東京ゲームショウ 2011レポート

西川善司の3Dゲームファンのための「東京ゲームショウ2011」グラフィックス講座
ついに“4次元方向”に進化し始めた3Dゲームグラフィックス達


9月15日〜18日 開催(15日、16日はビジネスデイ)

会場:幕張メッセ

入場料:1,000円(一般/前売り)、1,200円(一般/当日)、小学生以下は入場無料



 東京ゲームショウ2011(TGS2011)が閉幕した。今年は3連休に掛かる開催という期日上の幸運に恵まれただけでなく、完熟した今世代機向けの大作ゲームの発売が年末年始に集中する期待感が追い風となり、さらにはPS Vitaの発売直前にして初の一般公開も重なって空前の盛り上がりを見せた。実際、TGS2011を運営するCESA側の発表によれば、会期4日間の総来場者は開催史上最高の22万人の来場者を記録したとのこと。

 そんな盛り上がりまくった今年のTGS2011で見かけたゲームグラフィックスのうち、筆者が「要チェック!」と感じたものを例年通り、独断と偏見に基づいて今年もピックアップしてみた。

【著者近影】
今回はハイエンドグラフィックスにスポットをあてたので、本文ではPS Vitaの話題をしていない。ただ、実際にはTGSで量産機に近いバージョンを触れることができたのでその感想をここで。まず、意外なことが2点判明した。1つは初代機ではテレビへの映像出力機能はないという点。時代的にセキュアなHDMI出力が求められるわけだが、実装やコスト等の事情で実現できなかったようだ。2点目はユーザーのバッテリー交換ができないという点。これは背面タッチI/Fがあるため、背面側にバッテリーパックの形で脱着スペースを設けるようなデザインにできなかったことが理由らしい。苦労に苦労を重ねてできたデザインが現在のPS Vitaデザインということらしい。そうそう。上部右側カバー下の謎のコネクタは……モゴモゴ。ブログはこちら



■ 次なるゲームグラフィックスの進化のテーマは「アニメーション」?

GDC2011で発表された「Crysis 2」におけるアニメーション管理手法

 昨年の 「東京ゲームショウ2010」グラフィックス講座では、「スタイライズド・レンダリングの台頭」をキーワードとして挙げた。今年のTGS2011において、1つキーワードを挙げるとするならば「アニメーションの進化」(モーションの進化)と言うことになると思う。

 完熟期となった今世代機のDirectX 9/プログラマブルシェーダー3.0世代のグラフィックスでは、一通りの材質表現が出尽くした感があり、さらなる上のライティング表現や材質表現を実現するには次世代機の登場を待っているような時期になりつつあるが、今世代でできることがもうないかと言えばそんなこともなく、各スタジオは「力の入れ込み先」を模索し始めている。そんな中、ある程度大きな流れとして産まれているのが「動き」というジャンルだ。言い方を変えれば「時間方向のグラフィックス表現」といったところか。

 現状のゲームグラフィックスにおける材質表現は、厳しい視点で見れば「まだまだ」という意見もあるが、拡散反射系ライティングが支配的だった前世代と比べれば各段にリアルだし、表現力としても豊かだ。なのに、なんとなく昨今「すごい」という印象を持てなくなってきたのは、アニメーション(本稿では一律モーションと同義とする)の部分で進化の振り幅が少なかったからなのではないか……。そう分析しているスタジオが増えてきているのだ。独Crytekも「Crysis 2」では、キャプチャーしたモーションからモーションの推移と、各種モーションを動的に変化するシーンに対して破綻なくうまく適合させる処理系に関するプレゼンテーションをGDC2011にて行なっていた。

 当然、日本でも、こうした「動き」にこだわりを見せるグラフィックス開発はにわかに活発化しつつある。

 本連載の前回の「Luminous Studio」編で、橋本善久氏(スクウェア・エニックス、CTO、テクノロジー推進部、コーポレート・エグゼクティブ)の発言に印象深いものがあった。それは「極論を言うと、ライティングやシェーディングがいまひとつでもアニメーションがとても優れていた場合はそのゲームの印象は飛躍的に良くなり、感情移入や空間への没入がしやすいものになる」というものだ。

 モーションキャプチャー技術は、人間の動きを取り込んでこれを3DCGキャラクターに適用するもので、静的なシーンにおいては究極のアニメーション実現手法といえる。しかし、実際のゲームのランタイムでは障害物があれば手足の位置や動きも制限を受けたりするし、段差や傾斜があったりすれば身体の重心は変わるので、平板の上の演技を取り込んだのをただ再生していたのでは不自然になる。

 さらに、「走りながらの銃撃」のような、複数のモーションを連続に紡いだり、同時に動的なシーンの変化に対応させるのは、ただキャプチャーしたモーションを再生するだけのアニメーションでは、今や不自然に見えるのだ。

 そこで、先進的なスタジオが積極的に開発取り組んでいるのが「プロシージャル・アニメーション」技術だ。これは3Dモデルの骨格の構成や間接の拘束条件、あるいは姿勢変化に伴う重心変移に対応して、半自動的にモーションを生成したり、モーションキャプチャーによって取得されたモーションの再生を動的に変化させたり、あるいは自然な形でモーションを紡いだりする技術になる。

 ちなみに、この分野の技術をミドルウェアとして提供しているメーカーもあり、近年では注目度を上げている。特に著名なのは英NATURALMOTIONで、局面やニーズに合わせて「ENDORPHIN」、「MORPHEME」、「EUPHORIA」といった3種のアニメーション関連ミドルウェアを提供している。


NATURALMOTIONの「EUPHORIA」のデモ映像(オフィシャル動画)。ラグドール物理とは一線を画した知性を感じるプロシージャル人体アニメーション

 今回のTGS2011展示タイトル群の中で、特にアニメーション部分が際立っていたのは以下のタイトルだったように思う。

セガブース「バイナリー ドメイン」コーナー

・「バイナリー ドメイン」(セガ)

 「龍が如く」シリーズを手がけてきた開発チームが手がけた、SF世界観の完全新作が「バイナリー ドメイン」だ。

 ロボット文明が普及した未来、人間とロボットが共存する世界で、ロボット骨格に有機物をまとった「外見はほぼ人間そのままのロボット」が、極秘裏に人間社会に入り込み始める。この事実をいち早く掴んだ国連は特殊部隊ラストクルーに事態の収拾を依頼。彼らが向かったのは日本の巨大ロボットメーカーAMADA社だった……。

 たまたま会場におられた「バイナリー ドメイン」開発チームの面々に話を伺ったところでは、ゲームエンジン部分は「龍が如く」シリーズのものから一新されているそうで、ほぼフルスクラッチ状態から2年かけて構築した新作エンジン上で動作しているという。中でも、アニメーションシステムと物理シミュレーション部分に力が入っており、これらも独自開発のものになる。

 アニメーションシステムは上で述べたようなプロシージャル・アニメーションシステムが構築されており、上半身のモーションと下半身のモーションを動的環境下に適応させながら自然に紡ぐ処理がリアルタイムに実現される。主人公キャラ達は、モーションキャプチャーより取得したモーションパーツを組み合わせたアニメーションが基本となるが、敵役となるロボット達のモーションは、プロシージャル生成された動きの方が支配的になっていると言う。

 「バイナリー ドメイン」内に登場する多様な人型の敵ロボット達は、各部位単位で破損し、動作不能に陥るまで、攻撃の手を緩めない。例えば足首が吹っ飛ばされれば、片足を引きずりながらこちらに歩いてくる。この時に実践される「両足の長さが不均等なカク付いた歩き方」はプロシージャル生成されたアニメーションになっているのだ。さらに、両足を破壊すると這いずるようにしてこちらに迫ってくる。

 TGS2011で体験できたボス戦に登場する8本足の多足歩行のメカの動きもプロシージャルアニメーションによるものだ。プレーヤー側は、このボスの足を1本1本破壊していくことになるのだが、ボスは1本ずつ減っていく足を器用に使いって歩行し、プレーヤーに執拗な攻撃を仕掛けてくる。この「数減らされた足」を使っての歩行モーションももちろんプロシージャルアニメーションシステムによるものになる。ちなみに、足が2本になったときには2足歩行形態に変形し、プレーヤーのドギモを抜く。

 そして、本作では、物理シミュレーションも独自開発の剛体物理シミュレーションで動作しており、特にこだわったのは部位単位の射撃判定なのだとか。着弾した位置にちゃんと衝撃が伝わるようになっており、例えば的ロボットの腕に弾を命中させれば、敵ロボットの腕は後ろに弾かれるような動きをする。

 AIにも持てるだけの先進技術を投入したそうで、敵やNPC達は、マップ上の各地点に設定された遮蔽情報を参照して、敵を追い詰める進軍を念頭に置きつつも、各自にとっての敵からの攻撃を喰らわないように身を潜めることも心がけて行動する。開発スタッフはよれば、現在は進軍においてやや個人行動が目立つため、発売までの数カ月間の間に群集行動の要素を強めていく……とのことだった。

 連続した“動きの驚き”で構成される「バイナリー ドメイン」のゲーム展開は、これまでのシューティングアクションとは違った「破壊のカタルシス」をプレーヤーに与えてくれる。2012年2月の発売日が待ち遠しい作品だ。


【「バイナリー ドメイン」トレーラー】


【バイナリー ドメイン】

セガブースメインステージでおこなわれたEAの「FIFA 12」プレゼンテーションの様子

・「FIFA 12 ワールドクラスサッカー」(エレクトロニック・アーツ)

 スポーツは人間がプレイする競技であり、人体と人体が直接ぶつかり合うシチュエーションが多い。だからこそ、スポーツゲームは、人体を題材にした物理シミュレーションの実装が必要だと言われ続けてきたのだが、ゲームとしての面白さを考えると、なかなかリアルだけを突き詰めるわけにもいかなかった。

 エレクトロニック・アーツの「FIFA」シリーズ最新作の「FIFA 12」では、ゲーム性においてはコンピュータゲームとしての面白さを従来シリーズからそのまま継承しつつも、選手同士の肉体同士のぶつかり合いや、それを受けての姿勢変化、転倒と言った挙動をプロシージャルアニメーション手法で生成している。それが「(PLAYER) IMPACT ENGINE」(筆者注:発表当初はPLAYER IMPACT ENGINEだったが、最近では“PLAYER”の記述が省略されるようになった)だ。

 「FIFA 12」では、走行モーションから足をひっかけられて転倒、そして転倒を堪えようとする動きまでをこのIMPACT ENGINEで制御している。よくFPSなどで目にする「やられモーション」生成に用いられる「ラグドール物理」は、無思考状態で完全に骨格に掛ける力を抜いてしまった挙動になるため、スポーツ競技における転倒とは全く異なるものだ。

 IMPACT ENGINEでは、それまでその選手が行なっていたプレイ行動モーションから、物理シミュレーション結果によって物理法則に従うしかなくなる状態への推移、そして再び、選手のプレイ行動モーションへ復帰するまでのアクションを自動生成するのだ。いわばロボットの歩行制御に近い処理を仮想空間上で行なうイメージだろうか。

 このIMPACT ENGINEはモーション生成だけでなく衝突判定にも利用されており、例えば選手同士がボールを奪い合う局面でも、「FIFA 12」では2人の選手の身体や足がめり込むようなことがない。

 このIMPACT ENGINEの高度な人体衝突技術は、同じEAから発売される「バトルフィールド 3」へもフィードバックされているという。普段はスポーツゲームをしないユーザーも、ゲームグラフィックスファンならば要チェックなタイトルだ。

【「FIFA 12」最新トレーラー】

【FIFA 12 | Player Impact Engine Trailer】


【FIFA 12 ワールドクラスサッカー】

カプコンブース「ドラゴンズ ドグマ」コーナーの様子

・「ドラゴンズ ドグマ」(カプコン)

 「ドラゴンズ ドグマ」は、最新世代MTフレームワークベースのゲームとして注目度が高い作品だ。

 まず、注目されるのは、このカテゴリでピックアップしたことからもわかるように、モーションのリアリティの部分だ。本作ではキャラクターメイキングで、身長や体型の異なるプレーヤーキャラクターを作成できるが、どんな体型のキャラクターを作成しても破綻のないモーションを披露してくれる。

 本作は、公開されている画面ショットだけをみると、いわゆるJRPG(日本産RPG)的なゲーム性を想像されがちだが、実際にプレイしてみると、良い意味で「かなり泥臭い」ゲーム性で構成されることを思い知ることになる。それこそモンスターのからだと、人型のプレーヤーキャラクターがぶつかり合う肉弾戦が色濃く描かれるのだ。

 その要素は至る所で見受けられるが、最も象徴的なのは、プレーヤーキャラクターが大型のモンスターに掴みかかってよじ登ったり、そこから短剣を突き刺したりできる部分だ。こうした、巨体なる敵に密着するインタラクションは「ワンダと巨像」を彷彿させる。掴み掛かってきたプレーヤーキャラクターをふりほどこうとして懸命に暴れる巨体モンスターのモーションと、これに堪えようとするプレーヤーキャラクターの決死のモーションが織りなす一種独特な泥臭い戦闘描写には、さらさらとした描写を好む和製ファンタジー世界とは違った魅力を感じる。

 ちなみに、この「しがみつき&堪える」アクションは、フルボディIK(Inverse Kinematics:逆方向運動学)とキャプチャしたモーションの合成によるものだ。この他、味方NPCが、同サイズの敵モンスターを羽交い締めにするアクションなどもみられ、本作はキャラクターの動きが非常に多彩で面白い。

 そして、本作では、物理シミュレーションの大部分を、内製の物理シミュレーションエンジンで制御している点も見逃せない。「ドラゴンズ ドグマ」で採用している内製物理シミュレーションは大別して2種類ある。

 1つは位置ベースの物理演算手法である「Verlet積分」(ベルレ積分)を応用した物理シミュレーションだ。ベルレ積分は速度情報を持たずに(必要であれば速度は位置情報から逆算する)、位置情報をテクスチャなどに入れ込んで同時並列処理しやすい処理系で、DirectX 8時代のプログラマブルシェーダ黎明期には水面の波表現などによく応用されてきた手法だ。これを汎用の物理シミュレーションに応用したのが本作の挑戦的な部分だといえる。

 このベルレ積分ベースの物理は、IK、毛髪、布、柔体表現(ソフトボディ)などに用いているという。一連のベルレ積分ベースの物理シミュレーションの実際の処理は、PS3はCELLプロセッサ内のSPUで、Xbox 360ではGPUで行なわれているそうで、いわば異種混合コンピューティングを先取りした実装になっている。


【「ドラゴンズ ドグマ」トレーラー】

【ヘビのIK】
ヘビのIKはベルレ積分

【物理シミュレーション】
マント、各種アクセサリ、毛髪などの挙動もベルレ積分ベースの物理シミュレーションによる

ドラゴンズ ドグマでは物理シミュレーションにベルレ積分法を使用している。ベルレ積分は水面のさざ波表現などにもよく用いられるテクニックだ

 もうひとつは一般的な物理ミドルウェアと同じような速度や力積ベースの物理シミュレーションで、これは剛体物理やラグドール物理に利用している。かねてから「物理シミュレーションも内製の割合を増やしていく」とMTフレームワーク開発チームが述べていたが、その有言実行の成果がここにある。

 レンダリングについては、本連載でも何度か取り扱ったことのあるDeferred系のテクニックを本作では使用しており、ライトマップなしのオール動的光源でライティングした魅惑のグラフィックスとなっている。この辺りについては、回を改めて取り上げたいと思う。


「ドラゴンズ ドグマ」に登場する巨大ヘビ・モンスターの挙動もベルレ積分ベース
「ドラゴンズ ドグマ」のレンダリングパイプラインは、MTフレームワーク採用作品としては初のDeferred Lighting手法を採用する。同じDeferred系でも、Deferred Shadingとは違い、材質表現バリエーションに制限を受けにくい手法だ

【ドラゴンズ ドグマ】

カプコンブース「アスラズ ラース」コーナー

・「アスラズ ラース」(カプコン)

  昨年の TGS 2010グラフィックス講座ではスタイライズド・レンダリング採用タイトルの1つとしてピックアップした「アスラズ ラース」。今年はプレイアブル展示となり、ゲームを実際に体験することができるようになっていた。

 開発は「NARUTO」をゲーム化した「ナルティメット」シリーズの開発で知られるサイバーコネクトツー。「ナルティメット」シリーズで培われたハイテンションでアニメチックなモーションの数々は本作にも息づいている。

 プレイしてみるとわかるのは、現実世界とは一風異なる「アニメ的物理法則」ともいうべき独特な物理法則が働いているという点。この独特なプレイ操作感覚と、そこから繰り出されるクレイジーなアクションからは、確かに人知を超えた「神々の戦い」の荒々しさが伝わってくる。本作のグラフィックス表現は、昨年の映像出展時のみの時から、さらに洗練度が増している。

 「アスラズ ラース」のグラフィックスでは、ライティング結果の光が当たっている部分は鏡面反射や拡散反射などの一般的なライティング結果になっているが、“陰”部分に対しては彫刻刀で木を彫ったような微細凹凸の陰影が動的に描き込まれる。なので静止画で捉えた画面ショットはどれも木彫り像のように見える。しかし、実際に動いている映像では、全く異なる表情を見せるのだ。最近作で、この作品ほど、動画と静止画として異なる表情を見せるグラフィックスも珍しい。

 そして、意外に知られていないが、本作はEpic Gamesの「Unreal Engine 3」採用作品だ。UE3採用和製タイトルでは、数少ない成功プロジェクトになるかどうか……という点でも動向が注目される。


【「アスラズ ラース」トレーラー】

【アスラズ ラース】



■ まだまだある! その他、気になったゲームグラフィックス達

 今回はアニメーション表現に着目して注目作を取り上げたが、従来のリアル系グラフィックスも進化をやめたわけではない。TGS出展作品で筆者が見た作品群では、以下の2作品に目を奪われたので紹介しておこう。

日本マイクロソフト「Forza Motorsport 4」コーナー

・「Forza Motorsport 4」(日本マイクロソフト)

 「Forza Motorsport(Forza)」シリーズは「追いつけ追い越せ『グランツーリスモ(GT)』」をスローガンにシリーズを重ねてきた作品だ。初代「Forza」では初代Xbox上でシリーズの基盤を構築し、「Forza 2」ではプラットフォームをXbox 360へと移してAIと車両物理に磨きを掛け、「Forza 3」ではベースエンジンの底上げを行ない、同時に収録コースと収録車種の充実を図った。

 今作「Forza 4」では、全体レベルの引き上げが行なわれたのはもちろんだが、なによりグラフィックスのクオリティが向上している。 材質表現のリアリティが向上し、高級車の塗装に多く見受けられる異方性反射を有したボディカラーの再現性も説得力が増した。 コースの背景グラフィックスも進化を見せており、時間の動的な変化、天球の動的変化なども再現される。「グランツーリスモ」シリーズとのデッドヒートは終わらない。


【「Forza Motorsport 4」トレーラー】

【Forza Motorsport 4】

セガブース「バトルフィールド 3」コーナー

・「バトルフィールド 3」(EA)

 スウェーデンのゲームスタジオEA Digital Illusions CE(EA DICE)が誇るFrostbite 2エンジンを採用した最新タイトルが「バトルフィールド 3(Battlefield 3)」だ。恐らく、今世代機におけるリアル系3Dゲームグラフィックスの最上位はここにある。

 レンダリングの根幹となっている「動的光源数=無制限」のライティングシステムはDeferred Shadingベースによるもの。ユニークなのは、PS3、Xbox 360、PCの全てでそのDeferred Shadingの実装方式をディープに最適化している点だ。Deferred Shadingでは無数の動的光源をライティングに持ち込めるが、一方で、実際の描画には無関係な動的光源の排除がパフォーマンスの根幹に関わってくる。この処理系の実現に、PS3版ではSPUを用い、PC版ではDirectComputeを応用している。Xbox 360ではどうかと言えば、Xenos(Xbox 360のGPU)をGPGPU的に活用して、シーン解析を行なってていることが、今夏のSIGGRAPH2011で明らかとなっている。


Xbox 360においてもタイルベースDeferred Shadingを実装したことが報告されている
実際の描画には無関係な動的光源の排除を、Xbox 360ではXenos(GPU)のMRT(Multi Render Target)機能を駆使して実践。なかなかの荒技

 大局照明技術にはGemoericsのEnlightenを使用している。屋内シーンでの妙にリアルな間接光表現感は、このEnlightenの効果に因るところが大きい。本作は、顔面の肌表現にもこだわりを見せており、簡易的なスキンシェーダをも実装している。これは、顔面上の各部位に「厚み情報」(Thickness)を持たせ、光源色が浸透する陰影効果を与える処理系によって実現されている。

 どのプラットフォームでも、ハイレベルなグラフィックスが楽しめるが、環境があるならばDirectX 11世代GPUを搭載したPCで動作させて欲しいものだ。また、今年のE3の任天堂のプレスカンファレンスにおいて、「バトルフィールド 3」がWii U向けに提供されるようなことがほのめかされたが、もし、これが実現すれば、そのグラフィックスがどの程度のものになるかも注目される。

【大局照明技術】
大局照明技術にはGemoericsのEnlightenを使用

【FROSTBITE2エンジン】
疑似的な表面下散乱シェーダを実装するFROSTBITE2エンジン。この画面ショットはそのテクノロジーデモ映像から 簡単に言えば、背後の光源から浸透してくる光量を、厚み情報に配慮して算出するという疑似手法になる Deferred Shadingにも統合

【人肌表現】
人肌表現にもこだわりを見せている「バトルフィールド 3」

【厚み情報】
厚み情報はテクスチャに持たせる

【「バトルフィールド 3」トレーラー】

【バトルフィールド 3】



■ ゲームグラフィックスは4次元へ。今世代機のゲームグラフィックスは、まだまだ面白くなる!

 今年のTGS2011はPS Vitaの詳細発表に湧き、ニンテンドー3DS専用ソフトの充実ぶりが大きく取り沙汰されたが、本稿ではあえてハイエンドゲームグラフィックスの方にスポットライトを当ててみた。

 「底上げはされたが代わり映えがしない」と言われることも多くなってきた成熟期の今世代機ゲームグラフィックスだが、こうして並べて見てもらえばわかるように、各スタジオは新しい進化の方向性を各自で見出し、実際に着実に進化を遂げてきている。

 本稿で指摘した、材質表現の美しさだけでない、時間方向(4次元方向)の美しさ、すなわち動きの美しさの方を意識してゲームグラフィックスを見るようにすると、まだまだ「違い」が見て取れる。今世代機のゲームグラフィックスは、まだまだ面白くなる。

(2011年 9月 26日)

[Reported by トライゼット西川善司]