あこがれのスーパースポーツカーを駆り、風光明媚なリゾートアイランドを気の向くままにドライブする。時にはライバルたちと熱い戦いを繰り広げ、様々なチャレンジで腕を磨きながら、自分だけのカーライフを楽しむ。そんなドライビングの楽しみを与えてくれる「テストドライブ アンリミテッド 2」がいよいよ日本発売だ。
「テストドライブ アンリミテッド 2」は、仏Eden Gamesが開発したカーライフシミュレーションゲーム。本作ではスペインの観光地イビサ島と、ハワイ・オアフ島の2島をリアルスケールで再現した広大なドライビング空間が、まるごとプレーヤーのプレイグラウンドとなる。本稿では他に例を見ないスケール感を持つ本作の魅力に迫ってみよう。
■ 総面積2,000平方km超のプレイグラウンド、無数のチャレンジ
イビサ島へようこそ! |
気の向くままにフリードライビングを楽しむ |
レースに挑戦して賞金を稼ごう |
「テストドライブ アンリミテッド 2」は、とてもマッシブなドライビングゲームだ。本作で再現されるのは単なるレースだけではなく、クルマのある人生を楽しむための環境である。そのプレイグラウンドとして収録されたスペイン・イビサ島(面積約570キロ平方メートル)とハワイ・オアフ島(面積約1,600キロ平方メートル)は、いずれも風光明媚な観光地。この2島が一部だけでなく、隅々までまるごと再現されているのだ。
基本のゲームシステムとしてはフリーローミング(自由に放浪できる)のスタイルを採用しているので、広大な風景にウットリしながらドライビングを楽しんでもいいし、島内の各地に用意されたレースに挑戦して賞金を狙ってもいい。その他にも、島内を探索して見つかる様々なものごとが、プレーヤーのカーライフを盛り上げるように工夫されている。
また本作は、ある意味で多人数同時参加型(MMO型)のレースゲームでもある。ゲーム内に再現された両島はオンラインで世界中のプレーヤーと繋がっており、街を流して走れば他のプレーヤーが走っている様子を見つけることができる。互いに近づいてヘッドライトを点滅させればその場で即席レースを開始したり、あるいは特定のロケーションに集まってみんなでツーリングを始めたり。時には警察と逃走者に別れての突発チェイシングイベントが発生することもあるのだ。
とはいえ、本作は自由度の高さがウリ。グループで楽しみたい人はゲーム内の「クラブ」を結成して、他の関係ないプレーヤーからの邪魔が入らない環境で遊ぶこともできるし、ひとりでまったりと楽しみたい人ならオンライン機能をオフにしてプレイすることもできる。自分のスタイルで遊べるカーライフシミュレーターなのだ。
基本的には明確な目的がないのが特徴ともいえる本作で、すべてのプレーヤーにとっての唯一の共通目的は「あこがれのクルマをゲットする」ことに尽きるだろう。その意味でいうと本作はRPG的な側面もある。本作で車両を購入するためにはレースや各種チャレンジでお金を稼いで十分な資金を貯める必要があり、また、その車両を売っているディーラーを、島内のどこにあるか自分で探しあてる必要もある。欲しい車が高ければ高いほど、大きな目標になるのだ。その中でプレーヤーは、公道レースドライバーとして腕を磨き、島内を走り尽くし、様々な側面で成長していく。
また本作ではカーライフの別の側面、プレーヤー自身のスタイル構築やライフスタイルの構築といった部分もゲーム化している。街の各所にある施設でプレーヤーアバターの髪型・服装を変えたり、様々なグレードの別荘を購入してより多くのガレージ、自分だけの部屋を獲得したりと、ゲーム内で生活する風味も強い作品である。その中で何を目標とするかはプレーヤーに委ねられているのだ。
本作のメインはなんといってもイビサ島・オアフ島の広大で変化に富む風景、そのものを楽しむこと。好きなクルマを乗り回せばそれだけで幸せな気持ちにしてくれる | ||
競争、探索、収集、社交、それぞれの方向性で無数のチャレンジが用意されており、プレーヤーレベルの向上に寄与する。プレーヤーレベルが上がれば新たな要素にアクセスできるようになることも | ||
・各車両の特徴を捉えたドライビングモデル
ドライビングゲームとしての核となる車両挙動は、本作においてはデフォルメの効いた操縦のしやすいものになっている。挙動の難易度として「アシスト」、「スポーツ」、「ハードコア」の3段階が用意されているが、最も難しい「ハードコア」でタイヤの食いつきを多少意識する必要があるくらいで、リアル系シムのようにやたらツルツル滑ることはない。ほとんどの車両でアクセルベタ踏みでガンガン走れるようなスタイルだ。
リアル系シムではないため、車高の低いダウンフォースカーでもオフロードを100km/h超で走り回れるし、ハンドブレーキで車体をスピンさせても、軽くアクセルを抜いてカウンターを当てれば自然にトラクションが戻ってくるようになっている。また、大クラッシュしても車両が損なわれることはない。このあたりはプレイの気持よさを優先したセッティングになっている。
その上で秀逸なのが、きちんと各種車両の特徴が表現されていること。クラシックカーの不安定な挙動、車高の高いオフロードカーのモッチリとしたオンロード挙動、ハイパワーなV10、V12搭載車の慎重を要するアクセルワーク。車重、パワー、バランス、空力に基づいた車両挙動の違いが、少し操作するだけでもしっかりと伝わってくる。だからこそ、数々のクルマを乗り換えつつ様々なレースに挑戦することがより楽しくなっているのだ。
クラシックカーからオフロードカー、最新のモンスターマシンまで幅広い車種が登場。ドライビングの挙動は気持ちの良い、それでいて各車両の特徴がしっかりと伝わるものになっている |
■ 何はともあれ「A1ライセンス」の取得からが本格的カーライフの始まり
プレゼントがフェラーリとは、これまた剛毅な! |
という夢でした |
最初にプレーヤーが買えるのは中古のクラシックカーのみ |
前節で本作は自由度の高さがウリと述べたが、正確にはそれはゲームがある程度進んでからの話だ。ゲームスタートからしばらくの間はチュートリアル的な流れが続く。スタート地点であるイビサ島でのミッションをこなしてオアフ島に行き、各種の「ライセンス」を取得するまでは割とストーリー重視の展開にしたがってプレイすることになる。
プレーヤーはイビサ島にやってきたひとりのドライバー。誕生日パーティの席上でグラマラスな美女に呼ばれ、真っ赤なフェラーリをプレゼントされる。ウキウキ気分で島内をドライビングしていると……。夢でした。本当のプレーヤーはこの女性ドライバー、テス・ウィントリーの付き人。レーサーではないし、貧乏なので買えるクルマも中古車オンリーというしょっぱい状況だ。その状況をテスにさんざんバカにされつつも、レースに参戦するチャンスが与えられたのでいざリベンジ、立身出世を目指すというわけだ。
ゲーム開始後直後はこのようにストーリーをなぞりつつ、プレーヤーがイビサ島でレースドライバーとして1人前になっていくまでのチャレンジが次々に与えられる。その中で特に重要なのが「ライセンス」の取得だ。
ライセンスは各クラスのレースに出走するために必要となるもので、クラシックカー、オフロードカー、ロードカーの3系統でいくつものクラスがある。まずは最も低いクラスでライセンス取得に成功したら、いよいよ初めてのレースへ、という流れだ。そしていくつものレースをこなし、ある条件を満たすことでいよいよオアフ島へ行くことができるようになる。
私のような前作からのファンだと、この序盤の流れが面倒臭くてしょうがなく、正直なところもっと自由にやらせてくれればとも思ったのだが、低クラスのレースををこなしていく最中にはいろいろと発見もあるのだ。新しいカーディーラー、思わず見とれてしまうような美しい風景、何度も走りこみたくなるような良い道。これらのものが次へ進むための大きな刺激になる。また、実際にスーパーカーを手に入れた時の喜びが何倍にも大きくなる。
レースに勝つためには運転技術と車両の選択の両方が必要だ。運転技術面では、直角のコーナリングが多くなる市街地レースではハンドブレーキを使ったドリフトが非常に有効。減速と旋回を同時にできるぶん、コーナーでの追い越しが容易になるためだ。車両の選択はコースに合わせて加速・トップスピード・ブレーキングの3要素を吟味して向いたものを選びたい。ここでつまづくと「運転は完璧なのに勝てない……」という状況に陥りがちなので、余った資金でどんどんいろんなクルマを試したいところだ。
レースイベントの極めつけは、各島のラストに実施される一周レース。イビサ島では島の外周をグルリと100km以上も走り続けることになる。標準クリアタイムは54分ほどなので、平均速度100km/h以上で集中をきらさず走り続けなければならない。次々に変わっていく風景、山道から市街地まで様々な顔を見せる路面。過ぎていく時間は太陽を傾かせ、ゲーム内時間で昼過ぎにスタートしたレースは、夜の帳に覆われてゴールとなる。すべてが変化していくライブ感がたまらない、素晴らしい体験だ。
ライセンステストを終えたらレースへ。時刻や天候の変化もあり、レース時に悪条件が重なることも。もし苦戦するようなら時を改めて再チャレンジするのも手だ | ||
最大のチャレンジのひとつとなる1周レースは、本作の素晴らしさを噛み締める最良の体験でもある |
オアフ島へ! 今後両島の行き来は自由だ |
そして、イビサ島で一定の条件を満たすことでオアフ島へ行けるようになる。イビサ島にはいつでも戻ることができるので、純粋に行動範囲が広がったと考えていい。ここでプレーヤーは1人前のレースドライバーとなるべく、最高のライセンス「A1ライセンス」取得にチャレンジ。このライセンステストがなかなか難しい。例えばスラローム中にパイロンに少しでもかすったらリトライとなる厳しさなので、うまくいかないとイライラしてしまうかも。落ち着いてじっくり取り組もう。
A1ライセンスを取得したら、最高峰のロードカーで高額賞金をかけたレースに挑戦することができる。それに勝てるようになればフェラーリ・エンツォだろうがブガッティ・ヴェイロンだろうが、パガーニ・ゾンダだろうが、どんなクルマだって買えるようになる。ここからが、「テストドライブ アンリミテッド 2」が本当にアンリミテッドなゲームになる瞬間だ。
こうして「成長」していくうちに、目的の地点まで数十キロという距離をクルージングすることも苦ではなくなるだろう。1度走った道はマップ画面からいつでもワープして飛んでいくことができるので、どんどん未踏の道路を走破していこう。そうしているうちに街中のクルマ関連施設、アバター関連施設、マルチプレーヤー関連施設など様々なものを発見し、マップ画面がどんどん賑やかになっていく。もちろん、オンラインでプレイしているなら他のプレーヤーとの出会い、チャレンジを受けることもあるはずだ。
より高度なレースに出場するためには1ランクづつライセンステストをパスする必要がある。これを越えられたらいよいよ自由な世界が待っている | ||
ハイスペックカーでレースに挑戦。オアフ島は山道も多く、鋭いドライビングテクニックが要求される |
■ 無数のコレクタブル、探索要素。そしてマルチプレーヤー
島の各所に隠されているスクラップ。集めるといいことがある |
別荘を購入して模様替えをしてみる。細かくいじっていると意外とお金がかかる…… |
本作ではイビサ島、オアフ島の双方に、レース以外にも様々なものが用意されており、それらを発見したり、何かを集めることがプレーヤーの第2の目的となっている。例えば島内の各所に隠されている「スクラップ」は、大変見つけるのが難しいのだが、1エリアに10個用意されているそれをすべて見つけることができたら、ディーラーでは買えないスペシャル車両を手に入れることができるのだ。
お金を貯めて、素晴らしい風景を楽しめる別荘を購入するのも楽しみのひとつ。プレーヤーが所有するクルマを格納するガレージを確保するという意味でも別荘の購入は重要な要素なのだが、今作では邸宅の中がきっちり映像化され、中を歩きまわったり、模様替えを行なうことも可能と、ライフスタイルの演出部分にかなりの力が注がれている。気に入った別荘を自分なりにアレンジして、秘密基地ライクに活用するのも楽しい。
また街の方々にあるファッションショップでアバターの服装を整えたり、床屋で髪型を変えるといったこともプレーヤーの成長に寄与する要素となっている。規定数を集めたり、ある回数髪型を変えると「収集」レベルが上がっていき、レベルが上がることで他の要素がアンロックされていく仕組みだ。例えばクルマをチューニングショップである段階以上に強化するためには、そのエリアにおける一定以上の「探索」レベルが必要という具合だ。
このように本作では各要素が条件を満たすたびにアンロックされていく仕組みになっている。単にお金を貯めれば好き放題できるというわけではないのでなんとなく自由が縛られている感じもするが、そもそも膨大なコンテンツが用意されているため、プレイ中に自由がなさすぎて退屈することまではないので安心していただきたい。ちょっとイライラすることはあるかもしれないけれども。すべての基本は島内のすべての道を走破することから始まる。風景を楽しみながらビュンビュン飛ばしていこう。
・ 突発チェイシングが楽しいマルチプレーヤー要素
道を流していると突然他のプレーヤーから挑戦を受けることがある |
オンラインモードで島内を散策するなら、他のプレーヤーとコミュニケーションしてみるのもいいだろう。とはいっても無理に言葉を交わす必要はなく、クルマで語ればいい。ヘッドライトを点灯させるという簡単な方法で、道行くプレーヤーに突発のレース「インスタント・チャレンジ」を仕掛けるのは王道中の王道。適当に設定されたゴール地点まで先に到達すれば、あらかじめ設定しておいた掛け金をゲットできる。手軽に始められて負けてもリベンジ可能なのでガンガン挑戦したい。
これまた突発的に始まるのが、警察と逃走犯に別れてのチェイシングだ。街を走る警察車両に追突したり側面を擦ったりしてやると違犯メーターが上がり、これが振りきれると警察からのチェイシングを受けることになる。その時点で付近にいる他のプレーヤーに「追跡に協力しますか?」という知らせが出て、承認したプレーヤーが、警察側として追跡に参加するのだ。
人通りの多い市街地でこれをやると、何台ものプレーヤーに追跡される一大チェイシングシーンが始まって大わらわ。それぞれのプレーヤーがどんなクラスの車両に乗っているかはわからないので、自車両のスピードを過信せず、小路を利用して急旋回など、惑わす動きで一定時間の逃走を目指そう。はたまた追う側をプレイするなら、他のプレーヤーと協力して追い詰める。数秒間、相手に密着することができれば逮捕だ。
こうして繰り広げられるチェイシングバトルに勝利し続けると、犯人側・警察側それぞれのキャリアレベルが上がっていき、これもプレーヤーレベルの成長に寄与する仕組み。たとえ経験値が入らなくても、周りのプレーヤーを巻き込んで遊べるという点でとても楽しいシステムだ。まさにクルマで語り合うコミュニケーションという形で、秀逸である。
警察車両に当て逃げすると突発的に始まるマルチプレーヤー・チェイシング。逃げ切れ! 捕まえろ! と複数のプレーヤーがてんやわんやとなる |
■ 十分なクオリティを得てリリースされた日本語版
本作は、先行発売された海外版で様々なバグやサーバーの不具合が起き、ローンチ直後に多くの悪評がついてしまったという経緯がある。日本語版の発売が延期に延期を重ねた背景にはその影響が大だが、現在本作のレビューのため数十時間もプレイをした範囲では、バグらしいバグは見当たらず、サーバーも安定して稼働し続けている。あくまで筆者の印象だが、日本語版は十分な品質をもってリリースされたといっていいだろう。
日本語化は非常に丁寧で、テキストだけでなく膨大なボイスオーバーもしっかりと吹き替えされている。特にドライビング中にゲーム内の携帯電話にかかってくる各種メッセージ(イベントやレースのお誘いが主)を、運転に集中しながら耳で理解できるのは非常にありがたいところだ。
イビサ島、オアフ島という、ドライバーの楽園でカーライフを楽しむ。オンラインで他のプレーヤーと出会い、対戦やクルージングを通じてコミュニケーション。そんな潤いを日々の生活にプラスする、ドライビングゲームファンのための1本として、本作を広くおすすめしたい。
(2011年 6月 30日)