佐藤カフジのVR GAMING TODAY!

祝日本サービス開始! 最強のバトルシム「War Thunder」のVRモードを試す

リアルな戦車&戦闘機のバトルをVRで楽しもう

「War Thunder」

 AAA級タイトルのVR対応はゲーマーにとって注目のトピックだ。ロシアのデベロッパーGaijin Entertainmentによるオンラインバトルシム「War Thunder」は、6月のアップデートでHTC Vive/Oculus Riftの両方に正式に対応し、本作が搭載する戦車戦と航空機戦の両方をVRで遊べるようになった。

 「War Thunder」は世界的に人気のオンラインゲームだが、内容がややリアル寄りなことと、日本国内では正式にサービスされていなかったこともあって知る人ぞ知るという感じのタイトルだった(以前より、やや不正確ながら日本語にも対応していたが)。それがこの8月3日より、DMM Gamesによる日本国内向け正式サービスがスタートし、遊びやすい環境が整えられる見込みだ。いま、VRでゲームを始めるには格好の題材だ。

【War Thunder: Update 1.59 'Flaming Arrows'】

「War Thunder」ってどんなゲーム?

Steamの「War Thunder」ストアページ。無料で利用できる
迫力たっぷりで緊張感のある戦車戦
リアル感あふれる空中戦

 本作は第二次世界大戦を舞台とし、戦車による地上戦と航空機による空中戦という2系統の遊びを1本のゲームに詰め込んだ基本プレイ無料のオンラインバトルシムだ。いまから遊ぶなら、DMM Gamesの公式サイト)でユーザー登録をし、クラアントをダウンロードしよう。無料でプレイできる。

 最大の特徴はリアリティへのこだわり。二次大戦の戦車のゲームとしてはWarGamingの「World of Tanks」が有名だが、「War Thunder」は同じ時代の戦車戦という題材を扱いつつも、はるかにシミュレーター寄りの内容を誇っている。グラフィックスはどこまでも写実的に描かれ圧倒的に緻密。オーディオも鉄やオイルの匂いを感じられるほどにリアリティがあり、演出要素の薄い“乾いた”音が戦場の殺伐さを表現。

 それ以上に“リアル”なのが挙動やダメージ表現だ。戦車戦の場合、発射された砲弾は史実と同様の初速で放物線を描いて飛んでいき、各国・各種戦車の砲特性が緻密に再現されている。着弾した徹甲弾は装甲貫通時に破片を撒き散らし、飛び散った破片が車内のモジュールを傷つけたり破壊する。貫通時にコースを変えた弾頭が思わぬ場所に被害を及ぼしたり、避弾経始によって跳ね返された弾頭が装甲の薄い車体上面に滑り込んで多大な被害を与える(ショットトラップ現象)なども再現。このため他のゲーム以上に狙い撃つ場所を的確に定めることが必要と、かなりマニアックなゲーム性だ。

 航空機はそれ以上にリアリティたっぷりだ。本格的なフライトシミュレーターを基盤としていて、いちばんリアルなモードではプロペラの回転トルクによる機体挙動の変化といった要素も再現されている。

 といったリアルなゲームはシムファンにとって喜びであると同時に、多くの人にとって面倒くさいのも事実。そこで本作が秀逸なのは、フルシミュレーションで複雑な操作を要求する「シミュレーターバトル」に加えて、簡単操作でプレイできる「アーケードバトル」を搭載していることだ。アーケードバトルではその名の通り、僅かなキーとマウスだけで全ての操作ができ、万人が楽しめるようになっている。それでいて、リアルなダメージモデルといった基盤の部分は本格派のままなので、巷のゲームよりずっと時間と頭を使ったプレイに比重が置かれているのがいいところだ。

非常に緻密に作られたダメージモデル。飛び散った破片が車内のモジュールを破壊する。誘爆を防ぐため搭載砲弾を減らすというテクもある
日・米・英・独・露と用意された空陸の技術ツリー。戦闘を繰り返して研究ポイントを溜め、新しい兵器をアンロックしていくしくみ。効率よく進めるために課金要素がある

VRモードの利用方法

VRモードはUI要素がやたらデカい
詳細設定画面の下部にある「VR Mode」のチェックを入れるとHTC Vive/Oculus Riftで利用できるようになる

 本作でVRモードを利用するためには、ランチャー上で詳細設定画面を開き、「VR mode」のチェックボックスをONにすればOK。これだけで本作の全機能をHTC Vive/Oculus Riftで利用できるようになる。

 出撃前のガレージ画面など、UI要素が過剰なまでに大きく描かれていてやや使いづらいが、これはOculus Rift DK2といった低解像度のHMDでも充分に文字を識別できるよう調整されているためだと思われる。HTC ViveやOculus Riftの製品版ではもっと小さく表示されても良さそうな感じだが、まあ全ての機能が問題なく使えるレベルにはあるので、大きな問題はない。

 なお、8月3日現在、Steam版では「VR Mode」をオンにしても何故かVRモードで起動しない現象が出ている。これを解決するには“SteamSteamAppscommonWar Thunderconfig.blk ”ファイルをテキストエディタで開き、“oculus:b=no”となっている行を“oculus:b=yes”に変更することで解決できることがSteamのユーザーフォーラムで報告されている。

戦闘機+VR=最高の組み合わせ

ゼロ戦でのVRテストフライト
この狭さがたまらない
視界が完全に自由なことで、非常に開放感がある
空母で発艦・着艦を繰り返しているだけでもとても楽しい

 さて、戦車と航空機の2系統を1本で楽しめる本作だが、やはりVRでオススメなのは航空機だ。本作では日・米・英・独・露の5カ国から数百機もの航空機が収録されているが、重爆撃機を除く全ての戦闘機・攻撃機等で緻密なバーチャルコックピットが搭載されている。これをVRモードでプレイすれば、一瞬にしてパイロット気分が楽しめることうけあいだ。

 操作はマウス・キーボードによる簡単操作から、本格的なフライトコントロールシステムを使った操作まで幅広くカバーされている。広くオススメしたいのは基本のマウス・キーボード操作。Wでスロットルアップ、Sでスロットルダウン、あとはマウスで行きたい方向を示すだけで自由自在に飛行が可能。ジョイスティックによる操作よりも精密な射撃もできるので、フライトモデルがある程度簡略化されるアーケードバトルでのプレイにはかなりオススメである。

 特に戦闘機のコックピットはおしなべて狭く、みっちりと操縦席におさまる感覚が楽しい。横に目をやれば力強い翼があり、スロットルを上げて加速、徐々に機体が浮き始めると地面が離れていき、「おおっ」っとなるような浮遊感に襲われる。何度味わってもすごく特別な感じのする、感動的な瞬間だ。平らな画面ではとても得られない、凄まじいほどの臨場感がある。

 VRではフラットスクリーンとはうってかわって、視界が完全に自由になるというのが大きい。頭を動かして周囲の風景を確認する。ゼロ戦のような涙滴型の風防を持つ戦闘機は、視界が非常に広いことが体験的にわかるのが面白い。後ろを向けば尾翼もしっかり見ることができ、優れた後方視界に感動。格闘戦に優れていたわけだ。それに引き換えF6Fヘルキャットのような重装甲で一撃離脱型の戦闘機は、操縦席後部が分厚い鉄板で防護されている代わりに、後ろが全く見えない(笑)。巨大なエンジンカウルがコックピット前方に位置していることもあって前方視界も狭く、よくこれで空中戦をやったものだと、これまでにない感慨もあった。このようにいろいろな戦闘機のコックピットを試していると、それぞれの特徴がさらによくわかり、それだけでも非常に楽しい体験だ。

 射撃をするにもVRならではのやりかたが必要だ。通常のフラットスクリーンでは照準器をズームして狙いやすくする方法があるが、VRモードでは存在しない。正確に狙うためには実際に頭を照準器に近づけよう。このとき、右か左の片目で照準器を捉える必要がある。銃の照門と照星をあわせるのと同じだ。片目を軽く閉じつつ、照準器に片目を合わせて、豆粒大にしか見えないターゲットを補足する。激しい空戦機動をしながらこれをやるのは、かなりの練習と落ち着きが必要だ。

 問題点としては、現在のHMDは有視界戦闘を行なうためには解像度が低いこと。ViveであれRiftであれ、コックピット内の計器もハッキリと捉えられない程度の視力、といえばいいだろうか。オーバーレイアイコンなしに1キロ先の敵機を発見するのはほとんど無理だし、300m以下の射撃可能距離でも相手は豆粒以下の大きさにしか見えない。この点でいうと、細部の情報量はフラットスクリーンでのプレイのほうがまだまだ上。

 戦闘の効率という点でいえばVRモードは1段落ちる感じではあるが、飛行することそのものの気持ちよさ、楽しさが圧倒的にアップするところに大きな価値がある。テストフライトモードで一人で飛び回るだけでもかなり気持ち良いので、ぜひみなさんも試してみよう。

いろいろな戦闘機で試してみることで、コックピットからの視界や居住性の優劣を体感的に確かめられる。VRならではの感覚だ

戦車戦のVRは恐怖度アップ! 戦場の臨場感を楽しむ

VRでの戦車は外部視点のみでのプレイとなる
レーダー画面は視界の端よりも右側にある。とっさの確認が難しいことも
どこから撃たれるかわからない恐怖との戦い

 航空機と異なり戦車ではコックピット視点がサポートされておらず、追尾視点でのVR対応となっている。そもそも戦車内の視点を実際に再現するとなれば、非常に狭いドライバースリットから外を眺める感じになり、通常視点でのプレイに比べて圧倒的なハンデを負うことになるので致し方ないところか。

 とはいえ、HMDによる圧倒的な高視野角の戦場風景はまさしく圧巻だ。巨大な戦車がリアルスケールで眼前にあり、丘陵や都市といった戦場の環境がプレーヤーを取り巻く。前線に向かえばどこから撃たれるかわからないのが「War Thunder」の戦車戦というものだが、その恐怖も圧倒的に増大する。

 勢い、画面右にあるレーダーを頻繁に見ながらのプレイとなるが、本作のレーダー等の各種UI要素はHMDで正面を見たときの視界外に配置されていて、目で追うだけでは確認できない。頻繁に首を振って見ることになるのだが、これがわりと大きな負担である。フラットスクリーンでプレイするのであればすぐに得られる情報を得られないタイミングが現れるので、俄然、未知の攻撃を受けるかもしれないという緊張感が高まる。

 というわけでVRモードは純粋に戦闘の効率を求める方向には適さないが、非常に緻密でハイクオリティな本作のグラフィックスをVRで楽しむのは、いつもと違った感覚で面白みがある。いつもはフラットスクリーンでプレイしつつも、時々口直しにVRでプレイしてみる、というのもいいだろう。

 この点で特にオススメなのは、リプレイモードの鑑賞だ。本作ではプレイした全ての戦闘がリプレイファイルに記録されるようになっていて、戦闘の模様を様々な視点で見直すことができる。VRモードで鑑賞する戦場の風景は、フラットスクリーンでは得られない大迫力。存分に活躍した戦闘をリプレイモードで見直すのにVRは最適だ。

 今後、戦艦による海戦モードの搭載もウワサされる「War Thunder」。フラットスクリーンとVRの双方で楽しめるAAA級のオンラインバトルシムとして、VRファンの皆さんにも大いに注目していただきたい。

ズーム時には充分な“視力”が確保される。VRモードで射撃精度が落ちることはない
VRモードでリプレイを鑑賞。フラットスクリーンでは得られない迫力で、激闘のシーンを堪能