「スターオーシャン5 -Integrity and Faithlessness-」レビュー
スターオーシャン5 -Integrity and Faithlessness-
シームレスに展開する進化形RPGでありながら正統派の安心感
- ジャンル:
- RPG
- 発売元:
- 開発元:
- プラットフォーム:
- PS4
- PS3
- 価格:
- 7,980円(税別)
- (PS4)
- 8,618円
- (PS3)
- 発売日:
- 2016年3月31日
- (PS4)
- 2016年4月28日
- (PS3)
(2016/4/9 14:00)
1996年に第1作が登場して以来、20年という長きにわたって愛されてきたスクウェア・エニックスの人気RPG「スターオーシャン(以下、SO)」シリーズ。20周年の節目となる今年、7年ぶりの新作「スターオーシャン5 -Integrity and Faithlessness-(以下、SO5)」が発売される。
シリーズを知らない人のために軽く解説すると、開発はシリーズ作すべてトライエースが担当。SFとファンタジーが融合した世界観は全作共通だが、ストーリーは各作品で独立しているため、過去作をプレイせずに始めてもまったく問題ない。物語を古い年代順に並べると「SO4」→「SO1」→「SO2」→「SO5」→「SO3」になるので、まずは「SO5」をプレイして、気に入ったら過去作に手を伸ばしてみるといいだろう。なお、「SO1」と「SO2」はPSPのリメイク版がリリースされている。
「スターオーシャン5」の最大の特徴は、シームレスなゲーム進行
本作の特徴は、自由探索・イベント・戦闘がシームレスで進行すること。エリアチェンジや特別なイベントでは画面切り替え(データロード)が入るが、それ以外は基本的にひとつながりになっている。これは、トライエースが2008年に開発したRPG「インフィニット アンディスカバリー」ですでに採用されているが、「SO」シリーズでは初の試み。本作で具体的にどんな感じなのかは動画で見てもらうのが1番よいと思うので、まずはそちらを参照してほしい。
実際に遊んでみたところ、全編が完全にシームレスというわけではなく、予想していたよりも切り替えが入る印象。ただ、それはイベントの演出上必要なものであり、だからこそメリハリが生まれているように感じた。もし、完全なシームレスにこだわっていたら、非常に単調で盛り上がりのないストーリー進行になっていたのではないだろうか。
イベント発生中もキャラクターやカメラを動かせる
通常のRPGにおけるイベントといえば、コントローラを握りしめて(あるいは、床やテーブルに放置して)じっと画面を眺めるものだった。だが、本作では、イベント中もコントローラが大活躍する。キャラを移動させたり、カメラアングルを変えたりして、自分なりの「演出」を加えることができるのだ。逆に、なにも動かさないと非常に味気ない絵ヅラで終始してしまうので、積極的に動かしてこそ価値が出る。これについては、イベント中になにもしない場合と、キャラやカメラ動かした場合の比較動画を用意したので参照してほしい。
正確には、すべてのイベントに介入できるわけではなく、完全固定アングル&操作不能になるもの、あるいはカメラは動かせてもキャラを移動できないものが存在するのだが、それらは重要度が高いと思われるものばかり。恐らく、見るべきものがアングルから外れる可能性、単調な画面で固定されて盛り上がりを欠く可能性、イベント途中で不用意にエリアチェンジしてしまう可能性などを排除したかったのではないだろうか。
実際に自由にカメラアングルとキャラ位置を操作してみると、意外にリスクが多いことに気付かされるので、重要イベントや見せ場で制限をかけてくれたことはむしろ歓迎したい。
なお、操作に夢中になって会話を上の空で聞いていると、次になにをすればよいのかわからなくなってしまうことも多いのだが、「あらすじ」機能でストーリーを確認することができて助かった。
初心者を救済しつつ上級者が得をするバトルシステム
本作のリアルタイムアクションバトルは、アクション性はあるものの「アクションゲーム」ではない。ユーザーがやるべき操作は、コントローラの各ボタンに割り振られた攻撃方法を「選択する」ことと、操作キャラの位置取りだけで、たとえば「敵の攻撃を素早く避ける」といった操作は要求されないのだ。ゲームを進行させる最低限のハードルを低くする代わりに、攻略テクニックを駆使すれば高度な遊び方もできる……といったスタイルの戦闘システムだと感じた。
「SO」シリーズの戦闘といえば、個人的には、おもしろいけれど難しいというイメージがあり、正直、本作をプレイするのにも不安があった。だが、「SO5」は初心者とヘタレゲーマーに優しかった……!
まず、難易度が選べる(ただし1度選んだら変更不可)。そして、初心者向け「EARTH」モードでは、なにも考えずにボタンを連打するだけで本当になんとかなってしまう。だから、「リアルタイム」とか「アクション」とかいうワードを聞くと不安になる人も、どうか安心してほしい。
では、バトルを楽しみたい上級ゲーマーは退屈かといえば、そうでもない。本作では、「SO3」のような「三すくみ」システムを採用しており、小攻撃は大攻撃に強く、大攻撃はガードに強く、ガードは小攻撃に強い。これらを意識して使い分けると、効率よく戦えるだけでなく、「リザーブゲージ」が早く溜まるという特性があるのだ。
「リザーブゲージ」は、スキル技よりもはるかに強力なスペシャル技「リザーブラッシュ」を使うのに必要で、これはおそらくやり込み要素の攻略等で必須になるはず。ゲージが早く溜まるということは、技を何度も、あるいは、よりレベルの高い状態で使えるということで、これが上級者のメリットとなるのである。
実際にやってみて感じたが、ボタン連打だけで「リザーブゲージ」を溜め「リザーブラッシュ」を出すのはけっこう難しい。これは、きちんとバトルを攻略できる人のための要素だ。深く考えなくても戦うこと自体は可能だが、上級者はぜひ「三すくみ」と「スキル技の使い分け」、「リザーブラッシュ」を駆使してバトルを堪能してほしい。
PAやクリエイションなどシリーズおなじみの要素も健在
パーティメンバーとの個別イベントであるPA(プライベートアクション)や、IC(アイテムクリエイション)といったシリーズおなじみの要素も、本作独自の形で採用されている。
PAは任意で発生させる特殊イベントとして存在するほか、道中フィールド上で自動的に発生するPAも存在し、これまでどおりメンバーたちとの親密度に影響していく。その街でいくつのPAが発生するのかを教えてくれるシステムになったので、あるかないかわからないPAを探してウロウロしなくて済む。その反面、宝探し感覚は薄れたといえるかもしれないが、個人的には歓迎したい。
クリエイションはパーティスキルとして習得し、消費アイテム、料理、装備品などを作り出すことができる。比較的序盤から覚えられるが、実は最初のうちはあまり役立つものは作れない。パーティスキルの種類はクエストなどで増えていき、スキルがレベルアップすることで精度が上がる(クリエイションの場合はレシピが増える)仕組みで、スキルをレベルアップさせるためには戦闘でスキルポイントを稼ぐ必要があるので、ゲームの進行と密接に関係する要素になったといえる。序盤ではあまり一生懸命にやる必要がないが、終盤で大化けする可能性を感じた。
また、「SO3」以降のシリーズ作品に必ず登場する人気キャラ・ウェルチもばっちり登場! 比較的序盤から会えるうえ、進行上の重要なポジションを務めている。
安心してプレイできるなつかしくて新しい本格RPG
SFCに始まり、PS、PS2、PS3と、ハードの進化とともに歩んできた「SO」シリーズ。PS3とPS4で発売される「SO5」は、やはりPS4の映像表現力が印象的だ。景色やエフェクトの精密さ、遠景まで描写可能な処理能力などもさることながら、個人的にはフィオーレ嬢のボディの質感に「PS4の底力」を感じた。特にプリッとした美しいヒップ! PS4ってスゲー!!
唯一困った点を挙げるとすれば、キャラを走らせるとカメラがユサユサ揺れるために、体質によっては3D酔いしやすいこと。アングルを変えると若干緩和するが、移動の基本が「走り」であるRPGでは切実な問題だ。カメラが揺れるほうがリアリティはあるのだが……。
「SO」シリーズに限らず、長い歴史を持つRPGシリーズの場合、どれも進化を遂げながら続編が作られるが、中には少々疑問を投げかけたくなる方向へ進む作品もある。だが、本作は、奇をてらい過ぎることなく、シリーズファンを置き去りにしない範囲で大きく飛躍したという印象だ。
バトルシステムや主人公のルックスが「SO3」に似ていることも手伝って、全体的な雰囲気も「SO3」の正統進化という感じ。感覚的な表現になってしまうが、久しぶりに「RPGらしい作品」をプレイしている気分になれた。正統派が与える安心感というか、数時間プレイするだけでも「こういうのがやりたかった!」という満足感が得られたからではないかと思う。シリーズファンにも、そうでない人にもおすすめできる作品だ。
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CHARACTER DESIGN︓akiman
※画面は全てプレイステーション 4版の開発中のものです。