Electronic Entertainment Expo 2010現地レポート
「Fable III」クリエイター Peter Molyneux氏インタビュー
革命を起こして兄王を打倒し、王として世界を統治する新世代RPG
革命を起こして兄王を打倒し、王として世界を統治する新世代RPG
アクションゲームやFPSの宝庫であるXbox 360の中でも独特の存在感を放っているのがLionhead Studiosの「Fable」シリーズである。作を重ねるたびに、アクションゲームとしてのクオリティも高めつつあるが、ゲームの文法としてはピュアRPGであり、重厚な世界設定に裏打ちされた濃厚なストーリー性と豊富なクエストにより、プレーヤーをその世界へと引き込んでくれる。日本でも人気の高いフランチャイズとなっている。
Microsoftは「Kinect」に次ぐ扱いでブース展開していた。ご覧の通り、人気は非常に高い |
シリーズ最新作となる「Fable III」は、2009年9月にドイツのGamescomで正式発表され、米MicrosoftのプライベートイベントX10や、GDCのプレスプレビュー等を通じて情報がアップデートされてきた。5月にはPC版の取り扱いも発表され、さらにGames for Windows – LIVE を通じてGames on Demand 版(ダウンロード版)が販売されることも明らかにされている。
「Xbox 360 Media Briefing」では最新トレーラーの公開のみと短い紹介に留まったが、北米での発売日がついに10月26日とアナウンスされた。日本での発売時期も今秋であることが発表され、できるだけ同時発売に近づけるべくローカライズ作業に取りかかっているという。今回は「Fable」シリーズの生みの親であるクリエイター Peter Molyneux氏へインタビューを行なった。
■ シリーズ第3弾はついに英雄の子としてアルビオンの王になれる!
Lionhead Studios代表のPeter Molyneux氏。トップ自ら単独でインタビューに応じるのは、ゲーム開発に深く関わっている証拠である |
ヨーロピアンスタイルの街並み。この味わいは他のRPGには出せない「Fable」シリーズ独自のものだ |
Peter Molyneux氏: 日本のメディアですね。「Fable III」の日本バージョンはすごく面白いんですよ。あまりにユニークなので日本のキャラクターアーティストを雇おうかと考えたこともありました。日本のゲーマーはキャラクターに気を使うので、日本市場に向けて、キャラクターを開発しようかと考えているところです。
「Fable III」では以前より多くの点が変わりました。まずはストーリーです。ローガンという悪者の王様が登場し、彼をやっつけるというのが今回のストーリーです。彼は「言うことを聞かないと殺すぞ」という感じでプレーヤーを脅してきます。
編集部: ローガンを倒すのがゲームの目的なのですか?
Molyneux氏: 彼を倒すだけでなく、王を倒すことでそれからはプレーヤー自身が王となります。そうなるとそれまでとは全く趣が変わってきます。彼を倒した後、「良い王になる」という新しいチャレンジが提示されるのです。王国でプレーヤーは好きなことができます。王国の金庫を開放し、貧しい人に分け与えることもできます。
編: 逆に、悪い王様になるということはできますか。
Molyneux氏: もちろんです。王国の金を湯水のように使い、城をピンクに染めることだって可能です。人々が飢えで苦しんでいるのに、贅沢三昧することもできます。「Fable II」と同じように、家を買ったりすることもできます。街の人と繋がりを持ち、友達となり、様々なことをしてあげることで、自分の味方、お供になってくれます。
編: 王様になると、良いことと言うのは例えばどんなことができるのでしょうか。
Molyneux氏: 政治家は“公約”をするじゃないですか。プレーヤーは悪の王を倒す過程で人々を味方につけるため、「私が王になった暁には、金貨を100枚あげる」というように様々な人に約束をしていきます。しかし実際には王様になったときに約束を反故にしてその人を牢獄に押し込める、ということも可能です。
編: 王様になった後の、何らかのゴールは設定されているのでしょうか。
Molyneux氏: 明らかにしてしまうとお楽しみがなくなるので、とっておきますが、王様になれたからといってそこで全てが簡単に解決するわけではありません。王様になるためのそしてなった後の責任がプレーヤーにのしかかってきます。また、「周りの人全てを信じてはいけない」ということも言っておきます。
編: 王様にならずにゲームを続けていくことは可能ですか。
Molyneux氏: いいえ。ある点でプレーヤーが王様にならないとゲームが進まなくなります。遅延させることはできますが、王になるというのがストーリー上の通過点となっています。王様にならず城を攻め続けるということも可能ですが、いずれは王になります。今回、皆さんに驚いてもらう要素として、王として力をふるう、という体験をしてもらいたかったのです。
【Fable III】 | |
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前作と比べてグラフィックスが美しくなっている。陰影がくっきりとし、もやや陽光などのエフェクトも表現されるようになっている |
■ 細かいアップデートが目白押し。CO-OPでは他のプレーヤーと結婚も可能に!
Molyneux氏は本音としては「Kinect」へ対応したい様子だが、「Kinect」はハードへの負荷が小さくなく、単純に対応してもパフォーマンスに影響が出てしまうため、難しい判断なのだろう |
プレーヤーが手に入れる城(上段)と眼下に広がる城下町(下段) |
編: 今回、「Fable II」に比べ1番強化したポイントはどこですか
Molyneux氏: プレーヤーが強大な力を持っている、という点です。王の力を得たと起動するのか、というのが前作とは異なる点です。「Fable II」では戦いを通じて強力な存在になるというところがありましたが、「Fable III」では王になり、権威と力を振るい、臣下から「閣下」と呼ばれるようになります。
それから“タッチ”というメカニズムを採用し、人々にタッチすることで味方を増やしていけます。嫌がって付いてこない人を、無理矢理引っ張ることもできます。「Fable III」には様々なクエストがあり、王になるためにはクエストをこなし、信頼を勝ち得なくてはいけません。例えば画面の女性は「娘がいなくなったので、探してきて欲しい」とプレーヤーに頼んでいます。プレーヤーは愛犬と共に、娘を捜します。愛犬の能力で娘の行方をトラッキングできるのです。
また、スタートボタンの役割はユニークです。他のゲームではポーズですが、「Fable III」では「変身」能力を使うことができます。ゲームに登場する全ての小物、コスチュームがこの画面では呼び出せ、それを使うことで変身できます。「武器倉庫」を選べば手に持つ武器を選択することができます。武器は使い込むことでどんどん“変貌”していきます。コンバットスタイルも、銃と魔法、といったように組み合わせができます。このルームの名前は「Sanctuary(聖域)」です。ちなみに、出てくる羊の名前は「モンティ・パイソン」に出てくる羊と同じ名前です。スタートをもう1度押すと元のモードに戻ります。
編: このSanctuaryは、ビジュアライズされたメニューという理解でいいですか?
Molyneux氏: そうです。しかしこの画面では組み合わせで複雑なことができるようになっています。これは武器をスイッチしたところです。「剣」、「魔法」、「銃」というエレメントは前作と同じですが、よりパワフルになっています。呪文の組み合わせなど、様々な点で強化されています。女の子を見つけました。抱き上げてあげることもできますし、タッチでつれていくことも可能です。
編: 前作との関連性について教えてください。
Molyneux氏: 「Fable II」のセーブデータをインポートできるので、前作で60年の人生を過ごしてから、息子としてインポートすることが可能です。今回の主人公は前作の主人公の息子というわけです。ちなみに倒すべき邪悪な王は、実は「Fable III」の主人公の兄です。王との戦いの結果も、王を処刑するのか、それとも流刑にするのか、それとも自分のアシスタントにするのか、といった処遇を選ぶことができます。また、主人公として女性を選ぶことも可能です。その場合、主人公は女王になれます。自分の経験では、女王の方がより残忍になる傾向がありますね(笑)。
編: 今回、マルチプレイはどのようなものになりますか。
Molyneux氏: Co-opモードは協力して自由に進められます。Co-opで他のプレーヤーを招き、他のプレーヤーと結婚したり、その人と子供を作ることもできます。
編: 「Fable III」では“革命”という要素がフィーチャーされていますが、革命のバリエーションにはどういったものがあるのでしょうか。
Molyneux氏: 今後のお楽しみとして詳しくはまだ語れませんが、プレーヤーにはいくつかの選択肢があります。「Fable」シリーズの特色は自分の行動により良い生き方も悪い生き方もできるという点です。実際のプレイがキャラクターのその後に関わっていきます。世界の“リアクション”が異なってくるのです。
たとえば、プレーヤーが王様になると、これがあなたのお城となります。このお城を増築したり、カスタマイズできます。しかし城の外には貧しさに苦しむ人々がいます。彼らを助けずに自分の力を増やそうとするのは、正しいことでしょうか?
編: Microsoftの新しいインターフェイスである「Kinect」には対応しますか?
Molyneux氏: それについては現在未定で、具体的なことは発表できません。私自身は「Kinect」が好きなのですが、対応するかどうかは未定です。「Kinect」はファンタスティックで、ハードとしても魅力的ですが、「Fable III」がキネクトでしかプレイできない、というのは嫌ですよね。
編: ありがとうございました。
【女王にもなれる!】 | |
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RPGとして見逃せないポイントとしては、今回は主人公に女性も選べる。グラフィックスもある程度日本でも馴染みやすい顔立ちになっているのが嬉しいところ。女王をプレイする人が増えそうだ |
http://www.e3expo.com/
□Microsoftのホームページ(英語)
http://www.xbox.com/
(2010年 6月 17日)