2010年12月22日、株式会社スクウェア・エニックスからシネマティック・アクションRPG「The 3rd Birthday」がリリースされた。前作「パラサイト・イヴII」から11年もの年月を経ての「パラサイト・イヴ」シリーズ最新作だ。キャラクターデザインはこれまでのシリーズと同じく、野村哲也氏が担当している。

　ロード時間を短縮できるデータインストールに対応。インストールには214MBの空き容量が必要。PSP-3000、SanDisk社製 8GB Ultra II Memory Stick PRO Duoの環境で、インストールに必要な時間は4分程度であった。

　プレイデータをスクウェア・エニックスに送信し、送信時に発行されるプレーヤーコードをスクウェア・エニックスメンバーズサイトに登録することでゲーム中に使用できるアイテムの入手などのサービスが受けられるネットワーク機能も搭載している。

　早速、本作の魅力を紹介していきたい。

■ 過去を改変し、現在を変えるオーバーダイブ捜査の唯一の適応者アヤ・ブレアの物語

主人公はシリーズでお馴染みのアヤ・ブレア。過去を改変するオーバーダイブ捜査の唯一の適合者でもある

　主人公はこれまでのシリーズと同じく「アヤ・ブレア」。オーバーダイブ捜査の唯一の適応者である彼女は、2012年のニューヨークを舞台に、CTI特別捜査官として、失われた記憶を取り戻すべく、過去を改変し、現在を変える危険なオーバーダイブ捜査へと乗り出す。

　第1作「パラサイト・イヴ」では侵略者ミトコンドリア――「EVE」、第2作「パラサイト・イヴII」では人為的に生み出された「ネオ・ミトコンドリア・クリーチャー」と戦ったアヤ・ブレア。本作では現代のとある事件が発端となり遥か未来で誕生した謎の存在「ツイステッド」と意識を他人にダイブさせるオーバーダイブ能力を駆使して戦う。

■ 銃器やオーバーダイブを駆使して戦うTPSタイプのアクション

　ゲームは3人称視点のシューティングタイプ。バリケードを使ったカバーアクションなどで敵の攻撃を回避しながら、銃器を駆使してツイステッドを撃破していく。しかし、本作はただのTPSではない。主人公アヤが持つオーバーダイブ能力により、新たなゲーム性を実現している。

■ 基本となる銃火器での攻撃

銃器の性能を把握し、状況に応じて切り替えなければ生き抜くことはできない

　基本となるのが銃火器での攻撃。Rボタンを押すと銃を構え、自動ロックオンとなり、照準が敵に合う。Rボタンを押し続けて構えを維持したまま□ボタンを押せば装備している銃で攻撃する。ロックオン対象は十字キーの←→で切り替えることができ、↓を入力すれば最も近い対象をロックしてくれる。

　威力の低い近距離用小型拳銃のハンドガン、威力の高い遠距離用狙撃銃スナイパーなど銃器の種類は豊富。ミッションに持ち込めるのは、弾数が無制限のハンドガン(固定)と任意の2種類なので、最大で3種の銃器が持ち込める。無論、同じタイプの銃器のみをチョイスすることもできる。なお、銃器の切り替えはLボタン＋□or○or△or×ボタンで行ない、×ボタンはオーバーダイブで操っている兵士の所持している銃器となる。

　銃器によって、W-POW(銃器の威力)、B-POW(弾丸の威力)、B-IMPACT(敵の怯みやすさ)、HANDLING(扱いやすさ)、RANGE(射程距離)など、性能が異なるため、任意選択できる2種類をどう選ぶかが鍵になる。B-IMPACTが高いと後述のオーバーダイブ・キルが決めやすくなることもあり、単純な威力だけでなく、プレイスタイルや戦術などに応じて使い分けたい。

　性能もそうだが、弾数にも注意しておきたい。基本的に特定のポイントでしか弾数の補充はできないため、持ち込んだ銃器の弾丸を撃ち切ってしまうと、威力の低い弾数無制限のハンドガンとオーバーダイブした兵士が所持している銃器のみで戦う羽目になってしまう。

　冒頭でRボタンで自動ロックオンと述べたが、スナイパーやランチャーなど一部の銃器では自動でロックされない。これらの銃器の場合、専用の照準モードとなり、アナログパッドで照準を操作する。他の銃器と異なり、これらの武器を構えてしまうと移動ができなくなるわけだ。だからといって弱いわけではない。特にスナイパーライフルは威力が高いだけでなく、敵によってはスナイパーライフルのスコープで覗くと弱点を発見することができ、弱点を狙撃すれば大ダメージを与えられる。

　銃器以外に所持しているのがハンドグレネード。持てる数は少ないながらも、爆風で範囲攻撃が可能。障害物に隠れながら投げられるという点でも優秀だ。

Rボタンでロックオンしつつ□ボタンで銃撃。これが基本となる。ハンドガン、アサルト、ショットガンに分類される銃器は全てこの方法で攻撃する	スナイパーライフルでは自動ロックオンはされず、手動で照準を動かす。スコープで覗いたときだけ見える弱点を狙撃できれば大ダメージが見込める	バリケードで敵からの攻撃を防ぎつつ、反撃のチャンスを伺う。ロックオンや銃撃などアクションをしなければLIFEは回復するため、回復手段としても有効

■ 意識を他人へとダイブさせるオーバーダイブ

移動、攻撃、防御などあらゆる場面で活躍するオーバーダイブ。本作の肝となるシステムだ

　アヤはオーバーダイブ(△ボタン)で他人の体を借りて戦う。このオーバーダイブが本作の最も特徴的で重要なシステムといえる。

　オーバーダイブは一定距離内にオーバーダイブ対象がいればいつでも可能。オーバーダイブした対象のLIFE＝アヤのLIFEとなるため、LIFEの多い対象にオーバーダイブすることは体力の回復手段にもなる。兵士の所持している銃器を使うこともできるので、弾薬が尽きた場合にも有効。一定距離内にさえ対象がいればよいため、壁越しでの移動や攻撃に有利な場所を確保するのにも役立つ。また、LIFEがなくなってもすぐにはゲームオーバーとならないため、やられたと思った瞬間にすぐに他の対象にオーバーダイブすれば、ゲームオーバーを回避することもできる。

　オーバーダイブは味方に対してだけでなく、敵にダメージを与えるのにも活躍する。連続して攻撃を加えて敵を怯ませたり、よろけさせた敵には△アイコンが表示される。その相手をロックオンして△ボタンを押すと、敵の意識を直接攻撃するオーバーダイブ・キルが発動する。攻撃後に多少隙が生まれるが、弾薬などを消費することなく大ダメージが与えられるため、使いこなしたい重要な技だ。なお、ロックオンできないタイプの銃器の場合は、照準を合わせればオーバーダイブ・キルが実行できる。

オーバーダイブ対象を選択し、オーバーダイブ。ダイブ確定前に対象の名前、LIFE、武器とその弾数が確認できる		△アイコンが表示されたらオーバーダイブ・キルのチャンス。確実に決めてダメージを与えたい

■ 周囲の兵士が一斉射撃するクロスファイア

　クロスファイアが可能な状態で敵をロックオンしつづけるとクロスファイアゲージがたまる。ゲージがMAXになってから、□ボタンを押せば、クロスファイアに参加できる兵士が対象に一斉射撃してくれる。

　クロスファイアは単なるダメージアップだけでなく、連続して攻撃することでオーバーダイブ・キルが発動させやすくなるメリットもある。なお、クロスファイアに参加できるのは敵の周囲にいつつ、バリケードに隠れている兵士のみ。近くに条件を満たす兵士がいない場合、クロスファイアできるようにオーバーダイブで兵士を移動させるのも手だ。

クロスファイア可能な状態だとロックオン時にクロスファイアゲージが表示される。射撃せず、ロックオン状態をゲージがいっぱいになるまで維持して、□ボタンを押せばクロスファイアが発動。周囲の兵士が対象に一斉射撃を行なう

■ 高速移動で無敵状態になるリバレーション

　敵に攻撃を与えるとリバレーションゲージがたまる。リバレーションゲージMAX時に○ボタン＋△ボタンを入力することでリバレーションが発動。リバレーション中は、高速移動が可能で、敵の攻撃を自動回避する無敵状態になり、さらに弾数制限のないエナジーショットという強力な攻撃が繰り出せる。ゲージMAXという条件を満たす必要はあるが、無敵状態を活かせば緊急回避にも使える優れた技だ。

無敵になり、エナジーショットでの強力な攻撃が繰り出せるリバレーション。エナジーショットは連射が効き、相手を怯ませやすいため、オーバーダイブ・キルも決めやすい

■ 戦力アップに繋がる様々な要素

戦闘を重ねるほどアヤはレベルアップし、強くなっていく

　本作には様々な戦力アップ要素がある。1つ目がアヤのレベル。敵の撃破やミッションクリアなどで得られる経験値を、一定以上ためることでレベルはアップする。レベルが上がるとライフゲージの最大値が上がり、エナジーショットやオーバーダイブ・キルも強化される。敵とのレベル差で得られる経験値が決定されるようなので、たくさん経験値が欲しければ高い難易度に挑むといいようだ。

　2つ目が銃器の高性能化。ハンドガンやアサルトなど、スペシャルを除く5種類の銃器にはそれぞれ銃器レベルが設定されており、使い込むほど銃器レベルが上がる。銃器レベルが上がると、高性能な銃器やパーツが購入できるようになる。また、ミッションクリアや新たな銃器を持つ兵士にオーバーダイブすることでも購入できる銃器の種類は増えていく。パーツはセットすることで、銃器の所持弾数や弾丸の強化などができる。なお、銃器やパーツの購入にはBPというミッションクリアや敵撃破で得られるポイントが必要になる。

　3つ目が本作ならではといえる特徴的なOE(オーバーエナジー)。OEとは、アヤのDNAを操作して様々な特殊能力を操る技術のこと。特殊能力には、エナジーショット(エナジーショットの威力アップ)、バリア(一定確率でダメージ無効化のバリアを張る)、ブーストファイア(クロスファイアの威力アップ)、ヒーリング(オーバーダイブ時、一定確率でLIFEが少し回復)など、攻撃・防御・回復・弾薬補充など様々なものが存在する。

　これらの特殊能力は、縦or横方向に1～3マスで、それぞれのマスに能力が割り振られているOEチップを、縦3×横3マスのDNAボードに配置することで得られる。OEチップの組み合わせにより、OEのレベルがアップ/ダウンしたり、OEが変化したりする。その変化は固定ではないため、レベルアップや求めるOEが得られるようにトライするのが楽しい。

　最後がコスチュームによる防御力。コスチュームにはディフェンスランクが設定されており、ランクが高いほど被ダメージを減らすことができる。初回プレイでは、最初から所持しており、防御力の高い「White Eider」を使うのがいいだろう。

新たな銃器やパーツは戦力アップに直結する。ミッションやプレイスタイルに合わせて銃器やパーツを切り替えられればベストだ	OE Settingでは入手したOEパーツをDNAボードに配置し、OE能力を得たり、レベルアップできる。組み合わせの結果は固定ではないので、求める能力が得られるまで根気強く繰り返そう。各能力の最大レベルは25。同じ能力を隣接させることでリンクさせ、効果をアップさせることもできる

■ 最後に

　TPSタイプのアクションゲームながら、オーバーダイブの要素が加わったことで、遊びの幅が広がっている。アクション要素が強いため、プレーヤーによっては難しそうと感じるかもしれないが、レベルアップや銃器を強化することで低難易度であればプレイスキルを問わず、誰でもクリアできるようなレベルデザインになっているの点も嬉しい。ビジュアルに関してはPSPながら見事なクオリティ。これに関してはスクリーンショットを見てもらえればすぐにわかるだろう。

　ゲームオーバーになりやすいアクションゲームにおいて重要なのがリトライのしやすさ。本作では、気にならないほどロード時間が短く、チェックポイントも多く設置されているため、リトライが苦にならない。

　筆者のクリアまでのプレイタイムは8時間程度。操作やミッションに慣れさえすればプレイタイムは一気に縮まる。物足りないと感じるかもしれないが、アヤや銃器のレベルアップ、銃器集め、難易度別のトライ、OEの組み合わせなど、やり込める要素は山ほどある。なお、より強力な銃器やより大きな経験値を手に入れるには、何周ものクリアや高難易度でのクリアが必要になる。最高難易度はかなりの歯ごたえがあり、アクションが得意なプレーヤーも満足できることだろう。

　プレイデータをスクウェア・エニックスに送信し、送信時に発行されるプレーヤーコードをスクウェア・エニックスメンバーズサイトに登録することで様々な恩恵が受けられる。登録は面倒と思うかもしれないが、無料だし、登録することでゲーム内では入手できないアイテムやゲームプレイだけでは入手するのが難しいアイテムなどが得られる。例えばコスチューム「Lightning Custom」と武器の「Blaze Edge」をゲーム内で購入可能にするには、入手条件は“スタンプ取得数7個、かついずれかのモードでゲームクリア”。スタンプとはメンバーズサイトへの登録や本作をプレイしている「ともだち」が規定数に達することなどで得られるもの。サイト内のフォーラムなどを利用すれば本作をプレイしている「ともだち」集めなどは簡単にできるため、スタンプ7個などはすぐに達成できる。また、2月10日まで「ツイステッド討伐キャンペーン」を実施中。期間内に、全プレーヤーのツイステッド討伐総数が1億体を超えると参加者全員にコスチューム「Knight Armor」がプレゼントされる。2月1日正午時点で9,300万体ものツイステッドが討伐されていることもあり、1億体到達は時間の問題だ。

　オーバーダイブなど、新しい要素が組み込まれていながらも、操作が簡単で誰にでも遊びやすい本作。万人にオススメできるゲームだ。

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CHARACTER DESIGN：TETSUYA NOMURA