【連載第70回】韓国最新オンラインゲームレポート
Blizzard、「StarCraft II」クローズドβテストレポート
国民的ゲームの最新作に韓国内で話題沸騰、新「Battle.net」も実装でいよいよ完成間近か
米Blizzard Entertainment(以下、Blizzard)は2月18日、現在開発中のリアルタイムストラテジー「StarCraft II」(以下、SC2)のクローズドβテストを北米、ヨーロッパ、アジアの3地域において開始した。CBTの参加者はサーバーの状況を見ながら継続的に行なわれており、今なお抽選によって参加者は増えつつある。参加者の総数やβテストの終了日は未定だ。
今回のCBTでは、Blizzardのマルチプレイフラットフォーム「Battle.net」の新バージョンと、全種族のマルチプレイモードが盛り込まれていた。新しい「Battle.net」では、自分の成績が記録される機能を備え、ランキングを競える1対1と2対2のラダーゲームと成績と関係なしに楽しめるカスタムゲームの2タイプの対戦を楽しめるようになっていた。一方、マルチプレイに関しては、「SC2」のマルチプレイは最大8人で楽しめるようになる予定だが、CBTの段階では最大4人までで、マップも4人用までが実装されていた。
韓国では前作「SC」が大ヒットを記録し、今なお高い人気を誇っているため「SC2」に対する期待も高く、連日のように各所で話題が提供されている。韓国のストリーミングサービス「Afreeca」では、「SC2」の自らのプレイ映像をストリーミングするCBTユーザーが多かったり、韓国のRMTサイトでは「SC2」のCBTアカウントが高額で取引されていたりする。そして、プロゲーマーたちも早くも「SC2」のプレイに取り組み、Ladderの上位を記録していた。本稿では「SC2」のCBTレポートから、韓国市場での反応についてまで、幅広くお伝えしたい。
■ 「SC2」のCBTは北米、ヨーロッパ、アジアで同時にスタート!!
「SC2」韓国語版のログイン画面 |
「SC2」は、「Terran」、「Zerg」、「Protoss」の3種族による戦いを描いたRTS「Starcraft」(以下、SC)の続編だ。プレイスタイルは変えずにグラフィックスを2Dから3Dに刷新し、各種族も新しいユニットと新しい能力で調整が行なわれている。
「SC2」は、いわゆるオンラインゲームではなく、通常の流通網を通じて販売されるパッケージゲームとなる。「SC2」では、「Terran」、「Zerg」、「Protoss」という3種族ごとに、別々のパッケージとして発売される予定となっており、各パッケージには3種族いずれかのキャンペーンと3種族全部プレイ可能なマルチプレイが盛り込まれる予定となっている。
最初に発売される「Terran」のキャンペーンが盛り込まれた「Starcraft II:Wings of Liberty」は、今年の第2四半期に発売される予定で、韓国を含む海外展開のためのローカライズ作業も本格的にスタートしている。なお、「Zerg」のキャンペーンを盛り込んだ「Starcraft II:Heart of the Swarm」、「Protoss」のキャンペーンを盛り込んだ「Starcraft II:Legacy of the Void」の発売日は未定のままとなっている。日本発売に関しても未定だ。
「SC2」のCBTの募集は、実は2009年5月に行なわれており、募集から9カ月後のスタートとなる。北米、ヨーロッパ(オーストリア地域を含む)、アジアの3つのサーバーで同時に行なわれ、参加者は従来の「Battle.net」とは違い、所属地域以外のサーバーには接続できないようになっている。
このため、全世界での規模は不明で、Blizzardも全体の参加人数、具体的な対象地域について明らかにしていないが、アジア地域に限定すると、「Battle.net」で約2,600ものセッションが行なわれており、参加者の殆どはBlizzardの子会社がある韓国と台湾のユーザーだった。ちなみに日本サービスは今のところ検討されていないようで、βテストの募集も行なっておらず、日本からの接続を遮断しているため、現時点では日本から接続することすらできない。
今回のCBT中の「SC2」を始めるとログイン画面からスタートする。CBT参加者はあらかじめ「Battle.net」のWEBサイトで作っておいたアカウントで新「Battle.net」にログインした。新「Battle.net」ではマッチングシステム、自分のプロファイル管理、フレンドリストと限られた機能だけ実装され、こちらもまだβテスト中といった趣だ。まずは、ゲームのプレイを通じて各種族をレポートして行こう。
CBTの「Battle.net」では、従来のようにチャットをするためのロビーがなく、希望を出したらすぐゲームが始まるようなスタイルになっていた |
■ 各種族ごと、異なる特殊能力が追加された!「SC2」最新バージョンをチェック
今回のCBTでは、最新バージョンで3種族をプレイできたことがもっとも大きな収穫だった。「SC2」には、前作に登場しなかった新ユニットが多数登場するが、ユニットの組み合わせによる多様な戦術と、スピーディーなゲーム展開の中で生まれる一瞬一瞬の駆け引きなど、前作の楽しさはそのままだった。今回新たに気付いた特徴としては、各種族は特殊能力を1つずつ持っていて、それが各種族の新たな個性となっているところだ。
まず、「Terran」の場合は、本拠地である「Command Center」を「Orbital Command」にアップグレードすると3つの能力が使えるようになった。まず、1つ目は「SC」でもあるどこでも一時的に一定範囲を見ることができる「Scan」、2つ目は資源採取ユニット「SCV」より、90秒間早く資源を採取することができる「Mule」の召喚、そして、3つ目は最大ユニット数を増やしてくれる建物「Supply Depot」をアップグレードさせ、ユニット数をもっと増やしてくれる「Supply Drop」だ。「Terran」は資源の採取が早く、「Supply Depot」をアップグレードさせることによって、さらに拠点のスペースを小さくできるようになった。
「Protoss」は、本拠地「Nexus」に「Time Warp」という特殊能力が追加されていた。「Time Warp」は、マナを消費して建物内のユニット生産速度とアップグレード速度を速める能力だ。「SC」での「Protoss」はユニット1つの性能は高いが、生産速度が遅いというのが、弱点だったが、「SC2」では一時的ではあるが、その弱点を解消していた。
「Zerg」は、本拠地「Hatchery」で生産可能なユニット「Queen」に新たな能力が追加されていた。まず、「Zerg」においてユニット生産に欠かせない「Larva」を4つ追加する「Spawn Larva」と、ユニットや建物をヒールする「Infusion」、まわりに「Creep」を広げる建物「Creep Tumor」を召喚する「Spawn Creep Tumor」の3つの能力をもっていた。「SC」のCreepの利点は「Zerg」の建物が建てられるようになるということだけだったが、「SC2」ではCreepの上にいる「Zerg」のユニットは移動速度が速くなるという利点が追加されたため、「SC2」はCreepを広げれば広げるだけZergが有利となる。
特殊能力は一時的なものが多く、頻繁にコントロールする必要がある。しかし、よく考えて使えば、その後のゲーム運びが有利になっていく能力ばかりだ。「SC2」ではこれらの特殊能力によって、ゲームプレイにもっと細かいコントロールが要求されるゲームになったと言えそうだ。
■ 新しくなった「Battle.net」では1対1だけでなく、チームプレイにも力を入れたリーグシステムが登場!!
「Battle.net」では2つのマッチングシステムを楽しめるようになっていた。自分の勝敗によって、点数が付けられ、順位を競い合う「ラダーゲーム」と、成績に関係無く、気軽くプレイできる「カスタムゲーム」の2種類だ。
「ラダーゲーム」は、1対1、2対2、FFA(Free For All)のいずれか1つと、自分の種族を選択し、「試合検索」のボタンを押すと自動的に自分の成績に相応しい相手を探してくれるというマッチングシステムが採用されている。
カスタムゲームは従来の「SC」と一緒で、マッチングロビー型のシステムが採用され、ゲームを作成して参加者を待つというスタイルで対戦を行なっていく。なお、カスタムゲームではユーザー以外にAIを対戦相手にすることも可能。現在のところ“Very Easy”の難易度だけで、対戦相手としては歯ごたえがないが、今後拡充されて行くようだ。
「ラダーゲーム」について、もっと詳しく説明すると、Pro League、Platinum League、Gold League、Silver League、Bronze League、Copper League、Practice Leagueに分かれた7つのリーグが用意されて、同等な実力を持つプレーヤー同士でリーグを行なうようになっている。各リーグには100名までの人数制限で行なわれるようで、Blizzardは今後、シーズンの最後に各リーグ別に上位ランクのユーザー同士で、最終トーナメントを行なう予定である。
今回のCBTではそのシステムをちょっと体験できるようになっており、1対1だけでなく、チームを組んでチームの成績を競い合う“2対2リーグ”と、チームメイトと関係なく個人に残される2対2の成績による“2対2ランダムリーグ”も用意されていた。
過去、「SC」では1対1のラダーゲームしか用意されず、チームプレイが脚光を浴びなかったが、「SC2」ではチームプレイを求めるプレーヤー向けにも「Battle.net」でラダーシステムを使ったリーグ戦が実施される予定になっている。また、CBTの段階では2対2までプレイできないが、最大4対4のリーグまで用意される予定である。
リーグが細かく分かれているラダーゲーム。ある程度成績を上げると、上位リーグに上がることもできる。プロゲーマーたちもすでにラダーゲームで活躍していた |
■ ストリーミングサービスで「SC2」のプレイを見せたり、RMTサイトではCBTアカウントの販売やレンタルも!
韓国の自作ストリーミングサービス「Afreeca」。多くのユーザーが自分のゲーム画面を放送している |
韓国における、「SC2」が持つ意味は格別だ。前作「SC」は全世界で販売された1,100万のうち、600万本が韓国内の販売本数と言われるほどで、現在、韓国のeスポーツは殆ど「SC」で成り立っていると言っても過言ではない。韓国ゲーム産業振興院によれば、韓国において「SC」で生まれたeスポーツ産業の経済効果は4兆7,000億ウォン(約3,525億円)に及ぶという。
その影響のおかげで、韓国では「SC2」の話は頻繁に取り上げられていた。Blizzardとしても、「SC2」の初公開や、新情報の公開を韓国で行なうほど、韓国市場を「SC2」の最重要市場として重視している。韓国では「SC2」のCBTが韓国語化されて、同時にスタートされている。
そして、「SC2」のCBTが始まってから韓国の反応はやはり大きい。各種のコミュニティサイトでは「SC2」の話題が多く、CBTに参加できたユーザーはそれほど多くはないが、参加できたユーザーは自作ストリーミングサービス「Afreeca」を通じて、自分の「SC2」のプレイ画面をリアルタイムでストリーミングしていた。ユーザーたちの反応はゲーム自体は「SC」と同じ感覚で楽しめて不満の声は少なく、すぐバランスと戦略の話になっていた。
また、韓国のRMTサイト「ItemBay」では「SC2」アカウントの販売だけではなく、レンタルも行なわれているほどだ。販売なら約10万ウォン(約7,500円)から15万(約1万1,250円)で、レンタルは1日1万ウォン(約750円)が相場になっている。北米の相場は、販売で約300ドル。北米に比べると価格は安いが、レンタルの手段があるというのが特徴だ。利用者も多く、殆どがすぐ売約済みになっていた。
日本では依然として発売されるかどうかすら不透明なままだが、「SC2」は韓国だけでなく、世界中が期待している大作だ。その注目は、βテストがスタートした現在でも依然として高い。今後も引き続き注目していきたいところだ。
韓国のRMTサイト「ItemBay」では、多くの「SC2」CBTアカウントが販売されている。レンタルもあるというのが特徴。もちろん、Blizzardの許可は得ておらず、ヤミ市場である |
(c)2010 Blizzard Entertainment. All rights reserved.
□Blizzard Entertainmentのホームページ(英語)
http://www.blizzard.com/
□「Starcraft II」のホームページ(英語)
http://www.starcraft2.com/
□「Battle.net」のホームページ(英語)
http://www.battle.net/
(2010年 2月 26日)