PS3/Xbox 360ゲームレビュー「F1 2014」

F1 2014

ゲームモードの内容はほぼ変化なし。新コースのデキには大満足!

ゲームモードの内容はほぼ変化なし。新コースのデキには大満足!

緻密に再現されたマシンが美しい
ウェットコンディションでのレースは過酷だ
タイヤの能力を全部使ってライバルと勝負する
跳ね上げられる水滴が視界を閉ざす

 「F1 2014」は、前述の通り、走りの内容について前作から大きな変化を感じることができるが、遊びの幅という点では非常に変化が乏しくなっている。

 まず、前作に搭載されていた「F1 CLASSICS」モードが本作には存在しない。当モードは過去のF1で活躍したレジェンド級のドライバーたちや、その愛車を使っての歴史的レースを楽しめるというものだったが、どうやらその方向でコンテンツを拡充していくというのは相当難しかったようだ。

 コードマスターズのスタッフに話を聞いたところによると、引退したF1レーサーというのはチームを離れて完全に一般市民となり、ひっそりと悠々自適の生活を送っている人たちが多いらしい。収録するために許可を取ろうにも、公人ではないのでどこに住んでいるかも把握が難しく、窓口になるチームや事務所もない。連絡がとれなければ収録はできない……というケースが支配的になってしまった、という経緯があるようだ。

 というわけで、本作に搭載されたゲームモードは「F1 2013」からクラシックモードを引いたもの、に相当する。1レースを任意のマシンで走る「グランプリ」モード、シーズン戦をダイジェストでプレイする「シーズンチャレンジ」、全19戦をフルで追体験する「キャリア」、様々なレース状況で目標達成を目指す「シナリオ」と、標準的なタイムアタックにマルチプレイモード。いずれも2014年シーズンのF1を元にした内容だ。

 追加要素としては、以前まで「ヤングドライバーテスト」として搭載されていたスキル計測モードが「評価テスト」として、ゲームのアシストレベルをより適確に自動決定できるものに変化している。イタリアのモンツァ・サーキットを1周するタイムで決まる仕組みで、だいたい1分30秒以上ならイージー、1分26秒前後でミディアム、1分24秒を切るとハードとなるようだ。本作をプレイする中で時々チャレンジすると、上達とともに適切なレベルがわかり、より楽しく遊べる仕組みになっていると思う。

 また、シーズン戦を追体験する「キャリア」モードでは、最初から任意のコンストラクターを選べるようになった。以前のように下位コンストラクターでスタートして、上位チームからのオファーがくるまで我慢する必要はない。いきなりレッドブル・レーシングやフェラーリといった有力チームの強いマシンや、お気に入りのコンストラクターを使ってシーズン戦を戦える。ユーザーの選択に任せるこの方式は、F1ファンにとって良いものだ。

 「シナリオ」モードに収録されたチャレンジは、4段階の難易度に各5つの全20。イージーなチャレンジからハードなチャレンジまで各種用意されているが、慣れたプレーヤーならハードチャレンジが気にいるだろう。ウェットコンディションをオプションタイヤで走らされたり、フロントウィングが吹っ飛んだ状況で上位を維持するなど、本作ならではのシミュレーション要素が活かされたチャレンジが満載だ。どれもこれもかなりの手応えがあり、1発でクリアできれば大したものだ。

 というわけで内容的には、「F1 2013」と基本的な内容がかぶっている本作だが、新しいマシン、新しいレギュレーションのおかげでそれほどマンネリ感というものは感じない。むしろ、F1というのはそういうスポーツだ。毎年、基本的な“走り”の部分が変化するからこそ、見慣れたコースやライバルのメンツが新鮮な体験を提供してくれるのである。

 その点でいうと、オーストリアGPのレッドブル・リンクや、ロシアGPのソチ・オリンピック・サーキットといった今年のF1から採用された新コースの存在は、本作にとって良い刺激になっている。新しいコースはゲームでも新規作成されたこともあり、映像的な再現度は他のコース以上に高品質に仕上がっているように感じる。

 特に筆者のお気に入りはレッドブル・リンクだ。濃緑の山々が連なる遠景はとても美しく、客席などの障害物が極端に少ないコースであるため、コースのほぼ全景が視界内に入るシーンも多く、ビジュアルは圧巻だ。そんな風景の中をいくつもの高速コーナーがつなぎ、心地良いスピード感で駆け抜けていく。マスターすればするほど走るのが快感になるコースだ。繰り返し、また繰り返し、走ろう。

日本グランプリ開催に間に合わせてくれたコードマスターズに感謝

 というわけで本作は、いっさい奇をてらうことのない純粋なF1レースゲームに仕上がった。ゲーマー心理的にはF1をテーマにしたもっと新しい遊びを求める部分もあるが、F1ファン、レースファンの心理としては、本作が2014年シーズンのF1を忠実に、まじめに再現した、その点だけで充分に満足できるはずだ。

 一般車にスポーツカーからオフロードまで様々なタイプのレースゲームを日常的に遊んでいる筆者としては、F1のレースには独特の中毒性を感じている。箱車ではとても無理な速度でコーナーを旋回し、格の違う加速と減速で車両をコントロールする快感。わずかなコントロールの差異が大きなタイム差を生み出すというバランスの中で、100分の1秒を争うのだ。このスピードと迫力と、繊細さが高いレベルで両立したゲーム性は、よりうまく走りたいという感覚を刺激して、1コースを100周、1,000周と走りたくなるだけの魅力がある。

 その魅力を高いレベルで再現するため、本シリーズは実際のレースに基づくデータ収集を通じて、より高い再現度を目指しているという。公式プロダクトの強みゆえ、マシンのスペックデータや3D-CADデータも提供してもらっているらしいが、各コンストラクターともに細かい部分は秘密も多いため、それだけでは完全再現は無理なのである。ゆえに、ゲームのリリースはシーズン開幕後長い期間が必要となるわけだが、今年は日本グランプリの開催に間に合わせてくれた。

 日本グランプリの決勝は、10月2日の本作発売から3日後である。F1レーサーたちが練習セッションや予選で鈴鹿を走りこむのにあわせて、F1ファンとゲームファンの皆さんも、本作で鈴鹿を走りこんでみてはいかがだろうか。マシン特性を忠実に再現した本作なればこそ、決勝レースの展開と結果を、より深く楽しめるようになるはずである。

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(佐藤カフジ)