PSPゲームレビュー

剣闘士は1度やったらやめられない
アクションゲーマー必見の剣闘アクション

「剣闘士 グラディエータービギンズ」

  • ジャンル:剣闘アクション
  • 発売元:アクワイア
  • 価格:5,040円
  • プラットフォーム:PSP
  • 発売日:発売中(1月14日発売)
  • プレイ人数:1人
  • CEROレーティング:C(15歳以上対象)


東京ゲームショウ2009のアクワイアブース

 昨年9月に開催された「東京ゲームショウ2009」。イベント取材の間隙をぬって、担当ブースとアクワイアブースを往復する筆者の姿があった。その目的は「剣闘士 グラディエータービギンズ」に他ならない。TGSは年間を通して1番体力的にキツイ現場につき、本来ならスケジュールの合間は休憩に充てるべきなのだが……今振り返ってみると、大半をコレ(剣闘士)に費やしていた気がしないでもない。

 それまで「グラディエーター」シリーズが好きという人が身近にいなかったため、自分がプレイするよりも先に「一般の人が、どうプレイするのか、どう楽しんでいくのか」が、気になって仕方がなかったからだ。変な話、笑顔で試遊台から去っていく人を見ると、メーカーの人間でもないのに「よっしゃぁ!」と心の中でガッツポーズをとる始末。我ながら気色悪い言動だなぁと思うが、好きなゲームが評価されてうれしくないファンはいない。

 さて……すでにPSPを握りしめつつ、「プロ奴隷」として血沸き肉踊る戦いに身を投じておられる同業者諸氏も少なくないかと思われるが、かくいう筆者も、諸々の仕事に一段落をつけて、先日やっとプロ奴隷としての第1歩を踏み出させていただいた。PS2「GLADIATOR -ROAD TO FREEDOM-」から、いく年月。“完全新作”と銘打たれ、世に放たれる「グラディエーター」の遺伝子。これを末代まで絶やさず伝えていくことは、もはや国内に散在するプロ奴隷たちの義務といっていい。そして、こうして無事発売日を迎えたとなれば、やることはひとつ。己のスキルを高めつつ「いかに世間一般に『プロ奴隷』を増やすか」だ。

 今作はADHOCモードによるネットワーク対戦に対応しているため、大ヒットすれば「すれちがい○×」ならぬ「すれちがい剣闘士」が大流行、秋葉原量販店の前に“バトルアリーナ”が出現してもおかしくない。「いや、おかしいのはオマエ(筆者)の頭だ」というツッコミはともかく……PSPをお持ちのかたは、Playstaiton Storeから体験版をダウンロードしていただくのが1番手っ取り早い。雰囲気をつかむには最適で、なにより体験版にしか登場しない強キャラ“チタシチーナ”とも戦える。PSPを持っていない、もしくは「今はヒマで仕方ないから読んでもいいよ」という奇特なかたは、本レビュー読了後、あらためて本作をチェックしていただきたい。


【ゲームの世界観】
マルクス・アウレリウス・アントニウスが統治していた古代ローマ帝国。“賢帝”と称えられたマルクスが、遠征先で病に伏す。「年老いた賢帝の跡継ぎは誰か」と噂する人々。マルクスの息子コンモドゥスとシリア属州総督カシウスが、その座をめぐり対立する。共同皇帝ルキウス・ウェルスは、賢帝不在のローマを支えることなく、貴族や豪商たちと“死のサーカス”に興じていた。円形の闘技場で行なわれる、剣闘士たちの死闘。特別な訓練を受けた戦争捕虜や奴隷たちが、命を賭けて戦う“ローマ市民の娯楽”は、生き残ったものに大いなる栄誉が与えられる。ゆえに貴族出身者が剣闘士に志願することもあったという。そして、今ここにひとり、新たな剣闘士が生まれようとしていた……



■ シンプルでわかりやすい導入部 ~誰でもすぐ剣闘士になれる!~

新規ゲーム開始直後はカッコいい男女しか作れないが、クリア後は色々と面白いデータが選べるようになる

 いきなり胡散臭い見出しで恐縮だが、コレは本当の話。ゲーム開始時、プレーヤーは自らの分身となる剣闘士を作成する。名前、出身地、おおまかな体つき、肌や髪の色、頭部、髪型、基本パラメータ(生命力、持久力、筋力)をそれぞれ決定。最初はマッシヴかつスタイリッシュな男女しか作れないが、これらはあくまでも“中身”につき、イロモノっぽい容姿にしたい人は、今後入手できる装備やクリア特典などでいかようにも変化させられる。

 エディット終了後は「マゲリウス剣闘士訓練所」に放り込まれる。ここは、興行師「マゲリウス」が経営する剣闘士の訓練所。奴隷として買われてきたプレーヤーの分身は、ここで剣闘士としての基礎を叩き込まれる。アナログパッドで移動、落ちている武器や防具の装備、△、○、□、×ボタンにそれぞれ割り当てられた上下左右の攻撃を覚えたら、「ウォルプタス闘技場」に移動。闘技場でデビュー戦を行ない、まずは雰囲気をつかむといった具合だ。

 無事デビュー戦を終えると、次は「スタイル」、「武具はがし」を教わる。本作では、左右の手に装備する武器や防具により、基本的な戦い方が変化。「小盾」、「大盾」、「二刀」、「格闘」の4種類に大別され、それぞれ特有のモーションで攻撃が繰り出される。武具はがしは、武器や防具を装備している場所を狙って、それぞれ肉体ではなく「武具」に攻撃をヒットさせ、ポロリを狙うというもの。落した武具をこっちがすぐ拾って装備し、相手がさらした無防備な部位を攻撃するという実践的なアプローチも教えてくれる。

 △ボタンを押したままにして繰り出す「溜め攻撃」、Lボタンと同時に各攻撃ボタンを押してスキルを発動させる「アクティブスキル」と、スタミナ切れのときに同様の操作で使える捨て身の攻撃「疲れ攻撃」、Rボタン押しっぱなしで相手の動きを見る「警戒」と「ドッジ」、L+R同時押しで相手の攻撃を跳ね上げる「パリー」など、必須テクニックの数々を“詰め込む”のではなく「○日目~」など数回にわけて少しずつ教えてくれるのがいい。興味本位で触った程度の人ほど「まとめて教える」型チュートリアルには腰が引けてしまうため、地味ながらコレはとてもいい配慮だったと思う。

 さて……剣闘士のお仕事は、ここからが本当のスタート。剣闘士は強さによって階級があり、作成したばかりのプレーヤーキャラは当然最低ランク。しかも、奴隷として莫大な借金を背負ったままという状態。だが、訓練所と闘技場を往復し、コツコツと地道に実績を積み重ねていけば、やがて全借金を返済し、晴れて「自由人」となることも夢ではない。客席で嬌声をあげるローマ市民と貴族たちの“欲望”を糧に、己の腕1本で明日をつかみとる戦いが、いま始まるのだ。


プレーヤーキャラクタは、剣闘士訓練所に買い取られた奴隷という立場からスタート。まさに“生きるための戦い”が始まる……
文字どおり“身体を張って”基礎を叩き込んでくれる訓練士。練習台としてプレーヤーから容赦なくしばかれるが、ほとんど文句もいわず血まみれにされる姿がシュールだ
まずは最下層の下級剣闘士から。コツコツ戦って上を目指していく。焦らず、少しずつ実力アップを図ろう



■ 闘技場 ~剣闘士と戦うだけの簡単なお仕事です~

上級昇格で一区切り。そこから先はシナリオ、試合ともに少しずつ佳境へと向かっていく

 「闘技場」では、「闘技に参加」のほか、「装備の変更」、「ステータスやスキルの確認」、「傷の治療」、「武具の購入」が行なえる。下っ端のうちはマゲリウスのいいなりで動かされるが、「上級剣闘士」に昇格すると、自分で参加する闘技場を選べるようになる。

 「闘技に参加」は、剣闘士のもっとも基本的なお仕事である「闘技」を行なう。出場資格は「下級以下(ブロンズ)」、「中級以上(シルバー)」、「上級以上(ゴールド)」、「最上級以上(プラチナ)」にわかれており、上にいくほど敵が強くなり、報酬もグンと跳ね上がる。

 ルールは「サバイバル」、「バトルロイヤル」、「チームバトル」、「タッグマッチ」、「デュエル」、「模擬戦争」の5種類がある。1対1のデュエル以外は複数の剣闘士が入り乱れるため、立ち回りに慣れるまで少々時間がかかるかもしれない。チームバトルとタッグマッチでは肝心の味方が邪魔になることもあるが、殺さない程度に巻き込むくらいなら何の問題もない。要は自分が最後まで立っていればいいだけだし、それ以上に「最大の敵は観客」だからだ。

 これは後述するキャラクタの成長とも関わってくるが、剣闘士は「ただ勝てばいい」のではない。「闘技場」は、いわば“見世物小屋”であり、客席にいる血に飢えたローマ市民たちは「娯楽(エンターテインメント)性の高さ」を求めている。現代の総合格闘技やプロレスでいうところの「観客との勝負論」というヤツで、勝敗の“勝”は、剣闘士側それぞれの大前提という瑣末な事柄に過ぎない。観客はただただ「白熱した戦い」に熱狂したいのだ。

 観客の熱狂は、画面右上にある「観客の評価ゲージ」であらわされる。これが低いまま試合が終わると、試合後のリザルト画面「評価システム」で散々な結果が待っている。良くも悪くも印象に残った行動が遠慮なく表示され、それを元にした総合評価、賞金、獲得AP(成長ポイント)が与えられる。目の肥えた観客たちはシビアに査定を下すが、それには「剣闘士自身のキャラクタ」も含まれる。

 剣闘士自身のキャラクタとは、なにか。それは、訓練所の「自分の部屋」で設定できる「通り名」のこと。ここでは、ふたつの単語を組み合わせることで、剣闘士が「どんなキャラクタなのか」をあらわすことができる。単語は、前にくる“PREFIX”が、「出身地」、「暴れ」、「精密」、「愚鈍な」、「剛力」、「屈強な」、「乱撃の」、「期待の」、「赤貧の」、「へなちょこ」など。あとにくる“NICKNAME”が、「戦士」、「地獄突き」、「軍団兵」、「人間兵器」、「軽業師」、「粉砕機」など。それぞれ“PREFIX”と“NICKNAME”ごとに“評価される行動”が設定されており、それを満たすほど評価ゲージが上がりやすくなる。

 「期待されているキャラクタを、きちんと体現する」これぞ真のプロフェッショナル。このあたり、シンプルだがとても理にかなった秀逸なシステムといえる。ちなみに、PREFIXとNICKNAMEは、闘技で一定条件を満たすと獲得できる。どんどん増やせば、芸風よろしく剣闘士としての幅も広がるというもの。そのためにも、色々な戦いかたや装備を試してみるといいだろう。


1対1、タッグ、多対多などがある。味方がいるときはなるべく巻き込まない立ち回りを心がけるといい……のだが、肝心の味方がまったくこちらを意識してくれないのが難点だ
ただ戦うのではなく、模擬戦争などシチュエーションに凝った試合形式もある。内容によっては剣闘士だけでなく猛獣がけしかけられることも……
上位剣闘士とのランキング戦はテンションが上がらざるをえない。個性的な武具は確実に剥ぎ取りたいところだ

【最大の敵は観客】
闘技場で行なわれているのはプロの興行。ショッパイ試合では相応の報酬しか得られない。観客の評価ゲージが伸びない人は「通り名」を体言できているか、一方的に相手を叩き潰していないかチェック



■ キャラクタの成長 ~剣闘士自身、そして武具~

少しずつキャラを成長させていく楽しさはアクションRPGに通じるものがある

 本作の魅力は、闘技パートもさることながら、コツコツとキャラクターを成長させていく“アクションRPG的な楽しさ”も大切な要素のひとつ。前述のリザルト画面で与えられる「獲得AP」は、訓練所で使うことが可能。ポイントを消費することで、筋力、生命力、持久力をそれぞれ少しずつ伸ばすことができる。スキルポイントは、試合で使うごとに成長。ポイントの割り振りはあとから自由に変更できるため、ファイトスタイルに適したスキルを好きなように試せるのがいい。

 成長要素でもうひとつ欠かせないのが「武具」の存在。武具には「武器」、「盾」、「兜」、「腕当て」、「脛当て」の5種類があり、訓練所や闘技場でそれぞれ自由につけかえられる。ただし、各武具には「重量」が設定されており、その合計値が各キャラクタの筋力に基づいた上限値を超えると、試合中のキャラクタの動作が重くなる。立ち回りに大きな影響を与えるため、ゲームに慣れないうちは「過重積載」にくれぐれも注意していただきたい。

 武具は、闘技場内にある「武器屋」で「精錬」させることが可能。リザルト画面などで獲得できる“加護”がついた武具は、素材として他の武具と組み合わせることが可能。加護には「筋力」、「生命力」、「持久力」といった3種類があり、組み合わせによって元素材からの能力値アップ・ダウン、アビリティボーナスなどの付加価値がつく。同じ加護を揃えていけば、ガンガン強くなっていく……のだが、当然「要するお金」も莫大なものになっていく。組み合わせによっては10万単位で消えていくため、ゲーム終盤には「お金がいくらあっても足りない!」という状況に陥る。ふと気づけば「返済した借金額よりも、精錬で武具屋に支払った総額のほうが圧倒的に多い」なんてことになるが、武具は文字どおり“命に関わる”だけに、ある意味いくら使っても惜しくはない。

 いい武具は、お店よりも「対戦相手」から奪えることのほうが圧倒的に多い。しかも、奪える可能性があるのは、倒した時点で「相手が落した武具」のみ。さらにいえば、リザルト画面で評価が低いと「丸裸(こちらの攻撃で相手の全装備を剥ぎ取った状態)」で始末しても、そのうち2個しか持ち帰れない。上位ランカーやシナリオ展開で戦うライバルタイプの剣闘士は、たいてい“美味しい”武具を装備している。これは筆者の体感だが、使用する武器の重量があるほど、相手の防具をはぎ取りやすいように感じられる。武具回収を重視するときは、手持ち武器のなかから最もヘヴィなものをチョイスするといいかもしれない。ただし、肝心の試合内容がショッパイと持ち帰れる個数が減ってしまうため、そのあたりはバランスを考えて武具を選定していただきたい。


精製で武具を強く鍛えていく。武具による制限はないため、どんなものでも根気次第で上限まで鍛えられるのがいい。ただし、そのためには相当な費用が……



■ イベント ~見栄っ張り、腹黒、紳士、令嬢……さまざまな貴族たちとの出会い~

 ゲーム開始時は、拾ってきた野良犬同然だったプレーヤーキャラクタ。だが、剣闘士として名を馳せていくうち、さまざまな貴族やVIPの目に留まるようになる。

 本作では、ゲームを進めていくと元・元老院議員、議員の妻、元剣闘士の興行主、名門家の令嬢など、ストーリー上で重要な役割を持つキャラクタ(主に貴族)から声をかけられることがある。貴族たちとの親密度は星(☆)マークで表示され、高くなると上物を取り扱う武器屋に出入りできるなど、さまざまなメリットがある。

 ただし、貴族によっては“よからぬ企み”にプレーヤーキャラクタを巻き込んでくるなど、メリット以上の厄介ごとを持ち込んでくるケースもある。とはいえ、こうしたイベントは(プレーヤーキャラクタはともかく)プレーヤーにとってはお楽しみのひとつなので、色々なバリエーションを存分に味わっていただきたい。なお、シナリオを進めて星がふたつ以上になるとルートが固定され、他の貴族やVIPとはそれ以降の進展が一切なくなる。中盤くらいでサクッと固定されがちなので「ああっ、あの人ともっと仲良くしようと思っていたのに!」などということがないよう、くれぐれも注意されたい。


純粋に応援してくれる人、何かをたくらんでいる人……さまざまな貴族との関わり合いでストーリーが進んでいく



■ 剣闘士バンク ~他のプレーヤーが作成した剣闘士が自分のPSPに登場!~

 「剣闘士バンク」は、ゲーム内メニュー「バトルアリーナ」から利用可能。インターネット接続環境があれば、自分が作った剣闘士データをアップロードしたり、他のプレーヤーやメーカーが作成した剣闘士データをダウンロードしてゲーム内に取り込むことができる。データはテキスト情報のみで画像がないのが残念。今のところは、実際にダウンロードするか、武具の固有名詞などから脳内でおおまかな外観を組み立ててみるしかない。

 使い方は簡単で、アップロードしたいときは、エクスポートしたデータをセーブして「剣闘士バンク」に接続。あとはそのままアップロードすればいい。ダウンロードは、検索メニューから欲しいデータを選んでダウンロードし、インポートデータをセーブ。エキシビジョンまたはネットワーク対戦限定で使えるほか、一定の確率でメインモードにNPCキャラクタとして登場する。

 まだ発売から時間が経っていないせいか(1月20日現在)登録データはそれほど多くない。だが、既に相当やりこんだ剣闘士データがアップロードされており、武具のパラメータを見るだけでも「これはまた随分と熱心に……」と素直に感心してしまう。念のため注意しておくと、これら「育ちきった」剣闘士データは、最低でも1度ゲームをクリアしてからインポートしても遅くない。慣れないうちに出てこられると非常に手強いので、腕に自信がない人は、剣闘士自身を含め能力パラメータをよく吟味したほうがいいだろう。


他プレーヤーの剣闘士データを取り込むことが可能。ただ漠然と強いのではなく、テーマなど“フック”が伝わるとダウンロードしてもらえやすくなるかも



■ 何度も繰り返しプレイしたくなる中毒性 ~プロ奴隷は何度生まれ変わってもプロ奴隷!?~

 本作の魅力は、プレーヤーごとに“さまざまなキャラクター”が生まれることだと思う。外観はもちろん、武具のチョイスひとつとっても十人十色。性能、見た目、何を基準に選んだとしても、通常プレイする範疇であれば、完全に煮詰まることは滅多にないはず。標準の難易度は日数制限がないため、コツコツと時間をかければ誰でも強いキャラクターが育てられる。腕に自信がある人は、クリア後に選択できる高難易度「困難」、「悪夢」に挑戦するのもいい。

 さらにいえば「オリジナルキャラクタに、好きなもの(武具)を持たせて、好きなように動かして戦う」本作のツボはこれに尽きる。他のレビューでも何度か同じフレーズを使っているが「よくできたアクションゲーム」は、プレーヤー自身の上達が程よく自覚できるものだ。武具の成長で補えるのは一定レベルまでで、そこを超えると確実に「基本がなってないとダメ」という領域に気づく。まず、この“気づき”があるかどうかがポイントで、制作者のセンスが悪いと、いわゆる「しまりがない」アクションゲームに成り下がってしまう。

 その点、本作は色々なところにプレイスキルの向上がうかがえるポイントが設定されている。まず、大前提として存在する「観客の評価メーター」。勝つだけで精一杯だった頃は、とても観客の評価なんて気にしていられるレベルではないが、慣れてくると「どうやれば試合が盛り上がる=高い報酬が得られるようになるんだろう?」と考え出す。考えて身につけたスキルは、確実にプレーヤーの“血肉”になる。“どう勝つか”という領域に自ら足を踏み入れた時点で、プレーヤーのアクションスキルは確実に右肩上がりを目指す。一定の到達点として「ゲームクリア」があるが、周回プレイ用の高難易度「困難」、そのさらに先に「悪夢」が待ち構えている(それすらも物足りないという真の猛者は、それこそアドホック・パーティや街中でライバル剣闘士ならぬプレーヤーを探すという手もある)。

 常に向上心を刺激するゲームシステムにくわえ、自身のスキルアップや上達が実感できる良好な操作性。ふと気づけば、指先に「レッツ・パーリィ!」ならぬパリーが染み込み、突けよ刺せよと雄たけびをあげているであろうゲーム内のローマ市民たちを熱狂の渦へと巻き込んでいく。そして、1度エンディングを迎えても「ふぅ……さて“続き”をやるか」と、再びプロ奴隷へと輪廻転生。はたして筆者たちは、何度「マゲリウス」に買い取られれば気が済むのだろうか。さすがにすべてをやりつくせば飽きがくるのだろうが……マッタリとプロ奴隷ライフを満喫している筆者には、まだまだ遠い先の事のように思えてならない。



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(2010年1月29日)

[Reported by 豊臣和孝]