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「ワールドクラブ チャンピオンフットボール インターコンチネンタルクラブス 2008-2009」

【SIDE-A】連載第3回


  • ジャンル:スポーツ(サッカーゲーム)
  • 開発・発売元:株式会社セガ
  • 操作デバイス:カード移動、戦術ボタン×5、データ表示ボタン、キープレーヤーボタン、シュートボタン、キーパーボタン
  • 構成:サテライト席8席(4サテライト版は4席)+メインモニター、ALLNet対応
  • 料金:1プレイ300円、2プレイ500円、スターターパック1,000円
  • 稼動日:稼動中
【ゲームの内容】

 欧州および南米のトップチームと所属選手が実名で登場するサッカーゲーム。ジョイスティックなどで選手を直接操作するのではなく、フィールド上に“実在する選手のカード”を配置して、それを動かしたり、戦術ボタンなどで指示を与えながらプレイする。練習と試合を繰り返しながらチーム経験を積み重ねていき、チームを強化してカップ戦での勝利を狙う。試合後には選手カードが1枚排出される。



 【SIDE-A】第3回目は、レギュラーカードの選手でレアチームスタイルを使いわける一例をご紹介したい。SIDE-Aが想定する趣味チームは、そもそもキープレイヤー(KP)戦術やレアチームスタイルを前提に選手選考を行なうことはほとんどないと思われる。「この選手が好き」または「以前から興味があった」、「このクラブを応援してます」などの観点からチーム作りが始まるのが常で、必然的に「コレがあれば心強いよね」といったKP戦術が常にあるとは限らない。使用条件を満たすまで結構な手間がかかるレアチームスタイルともなれば尚更で、ゆえに「最初から興味なんてない」という人がいてもおかしくない。

 だが、孫氏の兵法書にも「知彼知己者、百戦不殆、不知彼而知己、一勝一負、不知彼不知己、毎戦必殆(敵を知り、己を知れば、百戦危うからず)」とある。“やる”と“やられる”では体験や知識量が異なるし、カードパワーの差が顕著な今回のバージョンでは、それを少しでも縮められる“実体験や知識に基づいた工夫”は、なるべく多いほうがいい。WCCFを積極的に楽しむという意味でも、レアチームスタイルについて考察を深めることは、決して損にならないはず。もしかしたら、それが新たな楽しみ方やプレイスタイルを導き出すヒントになるかもしれない。今回はレギュラーカードの選手を例にしているので、興味がある人はぜひ1度お試しいただきたい。きっと新しい発見があるはずだ。


※注 …… 本記事の内容は、あくまでも筆者自身がプレイして感じたことに基づいて記述しているものです。状況やカードなどさまざまな要因により、記事どおりにすべてが機能するわけではないことを、あらかじめお断りしておきます。


■ サンプルチーム ~フェイエノールト(2007-2008)+α~

 サンプルチームの編成にあたっては、色々と迷ったが“レアチームスタイルを持つ選手が所属するクラブチームを母体にしたい”ということで「WCCF IC 2007-2008」版フェイエノールトに決めた。理由は「90分フルタイムで働ける選手を軸に据えたい」という点に基づく。いくら使いわけるといっても、どこかに軸足を決めておかないと効果が半減してしまうため、中心となる選手は90分フルにピッチで戦えるタイプが望ましい。

 中心選手は、ミッドフィルダー(MF)のデニー・ランツァート。KP戦術はショートパスワーク。個人の特殊能力が星(☆)5つ、戦力グラフ「スピード」と「支配」がMAX(震撼)になると、KP戦術がレアチームスタイル「クロックワーク」に変わる。今回はレアチームスタイルの使いわけがテーマということで、追加する選手はレアチームスタイルに必要な戦力グラフの項目がかぶるものに限られる。今回はレギュラーカードから選ぶということで、シャビ・アロンソ(WCCF EC 2005-2006 / レアチームスタイル:ビッグアーチ)、ダマーカス・ビーズリー(同2005-2006 / レアチームスタイル:ランダムランニング)、さらにはオマケとして、レアチームスタイルの使用条件にオフェンスとスピードが必要とされるダゴベルト(WCCF IC 2008-2009 / レアチームスタイル:ファントムドリブル)を編入させてみた。これで使いわけが可能なレアチームスタイルは4種類になる。

    【母体チーム(WCCF IC 2007-2008 フェイエノールト)】
  • GK:ヘンク・ティメル、DF:アンドレ・バイーア、ティム・デ・クレル、ケビン・ホフラント、セルジーニョ・フレーネ、MF:ダニー・バイス、ニッキー・ホフス、デニー・ランツァート、テオ・ルシウス、ヌリ・シャヒン、FW:ロイ・マカーイ、アンドウェレ・スロリー、マイケル・モルス

    【追加選手】
  • シャビ・アロンソ(WCCF EC 2005-2006 リヴァプール / レアチームスタイル:ビッグアーチ)、ダマーカス・ビーズリー(同2005-2006 PSVアイントホーフェン / レアチームスタイル:ランダムランニング)、ダゴベルト(WCCF IC 2008-2009 サンパウロFC / レアチームスタイル:ファントムドリブル)

【デニー・ランツァート】【シャビ・アロンソ】【ダマーカス・ビーズリー】【ダゴベルト】
クロックワークビッグアーチランダムランニングファントムドリブル


 ここから先は、各レアチームスタイルの特徴を簡単に説明した後、使いわけの基本的な考え方を述べたい……のだが、実践される方にまず覚悟して欲しいのは、レアチームスタイルの使いわけを準備するには“相当な手間と時間がかかる”ことだ。

 今回のサンプルチームでは、必要なグラフ(3項目)をすべて震撼させ、各選手の特殊能力を星5つに育てるまで約70~80試合を要した。ダゴベルトを加えなければオフェンスを震撼させる手間がはぶけるが、それでも確実に50試合以上はかかる。ただし、今回使用したICカードの監督レベルがIML:Eだったため、監督レベルが高いICカードを所持しているプレーヤーであれば、もっと楽に戦力グラフを伸ばせるだろう。



■ クロックワーク

 基本となるショートパスワーク同様、もっとも近くにいる味方に最優先でパスをつないでいく。近くに適当な味方がいないときは、ボールを持ったままパスルートを探すように攻めあがるのが常だが、タイプによっては大きく前に蹴りだしてしまうこともある。

 クロックワークは、ショートパスワークに比べるとパス精度がより高くなる印象が強い。パス自体のテンポも若干早くなるようで、選手カードを密着させるように配置すれば、小気味よくポンポンとショートパスをつないでいく。ワールドトロフィーなどでも、FW~OMFの選手カードを縦に3枚ピッタリ並べる配置とクロックワークで執拗に攻めてくるプレーヤーをよく見かける。競り合いに強くチェイシング意欲が高いOMFを選択すれば、以前のバージョンのショートカウンターよろしく攻撃サイクルの速さとカードパワーで圧殺できるというわけだ。

 ただし、前述のようなアプローチは趣味チームに不向きのため、FW3枚とOMF1枚を変則的に並べ、ボールと選手をダイアゴナルに動かすことで、しっかり相手を崩していくアプローチをオススメしたい。FW3枚+OMF1枚それぞれの間隔は、本稿右または下のスクリーンショットを参考に、それぞれ人選などを踏まえて独自にアレンジを加えていただくのが1番手っ取り早い。基本的なボール回しは、まず戦術ボタン無点灯で要領を掴むこと。対人戦では、相手のカード移動やスペースを見て、素早く戦術ボタンによる指示で攻撃ルートに変化を加えていく。中央にグイと寄せたならサイド、逆なら中央が基本だが、パスのテンポが早いため「常に1歩先」を踏まえて指示を与えていくのがコツだ。


ワールドトロフィーで見かけるクロックワーク使用者はFW2枚とOMF1枚を縦に並べる配置が定番化しているようだが、カードパワーに頼れない趣味チームが同じことをしても意味がない。ゆえに、ダイアゴナルな動きを加えることでしっかりと相手DFを崩していきたい




■ ビッグアーチ

 ロングパス重視同様、ミドルサード~アタッキングサードの選手カード配置は、かなり広めに間隔をあけること。ショートパスはほとんど見られなくなるが、無理にロングパスを放り込むといったわけではなく、戦術ボタン無点灯を活用すればミドルパスを上手に折りませてくれる。

 ビッグアーチは、ロングパス重視よりもパス速度が向上し、各選手の視野もより一層拡大されるよう感じられる。通常では逆サイドが視野に入らない選手も余裕でサイドチェンジを行なえるようになるなど、左右に大きくボールを展開できる。秀逸なのは、選手によっては本バージョンでほぼ不可能と思われていた「ほぼフリーになったサイドの選手にロングパスを送れる」可能性が出てくること。KP戦術「アザーサイドアタック」を効率よく行なってくれるといった印象で、逆サイドで一瞬タメを作ることができれば、ボールが渡った直後、瞬時にKPを切り替えることでアタックの成功率向上が見込まれる。

 ただし、フィード先のエリアをWMVPカンナヴァロなどトップクラスのDFにカバーリングされてしまうと「これは完璧にフリーだろう!」と思われたタイミングでも余裕でチェックされてしまうことある。大きくワイドにボールを動かすため、フィードした瞬間の逆サイドの細かい動きが確認できず、どんなふうにカバー&チェックされているのかよくわからないのだが、このあたりは逆サイドでボールを受ける選手のポジションを少しずつ調整することでコツを体得していただければ、と思う。

 ビッグアーチを使うタイミングでもうひとつ有効なのは、相手コーナーキックをクリアしてカウンターを狙うとき。ロングパスのスピードと精度が向上しているため、前線のアタッカーにスピードがあればカウンターの成功率がより高くなる。ボールが収まったら瞬時に他のKP戦術に切り替え、一気に相手ゴールを陥落させたい。


ロングパスの精度とスピードが向上。まともに機能しないと思われていたサイドチェンジも、これなら(相手DFの人選次第だが)可能性が出てくる。その特徴を最大限に活かすためにも、アタッキングエリアにおける選手同士の間隔は広めにとったほうがいい



■ ランダムランニング

 ムービングパスワークの特徴が素直にエンハンスされるといった印象。ボールを動かしながら前方のスペースを突いていく縦への推進力が向上するほか、地味ながら“競り合いに強くなる”という点も見逃せない。トーレスやメッシなど突出した選手しか使ったことがない人は判別がつきにくいだろうが「この選手、もう少し、あとほんのちょっと競り合いに強ければなぁ……」といった選手の起用に頭を悩ませていたプレーヤーであれば、そのわずかな違いが如実にわかるはずだ。

 基本的に、プレーヤーが細かく指示するというよりは、戦術ボタン無点灯で“いってこい!”がしっくりくる。戦術ボタンによる指示が有効なのは、サイドアタックを視野にいれているときくらい。縦の推進力とボール回しで一気にゴールまで襲い掛かるなら無点灯、中央と連携しつつサイドを崩したいときは、ランダムランニングで向上する“縦への推進力”を有効活用し、ダイレクトでボールを動かすタイミングに合わせて戦術ボタンによる指示を送りたい。

 個人的には、ランダムランニングがもっとも活かされる組み合わせは、ドリブラー2人+ダイレクトパスが得意なOMFではないかと感じている。後方からボールを受けたOMFがダイレクトパスでドリブラー2人にギアをいれ、あとはワンツーなどを織り交ぜながらワンアクションで瞬時にアタッキングサードを侵食。高速ドリブラー同士の相性がよければ、その破壊力はさらに増す。副次的効果としては、先手を打ってボールを動かしていくため、相手DFのファールを誘いやすいというものがある。足が速いアタッカーほど効果的(?)だが、怪我をしやすい選手を起用している人は注意が必要だ。


縦方向への推進力が増す。地味ながら競り合いの強さが向上する点もポイント。ドリブラーと相性がよく、後手を踏んだ相手DFが後ろからつっかけてファールというケースも珍しくない



■ ファントムドリブル

 今回組み込んだ4種類のなかで、ある意味“1番地味”かもしれないレアチームスタイル。ベースになっているバイタルエリアドリブルと効果はほぼ同一で、その効果が若干強まっているかな? といった印象。ただし、これらの効果は内部パラメータで“ドリブルスキル(もしくはそれに類するもの)”を持っている選手でしか実感が得られないのが難点。逆にいえば、ドリブラー中心で攻撃を組み立てるなら、確実な向上が見込めるともいえる。

 スキル名称から、先入観で「なにがなんでもドリブル突破しかやらなさそう」と思われがちだが、実際にはそんなことはない。前方のオープンスペースに味方がいればボールを出すし、戦術ボタンの指示にも素直に従ってくれる。使用中は極端にスタミナが減るといったこともなく、癖がないぶん逆に物足りなさを感じる人さえ少なくなさそう。常時KP戦術をコレにしておくのではなく、ある程度まで他のKP戦術でお膳立てをしておき、一歩先を読むイメージでバイタルエリアに差し掛かる直前に「ファントムドリブル」に切り替えるといった使い方が有効だ。



■ 長短の攻撃ルート、ストロングポイントを変化させてダイナミックに攻めよう

 選手同士の間隔を広くあけ、ボールを大きく正確に動かしダイナミックに攻める「ビッグアーチ」、逆に密着させることでパスワークの精度が増す「クロックワーク」、中盤から上で満遍なく高い効果を発揮する「ランダムランニング」、アタッキングサードにおけるドリブラーの価値を高めてくれる「ファントムドリブル」。それぞれ相手のカード配置に対応させることで、通常よりも高い効果が期待できる。中央を固めたらビッグアーチでワイドに、逆に広く受けてくるようならクロックワークでピンポイントなど、状況に応じて大胆に攻め手を変えていけば、その過程で新しい発見などもあるかもしれない。

 ただし……手間と時間をかけて複数のレアチームスタイルを組み込んでも、こと対人戦においては、U-5Rやフリーでガチムチに整えられたトップクラスDF陣はそう簡単に崩せるものではない。ありとあらゆる手を尽くしたつもりでも、“個”ですべて跳ね返されてしまうことは、本バージョンにおいて少しも珍しくない。「そこまでやってもダメって、じゃぁKP戦術の使いわけに何の意味があるの?」と思われるかもしれないが、そもそも「合理的なほうが確実に勝つ」のであれば、それはもはやサッカー(もしくはそれに類するもの)ではないわけで、意味の有無を問うこと自体がナンセンス。問われるのは「質」であり、仮に成果が得られなかったとしても、高めるために費やした過程や結果が「無意味」などということはない。

 不条理が支配するなかで、勝ち負けそれぞれの要因を都合よく解釈することなく、責任を転嫁せず、少しでも知識や情報の精度を高めたいなら、やはり“体験やヒントを元に、ひとつずつ地道に考察を重ねていく”のが1番だと思う。少しでも質を高めるべく、ゲームをより楽しむべく、わずかな余地でも可能性を探っていく。特に“レアチームスタイル”なんて大仰な名前がついたシステムは、それこそ伝聞などではなく“我が身で試してこそ”ではないか。空振りだったとしても、その体験は必ずや今後のプレイの肥やしになるはずだ。


※次回【SIDE-B】第3回目は3月19日に掲載予定です。


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(2010年 2月 26日)

[Reported by 北村孝和 ]