★PS3/Xbox360ゲームレビュー★
悪夢の世界に迷い込んだジョンの明日は!? レース、ポーカー等、マルチプレイも充実 「レッド・デッド・リデンプション:アンデッド・ナイトメア」 |
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「レッド・デッド・リデンプション:アンデッド・ナイトメア」(以下、「アンデッド・ナイトメア」)は、無料で配信されている「アウトロー・トゥ・ジ・エンド 協力ミッションパック」に加えて、日本未発売の3つの有料DLC「Legends & Killersパック」、「Liars & Cheatsパック」、「アンデッド・ナイトメアパック」をまとめた拡張コンテンツだ。
西部劇をリアルに、たっぷりと楽しめた「レッド・デッド・リデンプション」(以下、「RDR」)が、この拡張パックで一変する。謎の疫病により、地域全土がゾンビに覆い尽くされてしまうのだ。主人公ジョン・マーストンはゾンビ化してしまった妻と息子を救うための手がかりを求めて再び冒険をはじめる。
さらにマルチプレイも様々な要素が追加されている。「RDR」の更なる魅力を引き出した、オススメのコンテンツである。なお、「アウトロー・トゥ・ジ・エンド 協力ミッションパック」の内容はこちらで、本編の方はこちらで紹介しているので、未読の方はチェックして欲しい。
■ 死人が甦る世界の終焉の始まり。家族を救うため、ジョンは再び旅立つ
幸せな家族の時間は、変わり果てたおじさんによって破壊されてしまう |
地図も一変している。モンスターの絵が描かれていたり、作りが細かい |
ビッグフット登場。この世界がどんなものかを象徴するミッションだ |
「アンデッド・ナイトメア」は、4つのDLCを1つにまとめたパックだ。「アウトロー・トゥ・ジ・エンド 協力ミッションパック」、「Legends & Killersパック」、「Liars & Cheatsパック」の3つのDLCでは、マルチプレイを拡張し、多彩なルールでの対戦や協力プレイが楽しめる。
そして残り1つの「アンデッド・ナイトメアパック」では、ボリュームたっぷりのシングルプレイキャンペーンと、その世界観に即したマルチプレーヤーモードが収録されている。「RDR」の世界がゾンビに覆われ、さらに伝説の生き物が闊歩するという悪夢としか言いようのない世界に変わってしまうのだ。プレーヤーはジョンとしてこの恐怖の世界に立ち向かうことになる。
「アンデッド・ナイトメア」のシングルプレイでは本編とは異なる「パラレルストーリー」が展開する。時間軸はジョン・マーストンがビル・ウィリアムソンとの因縁に決着をつけ、再び家族と生活をはじめたところから。本の世界が好きな息子と、家事は下手だが愛情たっぷりな妻との満ち足りた時間。しかし、居候のおじさんが変わり果てた姿で現われ、幸せは無惨に奪われてしまう。
灰色の肌と、体中から血を滴らせたおじさんは、妻のアビゲイルにかみつく。ジョンは思わずおじさんを撃ち殺してしまう。そして妻に声をかけようとした瞬間、妻までもが怪物に変貌してしまっていることを知るのだ。妻に駆け寄った息子もゾンビに変わり、ジョンは妻と息子を縛り上げ、彼等を元に戻す方法を探すため、再び旅立つことになる。
外に出たジョンはこの世界が一変していることを知る。空は常に曇り、そこかしこにどこから来たのかゾンビ達が徘徊している。わずかに生き残った人々は、街や入植地に立てこもり、ゾンビと戦い続けているが、全滅寸前だ。なぜこんな事になったのか、この状況を打開するにはどうすればいいか、ジョンは答えも見つからないまま、ゾンビと立ち向かう人々を助けていく……。
「RDR」の世界が一変する「アンデッド・ナイトメア」はその“変化”こそがメインテーマだと言える。過酷だが美しかった世界は一変し、不吉な暗雲が常に立ちこめ、ほとんど人のいなかった荒野に、どこから来たのかゾンビがうろついており、気を抜くと囲まれてしまう。野生動物もゾンビ化している。ゾンビは異常な耐久力を持っていて、頭を撃ち抜かない限り1発では倒せない。
「アンデッド・ナイトメア」では、本編のゲーム終盤の舞台となるブラックウォーター周辺からスタートする。広大なマップには街のアイコンが表示されていて、ここを救っていくことでジョンは弾薬と、新たな武器を入手できる。また、「生存者ミッション」が発生する場合があり、これらをクリアしていくことでストーリーが進んでいく。
本作はまさに悪夢の世界だ。面白かったのが、「保護運動の誕生」という序盤のミッションだ。「ビッグフットに襲われた」という猟師の話を聞き探すことになる。ちなみに、ビッグフットというのは、アメリカやカナダで噂される未確認動物だ。一昔前のオカルト系TV番組でよく取り上げられた存在だ。筆者は「ゾンビがいる世界だけど、さすがにビッグフットはいないだろう」と疑いながら探索してみたのだが、……いるのである! 毛むくじゃらの巨大な2足歩行の猿人が歩いている。ビッグフットが登場するとき、BGMが不気味なものに変わるのがいかにも「謎の生物発見!」といったオカルトTV番組のようで楽しい。
このように「アンデッド・ナイトメア」の世界は、伝説上の生き物が闊歩する世界なのだ。歩いていると突然伝説の生き物に遭遇した、というメッセージが出て、ヨハネの黙示録に登場する4頭の馬に遭遇することもある。この伝説の生き物は、「RDR」の馬のように投げ縄で捉え、捕まえて自分の乗り物にすることが可能だ。また、荒野にいるゾンビ馬ももちろん捕らえることができるが、このゾンビ馬は走っていると指示に従わず変な方向に走り出すことがあり、危なっかしい。
「RDR」では荒野を旅していると、馬泥棒に出会ったり、犯罪者と保安官の追跡劇を目撃したりと、ランダムイベントが発生した。「アンデッド・ナイトメア」ではこれらのランダムイベントが、きちんとホラーテイストにアレンジされていて楽しい。気分が悪いと目の前で吐き始めた女の人がゾンビに変貌したり、「あなた無事だったの!」といって駆け寄ろうとする相手が実はゾンビだったりと、ゾンビ映画の1シーンのようなイベントが起きる。
そして、この異常な事態にもかかわらず、人々はいがみ合いを続ける、という部分もきちんと書いているところが、ホラー映画のオマージュとして、そしてRockstar Gamesのゲームとしてニヤリとさせられるところだ。特に序盤の「ブラックウォーターの怪談」では、理解できないこの現象を、人種のせいにしたり、夫のせいにしたり、いい気になって批判している人が出てくる。また、生き残りでリーダーを争っていたり、不愉快な状況を目撃する。この風刺と悪ノリぶりは、いかにもRockstar Gamesらしくて好きな部分だ。
■ ゾンビの群れに立ち向かい、街を救え! 本編のキャラクターとの再会も
街はゾンビに襲われ、助けを求めている。撃退することで一時的に正常化し、セーブが可能な拠点となる |
何故かゾンビに襲われないセス。理由は一切説明されない |
ジョンが倒されたときは「UNDEAD」になる。死という休息は本作にはないのだ |
「アンデッド・ナイトメア」のゲーム性は、「RDR」とは大きく異なる。「RDR」は銃で撃ち合うTPSだが、「アンデッド・ナイトメア」のゾンビは群れをなして殴りかかってくるため接近戦が中心となる。銃を構えていたらあっという間に囲まれてしまうし、頭以外の場所に弾を当てても中々倒れない。筆者の場合、戦い方のわからない序盤では、とにかくたいまつを振り回す大味な戦いを繰り返してしまった。
戦い方のコツがわかると、「接近戦」の戦い方がわかってくる。敵をターゲットして至近距離で攻撃すると頭部を一撃で打ち抜ける。このため、常に走り回りゾンビを引き離しながら、近くの敵を的確にターゲットし、打ち抜く、という戦い方を学んでいった。一定時間スローモーションになる「デッドアイ」を使い、複数のゾンビの頭を吹っ飛ばすのも有効だ。そうして、街を開放していくと武器が増えより戦いやすくなっていく。ゾンビをまとめて吹っ飛ばす「ラッパ銃」など奇想天外な武器も手に入れられるようになる。
ちなみに、「アンデッド・ナイトメア」では本編とは違い、通貨が流通していないばかりか、ショップも空いていないため、銃弾を買うことができない。ゾンビの死体をあさってもわずかな銃弾しか手に入らない。街を救うことで街の中にある宝箱からも得られるが、特に序盤に銃弾不足を感じるだろう。ゾンビに襲われている街を救い出すことで、その街は一定期間安全になり、ジョンがベッドで休むことができるようになる。
ベッドでは「移動」というメニューが選べ、助けた街に瞬時に移動できる。街がゾンビに襲われている場合もすぐに駆けつけることができるようになる。ちなみに本編で移動に便利だったキャンプキットは、「アンデッド・ナイトメア」では使えないので、ベッドが唯一のショートカット手段となる。
「アンデッド・ナイトメア」では各街を助けていくことと、ミッションを進めていくことでゲームが進行していく。ミッションでは本編に登場したキャラクターと再会ができる。奇妙なのは、墓あばきをしていたセスだ。自分自身もグールのように不気味な男だが、何故かゾンビに襲われず、一緒に暮らしているようなのである。本編以上にセスが不気味で謎めいた存在になっている。
セスのミッションでは、各地の墓場を浄化することになる。墓場からは次々とゾンビが蘇ってくる。アメリカは土葬が一般的なため、墓地は最も死体のある場所なのだ。ゾンビに囲まれながら撃退しているとボスが出てくる。墓場のボスの何体かは本編で死亡したキャラクターだ。かなりイヤな再会の仕方である。このように、「アンデッド・ナイトメア」のシングルプレイでは、本編をプレイした人の記憶を刺激する要素が沢山散りばめられている。本編をクリアしてから挑戦すると、面白さが大きくふくらむ。本編をプレイした人にこそ楽しいゲームといえるだろう。
また、「アンデッド・ナイトメア」では、マルチプレイで「ゾンビ超過」というコンテンツがプレイ可能になる。ここでは墓地を舞台に、他のプレーヤーと協力して次々と襲いかかってくるゾンビと戦うことになる。ここのゾンビはシングルプレイとは違い銃が効く仕様となっていて、仲間達とバンバン打ち合いながらゾンビが倒せるようになっている。最大4人でのプレイが可能だ。
このモードでは、ゾンビに攻撃され倒れても、他のプレーヤーに助けてもらうことができる。敵の波状攻撃をどういなすかが楽しい協力型コンテンツだ。次々とゾンビに襲われる中、絶望的な生き残りの戦いをしていくという殺伐とした雰囲気は、他のマルチプレイモードにはない味がある。
■ より多彩なマルチプレイが可能に。ポーカーの読み合いや、レースの駆け引きも熱い
カップの中のサイコロの目を当て合う「ブラフ」。手を見る仕草が怪しい感じだ |
猟場ではボスの獲物も現われる |
メニューを出すことで、様々な対戦ルームに移動できる |
「Liars & Cheatsパック」、「Legends & Killersパック」、の内容も紹介しておこう。この2つはマルチプレイの内容をさらに充実させる要素が沢山盛りこまれている。「Liars & Cheatsパック」は「ポーカー」や、ダイスを使ったギャンブル「ブラフ」さらに「馬上レース」まで楽しめる、これまでの「RDR」のマルチプレイの“幅”を広げるDLCだ。
「RDR」のポーカーは各プレーヤーに配られた2枚のカードと、場に出される5枚の共有のカードで役を作るといういささか特殊なものだ。ブラフはカップの中に複数のダイスを入れて振り、「1が6個」というように、全員のサイコロの目を予測するゲーム。こちらは右隣の人が合っていると思ったら“予測的中”を、間違っていると思ったら“ブラフ”を宣言できる。
どちらも自分のマルチプレイのキャラクターが登場し、テーブルを囲むのだが、実際にギャンブルをしているかのような緊張感が楽しい。特にブラフでは、自分のサイコロの目を見ているとき、キャラクターがチラチラと自分の手を見る。その仕草が、「なんかイカサマやってるんじゃないの?」という怪しげな雰囲気を出していて、楽しい。
馬上レースはスタートから数秒後、武器が解禁されるのが熱い。撃つのに夢中になると、遅れてしまう。コースを完璧に覚え、ダッシュすればかなり有利だが、コースの読みが甘いと団子状態になりがちで、このときこそ武器の出番だ。また、相手と実力伯仲して、併走しているときなどは、ナイフで斬りつけることもできる。攻撃を受けて落馬してもリタイアにはならず、少し後ろからの再スタートとなる。馬を走らせているときは、馬のスタミナ配分も気をつけなくてはならない。「RDR」らしい、ハチャメチャなレースが展開する。
「Liars & Cheatsパック」で大きな目玉となっているのが「拠点攻防戦」だ。広大なマップに何カ所か拠点が設置されており、プレーヤー達は攻撃側、防御側にわかれてぶつかる。攻撃側は一丸となって突っ込むと防御側を蹴散らせるが、そのど真ん中にダイナマイトを投げ込まれたり、攻撃と防御の駆け引きが熱い。このモードでは、他のモード以上にプレーヤー達の“腕の差”を感じた。どうかたまり、どう攻めるのか、セオリーを知らないと各個撃破されてしまうことが多い。研究の必要性を感じたモードだった。
この他、放浪モードのマップにも新しいギャングの隠れ家や、“猟場”が設定された。猟場はその場に行くことで狩りのミッションが始まる地点で、1人でいっても仲間といっても楽しい。一定数を狩ると、ボスが出てくる。ボスを倒すまでの時間が記録されるので、記録更新を狙う事ができる。
一方、「Legends & Killersパック」は新たなマルチプレイのマップの追加がメインという印象だ。専用のマップで敵味方にわかれる「ギャングシュートアウト」と、「フリーフォーオール」がプレイできる。このパックのマップは、どれも広大で入り組んでおり、通常のプレイとはひと味違った対戦が楽しめる。
既存のマップは街中が多かったが、ゴツゴツとした岩場の「リオ・ブラボー」や、雪に包まれた森林地帯の「トール・ツリーズ」などフィールドのマップが追加されている。都会の「ブラックウォーター」や、河口の「シーヴス港」といった街のマップもある。狙撃に最適な隠れる場所や見晴らしの良い場所などが設定されており、攻略していくことで有利になる要素をより多く盛りこんでいる。
このほか、「Legends & Killersパック」では射程は短いが、威力の高い武器「トマホーク」が追加される。また、「RDR」の前作に当たる「レッドデッドリボルバー」のキャラクターのアバターが追加されるといった要素がある。遊びの幅を広げる「Liars & Cheatsパック」に比べ、「Legends & Killersパック」はより濃いプレーヤー向けのパックという印象だ。
「アンデッド・ナイトメア」は「RDR」に新しい遊びをもたらす。シングルプレイはもちろん、マルチプレイでより多彩な、やりこめる楽しさを得ることができるだろう。現在もマルチプレイは盛況で、本作の人気の高さをうかがわせる。唯一残念なのが、「アンデッド・ナイトメア」のダウンロード販売が現在延期されていることだ。こちらは早急に対応して欲しい。それでも北米で2010年の10月に発売された「アンデッド・ナイトメア」が4カ月で日本語版でプレイできるのはうれしい。次のRockstar Gamesのタイトルは、日米同時発売を願いたいところだ。
手札2枚のルールのポーカー。右はブラフで自分の手を確認する画面だ | ||
武器の使用もオッケーな馬上レース。馬のスタミナにも気をつけないと、振り落とされてしまう | ||
いくつかの拠点を巡って戦う拠点攻防戦。攻撃側と防御側を交代で行なう | ||
Legends & Killersパックの対戦マップは広大な地域が舞台となる。地形も入り組んでおり、有利な場所を見つけたいところだ |
(C) 2005-2011 Rockstar Games, Inc.
(2011年 2月 18日)