PS3/Xbox360ゲームレビュー

ハードファンタジーRPG超大作が日本上陸!
骨太の世界観を堪能し、己の冒険を創造せよ!

「Dragon Age: Origins」

  • ジャンル:RPG
  • 発売元:スパイク
  • 開発元:BioWare
  • プラットフォーム:プレイステーション3 / Xbox 360
  • 価格:8,190円
  • 発売日:1月27日
  • CEROレーティング:D(17歳以上対象)
  • プレイ人数:1人


 この大作RPGがついに日本語でプレイできる。株式会社スパイクが1月27日に発売した「Dragon Age: Origins」は、ファンタジーRPGのファンなら絶対にチェックしておきたい作品だ。

 剣と魔法、エルフにドワーフ、そしてドラゴンと、王道中の王道を行く世界観。BioWareが開発し、2009年末に発売された海外版は全世界で極めて高い評価を受け、国内のRPGファンもその登場を今か今かと待ち続けてきた。あまりもの膨大なスクリプト量のためにローカライズは不可能とまで囁かれたものだが、スパイクが見事な仕事を果たしてくれたのである。



■ まさに王道。ハードファンタジーRPGの見本

雲霞のごとく攻め寄せるダークスポーン
グレイ・ウォーデンの指揮官ダンカン
壮大な冒険、そして巨大な敵との戦いが待つ
自分好みのキャラクターをつくろう

 「Dragon Age: Origins」は、J・R・Rトールキンの「指輪物語」的なハードファンタジーの世界観に、ダンジョン&ドラゴンズ的なゲームシステム観を持つ、まさに王道中の王道というべき海外産のRPGだ。開発元のBioWareは最近でこそSFアクションRPG「Mass Effect」シリーズで有名になっているが、その出世作はPCで大ヒットした傑作ファンタジーRPG「Baldur's Gate」シリーズ。ハードファンタジー系RPGこそが本業というスタジオが、王道を突き詰めたのが本作なのである。

 本作のあらすじはこうだ。舞台はセダス大陸の一角、フェレルデン王国。かつて世界を征服したという賢者たちが強欲にも神の国に攻め入り、創造主の怒りに触れた。報いを受けた彼らは、世界を破滅へと導く「ダークスポーン」という変わり果てた姿となる。ダークスポーンの群れは地底回廊の奥深くより来て、地上を侵略する。そんな中、種族や身分を超えて結束した集団「グレイ・ウォーデン」が生まれた。グレイ・ウォーデンはダークスポーンとの戦いに勝利し、それから4世紀の間、来るべきダークスポーンの再来に備え続けてきた……。

 人間、エルフ、ドワーフが生き、そしてドラゴンが跋扈するこの世界で物語が始まる。来るべきダークスポーンの大災厄「ブライト」は近いとされているが、先の戦いから数百年を経て、もはやグレイ・ウォーデンに耳を傾ける人々は少ない。そんな状況でプレーヤーは、フェレルデン王国に生まれたひとりの勇士としてグレイ・ウォーデンとなり、地上を脅かす脅威に立ち向かうのだ。

 世界観が今では珍しいほどに王道ならば、ゲームシステムも実にスタンダードなものだ。プレーヤーは性別、職業、クラスを選択して、各能力に数値を振り分けて自分のキャラクターをビルドする。旅の行く先々で仲間を見つけパーティを編成し、冒険や戦闘を経てレベルアップ。より良い装備やアイテムを手に入れて、さらに巨大な敵に立ち向かう。

 だが、そこにBioWareらしい節回しが加わることで、本作は他に比較するものがないほどに重厚なRPGとなっている。クエストベースで進行するシナリオはダイナミックに分岐し、各局面でプレーヤーが下した判断によって冒険の道筋はもちろん、世界のありようまで変化していく。パーティメンバーの命運もまた、プレーヤー次第。プレイする人によって様々に異なる世界が組み立てられるという、実に創造的な体験が約束されているのだ。

 気になるローカライズのクオリティは完璧と言っていい。本作オリジナル版の膨大なスクリプトが、独特の難しいセリフ回しも含め、美しくわかりやすい日本語に翻訳されている。各キャラクターの立ち位置や性格にも配慮した表現が随所にみられ、まさにプロによる最高の仕事が成されている。どなたも安心してプレイに臨んで欲しい。


本作は戦闘と並び、会話シーンの多いゲームだ。全ての会話はプレーヤー自信の判断で展開を導くことができる。「話術」というスキルを持てば、説得や脅迫といった方法で強引に相手の考えをねじ曲げることも可能だ



■ 「出自」によってもシナリオは変わる。個性的な仲間を得ていざ冒険へ

人間の貴族スタートでは、兵の出陣に向けた慌ただしい雰囲気のなかスタートする

 本作では、プレイ開始時に選択したプレーヤーの種族と職業により「出自」が決まり、これによって人間の貴族、魔道士、ドワーフの貴族、ドワーフの平民、デイルズエルフ、シティエルフという6種類の全く異なるオープニングエピソードがプレイできるようになっている。また、出自は本編を通しての冒険の流れや、行く先々での人々の反応に変化を及ぼすという仕組みだ。

 筆者は初回のプレイにあたり、人間の貴族を選択。この出自では、フェレルデン王国の有力豪族の第2子として生まれた主人公が、否応なくグレイ・ウォーデンとしての戦いに身を投じるいきさつが描かれる。チュートリアルを兼ねたオープニングエピソードではちょっとしたクエストもこなしつつ、やがてグレイ・ウォーデンの指揮官であるダンカンによってダークスポーンとの戦場へ導かれることになる。


グレイ・ウォーデンとなるための試練はちょっとした探索もあり、本作の基本を学べる構成だ



魔道士モリガン。気位が高く、人嫌いで気難しい性格なので扱いには苦労する。信頼を勝ち取ることはできるか?!
キャンプから出る際に、仲間から任意の4人を選択してパーティを組む
アリスターから突然の頼みごと。なにやら複雑な家庭の事情で、首を突っ込みたくはないのだが

 本作の冒険を彩るもののひとつは、多数の個性的な仲間だ。本作では最大4人のパーティを組んで行動することができるが、それ以上に多くのキャラクターを仲間にすることができる。ワールドマップ上の「パーティキャンプ」で装備を整え、実働パーティを編成し、各地の冒険に乗り込んでいく仕組みだ。

 仲間にはそれぞれ得意分野があり、冒険の内容に応じて適切なパーティを編成することが面白さのひとつだ。戦士アリスターはサブクラス(上位職)テンプル騎士の能力があり、いわゆるタンク役や、対魔道士戦闘で力を発揮する。魔道士・変身使いのモリガンは典型的な攻撃魔法タイプで、いるといないとではパーティのダメージ出力が大違い。また、同じく序盤で仲間になる吟遊詩人のレリアナは、鍵のかかった宝箱を解錠できるので、トレジャーハンティングの実入りが格段に増える。

 この他にも沢山のパーティメンバーがいるのだが、やけに面白いのが各メンバー同士がそこここで展開する会話の掛け合い。例えばテンプル騎士が出自のアリスターと非合法魔道士のモリガンは犬猿の仲で、暇さえあれば皮肉を言い、小馬鹿にしてはチクチクやりあっている。アリスターが冗談好きな男で、モリガンはやたら気位の高い女で、両極端な2人だけに逆に会話が咬み合ってしまうのが微笑ましい。

 プレーヤーとの関係においても、仲間には膨大な会話パターンが用意されている。パーティキャンプで声をかければ、自らの出自についてや、ダークスポーンとの戦いについて考えを聞かせてくれることだろう。そこでプレーヤーの対応次第で「好感度」が上下する。好感度が上がれば仲間の能力に特別なボーナスが与えられるし、下がりすぎればパーティを去ってしまうことも。これによってもプレーヤーそれぞれの世界が構築されていくわけだ。

広域の移動はワールドマップで行なう。移動途中で意外なイベントに遭遇することも。拠点となるパーティキャンプには商人もいるので、装備を整えることができる



■ 洪水のようなクエストに、深みのあるキャラクタービルド。RPGの楽しみがこれでもかと集約

クエストな様々な形で得られる。中には突然クエストのほうからやってくることも
会話で解決可能なクエストも多いが、やはり戦闘に勝つことも重要
サークル・オブ・メジャイで見つけたある物について、モリガンが興味を示した。特別なものであるらしい

 本作の冒険は基本的にクエストベースで進んでいく。ワールドマップで表示される各地に移動し、現地でNPCたちと交わり、クエストを解決してはまた次のクエストを得る。クエストにはメインシナリオの進行に深く関係したものと、そうではないサブクエストの2系統があるが、どちらも同じくらい作りこまれていて面白い。

 どこへ行き、どのクエストをこなすかはプレーヤー次第。高い自由度が確保された本作だが、冒険の最中に突然振りかかる、強制クエストもうまく織り込まれている。これは主にメインシナリオに属するもので、プレーヤーの冒険の進行段階に合わせて発生する仕組みのようだ。その進行によって仲間になるメンバーもいて、単に機械的にクエストを消化していくだけではない、驚きに満ちた体験ができる。

 戦闘で手こずりすぎることが無ければ、とにかく本作のプレイはスムーズだ。それでいて内容が薄いということは決してない。極上の料理を食べて満腹になったと思ったら、また違った趣向の料理が次から次へと出てくるという感じだ。しかもこの果てなきフルコース料理は、自分自身の行為によって次に出てくる料理や、テーブル上の趣向がどんどん変わっていくのだ。

 特にサブクエストとして重みがあるのが、仲間のそれぞれに発生する特別なパーティクエストだ。アリスターの場合は、首都デネリムに住むという姉との関係にのっぴきならぬ事情があり、プレーヤーは再会を手引きし、その結末を見届けなければならない。モリガンの場合は、育ての親である荒野の魔女フレメスにまつわる危険な秘密を巡って、プレーヤーが重大な判断を下す。その結末如何によって、パーティメンバーとの関係が大きく変動し、恒久的な影響を世界に残すのだ。

 RPGの醍醐味であるキャラクタービルドについても、本作はよく構成されている。キャラクターは戦士、魔道士、ローグの3基本クラスに属し、装備や戦術に応じたアビリティ系統がある。例えば戦士系ならば、2刀流系統のアビリティ、盾系統のアビリティ、両手持ち武器系統のアビリティといった具合である。全てを極めることはできないので、たいていはどれかに特化することになるのだが、「ちょっとだけ手を出しておいても損はない系統」という組み合わせもあって、レベルアップの度にポイント配分が悩ましく、楽しい。

 さらに、それぞれの基本クラスに各4つのサブクラスという、いわば上位職のようなものがある。上位職は特定の戦術に特化した存在であり、基本クラスの能力へのプラスアルファとして、ユニークで強力なスキルを得られることが特徴だ。プレーヤーはメインキャラクターを始め、仲間全員のレベルアップ、サブクラスの習得を管理できるので、パーティ連携を考えた上でのキャラクタービルドは非常に深みのあるものになる。

装備やスキル、アビリティポイントの配分はプレーヤー次第。パーティ全体のバランスを見て各キャラクターを成長させていこう



・ キャラクタービルドの面白さを格段に深める「作戦」システム

本作の戦闘は基本的に集団戦。パーティの連携がモノを言う
特に必要があればパーティメンバーを直接操作してもいいが、その場合はメインキャラクターがAI操縦になる

 各地で発生する戦闘を上手にこなすためには、キャラクターのレベルを上げるだけでなく、適切なスキルの配分、装備の選択、パーティの構成が必要となる。と、ここまでは他のRPGも似たようなものだが、本作で決定的にユニークで面白いのは、パーティメンバーの行動を制御する「作戦」という概念だ。

 4人パーティのうち、直接操作できるのは同時にひとりのキャラクターだ。切り替えることで別のキャラクターを操作することもできるが、常に他の3人はAI制御で行動することになる。そこで戦闘でどのような行動をとるか、AIのふるまいを決めるのが「作戦」システムである。

 各キャラクターにはレベルやスキルに応じた数の「作戦スロット」があり、それぞれのスロットに「ターゲット:条件」と「アクション」を組み込める。例えば「敵:2体以上集まっている」→「範囲攻撃魔法」というパターンで効率良くダメージを与えたり、「味方魔道士:近接攻撃を受けている」→「挑発」というパターンでタンク役に敵を引き寄せたりといった具合だ。

 基本的に各キャラクターのAIは作戦スロットにある条件通りにしか戦わないので、レベルが上がって使用できるスキルが増えると作戦スロットの数によってもキャラクターの強さが大きく変わる。例えば「自分:体力25%以下」→「回復薬を使用」というものも1スロット消費するので、パターンは慎重に絞り込む必要がある。負けたらまず作戦を見なおそう。作戦がうまく構成されていると、キャラクター本来の実力を遺憾なく発揮して連携し、格上の敵にさえ容易く勝利できることもある。非常にやりがいがあって面白い。

 もちろん、キャラクター個々のレベルアップにともなう能力値の配分や、新しいスキルの獲得でも「作戦」を意識することになる。スロットに収まりきらないほど多数のアクティブスキルを獲得するよりは、より効果的なスキルに絞り、その効果を増大させるほうが良い、という戦略が成立するのだ。パーティメンバー間の連携も考えるとさらに判断材料が増え、非常に深みのある思考機会を提供してくれる。だから本作のキャラクタービルドは格段に面白いわけである。


戦闘の状況や流れを想像しつつ、メンバーの作戦スロットにアクションを割り当てていこう。より高度な連携のためには「作戦」スキル獲得による作戦スロットの増強が効果的だ



■ より良い装備を求めてトレジャーハンティングの楽しみも。DLCコンテンツ同梱でさらに贅沢に

各地の商店を回ってまだ見ぬ装備を見つけるのも楽しい
パッケージにDLCボーナスクエストが同梱されているので、本編クリア後の楽しみも多い

 硬軟織り交ぜた様々な物語が展開される本作だが、プレーヤーの上昇感を強く支えてくれる要素はやはりトレジャーハンティングだ。より強い装備を求めて敵を倒し、宝箱を開け、お金を稼いで各地の商店を回る。本作では「セットアイテムボーナス」というものがあり、鎧、篭手、ブーツを同シリーズでまとめると特別な能力ボーナスが得られるというシステム。高位のレア装備ではこれが実に強力なので、装備が1個だけ見つかった!となればプレーヤーだけの新たなクエストの始まりだ。

 装備の中には特別なクエストによってのみ手に入るユニークなものもあり、より強い装備を求めて世界を彷徨う楽しみもうまくゲームに組み込まれている。また本作ではオリジナル海外版でリリースされた6種類のDLCが同梱されており、強力な追加アイテム「ブラッドドラゴンアーマー」ワンセットがゲームに追加されているほか、DLCクエストをプレイすることでさらにユニークな装備を見つけることが可能だ。日本語版ではこれが最初から盛り込まれているのが嬉しいところ。

 DLCの追加クエストは本編プレイ中に序盤のうちから挑戦してもよし、あるいは本編をほとんど終えてから最後に片付けてもいい。本編冒頭で見た風景を、もういちど別の角度から見ることができるクエストもあるので、ぜひタイミングを見計らって挑戦してみてほしい。

 ただでさえ膨大なボリュームを持つ本編にDLCまで同梱された本作は、骨太のRPGとしてこれ以上ないほど贅沢な作りになっていると言えるだろう。体力の限界までプレイし続けても終わりがみえないほどに深く、やればやるほどこの世界の魅力にとりつかれていく気がする。全世界で絶賛された本作は、ここ日本でも絶賛されてしかるべき内容を備えている。RPGファンならば是非、手にとってプレイするべし。


【スクリーンショット】

(C)2011 Electronic Arts Inc. EA and EA logo are trademarks of Electronic Arts Inc. BioWare, BioWare logo, Dragon Age and Dragon Age logo are trademarks of EA International (Studio and Publishing) Ltd. All other trademarks are the property of their respective owners.

□スパイクのホームページ
http://www.spike.co.jp/
□「Dragon Age: Origins」の公式サイト
http://www.spike.co.jp/dao/
□関連情報
【2011年1月17日】スパイク、「Dragon Age: Origins」のパーティーメンバーを紹介
戦士アリスターと魔道士モリガン。好感度によって能力が向上する仕組みも
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20110120_421335.html
【2011年1月14日】スパイク、PS3/Xbox 360「Dragon Age: Origins」の最新情報を公開
生い立ちの異なる6人の主人公が織りなす重厚な世界観に注目
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20110117_420887.html
【2010年12月22日】スパイク、PS3/Xbox 360「DragonAge: Origins」拡張パック
「DragonAge: Origins - Awakening」2010年3月17日発売
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20101222_416452.html
【2010年11月22日】スパイク、PS3/Xbox 360「DragonAge: Origins」
予約特典は「『DragonAge: Origins』旅立ちの書」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20101122_408832.html
【2010年11月15日】スパイク、PS3/Xbox 360「ドラゴンエイジ:オリジンズ」
日本版はDLC6つを収録、表現に変更なし
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20101115_406986.html
【2010年11月11日】スパイク、新規海外タイトル「Dragon Age: Origins」を発表
「海外版から表現の変更なし」。PS3/Xbox 360で2011年1月27日発売
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20101111_406120.html

(2011年1月28日)

[Reported by 佐藤カフジ ]