使って試してみました! ゲームグッズ研究所

連載第371回

PS4/3・Xbox One/360でキーボード&マウスを使う!
データ通信・信号変換機器を手がけるATENの「PHANTOM-S」を試してみた

 当連載は、ゲームライフに役立つグッズを発掘し、実際に使用してみようという試みをレポートするものである。ネタに困ったときはお休みしてしまうかもしれないので不定期連載である。ちょっとした投資や工夫で、よりよいゲームライフを送っていただけるよう、鋭意努力していく所存である。

 ゲーム用デバイス・グッズに新たに参入するメーカーは様々あるが、最近は“これまでPC用のデバイスの業務用製品を手がけてきた”というメーカーが、そのノウハウを活かして家庭用ゲーム機向けの製品を発売するというケースが目立つようになってきた。

 今回試してみた製品を発売している「ATEN」もそのひとつ(日本法人はATENジャパン)。データ通信機器や信号変換の機器など、主に業務用製品を中心に手がけてきたメーカーだが、そのノウハウを活かしてゲーム用デバイスを製造・販売していくという。

 そんなATENのゲーム機用ゲームコントローラーエミュレーター「 PHANTOM-S UC410」を使って試してみた。


データ通信や信号変換の機器を手がけてきたATENの、PS4/3・Xbox One/360用キーボード&マウスコンバーター

メーカー:ATEN
価格:オープンプライス(実売価格:8,836円)

 「PHANTOM-S」はプレイステーション4/3、Xbox One/360でUSBキーボードとマウスでの操作を可能にするための“コントローラーコンバーター”だ。特に家庭用ゲーム機でのFPSタイトルを、PCと同じW/A/S/D操作とマウスで楽しみたいという人にうってつけの製品となっている。

 コンバーター本体は金属筐体になっていて、がっしりとした印象。このあたりにも業務用機器の雰囲気が漂っている。天面にはTURBOモード、セッティング、電源の動作状況を示す3個のLEDが搭載されている。

 側面の手前にはUSBポートが3個並ぶ。ゲーム機の純正コントローラーを繋げるポート、キーボードを繋げるポート、マウスを繋げるポートだ。奥側の側面にはmini-BタイプのUSBポートがやはり3個あって、ゲーム機との接続用ポート、PCとの接続用ポート、そして補助電源用のポートとなっている。

 なお、パッケージには、コンバーター本体のほかに、USBのA to mini-Bのケーブルが2本付属している。

金属パーツの筐体に、LEDを3つ、前後にはUSBポートを3つずつ備えている。海外製のデバイスや業務用デバイスの雰囲気が漂っている。パッケージにはUSBケーブル(A to mini-B)が2本付属する

 機能面をみていこう。まずこのコンバーターでは“PS4/3、Xbox One/360の純正コントローラーを繋いでゲーム機に認証させ、その信号にキーボードやマウスの信号を上乗せしていく”という仕組みを使っている。そのため、使用には純正コントローラーが必要不可欠だ。使用中はコントローラーとキーボード&マウスのどちらでも操作できる併用状態になる。

PS4/3、Xbox One/360に使用可能。純正コントローラーで本体との認証を通す設計なので、各ゲーム機のコントローラーは必須。動作中はコントローラーでもキーボード&マウスでも操作可能な状態になる

 キーボードモードとゲームパッドモードの切り替えが可能で、ゲームパッドモードだとW/A/S/Dキーをはじめとしたキーボード操作でのゲームプレイができるが、F9キーを押すと普通のキーボードとしてチャットなどのテキスト入力に使えるようになる。コントローラーとキーボード両方をゲーム機本体に認識させている状態になっているので、ホットキー1発で仕様用途を切り替えられるというわけだ。

 ほかにも、F10キーを押してキーの「連射設定」が可能なほか、一定の操作を記憶させ呼び出せる「マクロ」機能や、ボタンの割り当てを変更「キーマッピングの変更」機能、「マウス感度の調整およびデッドゾーン(遊び)の調整」機能、さらにはADS(構え中)のマウス感度設定も個別に別けられるなど多機能だ。

 それら機能は一応コントローラーとコンバーターのみでも変更や調整が可能なのだが、「PHANTOM-S」はかなり詳細な設定もできる分、視覚的なインターフェースなしにセッティングを突き詰めるのは少々難しい。

 そこで、公式サイトよりダウンロードできる専用ソフトを使うことになる。専用ソフトでは複数のプロファイル保存やカスタマイズ、サーバーへのプロファイル等々のアップロード保存、マウスのDPI設定から、感度や加速を数値やスライドバーだけでなくトーンカーブを使っての変則的な感度調整も可能。デッドゾーン(遊び範囲)の形状までも変更できる。かなり本格的に、細かな調整が可能だ。

 ただその分、PCで専用ソフトを使ってのカスタマイズができる人、それらの基礎的な知識がある人でないと、上手く活用するのは難しいかもしれない。付属している紙のマニュアルには日本語での説明も用意されているものの、機能のおおまかな説明に留まっているし、公式サイトのPDFマニュアルだと英語表記のみ。それらに対応できる人なら……という製品と思えるところがあった。

 そのあたりにも業務用機器のテイストを感じるところだが、基礎知識を持っていてカスタマイズを自分で行なえる人なら、心強いデバイスと言える。言うなればプロ仕様なところがあり、今後はできれば、詳細設定も可能ながら、誰でも手軽に使うことのできる仕様や、よりとっつきのいいマニュアル付属を期待したいところがある。

Windows PCでの専用カスタマイズソフト。プロファイルを複数保存できるほか、マウス感度や加速、遊びなどの調整が細かく行なえる。だが、それだけにこの専用ソフトでの調整は必須と思えるところもあった

 実際に、PS4/3、Xbox One/360でのゲームプレイに「PHANTOM-S」を使用してみた。使用したタイトルはPCとの操作を比較しやすい「バトルフィールド4」を主に使った。

 まずデフォルト設定のままで試しに使ってみたのだが、やはりカスタマイズなしにそのまま使うのは厳しい。キーボードへのボタン割り当ては結構そのままでもPC版に近いレイアウトになってくれているのだが、マウスの感度調整は必須だ。

 感度調整を行なうのに手っ取り早いのは、PS4なら「Share+Options」、PS3なら「スタート+セレクト」、Xbox One/360では「Back+Start」を押してダイレクト調整モードを呼び出す方法がある。方向キーの上下でマウス感度を変更可能で、手元ですぐにおおまかな調整ができるのはありがたいところ。

 ただ、ADS中の感度などのより細かで詳細な調整をするには、PCに繋いで専用ソフトを使うことになる。それらも含め、「PHANTOM-S」を活用するにはやはり、1度は専用ソフトでの全面的な見直し、カスタマイズが必要と感じるところがあった。

 そうして全面的なカスタマイズと見直しをしつつも、機能をひとつひとつ理解していくにつれ、「PHANTOM-S」がかなり細かなところまで自分好みのフィーリングにできる、心強いデバイスだと感じられるようになっていく。

 特にこうした製品では「マウスの挙動が素直に動いてくれるか、どれぐらい調整できるか」が大きなポイントになるが、「PHANTOM-S」では感度だけでなく加速設定もあるし、調整幅も大雑把なものではなく細かで、微調整ができる。設定を追い込めば自分にフィットする挙動を作れる。

 そうしたカスタマイズを終え、各ゲーム機でのプレイを重ねてみたが、レスポンスは良好。不具合めいた挙動も見られなかった。PC版そのままな手触り……とは、さすがにマウス周りの微妙な挙動の違いなどがあるので言えないものの、違和感のようなものはない。家庭用ゲーム機でもほぼPC版を遊んでいる時と同様なW/A/S/D操作とマウスでのエイミングができる。

いずれのハードでもレスポンスは良好で、おかしな挙動も見られない。自分のフィーリングにあった調整ができるのが魅力だ

 このほか、“コントローラーと併用が可能”なところと、“F9キーでテキスト入力用のキーボードにも瞬時に変えられる”ところが便利だ。「PHANTOM-S」経由にコントローラー、キーボード&マウスを繋いでおけば、コントローラーでプレイしたいとき、キーボード&マウスでプレイしたいとき、テキスト入力用にキーボードを使いたいときなど、あらゆるシチュエーションに対応できる。

 USBケーブルを2個繋いで補助電力を供給できるところも魅力。今回繋いで使用したのは、マウスはロジクールの「G500s」、キーボードは東プレのリアルフォース「91UDK-G」で、これら比較的スタンダードなデバイスではUSB接続1個の電力供給で動作していた。だが、ゲーミング向けに特殊な機能を持ったデバイスだと、USB単体の電力供給量だけでは心もとない。それでもUSB2個繋ぎなら、繋いでいるデバイスの動作も安定するし、動作するキーボードやマウス自体の種類も増えるだろう。このあたりもよく考えられているという印象だ。

USBポートを2個使って電力供給量を増やせるのも嬉しいところ。動作の安定性が高まるし、少々特殊で電力消費量の多いキーボードやマウスも使用できる

 金属筐体を使った堅牢性の高い本体、基礎知識が必要なところはあるものの、細かな調整まで可能な専用ソフトの存在、さらには安定した挙動と動作など、業務用機器で培われたノウハウをそこかしこに感じられる製品となっていた。

 そのぶん、ちょっとカスタマイズと調整に手間をかけるのが必須なところはあって、そのあたりに業務用機器を思わせる取っつきの悪さはあるのだが……この手の製品に期待を寄せる人にとっては、おそらくあまり大きな障壁ではないだろう。PS4/3、Xbox One/360での、特にFPSジャンルをプレイするときにキーボード&マウスを使いたいという人に、ぜひ1度チェックして頂きたい製品だ。

(ゲーム環境向上委員会)