PCゲーミングデバイスレビュー

Razer Orbweaver

愛好者増加中の左手デバイスに新型が登場
質実剛健な改良で、さらに広がる実用性

ジャンル:
発売元:
  • MSY
開発元:
  • Razer
プラットフォーム:
価格:
発売日:

「Razer Orbweaver」パッケージ

 MSYは3月1日、Razerの左手用ゲーミングキーパッド「Razer Orbweaver」を発売した。本製品は左手のみで多数のプログラマブルボタンにアクセスできる装置で、位置づけとしては前モデル「Nostromo」の改良版にあたる。変更点としてはボタン数の増加、親指まわりのボタン配置変更、サイズ調整機構の搭載などが挙げられるが、果たして実用性のほうはどうだろうか?

 本製品のようないわゆる左手デバイスは、近年ユーザーがじわじわ増加している製品カテゴリーだ。その利用形態はゲーム用途だけでなく、マウスやペンタブレットから手を離せないビジネスアプリ、各種コンテンツ制作ツールでの利用など幅広い。その中で本稿では、まずゲーム用途としてどうか?ということにフォーカスして本製品をチェックしてみたい。

ボタン数増加だけじゃない! 「Orbweaver」の実用性重視の改良点

製品の全体像
サムモジュールまわり

 まず、本製品のような左手デバイスをゲームで利用する利点について考えてみよう。

 ひとつは、通常のキーボードではアクセスしづらい機能も、任意のボタンに割り当てることで素早くアクセス可能にできることが挙げられる。例えばRTS系のゲームで2キー以上の同時押し、あるいは両手が必要になるようなアクションなども、プログラム機能のおかげで1ボタンでの操作が可能になる。最適なボタン配置を用意すればゲームプレイが快適に、ひょっとするともっと“強く”なれるかもしれない。

 また、キーボードに比べてコンパクトに機能が集約されているので、机上のスペースを有効活用できることもメリットだ。フルキーボードを置くだけでいっぱいになるような環境でも、このキーパッドなら大きめのマウスパッドと併用することが可能になる。これはローセンシティビティ志向のFPSユーザーに大きな利点となる。

 逆にテキストチャットがやりづらくなるというデメリットを甘受してまで左手デバイスを使う理由というのは、多彩な機能へのアクセスを容易にしたい、という動機がほとんどだろう。その点で言うと、本製品「Orbweaver」はいくつかの点で期待通りの進化を遂げている。

【「Razer Orbweaver」DRTCM38BL】
こちらは前モデルのベースとなった「SpeedPad n52te」
「Orbweaver」。ボタン数が大幅に増え、サムモジュール周りもかなり印象が異なる

使用状態
Razer製品らしく、全ボタンLED装備
サムモジュールのボタン類はゲーミングマウスなみの軽いクリック感だ
最大まで広げた状態

 前モデル「Nostromo」および、そのベースとなった「Belkin SpeedPad n52te」と比較すればその違いは明確だ。

 まず目立つのは、4本の指で操作するメイングリッドボタン部。FPSやMMORPGでメイン移動キーに割り当てられる中央の4ボタン(WSADに対応)の上部に5個のボタン列が追加されたことは大きなメリットだ。

 この追加部分は基本的にはフルキーボードの[半角/全角]または[`(チルダ)]から数字キー[1]~[4]に相当する部分となり、多くのFPSやMMORPGで武器切り替えやスキル発動に割り当てられている部分なので、カスタマイズなしに大抵のゲームが遊べるようになるという、実用性の高い改良点といえる。

 また、前モデルにあったホイールは廃止されたが、そのかわりメインボタンがさらに1つ追加されている。このため、WSADスキームで移動を行なうゲームで、その他の機能に使えるボタンが前モデルでは10個だったところ、本製品では15個と、1.5倍に増えた。これならば操作キーの多いタクティカル系FPSや、スキルボタンへのアクセスを絶やさないRPG系ゲームにも対応できる。

 もうひとつ大きな改良点と言えるのは親指部分の機構。8方向サムパッド+ボタン2つという構成は変わらないが、形状やスイッチは完全にリメイクされている。

 8方向サムパッドは「n52te」や「Nostromo」では入力荷重が重すぎて、力いっぱい押し込まないと反応せず、そのため誤入力が多発して不人気だったが、「Orbweaver」では軽く傾けるだけで確実な入力ができるようになった。素早く操作できるので、FPSの移動キー機能を割り当てる気になれるほどだ。また、その上下にある2つのボタンもゲーミングマウス並の軽さとなり、素早く間違いのない操作が可能になっている。配置も申し分ない。

 このように各ボタンとも額面通り“素早いアクセス”が可能な設計となったことで、ようやくRazerの左手デバイスは「ゲーミンググレード」を名乗れるようになった印象だ。

 ただし、メイングリッドボタン部の押下ノイズがちょっと気になる。タッチ感としてはチェリーメカニカルスイッチMXシリーズのものに似ている、あるいはそのものだと思われるが、押下時のクリック感がやや強すぎ、カチャカチャと大きな音をたてる。静かにプレイしたい人は、可能なら店頭でスイッチ音を確認したほうがいいだろう。

 その他、本製品では前モデルにはなかった調整機能が3箇所に付加されている。手のひらがあたるパームレスト部は角度調整が可能。手首があたるリストレスト部は2cm程度の幅で前後させることができる。また、親指でアクセスするサムモジュールも、2.5cm程度の幅でスライド可能だ。

 とはいえ、そもそもの寸法が少し大きめなのか、1番小さくまとめた状態でも、筆者の場合は意識して指を広げないとサムモジュール全体へのアクセスが厳しかった。筆者は平均より手が小さめなほうなので、本製品がジャストフィットする手のサイズは普通からやや大きめといったところだろう。

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(佐藤カフジ)