東京ゲームショウ2010レポート

「Fable III」ピーター・モリニュー氏インタビュー&先行体験会レポート
結婚から育児まで幅広く楽しめるマルチプレイ、恋人の命が関わるヘビーなメインストーリー


9月16日~19日 開催(16日、17日はビジネスデイ)

会場:幕張メッセ

入場料:1,000円(一般/前売り)、1,200円(一般/当日)、小学生以下は入場無料


 マイクロソフトはゲームショウ期間内、ホテルニューオータニ幕張で、アクションRPG「Fable III」に関したプレス向けイベントを行なった。本稿では本作を開発するLionhead Studios Creative Directorのピーター・モリニュー氏による「Fable III」のマルチプレイのデモプレイと、メディア先行体験会から、ゲーム序盤を含めたいくつかのエピソードをレポートしたい。

 「Fable III」はXbox 360版を10月28日の発売を予定で、価格は7,140円(リミテッドエディション:8,190円)だ。発売時期、価格共に未定ながらWindows版も発売予定だ。本作の大きな目的は、兄の王を倒すため革命を起こし、自らが王になり民衆を統治していくというものだ。

 今回、モリニュー氏によるデモプレイと、メディア先行体験会から本作のさまざまなポイントが明らかになった。マルチプレイは前作から大きく進化を遂げている。プレーヤー同士で結婚が可能で、子供も作れるという。さらにモリニュー氏にいくつかの質問をぶつけてみた。メディア先行体験会では、序盤のストーリーと、いくつかのクエストを体験した。魔法を使う「ガントレット」のシステムも紹介したい。




■ ホストの世界で思う存分遊べるマルチプレイ。結婚には“慎重さ”が必要!?

本作を開発するLionhead Studios Creative Directorのピーター・モリニュー氏
モリニュー氏の解説によるデモプレイ。左が男性の「デミトリー」、右が女性の方が「ルイーズ」という形で、プレイが進行した

 モリニュー氏のプレイデモでは2台のモニターを使って、協力プレイを行なった。男性の方が「デミトリー」、女性の方が「ルイーズ」という形で、筆者達は2台のモニターを同時に見れる形だ。最初はそれぞれソロプレイからスタートした。

 モリニュー氏は「2人が同じ場所に立っています」と紹介したものの、画面は全く違う風景が広がっている。アンドリューの場所は湖が豊かな水をたたえており、緑の美しい場所であり、ルイーズの目の前の風景は水は全くなく、油田を掘るような装置が設置されており、機械から吹き出す煙で、空は曇っている。

 この風景の違いは2人のプレイスタイルの違いだという。デミトリーが環境に優しく良い人を目指したのに対し、ルイーズはお金にしか興味のない、工業化した選択を行なった結果だ。このように「Fable III」ではプレイスタイルの違いが世界の風景そのものを変えるという。

 フレンドが同時にシングルプレイしているとき、友人がいる場所には「オーブ」が現われる。プレーヤーがオーブに近づくと、ボイスチャットで話しかけることができるほか、プレゼントを渡すことも可能だ。プレゼントは衣装部屋に贈られる。さらにオーブを通じて、そのプレーヤーの世界にはいることができる。デミトリーの世界にはいることで、ルイーズの画面はデミトリーの世界に一変する。

 「Fable II」ではホストであるプレーヤーの周りしか移動ができなかったが、今作では完全に別行動ができる。シナリオはホストのものに従い、最初から最後までのストーリーを一緒に遊ぶことも可能だ。シナリオのどの段階でも参加でき、2人で楽しむことができる。

 そして、結婚することができる。NPCの時と同じく、愛の言葉をささやくことも可能だ。デミトリーが結婚を申し込み、ルイーズが承諾すれば2人は結婚ができる。結婚式を挙げることもでき、マップ上のさまざまなポイントから式場を選べる。高級なものから、地味なものも可能だ。式を挙げると世界の住人が2人を祝ってくれる。

 結婚すると資金は共同管理になる。それぞれのシングルプレイで稼いだお金を合わせて使うことができる。2人の家を買い、家具を置き、さらに望めば子供を作ることも可能だ。子供はNPCとして時間と共に成長していく。子供と交流することもできる。学校に連れて行ったり、家政婦を雇って世話することも可能だ。

 注意する点は、変化をするのはホストであるデミトリーの世界で、ルイーズの世界は彼女が世界から離れたときに静止していると言うことだ。ルイーズはデミトリーの世界で成長する事もできるが、ルイーズが世界に戻っても、その影響で世界は変化しない。作った子供も、デミトリーの世界にとどまることになる。また、デミトリーがログインしていなければ、ルイーズはデミトリーの世界を訪れることはできない。

 プレーヤー達は離婚することもできる。そのとき、資金は正確に半分になる。結婚して高いものを買いまくって自分の世界に送り、さっさと離婚する、というプレイもできるわけだ。「だからこそ、結婚には慎重さが求められるのです」とモリニュー氏は語った。

 この後、いくつかの質問をぶつけてみた。「Fable III」で気になるのは、王になるまでと、王になってからのプレイのボリュームの割合である。モリニュー氏は「まず、ゲームを始めた時点では、だれもあなたのことを信用していない。プレーヤーはクエストや直接的なふれあいを通じて、信頼を勝ち取り、やがて王に変わる存在だと、認められなくてはいけない。このためのプレイは8~10時間で到達できる人もいれば、20時間以上かかる人もいるだろう」と答えた。

 そして王になってからは、全く違うゲームプレイが待っている。ここからはゲームは「第2幕」となる。ここでのプレイは4時間で終わらせることも、10時間やってもまだ終わらないというプレイも可能だという。王になってからのプレイは、現在はまだ未公開で、ゲームの秘密の部分だ。「ぜひプレイして確かめてください」とモリニュー氏は語った。

 「Fable III」ではキャラクターとふれあう“タッチ”というアクションがある。握手をしたり、ハグしたり、濃厚なキスも可能で、プレーヤーのアクションでNPCの感情が変化していく。このように1人1人の気持ちを変えることができるほか、クエストで得られる名声や、自分の力を誇示するなど、様々な方法で自分に惹きつけることができる。悪を演じれば人々はあ其れながら従うようになるという。この民衆の力を束ねるアクションが、革命へと向かっていくのだ。

 「『Fable』は他に類似したもののない、とてもユニークなゲームです。日本のプレーヤーの方に、王座につくこと、権力を握ると言うことがどんなに素晴らしい体験になるか、ここを感じて欲しいと思っています」とモリニュー氏は最後に日本のプレーヤーに向けてこう語りかけた。


左がデミトリーの画面。中央のルイーズの景色と全く違う。光っているオーブを通じて、デミトリーの世界に現われたルイーズ
戦闘シーンと、愛をささやくシーン。右は結婚式場を決める画面だ
2人は口づけを交わして結婚式で結ばれる。子供も生まれ、時と共に成長していく



■ ヘビーなストーリーからユニークな要素、激しい戦闘アクションも体験

マイクロソフトブースで出展されていた「Fable III」。ダンジョンを進み、ゾンビとの戦いが楽しめた
ゲーム内で入手できる「チキンスーツ」。ユニークな要素もたっぷり盛り込まれている

 モリニュー氏のデモプレイとインタビューに加え、「Fable III」の体験プレイをすることもできた。こちらは残念ながら写真撮影が不可だったが、文章で面白さを伝えたいと思う。今回の体験会では、特に「Fable III」のアクション部分を体験できた。本作は会場にも出展されており、そこでは基礎のアクションを学びながらたっぷり戦闘ができたが、さらに突っ込んだ技の組み合わせや、序盤のストーリーを体験できた。

 最初にプレイしたのは、本作のオープニングだ。始まりのムービーではコックの手から逃れようとする“鶏”を通じて革命の予感が語られる。コックから逃げようとする鶏が走る先で、貧困にあえぐ民衆、処刑されようとする人々、工業化されつつある息苦しい世界が描かれる。「Fable III」の世界は、王の圧政の前に、民衆は苦しみのうめき声を上げているのだ。

 場面は一転して豪華なベッドに。そこで寝ていた主人公は、執事の「ジャスパー」に起こされる。主人公は英雄の血をひく王子であり、現在は兄が国を治めている。何不自由ない、平和で甘やかされた生活。愛犬と共に、ジャスパーも認めている恋人のエリースに会いに行く。2人は城の中庭で愛を確かめ合うが、エリースは心配そうな顔で告げる。「あなたのお兄さんが、工場で労働者を処刑したという噂を聞いたの」。

 エリースの話では、王である兄の民衆への圧力は強くなっているという。2人が城の建物に戻ると、城では処刑中止への嘆願書を持つ人が詰めかけていた。街の外では国王に対して抗議の声を上げるデモ集会まで開かれているという。王はこの動きに軍隊を差し向けるつもりだ。主人公はエリースと共に王に抗議に行くが、王はデモの主導者をとらえ、処刑を命じようとしていた。

 抗議する主人公に向かって、王は告げる。「王子に邪な考えを吹き込むエリースか、民衆のリーダー、どちらかを処刑する。おまえが選ぶのだ」。このように「Fable III」では開始数分で、いきなりこの重い決断を迫られる。恋人のために民衆を犠牲にするか、それとも……その夜主人公は、執事と、剣の指南役と共に城を出る。兄王の仕打ちが、主人公を革命のための冒険へ導くことになるのだ。

 次に体験したのが、警備されている港を抜け、船で旅立つというシチュエーション。前後のつながりは不明だが、主人公には「ベン フィン」という相棒がいる。ベンは衛兵達に近づいていき、歯の浮くようなおべっかを並べ立てる。それでも衛兵は疑う態度を変えず、戦闘になってしまう。ベンは全く口調を変え、勇ましく戦う。おべっかを使っていたときと、戦いが始まったときのベンのギャップが楽しい。声優の熱演がキャラクターにさらなる魅力を与えていると感じた。

 ベンと港にいる敵と戦うこのクエストは、戦闘を前面に押し出したシチュエーションでこちらの武器はかなり強く設定されているものの、敵が強く苦戦させられた。「Fable III」では武器や魔法は使うごとに強力になっていく。またとどめを刺すときにはフィニッシュムー部というスローモーションも入ってかっこいい。本作の戦闘は、やりこみ要素があり、強くなればかなりの爽快感が味わえそうだ。

 ユニークな要素としては、「ノーム人形のクエスト」があった。ノームの格好をした男は、ノーム人形が大好きで、ひたすら集めているという。このノーム人形に命を吹き込むアイテムを持ってきて欲しいというのがこのクエストの目的だ。このノームが命を宿したとき、一斉にしゃべり出すのだが、実は1人の声優が20人分の声を出しているのだという。ノームの声は必聴である。

 このノームのクエストそのものはほのぼのとした雰囲気だが、実は目的のアイテムを取りに行く道がかなり険しい。ここでは魔法攻撃をする際に使用する「ガントレット」の使い方が学べる。ガントレットは「ショック」、「アイスストーム」、「ファイアーボール」、「フォースプッシュ」、「ブレード」の4種類があり、左右の手にはめて組み合わせることで魔法が変化する。ファイアーボールで足下をカバーし、ブレードで遠距離の敵を攻撃など、有効な組み合わせを模索するのが楽しかった。

 体験会では、「Fable III」の様々な可能性を見ることができた。ストーリーは前作以上に強化され、「兄と戦うための困難な道」を進む主人公に強く感情移入させられた。重いだけでなくユーモラスな部分もたっぷりあり、戦闘のアクション要素、やりこみ要素もアップしている。発売が楽しみだ。


美しく表現されたフィールドをプレーヤーは旅していく。プレーヤーの選択や、服装でキャラクターのイメージは大きく変わってくる
こちらはマルチプレイを意識したスクリーンショット。プレーヤーキャラクターは、男女どちらでも選べる

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(2010年 9月 19日)

[Reported by 勝田哲也]