佐藤カフジのVR GAMING TODAY!
VRゲームピックアップ「Minecraft Vive」
夜の不安感とモンスターの恐ろしさ! VR版「マイクラ」を試してみた
2016年6月9日 00:00
PC版だけで1億人以上のユーザー数を誇るサンドボックスゲームの王者、「Minecraft」。ゲーム内容については説明不要だろう。VRでプレイしたいゲームとしても筆頭に上がるタイトルだ。
現時点で、「Minecraft」が公式で対応しているのはOculus RiftとGearVR版だ。これらは操作にオーソドックスなゲームコントローラーを使うものになっているため、視覚だけのVR版という形。しかし、皆が本当に期待しているのは、Oculus TouchやViveコントローラーといった、VRならではのハンドコントローラーを使った完全没入型の体験ができる「Minecraft」ではないだろうか?
というわけで筆者は、Oculus Rift製品版がいまだに手元に届かないという事情もあり、「Minecraft」が公式でHTC Viveに対応するのをひたすら待っていたのだが、どうもその前にコミュニティ開発者のほうがそれを実現してしまった。それが今回ご紹介する「Minecrift Vive」だ。
「Minecrift Vive」はPC版「Minecraft」の非公式MODによるOculus Rift対応版を、さらにViveにフル対応させたMODだ。Viveの特徴であるルームスケールVRや、2つのハンドコントローラーによる操作にも完全対応。「Minecraft」内の全ての操作をVR的な作法で楽しむことができる。なお、Windows 10版には対応していない。
ソースコードは作者Automat-GH氏のGithubページで見つけることができる。MODゆえ導入は自己責任となるが、「Minecrift Vive」でネット検索すると簡易な導入手順を紹介する動画や文章、ビルド済みのバイナリを見つけることができるので、MOD導入のリスクを負える方はぜひ試してみよう。
ブロックがデカイ! リアルスケールで現われる「Minecraft」の世界
さて、VRでプレイする「Minecraft」の手触りとはどのようなものだろうか。とりあえずサバイバルモードで新しいワールドを生成してはじめてみたところ、まず地形ブロックのデカさにビックリした。
「Minecraft」の各ブロックは1立方メートルという大きさであることは周知の事実だが、平らな画面では全く実感できないものだ。それが、VR世界に立つ、自分の目の前に、本質的な意味で各辺1メートルのブロックでできた広大な地形がデーンと現われるのである。ワークベンチ1個目の前に置くだけでも、自分の腰くらいまでの高さがあり、かなりの存在感だ。
移動はルームスケールVRの範囲で歩くのと、テレポート方式のハイブリッド。左手のViveコントローラーのトリガーを引くとテレポート装置が発動し、直感的に行き先を指定してポンポンと移動できる。最長で8ブロックくらいは一気に跳べるので、慣れると通常版でダッシュするより速いし、通常版のジャンプでは登れない2ブロック上の段差にも登ることができる。
その他の操作方法もよく練られている。右手のViveコントローラーのトリガーがマウスの左クリック、タッチパッドが右クリックに相当していて、トリガーを引いてブロックを掘ったり、タッチパッドをタップして手持ちのブロックを直感的に配置できる。インベントリの操作は右手のタッチパッドで、素早くアイテムを切り替えながらの操作も可能だ。実際、VRの世界に入り込んですぐに、地面を掘る、木を回収する、ワークベンチを作ってツルハシや斧をこしらえる、という操作がすぐに習得できた。使うボタンが4種類しかないため、レガシーなゲームコントローラーで操作するよりも簡単だ。
暗闇があまりにも恐ろしい!
これならすぐに通常版と同等の感覚で手際よくプレイできそうだ……と思いきや、夜の訪れとともにVRならではの手強さを感じることになる。闇の不安感と、モンスターの圧迫感がスゴすぎるのだ。
日が暮れて周囲が暗くなってくるとどこからともなく現われるモンスターたち。ウ~という唸り声が背後から聞こえてくる。振り返ると、自分の身長と同じくらいの大きさの(でも四角い)ゾンビがグイグイ迫ってくるではないか!壁をよじ登ってくる厄介なジャイアントスパイダーも、まさにジャイアント。昆虫としてあり得ないデカさに本能的な恐怖を感じ、思わずパニックになりそうになる。平らな画面では全く得られない感覚だ。
また、「Minecraft」の夜は本当に暗い。ViveのHMDは外界の光をかなりシャットアウトしてしまうので、本当に視界全部が暗闇だ。そして周囲からはウ~ウ~とゾンビの唸り声。恐怖にかられて即席のバリケードを作ろうにも、手元が狂ってメチャクチャな場所にブロックを置いてしまうなど、焦りがさらに焦りを産む。気がつけば土ブロックでモンスターを殴っている自分に気がつく始末。イベントリにはちゃんと石の剣があるのに!
比較的安全な地表の夜ですらこれだから、未踏の地下世界に潜るのはさらに怖い。両手いっぱいの松明と、鉄の鎧完全装備を揃えても尻込みしてしまう勢いだ。「Minecraft」ってここまで怖いゲームだったっけ?
まあ、こればっかりは実際にHMDをかぶって体験してみなければわからないが、平らな画面でプレイしていた「Minecraft」の、軽く10倍くらいの緊張感が味わえる。
クリエーションの感動も、VRならさらに深い!
平らな画面では得られない高い没入感と緊張感を味わいながらサバイバルモードを生き抜くのも楽しいが、「Minecraft」の楽しみはやはりクリエーション部分だ。ブロックを配置して自分なりの屋敷や基地を作り、その壮麗さや内装の出来ばえを楽しむ、というやつだ。
その点で言うと、VRでのクリエーションはけっこう厄介だ。なにしろ全てがリアルスケールなので、ルームスケールVRの2~3メートルの範囲ではすぐにブロックを配置し尽くしてしまい、頻繁にテレポートをしながら操作することになる。ブロックを2、3個置いてはテレポート、またテレポートという感じである。あまり小刻みにテレポートしていると、たまに方向感覚を失ってしまうこともある。
また、ブロックの配置位置はハンドコントローラーによるポイントで指定するのだが、これが非常にアナログな操作であるため、わりと簡単に手元が狂って変な場所にブロックを置いたりしてしまう。特に屋根など、高い位置での作業が難点だ。慣れればそれなりにはなるのだが、今度は長時間作業における肉体的負担というのが問題になってくる。作業中、ずっと腕を上げ続けるのはわりとツラい!
ということもあって、純粋にクリエーションの効率でいえば、平画面のほうが上だ。小刻みに並行移動しながらポポポンとブロックを配置していくような効率性は、明らかにマウスとキーボードのほうが上である。同じサイズ・間取りの建物を作る場合、VRでは3~4倍の時間がかかる印象だ。
といった苦労はあるとはいえ、いったん完成した建物を楽しむのは、やっぱりVRが圧倒的に感動的である。眼前に広がる邸宅の威容。屋内に入れば、柱、窓、屋根、色とりどりの家具類が実寸で。安全な壁に完全に囲まれる安心感はリアルスケールのVRでしか得られない感覚で、「おお……、ここが我が家か!」と、異世界において自分だけの“巣”に閉じこもる感覚を非常に、それはもう非常に深く味わえるのだ。ああ、もうVR以外で「Minecraft」をプレイできない……。
苦労して作り上げた展望台から見る広大な風景も、VRならではの迫力で楽しめる。足元に目をやれば、現実の高所恐怖が到来して足がすくむ。なお、ルームスケールVRの範囲で歩きまわりながら、足を踏み外して落下することも可能だが、この「Minecrift Vive」MODでは落下ダメージは無しの設定となっているので、落ちて死ぬことはない。安心して足を踏み外そう。
MODならではの問題点も
このMOD「Minecrift Vive」はやや古い本家バージョンの1.7.10をベースにしているため、本家最新のバージョン1.9系列で利用できるクリエーションデータベース「Minecraft Realms」が利用できないという痛い弱点がある。「Minecraft Realms」ではたくさんの壮麗な建物や地形、冒険要素のある世界などなどを手軽に導入して楽しむことができるので、それができないのはだいぶ残念な感じである。
最新バージョンにて完全なVR対応を得るためには本家による公式対応が必要になりそうだが、そこは「Minecraft」の版元であるMicrosoft次第といったところか。MicrosoftにはOculusとの深いパートナーシップが存在するため、ハンドコントローラーを含めた公式サポートはOculus Touch版が最初になるかもしれない。願わくば、幅広いVRシステムに対応することで、Oculusのみならず、HTC ViveやPlayStation VR(PSVR)など様々なVRシステムで「Minecraft」をプレイする面白さをたくさんの人に届けて欲しいものだ。