(2013/9/5 00:00)
かなり以前からPCと言えばデスクトップよりノートPCが売れる時代で、そうしたなか、ノートPCでPCゲームを楽しみたいというニーズも高まり、ゲーミングノートPCなるジャンルが成長してきている。ただし、まだまだ成長途中ということもあり、この分野を支えるのはいわゆる「ショップブランドPC」と、秋葉原など全国の電気街を拠点とするパーツショップが販売する「ノートPC」だ。
ツクモ eX.computerの「G-GEAR N1580J-710/E」は、Intelの最新CPU「Haswell」に、NVIDIAの最新GPU「GeForce GTX 770M」を組み合わせた15.6型ワイドフルHD(1,920×1,080ドット)液晶ノートPCだ。CPUのトレンドとして、統合GPUの性能を強化する動きが見られるが、実際にゲームを楽しもうとなるとまだまだNVIDIAやAMDのGPU、それも上位のGPUが必須だ。GeForce GTX 770Mは、今年リリースされたNVIDIAのノートPC向けGPUの中でも上位モデルに属している。15.6型というサイズと合わせ、持ち運べるゲーミングノートPCとして活躍してくれる。
デスクトップに迫るスペックを15.6型筐体にギュッと凝縮
ではスペックから見ていこう。
液晶ディスプレイ | 15.6型ワイド(1,920×1,080ドット)、LEDバックライト、ノングレア |
CPU | Core i7-4700MQ(4C8T/2.4GHz/TB時3.4GHz) |
メインメモリ | 8GB(DDR3-12800) |
GPU | GeForce GTX 770M(GDDR5 3GB)/Intel HD 4600(CPU統合) |
SSD | 128GB(mSATA) |
HDD | 500GB(SATA III) |
光学ドライブ | DVDスーパーマルチドライブ |
サウンド | HDオーディオ(Sound Blaster Cinema対応) |
有線LAN | 10/100/1000Base-T(Killer E2200) |
無線LAN | IEEE 802.11 b/g/n(Killer Wireless-N 1202) |
その他無線 | Bluetooth 4.0 |
インターフェース | USB 3.0×3、USB 2.0×1、ヘッドホン出力×1、マイク入力×1、ライン入力×1/出力×1、D-Sub15ピン×1、Mini DisplayPort×1、HDMI×1、マルチカードリーダー×1 |
バッテリー駆動時間 | 約4.8時間 |
外形寸法 | 396×268×56(W×D×H)mm |
本体重量 | 約3.5kg |
OS | Windows 8(64bit) |
まず、ゲームに肝心なGPUだが、GeForce GTX 770Mに加え、CPUに統合されているIntel HD 4600も利用可能だ。3Dゲーム時には高性能なGeForce GTX 770Mを用い、2Dゲームや普段のウェブブラウジングなどでは低消費電力なIntel HD 4600を用いるといった切り替えが自動で行なわれる。そしてIntel HD 4600自体も、CPUに統合されたGPUとしては最新世代であり、十分なパフォーマンスを秘めている。
また、ゲームにはGPUだけでなくAIの動作やネットワーク処理などのためにCPU性能も求められる。本製品はノートPCながら4コア、Hyper-Threadingで8スレッドの処理が可能なCore i7-4700MQを搭載しており、こちらも十分なパフォーマンスを持つ。動作周波数は定格2.4GHzと、この点はモバイル向けの設定だが、Turbo Boost時には3.4GHzまで跳ね上がり、デスクトップCPUに引けは取らない。ゲームだけでなく動画のエンコードなどでもノートPCらしからぬパフォーマンスが体感できる。
ストレージは、システムドライブとして高速なSSDを、データドライブとして500GBのHDDを組み合わせている。SSDは最近ではごく一般的に入手可能となってきたmSATAタイプ。HDDは2.5インチのSATAドライブだ。
なお、GPUがGeForce GTX 770Mなのは固定だが、CPUやメモリ、ストレージの容量などはカスタマイズに対応し、さらにパフォーマンスを高められるのもショップブランドのゲーミングノートPCの大きな強みだ。最小構成価格は159,980円。ミドルレンジクラスのデスクトップに液晶モニタやキーボード、マウスその他を追加してプラスアルファ、あるいはモバイルノートのハイエンドモデルといったところの価格帯と言えるだろう。ひと昔前ならゲーミングノートPCと言えば20万円台半ば~40万円といった高値の華だったものだが、CPUやGPUのハードウェア性能の向上とともにグッと身近なものになってきた。もちろん、10万円以下クラスの統合GPUだけのノートPCでは得られないゲーミングパフォーマンスを備えているのは、以下のベンチマークが示してくれるところだ。
比較用のPCは、CPU、GPUともに2世代前のものを用意した。CPUはCore i7-2670QM(4C8T/2.2GHz/TB時3.1GHz)、GPUはややセグメントが下のGeForce GT 540M(1GB)を搭載しており、ゲーミングノートPCというよりはエンターテインメント向けの製品だ。ただ、この製品の方向性についても、ベンチマークスコアに表れている印象もある。それでは各種ゲームでのベンチマーク結果を見ていこう。
3Dベンチマークの基準となる「3DMark」で計測した3つのテスト。DirectX 9の「ICE STORM」では比較用ノートPCの2倍というスコアが出たが、これがDirectX 10の「CLOUD GATE」、DirectX 11の「FIRE STRIKE」と進むにつれて差を広げていく。世代的なパフォーマンス差も大きいが、GPUのセグメントという点がここまで明確な差を付けている。
本製品のGeForce GTX 770Mは今夏にリリースされたハイエンド向けGPUであり、高負荷で高解像度という「FIRE STRIKE」でも高いスコアを示すことができる。一方で比較用ノートPCのGeForce GT 540Mは2年前にリリースされたローエンド向けGPUであり、低負荷・低解像度の「ICE STORM」はまだしも、「FIRE STRIKE」では1,000ポイントも満たすことができない。ゲームを楽しむならハイエンドGPUという点をあらためて数値で示した格好だ。
8月27日より正式サービスがスタートした「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」。実際のゲームのエンジンに置き換えられた最新版のキャラクター編で計測した。負荷的には、ワールド編よりも若干改善され、軽くなっていると言われるが、今回比較時に用いた最高画質となると、ミドルレンジクラス以上のGPUパフォーマンスが求められる。
本製品のスコアは1,920×1,080ドットで6,000ポイント近く出し「とても快適」。比較用ノートPCの4倍ほどのスコアだ。平均フレームレートも49.505fpsで、MMORPGタイトルで求められる30fpsを十分に上回る。
ちなみに、比較用ノートPCの1,920×1,080ドットは「設定変更が必要」と評され、平均フレームレートも11.35fpsとゲームにならない紙芝居状態だった。サーバーが負荷に耐えられないほど人気とされる「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」だが、それをノートPCで快適に楽しみたい場合、本製品は有力な選択肢となるだろう。
なお、参考までにHaswellの内蔵GPU「Intel HD 4600」でも計測したが、1,920×1,080ドット、1,280×720ドットとも「最高品質」でのプレイは難しいという結果が出た。ただ、グラフィックスオプションを「標準品質(ノートPC)」まで下げることで、普通~快適程度まで結果を上げられるため、消費電力を抑えたいモバイル環境で、オンボードでのプレイも一応は可能だ。
比較的軽めの「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト」。本製品はどちらの解像度も「とても快適」となったが、ひとつだけ注意点がある。本製品は、使用状況によってGeForce GTX 770MとIntel HD 4600を切り替える「NVIDIA Optimus」技術に対応しているが、「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト」をそのまま起動するとIntel HD 4600が用いられてしまうことだ。世界向けタイトルではこうしたことは少ないものの、国内向けタイトルの場合はドライバのOptimus設定に登録されていないということも起こり得る。そうした場合は、NVIDIAコントロールパネルから、「3D設定の管理」を開き、「優先するグラフィックスプロセッサ」という項目で、明示的に「高パフォーマンス NVIDIAプロセッサ」を指定してやれば、GeForce GTX 770Mが利用できる。
なお、Intel HD 4600時のスコアは、比較用ノートPCのGeForce GT 540Mよりやや下というところで、そう考えれば、なかなかの実力と言える。ただし、1280×720ドットで「普通」、1,920×1,080ドットでは「やや重い」という判定なので、実際にプレイする場合は、先の手順でGeForce GTX 770Mをオンにした方がよいだろう。
「ファンタシースターオンライン2」は今回計測したなかでは比較的動作が軽く、画質設定を最大の「5」にしても、比較用ノートPCの1,920×1,080ドットでもギリギリ30fps前後は出る。一方の本製品は1,920×1,080ドットでも軽く100fpsを超え、快適そのものといったところだ。重いシーンになっても問題なく、60fpsを下回るようなシーンはほとんど無い。アクションは入るもののFPSゲームほどシビアではないタイトルなので、30fps出ればゲームは楽しめるが、それでも画面描画の滑らかさは全く異なる。1,920×1,080ドットの最高画質で60fpsという最高の環境を求めるなら、本製品のスペックが参考となるだろう。
DirectX 9ベースの「バイオハザード6」。DirectXのバージョンこそ古いが、GPU負荷は実は3DMarkを除くと最も重く、統合GPUやローエンドGPUでの動作はキビシイものとなっている。こうしたアクション系ゲームこそ、本製品の真の実力が見られるタイトルと言えるだろう。
「バイオハザード6」では、1,920×1,080ドットでも50fps台後半の、ほぼ60fpsというラインを維持できた。引きのシーンで数十体のゾンビがわらわらと出てくるような際は30fpsをやや下回ることもあったが、そうしたシーンはシーンチェンジ時の自動進行となることが多く、アクションを挟まないので60fpsにこだわらずとも大丈夫だろう。その上で、30fps出ていれば、画面描画がカクカクするという印象は無い。なお、比較用ノートPCはC判定で、ゲームプレイは可能でも処理負荷によっては重いと評じられるが、実際のところ10fps程度しか出ておらず、これでプレイすることはかなりキビシイ。