★モバイルゲームレビュー★
いつでもどこでも、侵略者から地球を防衛せよ! ハイクオリティな3Dアクションが携帯電話に登場 「地球防衛軍3 Mobile」 |
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“地球防衛軍”という言葉には、なぜか郷愁とロマンを感じてしまう。胸をときめかせてテレビ画面の中の特撮ヒーローを応援していた幼き日を思い出すからなのか。さまざまな特撮作品に登場し、ヒーローと共に地球外生命体と戦ってきた“地球防衛軍”という組織は、子供の憧れの象徴なのかもしれない。
プレイステーション 2用として発売されたSIMPLE2000シリーズの「THE 地球防衛軍」は、地球防衛軍そのものを主題にして大ヒットを記録した3Dアクションシューティングだ。Xbox 360用「地球防衛軍3」(以下、Xbox 360版)も、動画投稿サイトで公開されたプレイ動画が人気になるなどファンが多い。そして今回、Xbox 360版をベースにしたモバイルゲームが登場した。東京ゲームショウ2008に出展されてからおよそ1年後のリリースとなり、首を長くして待っていた人も多いのではないだろうか。
特撮作品を大いに意識した演出や設定、巨大な生物や建造物を次々に破壊できる爽快感が魅力のゲームを、どのように携帯電話の中に収めたのか。モバイルゲームの極限に挑戦したと言っても過言ではない、本作の面白さをお伝えしたいと思う。
3Dフィールドを駆け巡り、ド派手に撃って撃って撃ちまくれ! |
■ 巨大生物退治の使命を受けて、EDF小隊長「ストーム1」が出撃!
ミッション選択画面。EDFからの報告が記されており、気分を盛り上げる |
「地球防衛軍3 Mobile」では、近未来の地球を舞台に、宇宙生物との激しい戦いが描かれる。2013年、突如我々人類の前に姿を現わした異星生命体「フォーリナー」に対抗すべく、2015年に結成された連合地球軍「EDF(Earth Defense Force)」。EDF隊員は最新鋭の武器を使いこなす戦闘のエキスパートで、バックアップするスタッフも含め、世界中から幅広く集められた優秀な人材ばかりだ。そして2017年、フォーリナーの大船団が地球に襲来、同時に巨大な昆虫型の生物が地上に出現し始めた。プレーヤーはEDFストームチームの隊長「ストーム1」となり、この未曾有の危機に立ち向かう。
「3」とナンバリングされているが、元々Xbox 360版がシリーズ第1作「THE 地球防衛軍」のリファイン的作品であるため、本作のストーリーを理解する上で過去の作品を知らなくても問題ない形になっている。
本作の魅力の1つとして、どこか懐かしさを感じさせる特撮番組のような雰囲気がある。EDFの設定やフォーリナーのデザイン、ストーリーの展開などは、狙ってB級映画的演出がなされている。宇宙からやってきた侵略者とのバトルという、設定で悩むことのない単純明快でわかりやすい物語。子供のころに見たヒーロー物の主人公になったつもりで、無心になって迫りくる恐ろしい敵と戦えるよう、舞台が整えられている。
上空には巨大な母船が。子供の心をいつまでも持った大人の琴線に触れてくるところが憎い | 巨大な昆虫型モンスターが大量に迫りくる光景は、何歳になっても恐ろしく感じる | 画面下に表示されているのが、主人公の現在のステータス |
■ 全10ミッションを5つの難易度でプレイ可能。モバイル向けのアレンジも
ゲームシステムは、3Dグラフィックスを採用した3人称視点で、2つの武器を持ち替えながら照準に敵を捉えて攻撃を加えていく、オーソドックスなサードパーソンシューティング(TPS)だ。フォーリナーが送り込む巨大生物やUFOといった相手に、各種の武器で戦いを挑む。
本作のメインとなる「MISSIONモード」は、出現する敵をすべて倒せばミッションクリア。難易度を問わずクリアすれば次のミッションへ進めるようになる。ミッションの数は全部で10。難易度は、初期の状態で「EASY」、「NORMAL」、「HARD」、「HARDEST」、「INFERNO」の5つから自由に選択できる。
高い難易度のミッションをクリアするのに重要となるのが、主人公の成長要素。主人公はミッションをプレイすることで「アーマー値」と「武器ランク」が成長する。アーマー値は主人公の体力を表わしており、敵を倒したときにランダムでドロップする「アーマー」を拾うことで最大値が増加する。
「銃器取扱いRANK」、「重火器取扱いRANK」は、それぞれ主人公が扱える武器のランクのことで、レベルアップするとより強力な武器が使えるようになる。武器で攻撃を当てた回数とミッション難易度に基づいて、ミッションクリア時に加算される武器経験値が一定数以上になるとレベルアップする。
Xbox 360版は「武器アイテム」を拾うことでランダムに武器を取得するシステムだったが、本作では偶然に頼る要素が極めて少なくなったため、プレイするたびに少しずつキャラクターが強くなっていくのが実感できる。順番に「EASY」からクリアして、地道に主人公の強化を行なうのが攻略のポイントだ。
難易度選択画面。「INFERNO」は超上級の難易度で、最初はまったく歯が立たない | 敵がドロップする「武器アイテム」をゲットすると、武器経験点にボーナスが加算される | 主人公の成長はミッションを達成したときに行なわれる。失敗の場合は成長しないので注意しよう |
敵がドロップするアイテムは、「アーマー」、「武器」、「体力回復アイテム(大・小)」の4種。体力回復アイテムは成長には関係ないが、ミッションクリアには大切なアイテムだ | 画面右上にあるのがレーダー。主人公を中心に敵とアイテムの位置を示す。赤い点が敵、緑がアイテム。真ん中にあるバーは再装填にかかる時間を表わしている |
横画面スタイルで遊ぶ本作は、操作方法を3タイプから選べる。「ノーマル」は上下の方向キーで前進・後退、左右で視点を移動させる方式。数字キーで左右移動や武器の切り替え、緊急回避などを操作する。移動と照準が1つになっているので、アクションシューティングに不慣れなユーザーには適しているだろう。ただし遠くにいる敵や、上空の敵を狙うのは難しいという欠点もある。
「テクニカルA」は方向キーで各方向への移動、数字キーで照準の移動や射撃を行ない、一般的なTPSに近い感覚で操作できる。「テクニカルB」は方向キーで照準し数字キーで移動する、「テクニカルA」の逆パターン。慣れてきたら、照準を自由に動かせる「テクニカル」の方が戦いの幅が広がるので、自分に適した操作方法を見つけるといいだろう。操作方法はいつでも自由に変更できるので、普段は「ノーマル」、特定のシーンでは「テクニカル」と使い分けるのもありだ。
限られたボタンをフル活用し、複雑なTPSの操作を行なえるように配慮されていると感じた。ただしプレイ中、数字キーは操作する時に誤って隣のキーが押されてしまうことが度々あった。特に自分で気が付かないうちに武器を切り替えていたのには、何度も困らされた。間違えてキーを押さないように、若干の注意と慣れが求められる。
Xbox 360版と大きく違うのは、前述の武器を獲得する方法以外に、味方と乗り物が登場しない点。集団での戦闘や、戦車やヘリなどの搭乗兵器で活躍できないのは残念かもしれないが、「侵略者と単身で戦う勇敢な主人公」という面がかえってクローズアップされ、本作ならではの緊張感や悲壮感が生まれているように感じる。
なおEDFの隊員たちは画面には登場しないが、戦闘中の通信は画面上部にテロップで挿入される。シリーズ経験者にはおなじみの緊迫したやりとりが、さらにゲームを盛り上げてくれる。
熱い指示を受けた時は、自分も思わず“Sir! Yes sir!”と大きな声で返答したくなる。時には隊員たちの泣きごとも聞こえてくる。人間味を感じて、むしろ好感を抱く |
■ 魅力的な武器が多数登場。ミッションに適した武器の選択がポイント
主人公は「銃器取扱いRANK」と「重火器取扱いRANK」に応じて、所持している武器の中から2つを選んでミッションに挑む。組み合わせは銃器1つと重火器1つでも、重火器2つでも構わない。さまざまな性能を持つ武器は全部で120種類以上用意されており、「アサルトライフル」、「スナイパーライフル」、「ミサイル」などのタイプに分類される。
タイプが違うと、攻撃力、装弾数、攻撃範囲など性能が大きく変わるため、ミッション攻略においては武器の選択が重要なポイントとなる。武器の残弾がなくなっても、一定時間経つと自動的に再装填されるため弾切れは起こさないが、再装填の時間が生死を分けることもあるので、残弾数は常に意識しておこう。
■ ビルの破壊や巨大生物の群れを再現。豪快かつ爽快なシリーズの魅力が携帯電話に!
3Dグラフィックスのビル群は、かなり細かく描かれており、街中には信号機やガードレール、電線、街路樹までもきちんと設置されている。モバイルゲームとは思えないほどの描画に驚かされた。しかもXbox 360版と同じように、すべての建造物がロケットランチャーなど重火器の攻撃で破壊可能で、ガラガラとビルが崩れていく様子も再現されている。建物を思う存分破壊できるのはXbox 360版の大きな魅力だったが、まさかここまで携帯アプリでできるとは想像していなかった。
ついつい調子に乗って手当たり次第にビルを破壊。しかしこれでは主人公の方が迷惑なのかも…… | 撃墜された大型円盤が落下。下敷きになったビルがすべて潰れていく |
アリ型やクモ型の生物、巨大円盤などと激しい戦闘を繰り広げる主人公。巨大生物は1度に何匹も群がるように出現し、四方八方から攻撃を仕掛けてくる。主人公を巧みに操り、武器を使い分けて立ち向かわなければ、あっという間にやられてしまう。
巨大生物の大群もシリーズの象徴的なシーンだが、モバイルゲームの限界に挑戦するかのごとく、本作でも大量の敵が出現する。バリバリと武器を撃ちまくって、敵もビルも手当たり次第に吹き飛ばすという爽快感は、まさに「地球防衛軍」の楽しさそのままだ。しかし大量に敵が出てくると、どうしても処理落ちしてしまうのは残念だが仕方ない。
アリ型巨大生物は毒液を尾部から噴射し攻撃してくる。1番弱い敵だが、囲まれるとピンチに | クモの形をした巨大生物は、尾部から糸を発射してくる |
大型円盤が次々と巨大生物を投下してくる。なんとかして大型円盤を撃墜しなければ…… | 超巨大生物が次々とビルを踏みつぶしていく、地獄のような光景だ |
■ しっかりと「地球防衛軍」テイストを表現。高い技術力を見せ付けた力作
ネットワークを利用したステージごとのスコアランキングシステムがあり、全国のプレーヤーと競い合える機能も搭載。プレーヤーのモチベーションをあげるのに一役買っている。ただし東京ゲームショウ2008での発表時には検討中とされていた「iアプリオンライン」による通信プレイは実装されていない。
ゲームの要素は一部削られているものの、グラフィックスやBGM、ゲームプレイ中の雰囲気など、細部にいたるまで見事なまでにXbox 360版を再現している点は高く評価したい。他の据え置き型ゲーム機、携帯ゲーム機にも移植されていない作品が、携帯電話で遊べるという点は何ものにも代えがたい魅力を放っている。ハイスペックな携帯端末の性能を引き出して、不可能を可能にした制作者の技術力の賜物だろう。
しかし本作が魅力的な作品だけに、どうしても高望みしたくなる点がある。ひとつは操作性。素早い操作を要求されるゲームなのに、頻繁に押し間違いが発生するのがストレスだった。これは使用する端末にもよると思うが、キー配置を見直す、あるいは自分で変更できるようにして、可能な限りアプリ側で対処できるようにしてもらいたい。
もうひとつは、非常に長時間かかるミッションの存在だ。これは筆者の腕が原因であることも否定できないが、実際にクリアまで30分以上かかるミッションもあった。中断セーブなどの機能はないため、気軽に遊べるというモバイルゲームの利点が薄いように感じられた。
若干の不満点はあれど、システム面でもグラフィックスでも、本作のできばえは携帯アプリへの固定観念をひっくり返すほどだ。こんなにすごいものがモバイルでできてしまうことに驚愕せざるをえない。改めて、すごい時代になったものだなぁと思ってしまう。本作は今後登場するであろうハイスペック携帯端末に向けられたアプリの、1つの物差しになる可能性がある作品だ。
しかし本作の根底にあるのは、スカッと爽快な特撮ヒーローの活躍だ。あまり難しいことは考えず、子供のような素直な気持ちで楽しむのが正しいのかもしれない。いつでもどこでも、地球を守るヒーローになっていただきたい。
BGMの有無、操作方法や照準の速度などを設定できる | ランキング画面。全国のプレーヤーとスコアを競い合おう |
【プロモーションムービー】 |
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(2009年 8月 20日)