山村智美の「ぼくらとゲームの」

連載第50回

「仁王」先輩がいろんなゲームの良さを併せ持つうえにボリュームもたっぷりなすごい先輩だった話

この連載は、ゲーム好きのライター山村智美が、ゲームタイトル、話題、イベント、そのほかゲームにまつわるあれやこれやを“ゆるく”伝えるコラムです。毎週、水曜日に掲載予定。ちなみに連載タイトルは、本当は「ぼくらとゲームの間にある期待の気持ち」。新しい体験の、その発売を、いつでも楽しみにしている期待の気持ち。そのままだと連載タイトルとしては長すぎたので……「ぼくらとゲームの」。

先週の2月9日、コーエーテクモゲームスの「仁王」先輩がついに卒業なされました。

仁王パイセン(先輩のこと)は、2005年にコーエーのプレイステーション 3参入ソフト第1弾として発表されたのが最初で、それから幾度かの作り直しが入りつつ、足かけ12年も留年し続け、ついにプレイステーション 4用ソフトとして無事に発売されたという、筋金入りの先輩でした。

……ちなみに、「“卒業”とか“先輩”とか“留年”って何?どういう意味?」っていう人もいると思うのですが、これはいわゆるゲーム界隈のネットスラングです。

無事に発売日を迎えることを“卒業”、

発売が延期されたり、発売されないままに1年以上経つのを“留年”と言ったりしつつ。

例えば、何かのゲームタイトルが半年ほど発売延期になってしまった時などに、「半年の発売延期は残念だけど、あの“先輩”に比べたらマシ」と、上には上がいる的な感じで長年音沙汰のないタイトルが引き合いに出されるというわけです。

「仁王」はそれこそ12年も留年し続けていた大先輩、大パイセンというわけですね。

ちなみに他には、10年留年していた「ファイナルファンタジー ヴェルサスXIII」パイセンとか、7年留年していた「トリコ」パイセンもいたんですけど、なんとこの3カ月の間にみんな卒業しました。すごい。

さてさて、そんな「仁王」なのですが。

これがいざプレイしてみると、やればやるほどに印象の変わっていく不思議かつ面白いゲームになっています。

「仁王」の舞台は戦国時代の末期。戦乱によって荒れ果て魑魅魍魎がうごめいている日本の各地を、異国からやってきたウィリアムが戦っていく……という和風ダークファンタジー作品。

ダークファンタジーと言えば「ダークソウル」シリーズや「ブラッドボーン」がありますが、

この「仁王」もそれら作品同様にアクション要素メインなRPGであり、体力ゲージ以外に攻撃や回避ごとに消費される時間回復ゲージの気力ゲージという、いわゆるスタミナ的なものがあって、その気力が尽きないように立ち回るのが大事だったり、

装備の重量次第で移動や回避の性能&スタミナ消費が変わったり、設置されている罠や隠れている敵に慎重かつ丁寧に対処していくのが重要だったり、ステージ内の中継地点と言える「社」を詣でると体力回復が補給される&雑魚敵が復活する……などなど。

「ダークソウル」シリーズをお手本にしているんだなと思えるシステムがたくさん。

そんなところから、特にプレイし始めて間もない頃は、「いろいろとアレンジはあるけれど、やっぱり和風な『ダークソウル』っていう感じなのかなー」なんて思いつつプレイしていたのですが、

プレイが進むに連れて、その印象がぐいぐい変わっていきます。

まず印象を変えてくるのは、“残心”という「仁王」独自のシステム。

“残心”は、攻撃後に体から光るエフェクトが発せられた後に、タイミングよくR1ボタンを押して体に吸収しなおすことで、気力ゲージの回復を速められるというもの。

それまでは、ザクザクと敵を斬りつけたあとはジリ下がりなどで気力回復をしていたところが、攻撃ザクザクから残心でシュパーンと気力を回復して続けざまにザクザクと、攻撃をし続けるなんてことが可能。

また残心は「上段」、「中段」、「下段」といった武器の構えチェンジや、回避のアクションに残心の効果を持たせることもカスタマイズで可能なので、

ザクザクからの構えチェンジ残心シュパーンでザクザクと攻撃継続したり、

ザクザクからの回避ステップで残心シュパーンでザクザクしたり。

スタイリッシュなコンボアクションが楽しいタイプのゲームだと、1セットのコンボ後に武器を持ち替えたりスタイルチェンジを間にはさむことでコンボを継続させていくような要素が定番ですが、残心によってそれに近い感触の連続攻撃ができるようになっていきます。

こうなってくると、「敵との間合いの計り方とかはダークファンタジー系なんだけど、攻めだしたらスタイリッシュコンボアクションなゲームなんだ。独特だなー」と印象が変わってきて。油断するとすぐやられてしまう高い緊張感のなか、敵の隙を見つけて、そこでできる限りコンボをたたき込む爽快感を楽しんでいくという、緊張から爽快のアップダウンがクセになる感じになっていきます。

ブンブンと刀を振って減った気力も、減ったゲージが白く染まったときに残心するとすぐさま回復!残心でうまく攻撃を繋げる気持ち良さはスタイリッシュアクション的な良さを感じさせます

一方で、「仁王」は挑むステージをミッションから選択する方式になっている上、装備品やアイテムには希少度(レア度)もあって、ミッションによって報酬が異なるところなどもあります。

そのあたりは性能の良いアイテムを求めて繰り返しプレイする、いわゆる“アイテム掘り”な要素があり。ハンティングアクションやハクスラ系な、アイテム収集のためにやりこんでいく側面もあります。

「仁王」はこんな感じに、いろんなゲームのいいところを「仁王」独自の解釈で入れ込んでいて、しかもボリュームがっつりという、なんとも遊びごたえたっぷりなゲームになっています。

気になる点としては、ゲーム内のシステムや装備のパラメーターなどが多く、難易度も序盤からがっつり高いこともあって、「ダークソウル」などのこれ系のゲーム未経験な人だと、ちょっと“取っつき”が悪いというか、コツを理解していくまでが辛すぎるかもしれません。

また、同じ理由からユーザーインターフェイスも結構いろんなものがズラッと並んでしまっていて扱いづらさがあるので、もう一歩ブラッシュアップされてくれると嬉しいところ。

そういう取っつきの悪さはちょっと気になりますが、ゲームに慣れてきてからの歯ごたえは抜群。がっつり遊びこめるゲームを求めている人、ダークファンタジー系のアクションRPGに慣れていて好きな人、そしてかなりの難易度の高さに死にまくってもくじけない人にオススメです。

ではでは、今回はこのへんで。また来週。