ゲームヤロウは、オンラインメカニックアクション「鉄鬼」において、オープンβテストに相当する「機動演習」を12月17日より実施している。12月26日には新モード「ボスモード」を実装、巨大ボスを中心とした攻防が楽しめる。
「鉄鬼」は最大16対16の対戦が楽しめるオンラインロボット対戦FPSだ。近未来、プレーヤーは“鉄鬼”と呼ばれる新合金で作られたロボットに乗り込み、他プレーヤーとチームを組んで戦っていく。ロボットならではの起動音、強力な火器の応酬、ブースターを使った軽快な操作性、個性豊かなロボットとメカファンにはたまらない演出と、魅力的なゲーム性を持った作品である。今回はファーストインプレッションとして、「鉄鬼」の魅力を紹介したい。
■ ロボットを操り戦う独得のオンライン対戦TPS。自分の役割を見つけ、こなしていく楽しさが魅力
「鉄鬼」は新合金で作られたロボット兵器が活躍する。カジュアルなゲーム性とつぼを押さえたメカ描写が好感触だ |
巨大ボス襲来。ボス中心に戦場が移動していくのが面白い |
「鉄鬼」の舞台は21世紀、そう遠くない未来だ。この時代、超大国「オーストロニカ」は友好国や関係国を説き伏せ統合していった結果、世界全体の核兵器廃止を実現した。しかしその後オーストロニカは自国と対立する国への侵略戦争を開始した。
世界はオーストロニカと同盟国の勢力とそれに対抗する勢力の2つにわかれた。さらにそこに月の採掘基地からの資源をバックボーンに独立を宣言した第3勢力「グルニティア」が現われる。グルニティアは月で採掘された金属から“鉄鬼”と呼ばれる合金を作り出し、その金属によって作り出した5~7メートルものロボットを完成させた。このロボットはこれまでの軍事バランスを一変させた。
しかしロボットの開発の中心人物であった科学者がオーストロニカに亡命、オーストロニカもまたロボット兵器を開発するノウハウを手に入れる。軍事的優位を失うことを恐れたグルニティアは反オーストロニカ勢力と手を結ぶ。こうして両陣営がロボット兵器を繰り出すという新しい戦場が生まれた。プレーヤーはこの新合金で作られたロボット兵器を操るパイロットとして、戦場へ飛び込んでいくのだ。
「鉄鬼」は最大16vs16で多彩なロボット兵器を操り対戦を行なうTPS(Third Person Shooting)だ。狙撃型や接近戦型、修理型、地雷を設置する工兵型などロボットは8種類登場する。偵察型が偵察ポッドを敵陣に送り込み、陣地を探査、装甲の厚い機体を前に出し、接近戦型は飛び込む隙をうかがい、狙撃型は援護する、というような機体特性に合わせた戦い方が楽しめる作品だ。
特に機体を修理できる「VELOX」はチームの要として重要な存在だ。VELOXを操るプレーヤーがどこにいるか把握しておけば戦場にいられる時間は長くなる。VELOXがいることで、自軍の「陣地」が意識できる。どこで攻め、どこで引くか、VELOXを意識して戦うことになるだろう。もちろんただ陣地を作ってこもっているだけでは勝てない。敵の攻撃にどう対応していくか、「鉄鬼」は敵の戦い方に合わせて随時機体を変えながら戦っていくという柔軟性が求められる作品となっている。
ゲームの対戦モードは全てチーム戦である。1度機体を破壊されたら復活できない「サドンデスモード」。何度でも復活でき、一定時間内に決められた撃破数に達した方が勝ちの「デスマッチモード」。片方が特定の占領ポイントを一定時間占拠し、もう片方はそれを妨害する「占領モード」。片方が爆弾を設置、もう片方がそれを阻止するという「爆破ミッション」。そして12月28日に追加された新たなゲームモード「ボスモード」がある。
ボスモードはプレーヤーが乗るロボットの数倍の巨大ボスロボットが登場する。巨大ボスはゆっくりと敵陣地に向かって前進していく。プレーヤーはボスと共に前進する攻撃側と、ボスを撃退する防御側にわかれて戦う。防御側はボスを攻撃するだけでなく、攻撃側のプレーヤーにも注意しなくてはいけない。常にボスの周りでプレーヤーが激しく戦い合う。他のモードと違い、「主戦場が移動する」という新感覚のモードだ。
韓国でのオンライン対戦ゲームはテロリストと特殊部隊が現用兵器で戦うという構図の作品が多いが、「鉄鬼」は個性豊かなロボット達が様々なルールで戦うという、これまでの韓国産対戦ゲームになかった新しい流れをもたらす作品だと感じた。機械音を立てながらメカ兵器が戦うという世界観と共に、良好な操作性、スピード感も面白い。ひと味違う対戦型ゲームをやってみたい、という人にオススメしたい作品だ。
■ 役割を先鋭化した、個性豊かな8種類のロボット。性能をどう引き出すかが戦いの鍵
ブースターで一気に加速。オールラウンドで戦えるVANGUARD |
狙撃用の機体BLITZ。マップを研究することでより有利に戦える |
修理機体VELOX。かわいらしい外見も面白い。チームを支える縁の下の力持ちだ |
「鉄鬼」では8種類の機体が登場する。本作の場合、プレーヤーは最初は「VANGUARD」1体の状態でスタートする。VANGUARDで戦って経験値を貯めることで徐々に使用機体が増えていく、というゲームデザインだ。
増える機体の順番も決まっており、VANGUARDの次はダッシュで敵に近付き接近攻撃を加える「DUAL」、4本のカニのような足で移動し狙撃を行なう「BLITZ」、そして仲間を回復できる「VELOX」、さらに工兵型の「IMPULS」、重装型の「VINCERE」、索敵・観測型の「FORBIDDEN」、そして移動できなくなる代わりに強力な“砲撃モード”に変形できる「RAMPART」となる。
いかんせん機体が1体のみであるため、FPSビギナーの筆者には、新しい機体を獲得するまでの経験値稼ぎがひどく冗長に感じられた。ある程度順序を踏むにしても、最初から複数の選択肢を与えて欲しかったところだ。「鉄鬼」は、基本プレイ無料のアイテム課金制を予定している。課金アイテムやゲーム内ポイントを使って望んだ機体がすぐ使えるようなシステムに期待したいところである。
今回筆者はVANGUARD、DUAL、BLITZ、VELOXの4機体を体験することができた。VANGUARDはダッシュによる素早い移動ができ、機体両側についた機銃で攻撃を加える機体だ。中距離から近距離までカバーできるオーソドックスで扱いやすい機体である。機銃の攻撃力は高くないが、安定してダメージが与えられる。敵味方が近距離で争っているときに機銃をばらまき支援するという戦い方も可能で、どんな状況でも戦える人気の高い機体だ。
DUALは火炎放射器や回転ノコギリで戦う接近戦の機体だ。機体を地面にこすりつけるように敵に肉迫し、攻撃を浴びせる。耐久力は他の機体と比べて低いが、攻撃をしないときは武装をしまい前面にシールドのように掲げることができ防御力を上げることができる。短時間で急加速できるブースターも持っており、敵の意表をつき接近戦で相手を倒すことができる機体だ。
VANGUARDに比べるとDUALの接近時の攻撃力は段違いで、狙撃に夢中なBLITZなどの背後に忍び寄ることであっという間に倒せる。敵のフィールド奥に侵入し、VELOXに修理してもらうために待っている敵などを見つけた場合は連続で敵を倒すこともできた。DUALは筆者がいちばん気に入っている機体だが、地雷や跳ね返る爆弾をばらまく工兵型のIMPULSに対してはどうも相性が悪いようで、突破口を見つけるべく試行錯誤しているところだ。
BLITZは移動速度が遅いが長距離射撃のできる機体。他ゲームでスナイパーが好き、というプレーヤーにぴったりの機体だ。マップを覚えれば自ずと狙撃ポイントがわかってくる。柱と柱の間など一瞬顔を出す敵を狙撃したときの爽快感がたまらない。ボスモードではボスに連続してダメージを与える機体としても重宝されている。
VELOXは他の機体の修理が可能な機体だ。彼等がいるからこそ他の機体は長時間戦い続けることができる。VELOXの主武装は敵が近付くと攻撃する砲台の設置で攻撃力は心許ない。機体も四角くて小さなボディに短い足がついているかわいらしいデザインだ。他の機体では敵を撃破すると経験値がもらえるが、VELOXの場合は修理するとポイントがもらえる。このため、長時間戦い続ける「デスマッチモード」が効率が良く感じた。
戦場ではVELOXの周りに修理を望む機体が集まってくる。彼等に対して修理していくのはこれまでの機体とは全く違う感触で面白かった。自分の機体は修理できないので、他のVELOXに直してもらう。チャットなどでコミュニケーションを取ったわけではないが、他のVELOXのプレーヤーとは連帯感が感じられたのが楽しかった。VELOXはまた1度倒されると復活できない「サドンデスモード」でも重要な存在だ。しかしVELOXは戦力的には心許ないのでチーム内にVELOXが多すぎても戦力が下がってしまう。チーム全体を考えてプレイしたい機体だ。
■ プレーヤー達の成長に合わせて変化していく戦場。今後は各機体の特性をどこまで深められるかに期待
機体のカスタマイズ。現在のところ選べるアイテムは少ない。ここにどこまで幅を持たせられるかも今後注目したい |
再出現時の機体選択。チームバランスも考えたいところだ |
「鉄鬼」は、他のオンラインFPSと同様に、リーダーがルームを作成し、参加者を集めるという形で対戦が行なわれている。現在の「鉄鬼」では「経験値を早く貯めて使える機体を増やす」というのが繰り返しプレイを促す大きなモチベーションとなっている。このため最も短時間で勝負がつく「サドンデスモード」が人気だ。
他のゲームでは体験できない「ボスモード」も人気で、サドンデスモードとボスモードのルームでひしめき合っているというのが「鉄鬼」の現状だ。FPSの対戦ルールとしてはポピュラーな「デスマッチモード」は比較的少なめで、「占領モード」や「爆破ミッション」の人気はもうすこし、という感じだった。
筆者自身もとにかく使用機体を増やさないと話にならないということもあってサドンデスモードを中心でプレイしてみた。プレーヤー達の流れはある程度決まっており、そこからどう戦っていくか、自分の機体の能力をどう引き出していくかが面白い。VELOXを使うプレーヤーは陣地として1カ所に留まるプレーヤーも多いが、中には攻撃機体と一緒に前線に向かうプレーヤーもいて面白い。DUALは攻撃力は高いが敵に距離を取られるとどうにもできないので特にサドンデスでは戦い方が難しいと感じた。
日数がたつにつれてコアプレーヤーはどんどん経験値を貯めて機体を増やしていっている。現在はIMPULSを使うプレーヤーが多くなっているようだ。IMPULSは地雷設置と、壁を作ることのできる能力、そして壁にバウンドして一定時間で爆発するという特殊な爆弾を発射できる。IMPULSは直接機体を敵に晒さずに攻撃できるため、敵味方がひたすら爆弾を投げ入れるという風景が多く見られた。
また重装甲の「VINCERE」、索敵・観測型の「FORBIDDEN」を使うプレーヤーも出始めている。VINCEREは1対1で勝つことのできない強い機体で、IMPULSばかりの膠着しがちな戦線を破りはじめている。FORBIDDENは敵の位置を味方に知らせる心強い機能を持っているが、まだ使っているプレーヤーが少ないのと偵察ポッドを積極的につぶすプレーヤーも多く、プレーヤーの連携が生きてくるのはこれからという印象だ。一部のプレーヤーはさらに上の「RAMPART」まで使えるようになっている。
現在の「鉄鬼」はコアプレーヤー達が次々と新機体をアンロックしている最中なので「とりあえず新しい機体を使う」という人も多いようで、“8種の機体が入り乱れる「鉄鬼」の戦場はどんなものか”というところはまだ見えていない。
各機体の武器のバリエーションももう少しだと感じた。現在の「鉄鬼」に登場する各機体の武器は2種類ほどしか用意されていない。プレーヤーは無制限で使える基本装備の他、ゲーム内のポイントを消費して数日使える武器をレンタルできるがバリエーションが少ないため「自分のプレイスタイル」を主張しにくい。使える機体が増えるのはうれしいが、やはり自分の得意とする戦い方、理想とする戦い方をより強化していくような方向性が欲しいと感じた。今後のアップデート、課金アイテムでより機体をカスタマイズし、自分の戦い方を模索していく方向性を望みたい。
ボスモードは「鉄鬼」の“これから”に期待させられるモードだった。どのルートで攻め、どのルートでボスにダメージを与えるかをプレーヤー達は攻略しつつある。「とにかく弾数は少ないがダメージのでかいセカンダリウェポンはボスに当てろ」などプレーヤーなりの攻略ができているのが面白い。一部のプレーヤーはボスモードをかなり研究しているらしく、組んでいるチームによって如実にボスの耐久力の減りの速さが違うのだ。
筆者はまだこのバランスがわからず戦場を右往左往していることが多い。ボスモードは巨大ロボットの進路に合わせて戦場が刻々と変化していくという感触が新鮮で楽しかった。今後もさらなるユニークな戦場、対戦ルールに期待したいところだ。
今後の予定として「鉄鬼」は、基本プレイ無料・アイテム課金制の正式サービスの開始、プレーヤーとCPUで戦えるキャンペーンモードの実装、そして有名メカデザイナーによる新機体の追加をアナウンスしている。特に各機体の役割を活かしプレーヤーが協力して敵を倒すというキャンペーンモードに興味を惹かれる。開発者がどこまでユニークな敵とそれを制御するAIを作る事ができるか注目したい。
「鉄鬼」はメカが好き、というプレーヤーだけでなく、ユニークな対戦ゲームが楽しみたいプレーヤー、そしてオンライン対戦ははじめてという人にもオススメできる作品だ。何よりもオリジナリティを感じさせる題材に果敢にチャレンジした開発者達を応援したいと思う。まだまだ荒削りな部分もあり、真の評価はまず正式サービス時のバランスを見てからというところもあるが、多くの人に触れてもらいたい作品だ。
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□ゲームヤロウのホームページ
http://www.gameyarou.jp/
□「鉄鬼」のページ
http://www.tekki-online.jp/
(2010年 1月 6日)