオケ
主な出演作品:銀幕版スシ王子!(ペぺロンチーノ役、デビュー作)、大好き!五つ子(アンソニー・ジャクソン役)、侍戦隊シンケンジャー(リチャード・ブラウン役)、ピラメキーノ(テレビ東京、月曜~金曜 18時30分~19時放送中)
ブログ:ジョン・カミナリの、秘密の撮影日記
Twitter:http://twitter.com/John_Kaminari
 イタリアで6年間テレビゲーム雑誌の編集部員として働いたあと、新しい刺激を求めて2005年に大好きな日本へ。子供の頃から夢見ていた役者の仕事を本格的に始める。堤幸彦監督の「銀幕版スシ王子!」で個性的なマフィアのボス、ぺぺロンチーノを熱演。現在もTVドラマやTVゲームなどで、俳優・声優として活躍中。日本語を勉強し始めたのは23歳のとき。理由は「ファイナルファンタジーVII」や「ゼノギアス」などのRPGの文章を理解するため。好きなジャンルはRPGと音楽ゲーム。「リモココロン」のような個性的なゲームも大歓迎。お気に入りのゲームは「ゲームセンターCX」と「ワンダと巨像」。芸名はイタリア人の友達に、本人が雷のように予想不可能なタイミングで現われるからという理由で付けられた。将来の夢は、「侍戦隊シンケンジャー」に出演した時から大好きになった戦隊モノにまた出演すること



【もくじ】
一刀両断~話題のゲームニュースについて鋭くコメントしちゃうぞ!~
傑作の如く~期待している新作TOP5~
過去の宝物~こよなく愛した過去の思い出の作品をピックアップ!~
イタヲタのレトロなゲームライフ~ハプニング満載のオタク人生~



■ 一刀両断 ~話題のゲームニュースについて鋭くコメントしちゃうぞ!~

話題のニュースや注目のテーマをピックアップして僕の率直なコメントを載せたいと思う。また、現在のゲームが抱えている問題を解決するアイデアや提案も、このコーナーを通じて考えてみたいと思う。ゲーマーの皆が納得できる未来のために!

其ノ一:ゲームの難易度を低くするQTE撲滅キャンペーン実施中!

 「QTE」。「Quick Time Event」の略。インタラクティブ性のない長いシネマティックシーンにプレーヤーを参加させるために、ところどころに特定のボタンを押すなどのアクションが導入された。記憶を遡れば、あの話題作「シェンムー」がQTEの概念を初めてゲームの中に取り入れたのではないかと思う。

 今よく考えてみると、QTEは発明ではなかったといえるだろう。インスピレーションの源は1980年代に流行っていたレーザーディスクゲーム(LDゲーム)だったと思う。一世を風靡した「Dragon's Lair(ドラゴンズレア)」や「Space Ace(スペースエース)」といったゲームでは、プレーヤーが画面に表示されたボタンや方向を正しいタイミングで押すことによって、アニメの主人公のアクションが変わっていくという形になっていた。そのシステムは、プレーヤーにアニメを操作しているという錯覚を味わわせていた。しかし流行が終われば、LDゲームというジャンルが一気に消え、そして、正真正銘のゲーム性重視のゲームがマーケットを占めていった。

 現在のゲームで使われているQTEは、LDゲームの概念にとても似ていると思う。確かに、QTEのシーンは演出が派手だし、通常の操作でプレイするパートよりもずっと見た目が良い。しかし、QTEはポリゴンでできたLDゲームでしかなく、開発者たちにとって、通常の操作ではクリアするのが難しいパートを簡単にするための近道なのだ。QTEの存在が当たり前になりつつある現在のマーケットだが、QTEの割合が上がっていけば、ゲームという遊びの奥深さが減ってしまう恐れがある。

 「シェンムー」がきっかけとなり、ほかのメーカーも人気シリーズにQTEによるシーンを取り入れていった。アメリカ製の「God of War」もそうだし、カプコンの「バイオハザード5」でもQTEによるシーンが多く見られた。現在では逆に、QTEのないゲームを見つけるほうが、難しいのではないだろうか。最近では、QTEと無縁であるはずのRPGでも使われるようになった。例えば、「ファイナルファンタジーXIII-2」のオープニングシーンもそうだ。確かに演出は素晴らしかったが、RPGではなく、アニメ系の格闘ゲームで遊んでいるようだった。

 最近、遊んだ「アスラズ ラース」もQTEシーンが、通常操作のパートと同じぐらいの割合で収録されている。作品のコンセプトが、まさにインタラクティブアニメだから矛盾は感じなかった。ただ、昔から難易度が高いと言われる老舗アクションゲームシリーズも、QTEをふんだんに取り入れてきているから、ゲームジャンルが平べったくなってきていることをとても懸念している。


QTEは、アクションゲームの苦手なユーザーのために導入されたシステムだといえる。しかし、通常操作のほうが、ユーザーはゲームで繰り広げられるアクションの主人公になりきれると思うつい最近発売された「ファイナルファンタジーXIII-2」もQTEシーンを導入した。RPGでの必要性に対して疑問を抱いているQTEを使用するなら、本当にゲームの流れが変わるようなシステムにして欲しい。そのほうが、存在意義があると思う

「NINJA GAIDEN 3」は、アクションが苦手なユーザーを意識して作られたと思う。QTEシーンが多いことがその裏付けだ

 先日発売された「NINJA GAIDEN 3」もQTEシーンで始まる。コアなゲームとして知られているシリーズだが、今回はNORMALモードで難易度が低く設定され、操作が難しいとされるシーンがQTE形式で表現されている。

 QTEは、プレーヤーから技術や経験を求めず、カジュアルユーザーに好まれている。しかし、妥協を許さないというコンセプトのもと誕生した“ザ・キング・オブ・アクションゲーム”だけは、QTEという“楽さ”は要らないと思う。

 しかし、これは特定のメーカーや開発者の責任ではないのだ。Team Ninjaはゲーム製作のベテランだし、素晴らしい技術を持っているのは周知の事実だ。だからこそ、なぜ、こんなにインタラクティブ性を低くしたのだろう、どうして、QTEを取り入れてしまったのだろう。

 答えは、マーケットのグローバル化にあると思う。今のマーケットが示しているゲームの道は、知識や技術のないゲーマーも遊べるようなコンテンツの簡素化なのではないだろうか。難しいコマンドを必要とするアクションゲームよりも、誰もがボタン1つですごいアクションを楽しめるほうが、ゲームがもっと普及するという常識が広まりつつある。僕は、そういう常識は広まって欲しくないと思っている。

 ゲーマーは、ゲーマーであることを今よりも意識し、メーカー側もゲーマーをもっとリスペクトするべきだと思う。本当のゲーマーは、挑戦を求めているはずだ。己がゲーマーとして成長するような試練を求めていると思う。QTEの増加により歯ごたえのある要素が減ってしまい、逆にゲーマーは人気シリーズから離れていくのではないかと心配している。将来的には、難易度という言葉の意味さえ知らないゲーマーが増えるかもしれない。

「ワンダと巨像」では、巨像の体に乗っていく部分をQTEによる演出で作るという選択肢もあったはずだ。近道が選ばれなかったおかげで、本当に貴重な体験になったと思う

 僕はここで宣言する。国際的なメッセージを送りたい。QTEのない未来を作ろう。ゲームの演出を派手にすることが、インタラクティブ性を減らすという方程式は、間違っているのだ。

 過去の作品を振り返ると、インターフェイスやコマンドを簡素化させながらも、さらに奥が深くなったというケースもある。例えば「ワンダと巨像」がそうだ。動画で見れば、QTEではないかと思わせるほどの派手なシーンの連続だが、これは100%、リアルタイムで操作できるゲームなのだ。今よりもハードによる制限が多かったにも関わらず、インタラクティブ性は現在の作品よりずっと高いのではないだろうか。「ワンダと巨像」は、どんな作品よりもQTEの不要さと余計さを証明したと思う。

 QTE。メーカーにとって、ゲーム製作をスムーズに進めるためのありがたい工夫の1つだが、プレーヤーにとっては、それは本当に喜びと達成感をもたらす要素といえるのだろうか。QTEのフィロソフィーを支持するゲーマーもいるようだが、僕は最初から最後まで100%自分で操作できる従来のゲームを好み続ける。


「バイオハザード5」
(C) CAPCOM CO., LTD. 2009 ALL RIGHTS RESERVED.
「ファイナルファンタジーXIII-2」
(C) 2011 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. CHARACTER DESIGN: TETSUYA NOMURA
「アスラズ ラース」
(C)CAPCOM CO., LTD. 2012 ALL RIGHTS RESERVED.
「NINJA GAIDEN 3」
(C)2012 コーエーテクモゲームス Team NINJA All rights reserved.
「ワンダと巨像」
(C)Sony Computer Entertainment Inc.

□カプコンのホームページ
http://www.capcom.co.jp/
□スクウェア・エニックスのホームページ
http://www.square-enix.com/jp/
□コーエーテクモゲームスのホームページ
http://www.gamecity.ne.jp/
□プレイステーションのホームページ
http://www.jp.playstation.com/
□関連情報
【2012年4月4日】コーエーテクモ、PS3/Xbox 360「NINJA GAIDEN 3」
「ニンジャカスタマイズパック」などを配信開始
4月17日以降に配信予定のDLCも公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20120404_523684.html
【2012年3月27日】カプコン、PS3/Xbox 360「アスラズ ラース」
DLC第4弾、第5弾の配信日を決定!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20120327_521702.html
【2011年11月2日】PS3/Xbox 360ファーストインプレッション「ファイナルファンタジーXIII-2」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/review/20111102_486501.html
【2009年3月24日】PS3/Xbox 360ゲームレビュー「バイオハザード5」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/review/20090324_76245.html
【2005年10月28日】PS2ゲームレビュー「ワンダと巨像」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20051028/wan.htm





其ノ二:日本のゲームは本当に負けたのか? 稲船敬二氏の講演で考えさせられた!

 「GDC 2012」で稲船敬二氏(以下、稲船氏)の辛口発言についてコメントしたいと思う。まず、僕は稲船氏の作品をすべてプレイし、彼の大ファンであることを言っておきたい。彼がカプコンを離れたことを残念に思うが、己のビジョンをまっとうさせるには他の方法がなかったとも確信している。僕も弊誌に掲載された稲船氏の講演のスピーチをじっくり読み、賛同するところもあれば、さすがに言い過ぎではないかと思った部分もあった。ここで、僕の考えを提示したいと思う。この記事を読み進むまえに、弊誌に掲載された記事に目を通して欲しい。

「ロックマン9」と「ロックマン10」は、ファミコンのゲームを連想させるドットグラフィックスで開発された。過去の思い出に浸るのはゲーマーにとって大切なことだが、現状を打開するには過去のゲームを忘れさせるほどのゲームを製作する必要があると思う

 まず稲船氏は、日本のゲームを成功させるには、勝つという意識が必要だと発言した。勝ちたいのではなく“勝つ”というところを強調した。僕がイタリア人として思うのは、勝つという執念はあまりよくないような気がする。おそらく、ファミコン時代の開発者たちは勝つためにソフトを作っていたとは思えない。普通に自分の好きなことをやるという純粋ともいえる気持ちがあったからこそ、話題作が生まれたと思う。もちろん、成功させようとする気持ちは大切だが、執念はネガティブな気持ちだから、もっとリラックスしてゲーム制作に取り組むべきだと思う。

 稲船氏は、今のマーケットがクリエーターに自分を表現する機会を与えないというテーマにも触れた。ゲーム市場のほとんどが、続編の続編でできており、新しいものを生み出さなくなったという。現在のマーケットを占めるタイトルを見れば、確かに、1990年代から続くシリーズが主流になっている。昨今、新しいゲームヒーロー、新しいゲームシリーズが誕生しないのは、ゲーム業界が元気でない症状の1つだと考えられる。しかし、これは日本だけの問題ではなく、欧米でも同じことが言える。欧米のメーカーも毎年、有名なフランチャイズのお決まりの新作を出すという流れが定着している。

 ある意味、日本はまだアメリカよりもオリジナルコンテンツのゲームを出し続けていると思う。コンソールゲームは、開発費の高騰で選択の余地を許さないようなデリケートな位置に立たされているが、オンラインストアのほうでは1,000円前後の面白いソフトが数多く配信されているので、状況はそんなにネガティブではないだろう。

 稲船氏が言うように、ブランドに頼り過ぎるのはよくない。「ロックマン」シリーズでも起きたように、いつかブランド力が衰え、作品が売れなくなる。だからこそ、製作者は過去の栄光に甘えることなく、いつも初心を忘れずに新作の開発に取り掛からなければならないと僕も思う。


稲船敬二氏が、日本のゲーム市場を“叱咤激励”した。稲船氏のようなリーダーが、これからのマーケットを盛り上げるために必要不可欠だと思う

 売れたゲームは、シリーズとして展開させるのが必然的な流れだが、“待てる”ということも重要だと思う。続編やスピンオフが出回り過ぎると、奇跡が起きない限り徐々にクオリティが低くなっていく。すると、シリーズのイメージが悪くなり、従来のブランド力が失われてしまう。そして、いつかファンがその状態に飽き、ゲーム離れするか、新しいものを求めようとする。

 一方で、任天堂は続編を出すタイミングが良いと思う。「もっと作って下さい!」とプレーヤーに思わせれば、大成功だと思う。宣伝は必要ない。最高の宣伝は時間の流れ自体だ。例えば、僕は2001年から「ルイージマンション」の続編を待っている。今、2012年になったが、とうとう3DSでその続編が発売されることになりとても嬉しい。


任天堂は、続編を出すまでの間がかなり長い作品もある。矛盾だと思えるが、実はこの方針のお陰でブランド力が衰えないのだと思うただし、任天堂も他のメーカーと同じく、新しいゲームヒーロー、新しいゲームシリーズをずっと以前から作れなくなったという事実は否定できない。これから果たして、「メトロイド」、「ゼルダ」、「マリオ」を超える新シリーズが誕生するのだろうか?

 僕がもっとも印象に残ったのは、「楽を選択し続ける人生はつまらないと思います。苦難があるから乗り越えられたときの喜びがあります。苦労は乗り越えたときのためにあります。私も1年前苦難を選びました。大手のカプコンを辞め、新しい道を歩き始めました。たぶんカプコンに残っていた方が、一時的には楽だったと思います。それは仕事の質と報酬のバランスから言えることです。このぐらいでいいと割り切ればきっと楽だったと思います。でも私自身、そんな割り切りはできなかったし、楽を選びませんでした。カプコンの900人の部下を捨てて、たった20人の会社を立ち上げました。いま、その苦難を選んだことが、成功だったと思っています」という発言だ。

 稲船氏がおっしゃったように、人生で喜びを実感するには、苦労を乗り越えなければならない。人生でもそうだし、ゲームの中でもそうだ。過去のゲームの主人公達が楽をしなかったと同じように、主人公を操作するプレーヤーも、勝つ為に、苦労するべきだ。「一刀両断」の前者のテーマに話を繋げると、QTEは楽の道だ。そして、本当に挑戦のしがいのある新しいゲームを作ることが苦労の道だ。果たして、楽を選ぶのが本当に面白さに繋がるのか? 稲船氏の興味深い発言のおかげで、ゲームのあるべき形について再度考えさせられた。


「ロックマン10 宇宙からの脅威!!」
(C)CAPCOM CO., LTD. 2010 ALL RIGHTS RESERVED.
「ルイージマンション2」
(C)2011 Nintendo
「ゼルダの伝説 スカイウォードソード」
(C)2011 Nintendo

□comceptのホームページ
http://comcept.co.jp/
□関連情報
【2012年3月8日】【GDC 2012】comcept稲船敬二氏が日本ゲーム市場を“叱咤激励”
自分自身がヒーローになる! 「The Future of Japanese Gaming」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20120308_517329.html
【2011年12月26日】Wiiゲームレビュー「ゼルダの伝説 スカイウォードソード」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/review/20111226_501851.html
【2011年9月13日】任天堂、「Nintendo 3DS Conference 2011」
任天堂タイトル体験レポート&主要タイトルスクリーンショット集
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20110913_477277.html
【2010年3月8日】間もなく配信開始! あの硬派な2Dアクションがまたまた復活!
カプコン、「ロックマン10 宇宙からの脅威!!」のメディア先行体験会を開催
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20100308_353555.html





■ 傑作の如く ~期待している新作TOP5~

僕が期待している発売前後の新作TOP5。さまざまな情報をもとに、各ゲームのシステムやグラフィックスといった要素の中で僕が魅力的に感じたところを紹介していく。必ずしもメジャーなタイトルではなくて、逆に注目して欲しいマイナーな作品をピックアップすることもある。

(C)SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. MAIN CHARACTER DESIGN : Akihiko Yoshida.
※画面は開発中のものです。

1位:ブレイブリーデフォルト
   プラットフォーム:3DS
   ジャンル:RPG
   発売元:スクウェア・エニックス
   発売日:2012年
   価格:未定

 通信中の体験版で少しずつ明らかになってきた「ブレイブリーデフォルト」の世界。3Dなのに、ドットのような温もりを持つ独特なスタイルのグラフィックスが気に入っている。体験版のVol.2で街の探索パートを体験できた。民家などにちゃんと入れるし、冒険のテンポを損なわないように、武器屋の買い物はその場でメニュー形式になっている。戦闘の体験版が楽しみ!

□スクウェア・エニックスのホームページ
http://www.square-enix.com/jp/
□関連情報
【2012年3月30日】スクエニ、3DS「ブレイブリーデフォルト」
砂と大時計の国「ラクリーカ」などの情報を公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20120330_521616.html





(C)CAPCOM CO., LTD. 2012 ALL RIGHTS RESERVED.

2位:ドラゴンズドグマ
   プラットフォーム:PS3/Xbox 360
   ジャンル:オープンワールドアクション
   発売元:カプコン
   発売日:5月24日
   価格:各7,990円
   CEROレーティング:D(17歳以上対象)
   プレイ人数:1人(多人数ネットワーク)

 オープンワールドアクションRPGに新風を巻き起こす「ドラゴンズドグマ」の発売が迫ってきた! プレーヤーはポーンという相棒を自由に設定し、一緒に戦えるようになっている。特に注目して欲しいのは、ほかのプレーヤーとポーンの貸し借りができる点だ。出張先(ほかのプレーヤーと一緒に戦うこと)で敵の弱点などを覚えるシステムになっており、どんどんその人工知能が発達していく点が斬新。

□カプコンのホームページ
http://www.capcom.co.jp/
□関連情報
【2012年4月12日】カプコン、PS3/Xbox 360「ドラゴンズドグマ」
最新映像や最新スクリーンショットを公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20120412_525824.html





(C) KADOKAWA GAMES / GRASSHOPPER MANUFACTURE

3位:LOLLIPOP CHAINSAW
   プラットフォーム:PS3/Xbox 360
   ジャンル:アクション
   発売元:角川ゲームス
   発売日:6月14日
   価格:各7,980円
   CEROレーティング:D(17歳以上対象 / 通常版)
   CEROレーティング:Z(18歳以上のみ対象 / PREMIUM EDITION)
   プレイ人数:1人

 欧米で高い人気を誇る須田剛一氏の最新作。チアリーダーのジュリエットがチェーンソーを使ってゾンビたちと戦う。最も面白いと感じたのは、ゾンビになったジュリエットの元恋人は頭を切られ、キーホルダーとして出ていること。暴力表現が苦手なプレーヤーのために“ライト版”が用意されたのが好印象。

□角川ゲームスのホームページ
http://www.kadokawagames.co.jp/
□関連情報
【2012年4月6日】角川ゲームス、PS3/Xbox 360「LOLLIPOP CHAINSAW」
最新のプレイ映像をたっぷり収録した完成披露会の映像を公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20120406_524505.html





(C) 2012 Nintendo / INTELLIGENT SYSTEMS

4位:ファイアーエムブレム 覚醒
   プラットフォーム:3DS
   ジャンル:ロールプレイングシミュレーション
   発売元:任天堂
   発売日:4月19日
   価格:4,800円
   CEROレーティング:B(12歳以上対象)
   プレイ人数:1人(通信プレイ時:2人)

 「ファイアーエムブレム」シリーズが、ルールを少し変え3DSに帰ってくる! 今回「デュアルシステム」の採用により、2人のユニットが力を合わせて敵と戦えるようになった。さらに、「カジュアルモード」では、倒された仲間が次の戦闘で復活するようになった。自由にフリーマップを利用できるようになったのも大きな進化の1つだ。

□任天堂のホームページ
http://www.nintendo.co.jp/
□関連情報
【2012年3月1日】任天堂、ニンテンドー3DSの新色「コバルトブルー」発売
スペシャルな本体をセットした「ファイアーエムブレム 覚醒]パックも発売
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20120301_515764.html





(C) 2004-2011 Q ENTERTAINMENT Inc. (C) 2004 Bandai/NBGI. Art Assets excluding Q ENTERTAINMENT Inc. and NAMCO BANDAI Games Inc. elements (C) 2011 Ubisoft Entertainment. All Rights Reserved. Based on the Lumines franchise owned by Q ENTERTAINMENT Inc. and NAMCO BANDAI Games Inc. and is used by Ubisoft Entertaiment under license granted by Q Entertainment. LUMINES is a trademark of Q ENTERTAINMENT Inc. and NAMCO BANDAI Games Inc. and is used under license. Ubisoft and the Ubisoft logo are trademarks of Ubisoft Entertainment in the US and/or other countries.

5位:ルミネス エレクトロニックシンフォニー
   プラットフォーム:PS Vita
   ジャンル:音楽パズル
   発売元:ユービーアイソフト
   発売日:4月19日
   価格:3,990円(パッケージ版)
   価格:3,300円(ダウンロード版)
   CEROレーティング:A(全年齢以上対象)
   プレイ人数:1人(アドホックモード時:2人)

 音楽と映像の融合で数々の革新的なゲームを生み出してきた水口哲也氏が、PS Vitaで新たな歴史を作ろうとしている!「ルミネス エレクトロニックシンフォニー」では、パズルゲームと音楽が1つになり、中毒性の高いゲーム性が誕生した。1番注目してほしいのは、世界中のプレーヤーが共通の目標に挑む「WORLD BLOCK」モードだ。

□ユービーアイソフトのホームページ
http://www.ubisoft.co.jp/
□関連情報
【2012年4月4日】ユービーアイ、「ルミネス」、「レイマン」の体験版の配信を開始
「ルミネス」はBOYAGEをスキン2種類でプレイ可能
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20120404_523692.html





■ 過去の宝物 ~こよなく愛した過去の思い出の作品をピックアップ!~

ゲームは技術的に進化する。グラフィックスが綺麗になる。ポリゴンの数が増える。ゲーム内の景色が実写と見間違えるほどリアルなものになってきている。しかし、時代が変わっても必ずしも進化しないものもある。それはゲームの面白さだ。昔のゲームはグラフィックスはシンプルだが、面白さでは今のゲームに負けていない。いや、それに勝る特別な何かを持っている作品もあると思う。秋葉原のゲームショップや家庭用ゲーム機のオンラインストアで安く購入できる過去の傑作は山ほどある。このコーナーでは、僕が愛した昔のゲームをピックアップしていきたいと思う。具体的なゲーム内容よりも、僕のその作品に対しての気持ちを伝えることができればと願っている。

【風のクロノア door to phantomile】

プラットフォーム:PS/Wii
ジャンル:アクションシューティング
発売元:バンダイナムコゲームス
発売年:1997年(PS版)
    2008年(Wii版)
価格:4,800円(Wii版)


 1994年。プレイステーションの投入で、ゲームが2Dの世界から3Dの世界へ変わろうとしていた。好評を博していたナムコの歴代パズルアクションゲームが、ポリゴンの世界に進出することがあったが、面白さが激減したケースが多かった。その中で、ポリゴンの世界で活躍したマスコットキャラクターがいた。それは、紛れもなく「風のクロノア」だ。

 今回紹介するのは、Wii用にリファインされた「風のクロノア ~door to phantomile~」だ。プレイステーション用のバージョンも魅力を失っていないが、プレイするなら、ゲーム性はそのままにグラフィックスが遥かに向上したWii版のほうがおススメだ。


グラフィックスが古くなったとはいえ、ゲーム的にはPS版も宝物だ

Wii版の同じステージの画像。グラフィックスが綺麗になったのは一目瞭然だ。若いプレーヤーにはWii版のほうが向いていると思う

Wii版は、新ステージや新機能が追加されている。「クロノア」が衣装替えできたり、リバースステージが用意されていたりする

 本作は、幻想的な世界「ファントマイル」を舞台にしている。この世界にはある伝説が存在する。人々が見る夢のエネルギーが月の国と呼ばれる幻の国に集められ、それが世界を形作るのに用いられると言われている。

 ある日、風の村「ブリーガル」に住む「クロノア」は、鐘の丘に謎の飛空挺が墜落するという悪夢にうなされて目を覚ました。ところが、なぜかその夢だけは、いつまでもはっきりと思い出せる。

 それを不思議に思っていると、夢と同じように飛空挺が墜落してしまう。ずっと以前から友達のリングの精「ヒューポー」と共に、好奇心と不安を感じながら「クロノア」は鐘のある丘へと急ぐ。それは、体験したこのない冒険の始まりであることを知らずに……。

冒頭では「クロノア」と「ヒューポー」が出会うシーンが流れる。言うまでもなく、Wii版のほうが、解像度が高く、より一層楽しめるようになっている

 背景はポリゴンでできているが、ドットグラフィックスのゲームと同じく、主に横スクロールで進行する。操作方法もいたって簡単。2つのボタンだけを使用している。2ボタンでジャンプし、1ボタンでリングから「風だま」を発射し、敵を捕まえて膨らませる。そして、捕まえたまま攻撃ボタンを押すと投げることができる。

 「クロノア」は猫のような生き物で、落下中にジャンプのボタンを押し続けることで、長い耳を羽ばたかせ、しばらくの間空中にとどまることができる。ステージで使う主なアクションは移動、ジャンプ(2段ジャンプ)、攻撃だが、ステージにはトロッコやゴンドラなど様々な仕掛けが用意されており、それらを利用することにより通常では辿り着けないような場所にも到達できる。

「風だま」を発射し、敵を捕まえて膨らませる。膨らませた敵を手前や奥に投げつけることで、隠しアイテムが出現することもある必死に耳を羽ばたかせて、向こう側の台に辿り着こうとしている。頑張れ「クロノア」!「風だま」の攻撃で倒せない巨大な敵も出現することがある。頭を働かせて道を切り開こう!

 「風のクロノア」の世界は、6つのビジョンで構成されている。各ビジョンは2つのステージでできており、2つ目のステージの最後にはお決まりのボスが待っている。ステージの主な目的は、もちろんゴールに辿り着くことだが、それまでの道のりには多くのやり込み要素が用意されている。

 例えば、各ステージでは悪夢に捕らわれている6人の住人が隠されている。6人の住人をすべて助け出すことにより、ゲームをクリアした時にサプライズが待っている。さらに、夢のかけらと呼ばれるクリスタルも配置されており、100個取ると1UPがもらえるようになっている。

ステージの途中に分岐点がたくさんあるため、1回のプレイですべての住人を救出するのは難しいかもしれないトロッコに乗って進むパートも存在する。果たして、すべての夢のかけらを集めることができるのか!?PS版で粗かった水面の表現はWii版では申し分なし

 久しぶりに遊んでみたところ、とても気持ちのいい、懐かしい温もりを感じた。これこそが今、ゲームマーケットで失われつつある、ゲームの持つ本来のマジックだということを強く感じた。決して、長時間遊べるゲームではないが、遊んでいる間は最高の喜びを得られるゲームなのだ。

 ゲーム性はシンプルでありながら最高のバランスを提供しているし、ストーリーやキャラクターも魅力的だ。アクションゲームなのに、RPG的な雰囲気を醸し出しているのもすごく良い要素だ。音楽もナムコの歴代アクションゲームのように、口ずさみたくなるような陽気な曲ばかりだ。

 本作を再度プレイして思った。できるだけ早く「風のクロノア」の新作で遊びたい。携帯ゲーム機に向いていると思うので、パッケージ版でなくてもダウンロード版であれば、比較的に低コストで開発できると思う。プラットフォームゲーム(使われなくなった呼び方だが)が減りつつある昨今だが、ゲーム的遺産という名に相応しいこのマスコットたちのことを決して忘れてはならないと思う。僕の強い気持ちが、メーカーに届くことを願っている。


【グッジョブ!】【異議あり!】
主人公が可愛らしい少し短め
世界観が印象的 
アクションが個性的 
音楽が明るい 

(C)1997 2008 NBGI

□バンダイナムコゲームスのホームページ
http://www.bandainamcogames.co.jp/
□Wii版「風のクロノア door to phantomile」のページ
http://kloweb.namco-ch.net/





■ イタヲタのレトロなゲームライフ ~ハプニング満載のオタク人生~

僕のゲーマーとしての人生を懐かしさたっぷりで語っていきたい。毎回、特定の時代をセレクトして、自分の記憶への冒険をしたいと思う。最終的には1つのストーリーになる。僕というオタクのストーリー。僕という和ゲー好きゲーマーのストーリー。文章だけでなく、クライマックスのシーンをもっとダイレクトに伝えるために漫画も使うことにした。ちなみに漫画は、今イタリアで注目の若手漫画家に描いてもらった。とにかく、日本ではありえないシチュエーションについてたっぷり語っていくので、本当に面白いコーナーになると思うぞ!

今回の時代設定:1998年
イベント:バーチャルドリームに新作たっぷりの荷物が届く!
ハプニング:無名のゲームを売るための奮闘が始まる!

 日本の輸入版ソフトを扱っていたローマのゲームショップ「バーチャルドリーム」でのバイトの日々が続く。和ゲー好きの僕にはぴったりのゲームショップだった。日本から新商品たっぷりの荷物が届くたびに、店長のハイムと、最高のクリスマスプレゼントを開こうとしているかのような大きな喜びを共有していた。

 僕はバイトで稼いだお金をハイムに注文していたアドベンチャーゲームやRPGを購入するために使用していた。つまり、バイトはゲームを買うためにやっていたということだ。成人年齢を超えていたとはいえ、実際、まだ責任の重要さを知らない子供のようだった。

 ハイムが、今朝、日本から届いた箱を開いた。

 「何これ? 注文したっけ?」と、ハイムが頭を傾げた。

 「なになに?」。僕は箱の中に詰まった新作ソフトのタイトルを確認しようとした。

 「ルシファー・リング……!?」

 もっとわかりやすい言葉でいうと、“悪魔の指輪”? ゲーマーの鉄則ナンバー1、箱の裏を見て、ゲームの写真や説明文をチェックすること。早速、ハイムと一緒に箱を裏返した。そうすると、同時に口をポカンと開いてから、コメントする。

 「写真からすると、面白そうだな」
 「そうだね」
 「しかし、聞いたことがないな」

 僕の第1印象はハイムと同じだった。メーカーは少なくともゲーム分野ではそれほど有名なほうではなかった「TOSHIBA EMI」。どういうゲームだろうかと、僕は想像力を働かせ始めると、ハイムの口から次の言葉が発せられた。

 「このゲームを注文した覚えはないね。でも、返品は面倒くさいから売ってみよう。どうせ、2、3本くらいしか入ってなさそうだから……」と言った瞬間に、目の前の箱が「ルシファー・リング」でいっぱいだったことがわかった。全部で20本だった。ハイムの顔が青ざめていくことが明らかだった。ほぼ無名のこのゲームが売れるかなという心配があった。

 「頑張って、全部売るしかないな」。ため息をもらすという雰囲気だったが、次の瞬間、商魂が一気に目覚めた。

 「全部、売ってやる!」。誰に向かって言ったのかはわからなかったが、ハイムのそのカッコいいセリフに対して憧れのような気持ちを抱いた。

 「僕も頑張ります!」

 翌日。バーチャルドリームは「ルシファー・リング」の“オフィシャルショップ”になっていた。ショーウインドーには20本の箱がずらりと並び、壁には「『バイオハザード』と『悪魔城』を1つにした、あの話題作がイタリアに舞い降りた!」という、大げさな手書きのポスターが貼り付けてあった。「バイオハザード」よりもすごい? 見たこともないのに、何故それを言いきれるのか少し疑問を感じたが、それは僕のような一般ゲーマーとゲームショップの運営を背負っているオーナーとの違いだった。

 「ジョン、今日はとても大事な日だ。君もバーチャルドリームのために全力を出してくれたまえ!」
 「はい!」

 自信はなかったが、自信満々であるふりはした。その時、珍しいともいえる若い女性のお客さんが入ってきた。ハイムは僕に「お手本を見せてやる」という合図を目で送り、そのお客さんに近づいて行った。

 「特定のゲームをお探しですか?」
 「いいえ、特に……良いアクションゲームで遊びたいな……」
 「それなら、その条件にぴったり合う、できたてホヤホヤの新作があります」

 そして、ハイムは両手をこすりながら、お客さんを「ルシファー・リング」の専用ショーウインドーの前へと案内した。


 「『バイオハザード』と『悪魔城』の良いところだけが凝縮された、絶品アクションゲームでございます!」

 ハイムの言葉は、テレビショッピングでよく聞かれる甲高い声のセリフに似ていた。女性のお客さんはどうしようかと、一瞬躊躇ったかのような反応を見せたが、次の瞬間こう言った。

 「わかりました。それを下さい」

 ハイムの目が光った。その時、ハイムがまるで獲物をしとめたハンターのように見えた。彼のテクニックがどれほどすごいものなのか、これで確認できた。つまり、ゲームを売るためには物事を大げさにしなければならない時もあるということだ。

 次から次へとお客さんが入ってくる。僕とハイムはお客さんの要望を聞いて、必ず話が「ルシファー・リング」に行くように工夫した。しかし、ハイムの技術に追い付くことは無理だった。それは、次のお客さんとのやり取りでわかった。

 「特定のゲームをお探しですか?」。ハイムはいつものセリフでお客さんを迎える。

 「RPGが大好きで、『ファイナルファンタジー』のようなゲームを探しています」

 ハイムの目が不気味に光る。いや、無理だろうと思いきや、「それなら、『ファイナルファンタジー』と『悪魔城』のフュージョンともいうべき、すごい新作がございます。タイトルは『ルシファー・リング』です」

 言った! そんなことを言うにはどれだけの度胸が必要なのだろう。ジャンルが全然違うだろう。

 「そうですか。じゃあ、それを下さい」

 マンマミーア!! 次のお客さんがレーシングゲームを探していたら「それなら、『Gran Turismo』と『悪魔城』の融合ともいうべき、すごい新作がございます」と言えるのだろうか。

 永遠と感じられた1日がとうとう終わった。「ルシファー・リング」の専用ショーウインドーを見ると、10本減っていることがわかった。今朝届いた数の半分はもう売れたということだった。奇跡だ。いや、これはハイムの実力だ。ちなみに僕は1本も売れなかった。

 「明日はきっと、ジョンも売れるよ」。僕の肩に手を置き、ハイムはエールを送ってくれた。

 「明日の目標は残りの半分を売ることだ!」
 「了解!」

 ロボットアニメの戦闘シーンで耳にするセリフを同じ勢いで言った。相変わらず、自信はゼロだったが……。

 「もし、明日全部売れたら、また注文するよ」

 そして次の日、すべてのソフトが完売した。ハイムさんの商魂が、またあり得ない例えを次々に生み出していった。

 間違いだったはずの注文が、バーチャルドリームを“TOSHIBA EMIセンター”に変えようとしていた。今日の教訓はある意味、これから厳しい世の中を生き残るために役立つだろうと、その時思ったのだった……。

【番外編】

 10年以上前にバイトをやっていた「バーチャルドリーム」は、今でも営業している。店長のハイムさんも健在だ!! 髪の毛を短くカットしてイメージをチェンジしたが、いつものように一生懸命にゲームを売っていた。

 しかし、「バーチャルドリーム」の雰囲気は変わっていた。店内の構造は昔と変わらないが、変わったのは扱っている商品だ。もちろんゲームだが、過去のように日本版ソフトの姿がなく、レトロゲーム売り場以外、そのすべてがヨーロッパ版になっていた。

 

 店長のハイムさんによると、お客さんのニーズが変わったという。日本版のRPGはほとんどなく、現在最も売られているのは、お決まりのアメリカ出身の某FPSだ。ハイムさんは、最近のトレンドを気に入らず、昔のゲーム機で遊び続けているそうだ。

 「『ルシファー・リング』の事件、覚えていますか?」と質問したら、ハイムさんは「忘れるはずないじゃないか」と、爆笑しながら答えた。「バーチャルドリーム」が昔の形態に戻るという可能性は低いが、ハイムさんも僕も、日本版ゲームの専門店として復活することを願っている!





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(2012年4月13日)

[Reported by ジョン・カミナリ ]