★ PS3/WINゲームレビュー★
過去世界“ウーラシール”がついに!
魅力満点の拡張DLCをひっさげて登場!!
「DARK SOULS with ARTORIAS OF THE ABYSS EDITION」
ジャンル:
  • アクションRPG
発売元:
開発元:
プラットフォーム:
  • PS3
  • WIN
価格:
4,800円
(PS3 / WIN)
1,200円
(PS3)
4,000円
(WIN)
発売日:
2012年10月25日
プレイ人数:
1人
レーティング:
CERO:D (17歳以上対象)

 本格ダークファンタジーの世界観、まるで絶望が具現化したかのようなシビアさ、それを乗り越えて初めて得られる満足感と面白味。「DARK SOULS」(ダークソウル)に、拡張ダウンロードコンテンツ「ARTORIAS OF THE ABYSS」が登場した。

 拡張DLC「ARTORIAS OF THE ABYSS」を導入することで、新たなステージ過去世界「ウーラシール」の冒険、そこに待ち受ける強大なボスやモンスター、新たな武器や防具、魔法。さらに、PvP専用マップ「試練の戦い」では1人対1人、2人対2人、4人での乱戦を楽しめる。「ダークソウル」の世界をさらに広げてくれるこの拡張DLCについて、レビューしていこう。

 なお、本作のオールインワンパッケージ「DARK SOULS with ARTORIAS OF THE ABYSS EDITION」は、言わば価格控えめの本編ベスト版+DLCコンテンツ入りのパッケージ。元のPS3版「DARK SOULS」を持っている人なら1,200円の拡張データを購入すると同等となる。また、本レビューはPS3版を取り上げている。



■ 過去の世界「ウーラシール」を飲み込まんとする深淵の闇。
  深淵歩きアルトリウスの物語がついに明かされる

謎の巨大な手に掴まれそうになっているプレーヤー。過去世界「ウーラシール」の冒険はここから始まっていく

 「ARTORIAS OF THE ABYSS」は、「ダークソウル」本編での1ステージ分に相当する過去世界「ウーラシール」が追加される拡張DLC。例えば、本編では「黒い森の庭」や「病み村」といったひとまとまりの地域があり、その最奥に強大なボスが待ち受けていたが、ウーラシールは約1地域分、1ステージ分相当の広さのエリアとなっている。

 あくまで本編の世界にさらに新しいエリアを追加するという作りなので、例えばタイトル画面に新しいモードが追加されているといった作りではない。本編のある場所に、ある条件を満たすと、「ウーラシール」への入口が出現する。

 その「ウーラシール」への進み方については、“それすらも自分の力で見つけ出したい”という方もいらっしゃるかもしれないので、発見の喜びを損なわないよう本レビューでは説明しない。ただ、すぐにでも楽しみたいという人は、公式サイトのアップデート告知ページにアクセス方法が記載されているので、そちらをご覧頂きたい。

 本編プレイ済みの人にその条件を見てもらうと、DLC「ARTORIAS OF THE ABYSS」は“「ダークソウル」本編を隅々まで遊びこんだ人向けのコンテンツ”だと感じられることと思う。難易度は本編と比較して、飛び抜けた難易度ということはないが、基本的に高難易度の世界だ。本編をたっぷりと遊びこんだ人にも、新しい冒険の魅力と絶望を与えてくれるはずだ。


森の中にそびえ立つ朽ちた塔が遠くに見える。過去に存在していた魔術の地「ウーラシール」もまた、本編同様に幻想的かつ退廃的な魅力に満ちている
ウーラシールのエリアにも様々な場所があるが、市街エリアの作りの面白さは秀逸。侵入された場合でも、互いに姿が見えず緊張感のある距離の詰め合いになっていく

 この追加要素だが、ウーラシールの世界、そしてモンスター、さらにエピソード性も秀逸なものを感じさせる。ウーラシールは「ダークソウル」本編中では、ある場所で出会える「ウーラシールの宵闇」という女性がおり、彼女からその地に伝わっていた魔法が学べるのみだった。本編の時代よりも遥か昔に存在していたという魔術の地。その場所を、この「ARTORIAS OF THE ABYSS」によりついにプレーヤーが訪れられるようになるというのが、何よりの醍醐味だろう。

 過去世界ウーラシールにはいくつかのロケーションがあり、後の「黒い森の庭」を思わせる広大な森、強大な魔物、闘技場、そして建物が入り込み複雑な作りになっている市街、さらに深淵など、1ステージ分とは言っても広く、本編中のエリア以上に楽しめる世界となっている。

 特に、迷路のようにルートが繋がっていて建物の中など物陰も非常に多い市街では、侵入してきた敵プレーヤーとの戦いが非常に面白い。

 登場するボスの強さ、そして面白さも本編以上のものがある。動きが速く、攻撃は激しく、圧倒的な強さを見せてくれる。本編クリアが充分に可能なプレーヤーであっても苦戦すること間違いなしで、召喚サインから他のプレーヤーを召喚して熟練者3人で挑んだとしても、気を抜けないぐらいの戦いが楽しめる。

 エピソードとしても、ダークソウル特有の“言葉では語られずとも考察すると深みを感じさせてくれる良さ”が、このウーラシールでも楽しめる。その中心となるのは騎士アルトリウスだ。“深淵歩き”という異名と共に彼の名前や遺物が本編に登場していたが、彼はなぜ深淵へ向かったのか。そして、その後どうなったのか? そして、その異変はなぜ起きてしまったのか……。

 本編ではこのDLCの後の時代である、彼の墓を守っていた灰色の大狼シフが登場していたが、シフもまたアルトリウスのエピソードを知っていくきっかけになっている。言葉では語られずとも、その姿や特定の場面を見ると、ある物語を見いだせるはず。そうした、考察することで理解していったときの感覚と、そうさせるだけのクオリティがDLCの物語にはあった。さらに、このDLCの冒険を経ることで本編にもある変化が起こり、そちらも見逃せないものになっている。


このDLCの中で描かれるものの中でも、見所はなんと言っても深淵歩きこと騎士「アルトリウス」。彼がなぜ深淵に至ったのか、そしてその後どのようになっていったのか。狼シフと共にその物語がついに明らかになる
ウーラシールの地でプレーヤーを待ち受けるのは、強大・凶悪な新モンスターたち。道中の危険さ、新ボスの手強さも本編以上で、歯ごたえ満点だ


■ PvPを心ゆくまで楽しめる“試練の戦い”!
  「1人対1人」、「2人対2人」、「4人バトルロイヤル」で対戦の魅力を突き詰められる

PvPを心ゆくまで楽しめる「試練の戦い」。「1人対1人」、「2人対2人」、「4人バトルロイヤル」がある

 ある程度DLCの世界を冒険すると、闘技場のような建物にたどり着く。そこには、プレーヤー同士の対戦であるPvPを心ゆくまで楽しめる「試練の戦い」という施設がある。

 ここで楽しめるのは、「1人対1人」、「2人対2人」のペア同士のチーム戦、そして4人が参加し全員敵同士で入り乱れて戦う「4人バトルロイヤル」だ。青い篝火から、専用のマップへと移動して参加できるようになっていて、ここでの勝敗ではソウルや人間性のやり取りはない。純粋に戦いを楽しむ場所となっている。

 参加準備用の専用マップは四角い中に十字路が作ってあるような場所で、「1人対1人」なら左右に、「2人対2人」なら上下左右に仕掛け床が置かれている。その床の上で待機するとマッチングが行なわれる仕組み。どれかひとつがマッチングのホストとなる床で、その他がホストに参加する床となっている。待機中には参加者が他にいる証である赤い共鳴サイン(赤い丸いマーク)が出るが、それはいわば順番待ちのようなもの。その数が少ないところの床で待機するようにしよう。

 マッチングが完了すると、仕掛け床が開いて下のバトルステージへと落とされる。バトルステージは周囲に柱が何本も立っているフロアと、そのフロアから階段で上がれる何もなくて開けている場所の2層構造。どちらでどのように戦うかはプレーヤー次第だ。

 対戦のルールは3分間戦い続け、終了時点で撃退数が多いプレーヤーの勝利となるというもの。倒されてもすぐに復活するようになっていて、撃退数が多いプレーヤーのキャラクタには頭上に王冠が表示される。


PvPの試合は、まず専用の控えの間でマッチングを行なう。マッチング待機中には画像のように赤いサインが表示されるのだが、それは同じように参加待ちをしているプレーヤーなので、その数が少ないところで待機しよう。試合は専用のマップで行なわれ、3分間戦って撃退数の多い方が勝利となる

こちらは4人バトルロイヤルの様子。2人のプレーヤーが戦っているところに、横から大火球を投げつける!! こんな風に、横やりを入れる、または入れられる緊張感がある

 3種類それぞれで対戦の面白さや醍醐味は異なってくるが、まず1人対1人のいわゆるタイマンバトルは、序盤は時間制というルールの特徴からしても、早々にリードされないようジリジリとした慎重な間合いの取り合いから始まっていく。そこから痺れを切らしてどちらかが動き、試合が動いていく。緊張感に満ちた戦いが楽しめる。

 ただ、この“時間制ルール”が立ち回りに影響を与えてしまっているところもあって、1度倒せばいいだけでなく時間の限り続くものであり、どちらかが撃退数でリードすることになるので、リードを保って逃げ切ろうと守りに徹するプレーヤーが出てくるのは当然だ。現状は守りの堅いプレーヤーを崩すのが難しいバランスに感じられ、その守りを崩そうと焦ると、逆にその焦りを突かれてしまうという流れになりがち。もちろんこれはこれで面白いのだが、可能であれば撃退数先取ルールなどの別のルールの追加にも期待したい。

 これが2人対2人や4人バトルロイヤルになると、“背後や側面を常に注意する”という目の前の相手以外にも気を配る面白さが加わってくる。激しくやり合っている2人を横目にこっそりと背後に近づいて漁夫の利を得る、なんてこともできる。そして、そんな自分の背後にも回り込もうとする敵がもちろん出てくる。常に参加プレーヤー全体の動きを気にしながらどう動くかが求められる。1人対1人にはない気軽さもあって、とても面白いモードだ。

 どのモードも、対戦はやはり面白く、戦い方を突き詰めていく楽しさもまた興味深いもの。このDLCで新たに手に入る武器防具や魔術・奇跡・呪術、さらに既存の装備等にももちろんバランスが調整されており、どんなキャラクターに仕上げどんな戦い方をするかというバリエーションも幅広い。一部には「強力だなぁ」と感じる攻撃があるにはあるのだが、それに対抗する手段がないわけでもない。今後に戦い方がどのように進化していくかは未知数であり、それもまた魅力だ。


目の前で戦っていたうちの1人が倒され、HPが減っているところにチャンスと言わんばかりに攻撃を仕掛ける筆者。だが、別のもう1人がそんな筆者の後ろに迫っていて、致命の1撃をズドン! バトルロイヤルの醍醐味だ

 なお、試練の戦いでのマッチングについてだが、おそらくは通常の召喚サイン同様に一定以上レベルの近いプレーヤーとマッチングされる仕組みになっているようだ。筆者がレベル帯の異なるいくつかのセーブデータで試してみた印象としては、レベル100前後のプレーヤーが1番多いように思えた。レベル50や150近辺だと、レベル100のキャラクターでマッチングするよりも時間がかかる。ここもプレーヤーに委ねられているところだが、ある程度レベル帯を100前後や200前後といったあたりに意識するといいのかもしれない。



■ クオリティの高さは本編以上!
  ゲームらしい手触りの良さ、遊びごたえ満点のDLC

ウーラシールを飲み込まんとする深淵の果てに待つ、強大な存在。シビアさもそれを乗り越えた時の感動も、本作の魅力がギュッと詰まっている。これを機会に本作を遊び損ねていた人にもプレイ頂きたい

 ウーラシールのエリアや新たなボス、そこで楽しめるエピソード性、さらに対人要素の新システムである「試練の戦い」と、1,200円で提供されるDLCとは思えないほどの高いクオリティを感じさせる本作。本編から引き継がれているシビアさや独特な遊び心を感じさせる作りは、より洗練されている。DLC部分を自力で一通りの内容を楽しみ終わるまでとなると大体5~6時間ほど遊ぶことになるかと思われるが、その後のまだ発見していない要素の探索や、召喚サインを出しての協力プレイ、対人要素と、それ以上にもたっぷりと楽しめる。

 「ダークソウル」全体であり、本編の魅力については2011年の発売当時に、「オフラインプレイ編」「オンラインプレイ編」の2回にわけたレビューを書かせていただいたのでそちらをご覧頂きたいが、DLC配信と同時にアップデートファイルver1.06が配信され、本編もより遊びやすくなっているところも見所。バグフィックスやバランス調整もさることながら、転送ポイントの追加なども行なわれている。

 筆者も本作を久しぶりにプレイしたが、その魅力は色あせず、改めて面白さを痛感させられた。本編をプレイ済みの人にはこのDLC「ARTORIAS OF THE ABYSS」をぜひプレイすることをオススメしたいし、未プレイの人にはオールインワンパッケージがオススメ。そこには最高の冒険と体験が待っているはずだ。


Amazonで購入

(2012年 11月 19日)

[Reported by 山村智美 ]