★PSPゲームファーストインプレッション★
シリーズ初の“持ち運べる『龍が如く』” 「クロヒョウ 龍が如く新章」 |
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「龍が如く」シリーズ初となるPSPタイトル「クロヒョウ 龍が如く新章」。本作は、「龍が如く」シリーズらしいストーリー、バトル、アドベンチャー要素を継承しつつ、若者向けに作られた、これまでとは異なる新たな「龍が如く」の形だ。
短い時間ながら、発売前にマスターロムをプレイする機会を得ることができた。シリーズの魅力であるストーリー、キャラクター、バトル、アドベンチャーに加え、通信プレイについて紹介していく。
■ テーマは暴力、主人公は少年。若い世代を意識して作られた物語
神室町に立つ1人の少年。少年の名は、右京龍也。「力こそがすべて」と信じ、暴力でしか自分を表現できないその少年は、高校中退後、神室町の闇に身を投じながら喧嘩に明け暮れる毎日を過ごしていた。 ある雨の日、闇金を襲撃し金を横取りするという大胆不敵な計画を龍也は画策する。あまりに無謀な行動に仲間たちが離れていく中、1人で襲撃を試みる龍也。しかし、そこにいたのは東城会直系九鬼組の幹部“戸田直輝”だった。 龍也に襲い掛かる戸田。しかし、龍也はそれを圧倒。野獣のごとき強さで戸田をブチのめす。勝利に酔いしれ、高笑いする龍也だったが、気づくと戸田は死んでいた……。 九鬼組幹部殺害により、東城会、そして警察から追われる身となった龍也。 神室町からの逃亡を図る龍也だったが、九鬼組の組長“九鬼隆太郎”によって捕らえられ、ある場所に連れてこられる。そこは、九鬼組が運営する非合法の地下格闘場“ドラゴンヒート”だった。 「戸田殺しを見逃す代わりに、ドラゴンヒートで闘え」 龍也にそう迫る九鬼。それは、自由を奪われた少年に課せられた宿命であり、少年に選択の余地などない。己の拳で運命を切り開くため、右京龍也は闘いの舞台に上がる。 |
主人公は、暴力でしか自分を表現できない少年「右京龍也」。金目当てで闇金を襲撃し、意図せず人を殺めてしまう。そんな衝撃的な出来事から物語は始まり、避けられない闘いの宿命へとつながっていく。暴力とは、自分とは何なのか。戦うことを通じて、少年は大人へと成長していくという、シリーズならではのメッセージ性の高い物語に展開していく。
メインのストーリーだけでなく、サブストーリーも充実。メイン・サブ合わせて300分もの物語が収録されているとのことで、ボリュームも十分にありそうだ。
シリーズでは3DCGで描かれてきたイベントシーンだが、本作では劇画調のグラフィックスによる、独特な表現が用いられている。PSPの制約上、用いられた手法だそうだが、これはこれで3DCGとは違った迫力がある。
また、シリーズの魅力の1つである、個性的な登場人物と、それを演じる豪華キャスト陣はPSPになっても健在。高良健吾さん、波瑠さんといった若手注目俳優から、黒沢年雄さんや岩城滉一さんといったベテラン大物俳優まで、幅広いキャストとなっている。他にもWBA世界スーパーフェザー級王者の内山高志選手、タレントやモデルとして活躍する手島優さん、星あやさん、中村アンさんといった方々も参加している。
■ 喧嘩らしさを追及して生まれたバトルシステム
これまでのシリーズ同様、簡単な操作で迫力あるバトルが楽しめる本作。これまでと大きく異なる点として、スタイルを変更することで、主人公が様々なバトルスタイルで戦えることやバトル画面に体力ゲージが表示されないことなどが挙げられる。これらを含めたバトルシステムの特徴について紹介していきたい。
敵に接触すると、自分と相手の情報が表示され、対戦格闘ゲームのようなステージとキャラクターの演出が入り、バトルスタートとなる。キャラクターの演出をスキップすれば、通常より早くスタートできる。戦闘までのロード時間は、ステージや相手の人数によって異なる。短いにこしたことはないので、データインストールを利用しない手はないだろう。
Lボタンでガード、Rボタンで視点切り替え、方向/アナログキーで移動、□でパンチ、△でキック、○でつかみ、×でダッシュ/ステップ、ダウン中の相手に□or△でダウン攻撃、L+○でステージに落ちている物を拾うなど、複雑なコマンド入力は要求されることはなく、パンチやキックを連続入力するだけで派手な連続技を繰り出せる。また、本作では、方向/アナログキーと組み合わせて攻撃すると、下段、突進と攻撃が変化する。強力なヒートアクションは前作と同様だが、違うのがヒートゲージがない点。キャラクターのまとうオーラの色でヒートアクションができるかどうかを判別することになる。相手の攻撃に合わせたカウンターアクションとして、L+方向キーのキャッチ(成功時、自動で攻撃を決める)などもある。キャッチはタイミングがシビアで、無理に狙って被ダメージを増やすのは得策ではないが、決めた際の爽快感はたまらないものがある。
スタイルには、喧嘩、ボクシング、空手、プロレス、古武術、中国拳法などがあり、スタイルによって性能が違い、プレイ感も異なる。初期設定として用意された喧嘩などの総合系のスタイルは、手技・足技・投げ技とバランスが良く、使い勝手がいい。逆に特化型のボクシングなどは多少クセはあるが、慣れてくると大きな戦力となるだろう。スタイル変更はメニューもしくはバトル開始前に行なえる。スタイルのレベルが上がると「ヒート攻撃力+20%」など、性能がアップする。
戦闘中、敵・味方共に体力ゲージは表示されないが、自分の体力の状況は画面の枠色で判断できる。枠が赤くなったら、体力が減ってきていることを示す。メニューを開けば体力ゲージが確認できるため、気になったらメニューを開くといいだろう。また、部位の負傷度も本作独自の要素。頭・胴・腕・脚の4箇所があり、一定以上負傷度が蓄積すると、画面に負傷度の高い部位名が表示される。部位に応じて、ガードが崩されやすくなるなど、マイナス効果が発生する。これらは自動で回復しないため、アイテムを使ったり、病院に行くなどして回復しておきたい。
ダッシュ、ステップ、コンボなどを休まず行ない続けると息づかいが激しくなっていき、最終的には疲れ状態となり、一定時間動けなくなってしまう。とはいえ、戦闘中に何もしないでいてはダメージを受けてしまう。単発攻撃、投げ、ガードなどで疲れの回復を図るのがよさそうだ。なお、疲れはキャラクターの見た目で判断できる。
戦闘終了後、相手によっては選択肢が出てくる。□でEXPアップ、△で仲間(通信対戦で利用できる)、○で獲得金額アップとなる。倒して獲得できるのが1,000円未満なんてこともあるので、お金を稼ぎたいなら獲得金額アップなど、目的に合わせて選択しよう。
ゲーム開始時に「EASY」、「NORMAL」、「HARD」の難易度選択が可能。基本的に難易度は戦闘に関するものになっている。一度決定したら、変更できないので、慎重に選択してほしい。ちなみに「NORMAL」でも結構歯ごたえがある。筆者はシリーズをプレイしてきているが、ボス戦では回復アイテムを使わなければ勝てなかった。
これまでのシリーズより、カメラは近めになっている。多少周囲の状況が把握しにくいものの、戦闘の迫力が増している |
■ 物語の舞台であり、多くのタイアップ施設やプレイスポットが存在する「神室町」
PSPで再現された「神室町」 |
シリーズで欠かせない「神室町」。これまでは視点を自由に変更するものであったが、本作では固定カメラになっている。PSPというプラットフォームの制限から生み出された結果なのだろう。固定カメラになったからといって、見づらいなんてことはない。例えば、目的の建物を探す場合、これまでは視点を自分で動かして探す必要があったが、固定カメラなので、対象の近くまで移動すれば、見えている範囲に存在するわけだ。開発側オススメの視点なので見やすいし、本作の方がプレイしやすいと感じる人もいるのではないだろうか。
ドン・キホーテ、プロント、カラオケ館、CLUB SEGAといったタイアップ施設はこれまでと同様にあり、リアリティのある街並みを形成している。町にいる人の多さも見事に再現されており、ぶつかるとよろけてくれる。
バッティングセンター、ボウリング、カジノ、UFOキャッチャー、カラオケといった多くのプレイスポット、お馴染みのキャバクラは本作アレンジバージョンとして収録。キャバクラではクイズなどでキャバ嬢を自分へ振り向かせるキャバ対戦、方向キーとボタンを指示通りに入力すればご褒美がもらえるキャバヒートといった遊びが楽しめる。
お金が稼げるアルバイトも本作ならでは。アルバイトする店毎に異なるミニゲームをプレイして、お金を稼ぐ。
■ アドホックモードを利用した通信プレイ
PSPというプラットフォームを活かした通信プレイは、アドホックモードを利用して、最大4人での対戦、最大2人での協力プレイが堪能できる。
通信プレイで使えるキャラクターは、ストーリーモードで仲間にしたキャラクターと、キャラクターエディットで作成したキャラクター。キャラクターエディットでは、名前・ヘッド・ボディ・トップス・ボトムス・スタイルと、多数のエディット項目からオリジナルキャラクターが作成できる。条件を満たすと服やスタイルなどが増えていく。
対戦プレイでは、4人でのバトルロイヤルで決着をつける土下座バトル、2対2で戦うタッグマッチ、5人のチームを作成し、先に3勝すれば勝利となるチームバトルがある。タッグマッチでは、2人同時で攻撃する「2プラトンヒートアクション」といったタッグならではの攻撃も可能。また、体力やマップ(サイズやアイテムが異なる)などの設定もできる。
協力プレイでは、仲間と共にミッションに挑む。クリアすれば、次のミッションが追加されていくシステムを採用しているようだ。
様々なスタイルのキャラクターで通信プレイを試したところ、プロレスなどの投げが強いキャラクターが勝ちやすかった。投げが成立している最中は攻撃を受けないからだ。ただし、それほど長くプレイしたわけではないし、キャラクターのレベルも低かったので、全種類のスタイルが揃い、キャラクターのレベルが上がったら、全く違う印象を受けるかもしれない。今後が楽しみだ。
通信プレイはホストがルームを作成し、他のプレーヤーがルームに参加する形なのだが、1プレイ毎に部屋がなくなり、再度プレイする際にはまたルームを作り直さなければならないのが少し残念。連続してプレイできるようにしてほしかった。
■ 最後に
シリーズ初となるPSP―持ち運べる―「クロヒョウ 龍が如く新章」。「龍が如く」らしさがありながらも、これまでとはまた違った楽しさがある。
ドラマや漫画連載といったゲーム以外での展開も楽しみのひとつ。これはメディアごとにより楽しめるようにと配慮された結果、ストーリーはそれぞれ違うものとなっていて、なぜ変えているのかを感じつつ見比べれば、このタイトルで言いたかったことを深く理解できるそうだ。今後、ドラマや漫画から興味を持って、ゲームをプレイする人が増えそうだ。
シリーズをプレイしてきたファンには、桐生一馬が主人公ではない本作ならではストーリーやPSPでの新たなプレイ感を味わってもらいたい。また、シリーズをプレイしたことのない、若い世代にもプレイしてもらいたい。
(C)SEGA
http://sega.jp/
□「クロヒョウ 龍が如く新章」のホームページ
http://kurohyo.jp/
(2010年9月22日)