今やお茶の間の定番コンテンツとして人気を博している海外のシリーズドラマ。登場人物たちの熱演や複雑な人間関係、張り巡らされた物語の伏線など、日本のドラマにはない魅力を放っている。ここでご紹介する「AGAIN FBI超心理捜査官」は、そんな海外ドラマのテイストを散りばめた本格派サスペンス・アドベンチャーだ。
本作はFBIの捜査官たちがチームワークを駆使して謎に包まれた連続殺人事件に立ち向かうという筋書きになっているが、注目すべき点として“特殊能力を使って事件を解決に導く”というギミックがある。「パストヴィジョン」と呼ばれる“事件現場の過去と現在が同時に見通せる特殊能力”によって、時間を超えたふたつの事件の謎を解いていくのだ。特殊能力をギミックに取り入れた海外ドラマには、「デッドゾーン」や「トゥルー・コーリング」があるが、本作もそれらと同様に予想も付かないトリッキーな展開が楽しめるようになっている。さっそく本作の魅力についてお伝えしていこう。
■ 「過去」と「今」に秘められた謎を解き、真犯人を追え!
物語は、新聞社クロックフォード・タイムズに送られてきた1通の手紙から始まる。アメリカ合衆国連邦捜査局――FBIに所属する、特殊犯罪捜査官のジョナサン・ウェーバー(通称ジェイ)。彼を名指しして送られてきた手紙の差出人は、19年前に起こった連続殺人事件の犯人とされる「プロヴィデンス」を名乗っていた。5人の被害者を出したその事件は迷宮入りしており、殺害現場に毎回1ドル紙幣の切れ端「プロヴィデンスの目」が残されていることから、「プロヴィデンス連続殺人事件」と呼ばれていた。
差出人の正体を探るべく、かつての殺害現場に向かったジェイ。そこで「プロヴィデンスの目」を見つけ手にしたジェイは、事件現場の現在と過去を同時に見通せるという不思議な能力に目覚めてしまう。時を同じくして、19年前の「プロヴィデンス連続殺人事件」に酷似した殺人事件が発生。プロヴィデンス本人による新たな犯行なのか、それともプロヴィデンスを真似た模倣犯によるものなのか。ジェイは特殊能力「パストヴィジョン」を使って事件の真相に迫る……。
以上が本作のプロローグ。プレーヤーは主人公ジェイとなり、現在進行中の「プロヴィデンス連続殺人事件」を阻止するために、ひとまず19年前に起きた連続殺人事件の捜査にあたることになる。本作はニンテンドーDSを縦にして文庫本を読むようにプレイするスタイルで、物語は全11章からなっている。ゲームは「捜査パート」と「パストヴィジョンパート」の2つに分かれており、これをくり返すことで捜査を進めていく。
ジェイ宛に届けられた手紙の差出人は、19年前の連続殺人事件の犯人とされる人物。この1通の手紙をきっかけにかつてない難事件に挑む | 19年前の事件は複雑さを極め、迷宮入りとなっていた | プロヴィデンスを語る新旧ふたつの事件に挑む。特殊能力で過去の事件の真相に近づくにつれて、ふたつの事件がひとつにつながっていく…… |
■ 有力な情報は足で稼ぐ。捜査パートで犯人の足跡をたどれ
捜査パートは右画面に表示される各種行動をタッチして過去の事件の関係者に聞き込みをしたり、現在起きている連続殺人事件を追うクロックフォード市警のレーン警部たちと情報を共有したりしながら、有力な証拠や証言を集めていくことが目的だ。
右画面に表示される行動は、「所持品」、「会話ログ」、「移動」、「ヴィジョン」、「セーブ」、「電話」、「会話」の7つ。聞き込みを行なううえでとりわけ重要なのが、「所持品」と「会話」のふたつ。前者は捜査の過程で入手したアイテムを関係者に見せることで情報を聞き出すことができ、後者は相手に質問することで当時の状況を知る情報を聞き出せるという仕組みだ。
しかし、これらの有力な手がかりを得るためには、何度も同じ現場や人物の居場所に足を運ぶ必要がある。「現場百回」、「捜査は足で稼ぐ」という刑事ドラマで知られる有名なセリフがあるが、本作の捜査パートもまさにこれ。行なったり来たりを続ける作業的なゲーム展開は好き嫌いが分かれるかもしれない。
ただ、聞き込みを行なう際に左画面(左利き設定の場合は左右逆)には、会話する相手の人物が表示されるようになっており、彼らのリアクションがいちいち大げさなのが目を惹く。また、日本の刑事ドラマではシチュエーションを長いセリフで説明するケースが多いが、本作はセリフまわしも海外ドラマよろしく矢継ぎ早。テンポいい会話のキャッチボールが繰り広げられるため、飽きることなく聞き込みを続けられるという印象だ。
■ 事件に隠された真実を暴くパストヴィジョンパート
捜査パートで過去の事件を再現できるだけの情報を揃えたら、いよいよパストヴィジョンモードの出番。パストヴィジョンを発動するには、メニューから「ヴィジョン」を選択すればいい(自動的にパストヴィジョンパートに移る場面もある)。発動中は右画面に現在の、左画面に過去の事件現場の風景が映し出され、それぞれを見比べながら相違点を探し出していく。
パストヴィジョンモードの発動中は事件現場が3D画面で表示され、十字ボタンを使って現場内を歩き回りながら、タッチペンをスライドさせることで視点変更が可能。これで過去と現在の風景の違いや疑問が残る箇所を検証していこう。「ここだ!」と思うあやしい箇所を発見したら、すかさずタッチ。なお、タッチのやり方は2種類あり、一瞬だけタッチするとその箇所に関する情報が表示され、長くタッチし続けることでパストヴィジョンパートの肝である「精神集中」が行なえるのだ。
精神集中を行なった箇所に謎が隠されていた場合、「予感フラッシュ」と呼ばれる画面が白く光る演出が入る。すると左画面に「ヴィジョンパネル」が出現し、予感フラッシュで手に入れた手がかりが記録される。ヴィジョンパネルはいくつかのピースで成り立っており、このピースをすべて埋めることで過去の事件の疑問点が浮かび上がるようになっている。
ただし、注意したいのは精神集中には「精神力ゲージ」が必要ということ。謎解きに無関係な場所で精神集中を行なって精神力ゲージがゼロになると、その場でゲームオーバーになってしまうからだ。過去と現在で風景を見比べて「ここだ!」と精神集中を行なってみたものの、その違いが単純に建物の経年劣化などによるケースもあるので、事前に捜査パートで手に入れた情報を鑑みて検証する必要がある。精神力ゲージを無駄遣いできないゆえ、「プレーヤー自身がじっくり検証してから謎解きを行なうおもしろさ」が存分に味わえるのが本作の魅力といえよう。
パストヴィジョンから精神集中、予感フラッシュまでの一連の流れは始めこそ戸惑ったが、間違い探しに似たこのシステム、プレイを続けるうちにどんどんのめり込んでいった。自分の直感だけを信じるときもあれば、捜査情報を統合して目星をつけ、精神集中を行なう場面もある。自分の予測がピタリとハマったときの快感は、何ともやみつきになりそうだ。
■ ヴィジョンパネルのカケラをすべて入手したら、いよいよ過去の再現へ!
パストヴィジョンで手がかりを集めてヴィジョンパネルをすべて埋めたあとは、いよいよ現在の事件現場で過去の再現に移り、さらなる真実を探ることになる。19年前と今では当然ながら状況が大きく異なっている。そのため、左画面に映し出された過去の現場を参考に、アイテムやタッチペンを使って過去の状況を再現していこう。事件現場の再現に成功すると、過去の映像が「ヴィジョン」として映し出される。これにより、過去に起こった出来事が判明するのだ。
それと同時に、ヴィジョンパネルに記録されていた手がかりが、このヴィジョンの映像へと変化する。映像をすべて集めたら、いよいよ最後の仕上げ。右画面にヴィジョンパネルが映し出されるので、そこにあるヴィジョンを時系列順にタッチしていこう。すべてのヴィジョンをタッチし終わると、さらに鮮明な映像とともに過去が見えてくる。ついに事件の真実へと近づく瞬間だ。
■ 過去の目に映し出される真実……果たして真相は!?
パストヴィジョンによる過去と現在の事件現場の検証を終えると、過去の出来事がはっきりとした形で表示される。被害者や殺害時の状況、そして犯人の正体を暴く瞬間だ。もちろん、ひとつの事件を解決したからといってのんびりしている暇はない。プロヴィデンスを模倣した連続殺人事件の脅威は、今も市民を脅かしている。すぐさま次の殺人事件の捜査に取りかかり、すべての謎を解明していこう。
本格的な推理ドラマに加え、特殊能力というギミックを使ったシナリオとシステムが非常に魅力的な本作。実写映像を取り込んだ海外俳優たちの演技もツボを押さえたもので、ゲームをプレイしていないときもふと事件の謎について考えたりと、ここ数日はまさに海外ドラマに熱中しているときのようだった。ニンテンドーDSの小さな画面の中で、奥行きのある練り込まれたドラマを楽しめるのは、まさに推理小説の進化形とも言える完成度だ。
話を追ううちに、ついつい「あとちょっとだけ……」と続きが気になってしまい、時間を忘れてプレイしたこともしばしば。海外ドラマ三昧もいいが、ジェイとともにプロヴィデンス連続殺人事件の謎に挑んでみるのはいかがだろうか。
(C)TECMO,LTD.2009
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□「AGAIN FBI超心理捜査官」のホームページ
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□シングのホームページ
http://www.cing.co.jp/
(2010年 1月 12日)