【連載第11回】オンラインゲームの楽しさを再認識しよう!


てっちゃんのぐだぐだオンゲーコラム


「スター・ウォーズ ギャラクシーズ」で体験した“世界の終わり”
僕の心を打ちのめしたジェダイの“職業化”とレベル制へのルール変更


 オンラインゲームの様々な面を取り上げていく「てっちゃんのぐだぐだオンゲーコラム」。オンラインゲームの大きな特徴の1つは、「変化し続ける」ということにある。不具合の修正や、改善などの小さなアップデートから、新しいモンスターやストーリー、さらには広大な大陸の追加までもが行なわれる。そして時には世界のルールそのものすら変わり、価値観が一気に喪失することもある。

 今回は、「スター・ウォーズ ギャラクシーズ」(以下、「SWG」)から、世界そのものが変わったアップデートを取り上げたい。ゲームの特徴そのものががらりと変わり、結果として、僕自身タイトルへの情熱を失ってしまった。苦い記憶であるが、これもまたオンラインゲームの一風景だ。この経験はプレーヤーにとって、開発者にとって「オンラインゲームとは何なのか」ということを考える良い機会になった。


■ 日本運営終了直前の衝撃アップデート。「今日からはみんなジェダイでプレイできます!」

「スター・ウォーズ」の世界を舞台としたMMORPG。映画と同じように、様々な異星人が行き交う

 「SWG」は米Lucas Artsが開発し、米国では米Sony Online Entertainmentが運営するMMORPG。北米では2003年からサービスがスタートし、日本では2004年の12月から始まったものの、会員数が伸び悩み1年ほどで撤退してしまったタイトルだ。

 ただ、「SWG」がMMORPGとして魅力がなかったかというと、決してそうではないと僕は思っている。その名の通り「スター・ウォーズ」の世界を再現している作品で、映画のエピソード4とエピソード5の間の時代を舞台としている。ダース・ベイダーやレイア姫も活動しており、彼等からクエストを受けることもできた。

 当時のエピソード1の舞台となった惑星ナブーや、ルークの故郷の惑星タトゥイーン、他にもいくつもの惑星が登場し、プレーヤーは惑星間を行き来し、冒険を繰り広げた。さらに、宇宙空間は本格的なスペースコンバットシステムとなっており、エックスウイングやタイファイター、ミレニアムファルコンの同型機等にも乗ることができた。

 ゲームシステムは、「ウルティマオンライン」と同じようなスキル制で、プレーヤーは多彩なスキルから自分の求めるキャラクター像を作り出していった。生産が充実しており、武器や防具、薬品に料理、さらには宇宙船まで造ることができた。また、ダンススキルを駆使することで踊れるダンスは、踊りを見せた人の力を増すというユニークな能力があり、戦闘系プレーヤーは戦闘に出る前に、まず酒場で彼等の踊りを見て能力を増幅してもらってから旅立つ、という独得な光景が繰り広げられた。

 そんな魅力的なゲームだったが、日本では人気を得られなかった。当時、基本プレイ無料のアイテム課金のMMORPGが大きく成長する時代であったし、欧米産タイトルはあまりユーザーを得られない、特にSFは日本では受けないというジンクスから逃れることはできなかった。

 しかし、実は米国でも本作は「迷走」し始めていたのである。「SWG」は2004年の4月に戦闘要素に注力したアップデート「コンバット・アップグレード(CU)」が導入され、これまでとは戦い方やバトルバランスが大きく変わった。ユーザーの間では戦闘が面白くなる、ということで期待の声も大きかったのだが、テイマーが操る動物が動かなくなるなどの大きなバグがあり、ここで運営側は大きな批判を受けることになった。さらにその状況のまま追加パック「エピソード3 ウーキーの咆哮」が実装され、さらにバグが上乗せされる状況になってしまった。日本のプレーヤーにとっては、より深刻だった。なぜならサービス開始後5カ月でゲームが大きく変わってしまうことになってしまったからだ。

 しかし、混乱はこれに留まらなかった。この上に開発元のLucas Artsはこのアップデートからたった半年で、ゲームの根幹を変えてしまう「ニュー・ゲーム・エンハンスメンツ(NGE)」を実装してしまったのだ。NGEは端的に言えば、「SWG」のスキル制を廃止し、新たに職業を導入し、さらにレベル制のゲームとなった。つまり、「ウルティマオンライン」だったゲームが、一夜にして「エバークエスト」に変わってしまったのだ。

 ゲームをスタートすると、いきなり職業選択画面が出て、9つの職業からプレーヤーを選ぶ。選択画面には職業イメージとして、ルークやハン・ソロ、レイア姫などが描かれていた。職業としては重火器に長けた「コマンドー」や、トリッキーな戦いができる「スマグラー」、治療に秀でた「メディック」等があり、そして何より驚かされたのは、いちばん最初のところに、「ジェダイ」があったのだ。

 ジェダイが職業として選べるというのはかなりショックだった。何故ならば、ジェダイはこれまでの「SWG」ではいわば隠し職業で、難しいクエストを数カ月かけてクリアしなくては就くことのできない全ユーザーあこがれの“上級職”だったからだ。しかも僕はあと少しで、ライトセーバーが振るえるジェダイになれるはずだった。しかし、NGE以降では、一般的な職業になってしまったのだ。結果として……


イラスト:ミズノ マサト

「こ、これはどうなの?」

 としかいいようがない状況になってしまったの。街中にジェダイ達が闊歩するという異常な光景が現われたのだ。ちなみにこの絵はわかりやすく見せるためにあえてライトセーバーを抜き身で表現して、実際はここまで露骨な風景ではないのだが、気持ち的にはまさにこんな感じだった。周りの人達がみんなジェダイ。僕も新キャラクターとして、ジェダイを選択した。みんながジェダイになりたいという気持ちもわかる。しかし、僕がなりたかったのはこのジェダイではないし、この風景はもはや僕が暮らしたかった「『スター・ウォーズ』の世界」ではなかった。

 加えて、僕のキャラクターの「弱さ」が僕を打ちのめした。このアップデートにおいて、キャラクターの強さの上限が遙かに高くなり、結果として現在のキャラクターが相対的にかなり弱く設定されてしまったのだ。これまでの「SWG」で僕が一生懸命育て上げた、“ポールアームを中心に、銃も使える戦士。少し回復ができて、薬も生産できる”という自分が目指したキャラクターは消えてしまった。そして、僕の手元には弱っちい、ジェダイとはとても呼べないような未熟な戦士だけが残ったのだ。

 これらの変更は、かなりショックだった。このアップデートの前、日本運営のエレクトロニック・アーツは日本でのサービス中止を発表しており、キャラクターを米国のサーバーへ移すサービスの実施をアナウンスしていた。僕自身、米国サーバーでプレイを続けるのも良いかもしれないと思っていたのだ。しかし、この変更はあんまりだった。僕はスキル制の、多彩なキャラクタービルドが楽しめる「SWG」がプレイしたいのであって、職業で固定されたレベル制のゲームをプレイしたい訳じゃなかった。誰でもジェダイになれるのは、やはり違う気がするのだ。

 僕の中で「SWG」への情熱が、瞬間的に完全に無くなったのを今でも覚えている。ルールが変更されなければ、日本の運営が終了した後も僕は「SWG」を続けていたかもしれない。しかしこのダブルパンチは、僕の「SWG」への情熱を完全に消し去ってしまった。僕はこの後、日本サービス終了のプレーヤーイベントに参加する以外は、もうログインしなかった。ルール変更に関しては、米国の多くのプレーヤーにも衝撃を与えたようで、NGEを境に、プレーヤーが激減したという海外のニュースを見た。それを見て当然だと思った。

 何故こんな変更をしたのだろうか? 開発者側の立場に立てば、今後さらに続けるために、キャラクターをずっと育て上げるシステムが必要だったというのはわかる。スキル制のゲームの場合、キャラクターのスキル上限は決まっており、レベル制と違い、永遠にキャラクターを強くしていく縦方向の進化が難しくなる。しかしユーザーはもっともっとコンテンツを求める。より強い敵を出すためには、レベル制の方がバランスは取りやすい。

 この変更に関して、海外の記事では開発者が「ライトなファンに向けてもっとシンプルなゲームを提供したかった」というコメントも寄せていた。この変更により、誰でもジェダイになり、レベルアップすればみんなが同じように強くなっていくことができるようになった。生産システムも簡略化され、アイテムはモンスターのレアドロップにより強い武器が作れるように変更されたという。

 結果としては、「SWG」は北米で現在もサービスし続けている。サーバー統合が行なわれ、ユーザー数は当時より減っているようだが、現在でもサービスが続いているのは、このアップデートの方向性があってこそといえるかもしれない。僕はプレイを辞めてしまったが、mixiで日本プレーヤーによるSWGコミュニティーがあり、日本プレーヤーの1部は現在も北米サーバーでプレイを続けているようだ。

 それでも僕は時々思うのだ。違った落としどころ、答えはあったんじゃないかと。僕は、以前の「SWG」が大好きだった。だからこそ、この根幹の変化についていけなかった。MMORPGは現在も進化し続けているが、MMORPG史の中でも「SWG」程の根幹を変えるアップデートは例がないのではないかと思う。僕としては他のMMORPGで同じような天変地異が起こらないことを願うばかりだ。


■  てっちゃんの割とどうでもいい話 「憧れのミレニアムファルコン」

友人のYT-1300を撮影。機内にも入ることができるのだが、ゲームでは戦闘ばかりで、“運び屋”のロールプレイ要素はなかった。

 ミレニアムファルコンは「スター・ウォーズ」で出てくる乗り物の中で、1番好きな船だ。既存の「船」という概念に囚われないデザインは、子供の時はちょっと理解できなかったが、大人になってから、全体の細かなモールド、左右非対称のデザインがかっこよく感じるようになった。なによりも「形はぼろだが、宇宙一早い」と劇中でハン・ソロが語るほどスピードに特化させた、改造宇宙船という設定にしびれた。

 「SWG」では同型のYT-1300という宇宙船が手に入れられる。しかし、「SWG」の宇宙船は、宇宙を駆けめぐり荷物や人を運ぶ、といった要素がなく、戦闘要素のみだったために僕の求めるミレニアムファルコン像とはかけ離れていて、魅力が薄かった。加えてこの機体を手に入れるには中立勢力でなくてはいけないのだが、所属ギルドが反乱軍だったのでとうとう手に入れることはなかった。

 それならば現実で、“おもちゃ”を手に入れようかとも思っていたのだが、劇中のクオリティーに近づけるためか、2万円から1万5千円と高価でサイズも大きい商品ばかりだったため2の足を踏んでいた。

 ところが、この記事を書くにあたって、1年前に出た定価5千円のプラモデルの存在を思い出した。こちらは完成品の写真から、作りが細かく、難易度が高そうで購入をためらっていたのだが、今回公式ページで詳しく調べたら、パーツ数もそれほど多くなく、色を塗らなくても雰囲気はたっぷりであることを知ってしまったのだ! 興奮しながらたった今、ネット注文してしまった。僕の心にずっとひっかかっていた「ミレニアムファルコンが欲しい」という願いは、ようやく遂げられそうである。



~今回ぐだってしまったオンラインゲーム~

「スター・ウォーズ ギャラクシーズ」

日本運営終了直前のプレーヤーイベントには、沢山のプレーヤーが集い、別れを惜しんだ

 「スター・ウォーズ ギャラクシーズ」は、米Lucas Artsが開発し、米国では米Sony Online Entertainmentが運営するMMORPGだ。時代設定はエピソード4とエピソード5の間に当たり、その時代の宇宙で生活を楽しむことができる。反乱軍か帝国軍に所属しRvRを繰り広げることも可能で、レイア姫やダース・ヴェイダーといった映画のキャラクターと出会うこともできた。

 「SWG」の大きな特徴は、プレーヤーの使う装備や武器、薬品、さらには宇宙船までプレーヤー自身が作る事ができ、独得の経済社会を形成していた。実装されていた惑星の多くはどこにでも家を建てることが可能で、ギルドによるプレーヤータウンが作られていた。プレーヤー達はプレーヤータウンを訪れ、自分に合う様々なアイテムを買い、お気に入りの商店を見つけ、店主との交流も楽しんでいた。

 運営時には映画「スター・ウォーズ エピソード3」の大ヒットにも関わらず、日本では人気を得ることができず、前述の運営側のアップデートの混乱もあり、日本での運営は終了し、北米でもかつては大きな人気を得ていたものの、現在はプレーヤー数の減少によるサーバー統合が行なわれている。


【スクリーンショット】
タトゥイーン、ナブー、エンドアなど映画で出た惑星の他、設定に語られていた星や、スピンオフ小説の舞台など多彩な星が冒険の舞台だ
右は商人の家。商品を飾り立てている。中央はYT-1300の内部で、座っているのはこの船を造ったプレーヤーだ。右はビークルを並べた“中古車販売場”。ゲームの場所ではなく、プレーヤーによるロールプレイだ
左と中央は宇宙での戦闘の様子。おなじみのメカが登場する。右はエンターテイナーの楽器だ。映画の雰囲気が細かいところまで活かされている

LucasArts and the LucasArts Logo are trademarks of Lucasfilm Ltd. Star Wars Galaxies is a trademark of Lucasfilm Entertainment Company Ltd. (C)2002-2004 Lucasfilm Entertainment Company Ltd. or Lucasfilm Ltd. & TM as indicated. All rights reserved.

(2011年 2月 23日)

[Reported by 勝田哲也]