3DSゲームレビュー

真・女神転生IV

“神か悪魔か”シリーズの魅力を新たなアプローチで楽しめる屈指の良作RPG

ジャンル:
  • RPG
発売元:
開発元:
プラットフォーム:
  • 3DS
価格:
6,980円
発売日:
2013年5月23日
プレイ人数:
1人
レーティング:
CERO:C(15歳以上対象)

 「真・女神転生III-NOCTURNE」より10年。ナンバリングシリーズ最新作「真・女神転生IV」がついに発売された。「真・女神転生」シリーズは、東京を舞台に神話の時代より今もなお続く神と悪魔の戦いが表面化し、その中でプレーヤーは人間として生き、どのように動くのかを選択していく。「真」シリーズで言えばスーパーファミコンの頃からそうした独特な魅力を貫き描いてきたRPGであり、昔から異色な存在感を放ってきた。そんなシリーズの最新作がどのようなゲームになっているのか。レビューとしてお伝えしていこう。

【「真・女神転生IV」公式サイト動画 フォーストレーラー】

洗練されたシステムで綴られる「真・女神転生」最新作!来訪者の目線を備えた“東京”

東のミカド国。中世ヨーロッパを思わせる城と城下町が広がる緑豊かな国だ
サムライを選出する「ガントレットの儀式」。このガントレットとの出会いが、主人公の運命を大きく変えていく

 今作の主人公達は、これまでのシリーズ作になかった“外の世界からの来訪者”という存在だ。東京に住んでいるわけではなく、現代文明の知識もない。城を中心に中世ヨーロッパテイストの街並が広がる城塞都市「東のミカド国」に暮らし、国を守護する「サムライ」を目指している。ざっくり言ってしまえば、和洋折衷の不思議な世界で暮らしている18歳の少年だ。

 主人公(主人公のみ名前変更可)は、ある日不思議な夢を見る。夢の中で名前を問われ、声の主は「もはや汝の成す選択は汝のためのみに非ず。世界を創るため、汝は歩まねばならぬのだ」と主人公に告げる。夢から覚めた主人公は、サムライを選出するという「ガントレットの儀式」に向かうのだが……。

 ガントレットを得る事で運命は大きく動きだし、それまでの日常が非日常へと変わっていく。そして彼らの物語の舞台は、次第に荒廃した「東京」へと移っていく。

 タイトル発表当初からこの「東のミカド国」の情報が中心に紹介されたので、シリーズファンの人はそのファンタジー色溢れる世界観とこれまでのシリーズとのギャップに困惑したかもしれないが、もちろんそこにも、本作の巧妙な仕掛けがある。どんな仕掛けなのかはもちろんネタバレになってしまうので書かないが、実際に本作をプレイすると「やられた、こういうことか!」と思うような衝撃が何度も起きるはずだ。

 東のミカド国でのプレイ冒頭には、「ウィザードリィ」のオマージュも感じられるだろうか。中世ヨーロッパを思わせる城塞都市に、地底へと続く洞窟。そこに挑むサムライ。和洋が入り乱れていて、言ってしまえば少し滅茶苦茶な世界観と思えるが、それもまた隠された秘密を覆っているフタのようなものだ。

 過去シリーズ作にはなかった新たなアプローチで描かれる本作の物語。“あの人物”も登場し、ストーリーや世界観の深さ、テーマ性において、シリーズ最新作としてふさわしい出来だ。様子見をしているファンの人には、いち早くプレイすることをオススメしたい。

今作の主人公たち新人サムライ達。左から順に、「主人公」、育ちの良さを感じさせる「ヨナタン」、荒っぽい言動が目立つが情にあつい「ワルター」、紅一点の「イザボー」。それまでの日常になかった全ての出来事が、彼らを次第に変えていく
【「真・女神転生IV」公式サイト動画「スティーヴン」】
悪魔が徘徊し、荒廃した東京の街。看板やお店なども再現されている。23区の位置関係も忠実だ

 東京でのマップ移動はシリーズ作でお馴染みの、見下ろし画面の中を主人公達のシンボルを動かして道を進んでいくというものだ。23区内のほとんどを網羅しているぐらいの十分な広さがあり、各所にストーリーが待っている。

 とはいえ、これはあくまで「真・女神転生IV」の中での東京なので、崩壊し橋も落とされていて、道も崩れて通れないところが多い。ただ、把握できないほどに複雑なマップ構成にはなっていない。最初のうちは迷子のような感覚に陥るものの、それはある意味、主人公達東のミカド国のサムライと同じ心理状態と言える。ウロウロして謎めいた場所を発見しておけば、後に役立つこともあるだろう。

 東京には、「新宿」、「渋谷」、「池袋」、タイトル発表当初から存在が公開されていた「銀座」など、山手線沿線を中心に他にもたくさんのロケーションがある。中に入ると3D画面のフィールドになるが、そこでも、現実にもある建物やお店、看板等が、パロディになってはいるが細かく作られている。例えば有名どころで言うと、銀座のアッポルストア、新宿のヨドガワカメラ、池袋のビックリカメラなどもある。道の作りにしても現実同様で、それを上手くダンジョン的なマップに仕上げている。

 街中やお店を調べれば家電製品などの“遺物”が手に入り、ショップに持っていくとマッカ(お金)で買い取ってくれる。言わばお金稼ぎの手段のひとつなのだが、そうした遺物のひとつひとつに対しても、主人公達の目線からのユニークな説明がある。例えば、「歯ブラシ」を“短すぎる乗馬鞭だろうか”と言ったり、「10円玉」を“鮮やかな細工のブローチ”と言ったり。

 東京という世界全体に対してもそうだが、これまでのシリーズ作にはなかった“外からやって来た来訪者ならではの目線”というユニークさが随所に散りばめられている。作り込まれた東京と、その崩壊の様子、そして、それらをユニークに体験していく来訪者の目線。この3つが独特な面白さを作っている。

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(山村智美)