PSPゲームレビュー

拳ひとつでのし上がる、男気満載の喧嘩アクション第4弾
「喧嘩番長4~一年戦争~」

  • ジャンル:アクションアドベンチャー
  • 発売元:スパイク
  • 開発元:バレット
  • 価格:5,229円
  • プラットフォーム:PSP
  • 発売日:発売中(2月25日発売)
  • プレイ人数:1人(アドホック通信時2名)
  • CEROレーティング:B(12才以上推奨)


 喧嘩と友情と恋の三本柱をテーマに大ヒットを続けるアクションアドベンチャーゲーム「喧嘩番長」シリーズ。最新作は、1年間という限られた時間の中で、最強の番長を目指してのし上がる、武闘派青春下克上物語となっている。誰もが親近感を覚える等身大の学生生活を満喫しながら、最強の座を目指して生徒300人の頂点を目指す戦いに挑む。



■ 伝説の番長「阿久津 栄一」とのタイマン勝負に挑み、勝て!!

 人類が、その増えすぎた人口を、宇宙に移民させる……には至ってはいない平成の世。人々はヤンキーたちの頂点に君臨する存在を「番長」と呼称し、その存在を怖れ、子を産み、そして死んでいった。平成××年、進学校からもっとも遠い存在の問題校、紅南高校に入学した主人公は最強の男を自称し、全校生徒へと素手喧嘩(ステゴロ)戦争を挑んでいった。最初の1月あまりの戦いで脳細胞の半分を死に至らしめながらも、一年戦争はその過酷な幕を開けた……。

 番長やスケ番といった人種がナチュラルに存在している独特の世界観と、誰もが慣れ親しんだ高校生活をベースに展開するストーリーで、数多くのファンを獲得しているシリーズの最新作「喧嘩番長4」。地域のワルどもが一同に集まる問題高校に入学した主人公が、その腕っ節でのし上がっていく物語が描かれていく。タイトルにもあるとおり、メインとなるゲームの期間は主人公が高校に入学した4月から翌年3月までの1年間。この間、主人公は紅南高校を中心とした紅南地区を自由に移動しながら、ハイスクールライフを満喫していくこととなる。

 ゲームの大きな目的は、紅南高校の頂点に君臨する伝説の番長「阿久津 栄一」とのタイマン勝負に挑み、これに勝利すること。しかし、そこにたどり着くまでには、主人公が越えなくてはいけない試練が数多く存在している。ある時は1人で、またある時は友と力を合わせて、その試練を乗り越えていくことになる。戦闘バリエーションやキャラクターカスタマイズなど、かなり自由度が高い作品に仕上がっている。その自由度の広さを確認しながら、本作をプレイするうえで押さえておかなくてはならないいくつかの柱を見ていこう。

【スクリーンショット】
最強の男を目指して、紅南高校に入学した主人公。伝説の最初の1ページはここから刻まれていく紅南高校のモットーは「自主」。しかし、荒くれ揃いの在校生たちには「自首」のほうを進めたくなるのも無理はない話主人公が通う学校が存在する紅南市。市はエリアごとにわけられており、マップ上からエリア選択を行なって移動する




■ 喧嘩を繰り返して主人公を成長させ、男の器を大きくする

 本作はアクションアドベンチャーと銘打たれており、主人公の行動を決めるアドベンチャーパートと、ほかのキャラクターと喧嘩を行なうアクションパートのふたつの要素が融合している。アドベンチャーパートでは、マップを移動しながらイベントを発生させ、その結果に応じてサブシナリオなどが発生、分岐していく。ゲームの要となるアクションパートは、連続技や掴み技、投げ技などを駆使しながら、並み居る強敵をなぎ倒していくのが目的。アクションパートでは1対1のタイマン勝負から、1対多人数戦、2対2といった多彩なカチコミレギュレーションが用意されている。

 相手へと喧嘩をふっかける際には、このシリーズ独自の礼儀作法が存在する。それが、テレビCMでもおなじみの「メンチビーム」である。本作には喧嘩をするにも流儀がある。いきなり攻撃を仕掛けるのは卑怯な男のすることで、まずはメンチビームで挨拶をするのが正しい喧嘩の作法なのだ。主人公がメンチビームを飛ばすと、負けずと相手もメンチを切り返してくるのだが、この時にタンカをきる必要がある。選択したタンカ──「タン語」を、メンチビームに乗せてタイミング良く発することができれば、先制攻撃をすることができ相手に一方的にダメージを与えることも可能だ。このタンカバトルに勝利することが、喧嘩を制する第1歩だ。

【スクリーンショット】
喧嘩をふっかける前には、メンチビームを照射するのが礼儀。レベルの低い相手に照射した場合は、それだけで腰を抜かして逃げていくこともあるメンチをきったらタンカバトルが発生。流れてくる「タン語」を、タイミングよく発声して、タンカを完成させると先制攻撃が行なえるタンカの長さに比例して、先制攻撃時のダメージが上がる。タン語は校内や街中のいろいろな場所で入手することができる


 アクションパートで繰り出す技は、プレーヤーが任意にカスタマイズでき、技の構成によってコンボや空中コンボを自由に組み立てられる。筆者がプレイした限りでは、操作性についてはやや難ありだと感じたが、技の組み立て、カスタマイズがとにかく楽しいので、アクションパートが飽きずに楽しめた。主人公の男の器(レベル)が上がると新しい技を次々と覚えていくので、レベルが上がるにつれてコンボの自由度も広がっていく。タイマンで威力を発揮するコンボや多人数を相手にする際に役立つコンボ、または障害物を使った壁コンボなど、ヤンキーの喧嘩もついにテクニカルな時代へと突入したかと思うと非常に感慨深い。もちろん、「細まけえことは気にしねぇ」と言うプレーヤーは、技の見た目や威力だけでカスタマイズしてもまったく問題はない。それほど深く考えずに技をセットしてボタンを連打するだけでも十分戦えるので、アクションゲームが苦手なプレーヤーでも、ストレスなくゲームを進められるはずだ。

【スクリーンショット】
街中、校内の至る所でバトルは発生する。喧嘩に勝って、300人が在籍する紅南生すべての校章を奪い取るのも目的のひとつだ技のカスタマイズを行なえば、プレーヤー独自のコンボを作れる。攻撃範囲や技の出の早さなどを吟味しながら、連続技を組み立てよう筆者のオススメは「ワンツーストレート→ロシアンフック→テンカオ→大きく前にならえ」のコンボ。発生の早い浮かせ技のテンカオをどこに設定するかでコンボの性質が変わる




■ 漢の生き様は「シブイ」か「シャバい」に分別される

 よくヤンキー漫画などで登場する「シャバい」なる言葉。これは男らしくない、ダサイなどと同義語に置き換えることができ、ヤンキー世界の美意識を表す重要なワード。本作でも卑怯な行為を重ねると、主人公の漢らしさを示す男気ゲージが減少し、ゲージが最下層になった時点で「シャバゾウ」と呼称され、他のヤンキーから蔑視を受けることとなる。

 男気ゲージが特に減少するのは、喧嘩で卑怯な振る舞いを行なってしまった場合。メンチビームを発することなく、いきなり不意打ちで襲いかかるという野獣の如き振る舞いや、バットといった武器を持って相手に殴りかかる暴虐なアクションが代表例。また、一般人にむやみやたらにメンチビームを飛ばしたり、金品を巻き上げる行為に及んだ場合にも、男気ゲージは音を立てて減少する。

 本作では、ただ腕っ節が強いだけではまわりからは認められない。男気、つまり番長としての品格が重要なキーワードとなっているのだ。筋を通し、カタギには手を出さない漢は「シブイ」。所構わず跳ねまくり、一般人も見境なく狩りまくる狼藉者は「シャバい」。シャバゾウでもゲームを進めることは可能だが、その道のりは険しいものになると覚えておこう。

【スクリーンショット】
敵のメンチから目を逸らす、喧嘩から逃げ出すなどの行為をしてしまうと画面左上の男気ゲージがどんどん青くなっていく武器を用いての喧嘩はベリシャバ。たとえ勝利できたとしても、誰も尊敬してくれずに一気にシャバゾウ扱いされるシャバゾウになると仲間たちからの信頼もなくなる。正々堂々と喧嘩して、信頼を築きながら強くなるのが真の漢と言えよう




■ 拳を交えて生まれる信頼──漢たちの物語に酔え

 本作に登場するキャラクターたちは、どいつもこいつも肉体言語で語り合う荒くれファイターに見えるが、腹を割って話すと人情味溢れるいいヤツばかり。彼らの魅力を引き立てるためのストーリー展開は実に秀逸で、筆者が本作をプレイして、最も評価したい点はシナリオ構成の巧みさだと言ってもいいくらいである。

 最強の座を目指して紅南高校に入学した主人公だが、入学したては蛮勇頼みで実力が追いついておらず、阿久津の顔すら見ることもままならない。しかし、主人公が所属する1年A組のアタマを決める対決や、1年最強を決める熱い戦いを勝ち抜き、主人公は腕っ節だけでなく、人間的にも(ほんのりと)成長していく。その成長の証とも言えるのが、主人公の周囲に集まってくる仲間たちの存在である。彼らはもともと主人公と敵対しており、拳を交えたあとにお互いを認め合い、友となっていく。最初に仲間となる情報屋のテルや、リーゼントに拘り続ける生きた化石の川上、主人公と同等の力量を持つ山口を筆頭に、ストーリーが進むにつれて、主人公の周りには次々と頼れる仲間が生まれていくのだ。

【スクリーンショット】
1人前の情報屋を目指して奔走する同級生、テル。彼からもたらされる情報を元にして、主人公は阿久津との戦いの道を歩んでいく主人公たちが集まる「たまり場」には、これまで敵対してきた同級生たちも顔を見せる。彼らは、主人公と一緒に戦ってくれたりもする1年最強決定戦で覇を争う1年E組の八神。「死神」と呼ばれる喧嘩ジャンキーだったが、のちに主人公と互いの力を認め合う


 入学当初は1年生、2年生、3年生の力の差は圧倒的であり、それこそ1年生と3年生の格差は3輪車とF1マシンほど離れている。しかし、戦いを重ねて成長し、仲間たちを増やしていくことにより、主人公は3年生をも凌ぐほどの力と勢力を手に入れていく。特に、2年を仕切っていた小澤、袴田のツートップとの激闘のあと、彼らが主人公の軍門に下る際の「スジを通しにきたぜ……!」という場面などは、ヤンキー漫画愛好家ならバケツ10杯泣けるシーンとなっており、本作を代表する名場面のひとつだ。

【スクリーンショット】
主人公と同じく、阿久津の首を狙う2年の小澤と袴田。喧嘩において「何でもあり」を標榜していたが、主人公と戦って己の心の弱さを恥じ、素手での喧嘩に目覚める阿久津の名前を利用し、金儲けのために多くの生徒たちを踏みにじってきた2年の反町。中盤以降は、反町一派との戦いがメインとなるついに姿を現わす伝説の番長、阿久津。腕っ節だけでなく、多くの生徒たちから尊敬を集めており人望に厚い。彼を越えることができるのか!?


 本作に登場するキャラクターには明確な線引きがされており、敵として登場しても、己の信念やスジを通すキャラクターは戦いのあとに主人公と友情を深めあう。一方、人の道から外れた卑劣でシャバイふるまいをするキャラクターは、ボコボコにされて病院送りと、非常にわかりやすい勧善懲悪になっている。頭をカラにして楽しめる明快な展開も、本作の好感が持てるポイントだ。少年漫画の定石である「強敵と書いて“友(とも)”と呼ぶ」を地でいくストーリー展開が好きな人は、たまらない作品だろう。



■ キャラクターのカスタマイズやサブシナリオも充実!

 強敵との喧嘩バトルのほかに、自由度の高い青春ライフを送れるのも本作の魅力。やはり、高校生ともなるとオシャレしたい年頃。街のセレクトショップで衣装やアクセサリーを購入することで、主人公の外見を大きく変化させられるのも本作のウリだ。一張羅である短ランや長ランだけでもかなりの種類が用意されており、ズボンも数十種類以上の品揃え。「やっべ、このボンタンのワタリじゃ舐められっぞ」と思ったら、即セレクトショップへと走ろう。ヘアスタイルなども細かく設定でき、ヘアカラーで色を変えることも可能。変更した外見はすべてイベントシーンに反映されるので、気合いを入れたナリでビシっとカスタマイズしておきたいものだ。

【スクリーンショット】
外見の変化による性能の違いはないので、自由にカスタマイズが楽しめる。髭をはじめ、メガネなどで存分にカスタマイズできるどうみても高校生には見えない装いだが、気合いだけは感じられる。なお、街中での喧嘩を警官に見つかると、服は没収されてしまうアウターの代表格である長ラン、短ラン、中ラン。シャープに短ランで決めるか、気合い十分な長ランで決めるかはお好みで
履くだけで番長気分最高潮のスーパードカン。ワタリの幅は漢の意気込みと比例している特攻服、通称「トップク」も多種多様にご用意。ネーミングも気合いの入ったものが多い商店街はかなり栄えており、なかには本作とタイアップした「餃子の王将」も軒を連ねている。寄り道して料理を食べると主人公の体力が回復する


 また、最強の番長をひたすらに目指す以外にも、さまざまな遊び方が用意されている点もうれしい。ひとつは女の子と仲良くなって、ラブラブなヤンキーライフを送ること。本作には複数のヒロインが登場し、どの子と仲良くなるかによって展開が変わってくるのだ。ゲームの本筋には影響しないものの、入手できるアイテムや交友関係が変化し、ヤンキー漫画の王道的な恋物語を楽しめるのがウリだ。そして、もうひとつが全国から押し寄せる番長と手合わせできる「休日モード」。こちらはストーリーには関係ないが、このモードで戦いを重ねて主人公を成長させれば本編の進行も楽になるので、ぜひ遊んでおきたい。

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登場するヒロインのひとり、弘田麻衣。年下ということで主人公は気に留めてないが、主人公を「ダーリン」と呼んで健気なアタックを続けてくる麻衣の元恋人、小野田哲平。最初は主人公を恨んでいたが、生き様に惚れて舎弟となる。麻衣のシナリオを進めていくと、仲間にできる「休日モード」を選択すると、全国から集まってきた番長たちと街中で戦える。どの番長も腕に覚えがある猛者ばかりなので、男の器を最低でも20近く上げてから挑む必要がある




■ 自由度の高い箱庭世界で、気合いの入ったヤンキーライフを満喫せよ

 本作は「すべての問題は腕力で解決」、「友情は命よりも大事」という、従来の「喧嘩番長」シリーズのテイストを受け継ぎながらも、作風は今どきのヤンキーが活躍する物語に仕上がっている。これまでのシリーズ作品はどことなく昭和の香りが漂う「古き良き番長」が主役を張っており、作品の世界観もあえてノスタルジックな雰囲気が盛り込まれていた。しかし、「喧嘩番長4」に登場するキャラクターたちは、ほぼ全員が現代風のメンタリティを持っており、雰囲気も一新されている。

 マンガで例えるなら、過去作が「ビーバップハイスクール」や「特攻の拓」を下敷きとしているのに対し、本作は「クローズ」や「WORST」のような雰囲気を踏襲していると言えるだろう。過去作にあった走り屋同士の抗争やバイクテクニックを競うといった昭和的な要素はなくなっているが、都会派ヤンキーたちの血湧き肉躍る物語を満喫できるので、「喧嘩番長」シリーズの新たな作風を開拓している作品となっているのは間違いない。

 ゲームをプレイするうえで気になった点と言えば、ときおり発生する強制戦闘で、体力回復アイテムがないとほぼ“詰んでしまう”ところ。強制戦闘が発生しそうなときには体力アイテムを常備しておかないと、一方的にボコられてシャバゾウ街道まっしぐらとなってしまう。あとは、レベル差があると強制戦闘で勝利できずにストーリーが進まなくなってしまうので、こまめにセーブして、街中でチンピラ相手に喧嘩慣れしておくことも大切。特に、敵として登場する八神と袴田は攻撃力が高いので、前者は男の器を10前後に、後者は18前後まで上げておくといいだろう。

 泥臭いタイトルと世界観ゆえに食わず嫌いしている人も多いと思われるが、本作の丁寧に作り込まれた箱庭的ヤンキー空間を自由に動き回れるおもしろさと、男心を揺さぶる良質なストーリー展開は、時間を忘れて遊んでしまう魅力がある。筆者も以前は「喧嘩番長」シリーズをやや敬遠していたのだが、シリーズを通してプレイしてみるとその間口の意外な広さに驚愕。本シリーズは万人が楽しめる良作といっていいだろう。クリアしたあとも衣装の収集やサブシナリオの進行といったやり込み要素が盛り込まれているので、末永く楽しめるはず。愚直で熱い漢たちが繰り広げる、手に汗握る喧嘩バトル──プレイしないのはシャバ過ぎる!

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(2010年3月24日)

[Reported by 田渕健康(トリスター)]