★DSゲームレビュー★

今回は学校で怪奇現象!?
完全新規のオリジナルストーリーが楽しめる

「涼宮ハルヒの直列」

  • ジャンル:非日常 直列アドベンチャー
  • 発売元:株式会社セガ
  • 開発元:株式会社セガ
  • 価格:通常版 5,040円
        超SOS団団員コレクション 8,190円
  • プラットフォーム:ニンテンドーDS
  • 発売日:発売中(5月28日発売)
  • プレイ人数:1人
  • CEROレーティング:A(全年齢対象)

 Wii「涼宮ハルヒの並列」に続き、DS「涼宮ハルヒの直列」が株式会社セガより5月28日に発売された。ストーリー上、Wii「涼宮ハルヒの並列」と関係がある本作だが、Wii「涼宮ハルヒの並列」をプレイしていなくても問題なく楽しめるし、プレイしていればより楽しめるといった内容になっている。



■ 探索パートと解決パート。異なる2つのゲームを融合させた意欲作

 用意されているEPISODEは5つ。EPISODEは探索パートと解決パートを繰り返して進めていく。

 探索パートはベーシックなテキストアドベンチャー方式。テキストを読みながら、時折出てくる選択肢を選んでいく。

 解決パートはキャラクターを動かしてステージに隠された特異点を発見し、実体化させて消去する。「海戦ゲーム」や「マインスイーパー」に似ているといえばわかりやすいだろうか。設定された制限時間以内にノルマ分の特異点を消去できればクリアだ。

 解決パートの制限時間は「涼宮ハルヒの意識を怪奇現象から逸らしている度合い」を示す「ハルヒメーター」により変化する。「ハルヒメーター」が「分散」に寄るほど制限時間が長くなり、難易度が下がる。また、探索パートでの行動によって得られるトピックによって、制限時間を延長させたり、特異点を消去するキャラクターの性能を向上させられる。

 シナリオは完全新規のオリジナル。Wii「涼宮ハルヒの並列」の少し前の物語が楽しめる。

 CVはアニメ版と同じ声優を起用。EPISODE冒頭など、重要な場面ではキャラクター達が喋ってくれる。

 アドベンチャーゲームには欠かせない既読スキップやテキスト一括表示などもしっかりサポートされている。

 操作は十字ボタン+ボタンと、タッチパネルの両方を場面によって使い分ける。探索パートではどちらの操作でも良いが、解決パートでは十字ボタン+ボタンとタッチペンの両方を使うことになる。

 EXTRAでは、シナリオ達成率、ルート一覧、グラフィックの閲覧などに加え、ミッションタイプの詰めチェスが遊べる。

ベーシックなテキストアドベンチャー形式の探索パートマインスイーパーのようなパズルの解決パート


■ 学校で起きる怪奇現象が題材のオリジナルストーリー

 夏合宿から帰ってしばらく後のこと。いつもの喫茶店に集まったSOS団の面々。相変わらず飲み物を奢らされるキョンの携帯に、谷口から連絡が入る。それは学校内で起きたという怪奇現象についての噂話だった。聞けば、怪奇現象とやらに遭遇したのは、コンピ(コンピューター)研の連中らしい。どうにも胡散臭い話に思わず「学校で怪奇現象ねぇ」と、呟いてしまったのが運のつき。「詳しく説明しなさい」と、ハルヒに詰め寄られることに。事情を聞いたハルヒは「明日の朝、泊まりの準備をして学校に集合! 遅刻したら死刑ね!」と言い放ち、さっさと帰ってしまう。かくして北高を舞台としたSOS団の怪奇現象調査が始まるのだった……。

 Wii「涼宮ハルヒの並列」に続き、本作も完全なオリジナルストーリー。ハルヒの意識を怪奇現象から逸らせつつ、キョンたちはハルヒに気付かれないように夏休みの学校で起こるという怪奇現象の正体を暴いていく。ハルヒシリーズらしく、今回もとんでもない展開が待っている。

学校には様々な怪奇現象の噂が広まっている。この怪奇現象の原因とは? そして帽子を被った謎の少女の正体とは?

涼宮ハルヒ。北高1年、SOS団(世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団)団長。「世界を思い通りに改変し、望んだとおりの出来事を発生させる」という力を持っているが、本人は気付いていないキョン。北高1年、SOS団団員その1。「キョン」と言うあだ名は妹が広めたもの。ごく普通の高校生だが、ハルヒの力に対する「鍵」として、他の団員には重要視されている長門有希。北高1年、SOS団団員その2。正体は情報統合思念体によって造られた、ハルヒの観察を目的とする対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース
朝比奈みくる。北高2年、SOS団団員その3。正体は未来から来たハルヒの監視係。しかし、まだ研修生以下の見習いレベル古泉一樹。北高1年、SOS団団員その4。正体は一種の超能力者であり、その集団である「機関」に所属するキョンの妹。小学5年生。兄であるキョンを「キョンくん」と呼ぶが、キョンとしては不本意

■ ハルヒの意識を怪奇現象から逸らしつつ調査する探索パート

 ベーシックなテキストアドベンチャー形式の探索パート。ハルヒに真相を悟られることなく、キョン、長門、みくる、古泉の4人で怪奇現象を秘密裏に解決しなければならない。

 探索パートでは単にテキストを読み進めるだけはない。前述の“涼宮ハルヒの意識を怪奇現象から逸らしている度合い”を示す「ハルヒメーター」に注意しながら選択肢を選んでいく必要がある。メーターが「集中」に寄るほどハルヒの意識が怪奇現象の解明に集中している状態を表わし、怪奇現象の解明に集中するほど、ハルヒが異空間発生場所へ接近する速度が上昇、制限時間にペナルティを受けて難易度が上昇してしまう。逆にメーターが「分散」に寄るほど、制限時間にボーナスが受けられるので難易度が低下する。ハルヒメーターは「誰と行動するか?」、「選択肢で何を選んだか」などにより変化していく。

 探索パートにおいて、ハルヒメーターを「分散」に寄せる(怪奇現象から意識を逸らす)には基本的な方針がある。1つ目が「なるべく多くの話題をハルヒに振って興味の対象を増やす」ように選択肢を選ぶこと。2つ目が「人員配置でハルヒを1名にせず、キョンを同行させる」ことだ。特に最初のプレイではこの方針に従っておくといいだろう。

涼宮ハルヒの意識を怪奇現象から逸らしている度合いを示すハルヒメーター。「集中」に寄るほど怪奇現象の解明に集中していることを示し、「分散」に寄るほど怪奇現象以外の情報に気を取られていることを示す。解明パートを有利に進められるように序盤は「分散」に寄せるように注意してプレイするといい

 それぞれの行動はハルヒメーターだけでなく入手できるトピックにも影響する。トピックは解決パートを有利に進められるアイテムだ。多く入手すればするほど、スムーズに解決パートが進められる。

 EPISODEの全ルートクリアを狙うとなるとハルヒメーターが「集中」に寄ってしまう選択をしなければならず、解決パートの難易度が上がってしまう。しかし、コンフィグでトピックストックモードをONにすれば、進んでいるルートに関わらず過去に入手したトピックが全て使えるので、誰でも簡単にクリアできるだろう。何度もプレイすることで難易度が下がり、サクサクとストーリーを進められるのはありがたい。

重要なタスク割り振り。ここでの割り振り方によって解決パートの難易度やストーリー展開が変わってくる。選択済みのタスク割り振りは後述のEXTRAで確認できる

トピックを入手の情報は画面右下に表示される。なるべく多くのトピックを入手したい探索パートの最後には探索パートリザルトとして、入手したトピックの一覧が表示されるCONFIGでトピックストックモードをONにしておくと2回目以降のプレイが楽になる

■ 特異点を探し出して消去する解決パート

 解決パートでは、ステージに隠された特異点を探し出して消去する。調査、発見、消去を繰り返して特異点の消去を進める。制限時間までに最低限の特異点(ノルマ)を消去すればクリアとなる。

 調査と発見は、目的の場所をタッチして移動、操作キャラクターのいるマスをタッチして範囲調査、さらに1マスをタッチしてポイント調査を行ない特異点を発見する。範囲調査は操作キャラクターのいるマス+周囲1マスの形9マスをまとめて調査する。範囲調査したマスの周囲に特異点があれば「!」マークが表示される。その情報を元に特異点の場所を特定してポイント調査をしていく。つまり3×3マスに「!」マークが表示されれば中央のマスに特異点が存在していることになる。ただし、全マスを範囲調査していなくても特異点のマスを推測できる状況もある。なるべく少ない回数の範囲調査で特異点を割り出せるようにしたい。

まずは調べたいところをタッチして移動移動が終わったら範囲調査で周囲のマスを調べる調べた結果からどこに特異点が隠れているか推測する

 ポイント調査で特異点を発見できたら、次は消去だ。発見した特異点をタッチペンでこするだけでいい。ただし、こするのを途中でやめると特異点が少しずつ元の大きさに戻ってしまうので注意したい。小さくこするより、大きくこする方が有効と感じた。

画面左上の調査パネルアイコンをタッチし、ポイント調査を実行見つけた特異点が消えるまでひたすらこすり続けなければならないノルマを達成するだけでなく、全ての特異点を消去してPERFECTを狙いたい

 探索パートの結果は、解決パートに大きく関わってくる。特に重要なのがハルヒメーターの状況とメイントピック入手だ。探索パートの結果は「タイムリザルト」、「アクシデントリザルト」、「パワーアップリザルト」として解決パートの冒頭で結果が表示される。

 タイムリザルトではハルヒメーターの結果から基本制限時間にプラスされる秒数とアクシデント、イベントの配置が決定される。ハルヒメーターが「分散」寄りなほど制限時間が多くなり、アクシデント、イベントの配置も有利なものになるのは前述のとおり。解決パートに慣れるまでは、探索パートでなるべくハルヒメーターを「分散」寄りにしておき、解決パートの難易度を下げておきたい。

 アクシデントリザルトでは探索パートで入手したメイントピックの所持状況が表示される。入手しているメイントピックの数だけ未然にアクシデントの発生が防げる。アクシデントが回避できないと制限時間が減少してしまうので、なるべく多くのメイントピックを入手しておきたい。EPISODEの異なるルートをプレイしていけば自然と全てのメイントピックが揃ってくる。何度もプレイすればそれだけ有利に進められる仕組みになっているということだ。

 パワーアップリザルトでは探索パートで入手したキャラトピックの種類と数によって、特異点消去を担当するキャラクターの能力が向上させられる。みくるなら移動速度が、長門なら調査速度が、古泉なら特異点消去速度が向上する。

ハルヒメーターが「分散」寄りになるようにプレイした結果、なんと500秒も制限時間が延長全てのメイントピックを入手したおかげで全てのアクシデントへの対応に成功。制限時間の減少が未然に防げたキャラトピックが充実すると解決パートが楽になる。レベル3になると、かなりの違いが出てくる

 配置されたアクシデント、イベントも制限時間の減少/増加に関わる。アクシデントは、ハルヒがアクシデントポイントに到達すると発生する。防ぐには「メイントピックを事前に適用している」か「ハルヒトピックを使用する」必要がある。前者はアクシデントリザルトで自動的に適用されるもので、後者はアクシデント発生時に使用する。防ぐ方法がなかったり、ハルヒトピックを使用しないと制限時間が減少してしまう。

 イベントはハルヒがイベントポイントに到達し、イベントパネルに表示された「!」マークをタッチすることで任意に発生させられる。「!」をタッチすると、どのトピックを使用するか選択する。トピックごとに増やせる制限時間が異なる。使用できるトピックにはキャラトピックも含まれるが、キャラトピックを使用してしまうと特異点消去担当のキャラクター性能が減少してしまうことに注意したい。実はこのイベント、トピックを使用しなかった場合も少しだけ制限時間が増やせるので、イベントパネルに「!」マークが出たら毎回タッチしておくといい。

 タスク割り振りでハルヒに同行しない、かつ特異点消去を担当しない団員は、必殺技パネルをタッチすることでレベルに応じた回数だけ必殺技が使用できる。みくるなら隠されている特異点を発見して消去、長門なら調査範囲の拡張、古泉なら出現している特異点を1つ消去できる。この必殺技も解決パートを有利に進められる要素の1つだ。

イベントパネルに「!」マークが表示されたら、必ずタッチしてハルヒを足止めしよう。トピックを使用しなくても少しだけ制限時間が増やせるどのトピックを使うか悩み所だ。キャラトピックを消費すると特異点消去キャラクターの性能が減少してしまうので、キャラトピック以外を優先して使うといいだろうトピックを消費して制限時間が18秒プラスされた。制限時間に余裕があるなら無理に使うことはない



■ 詰めチェスまで楽しめるEXTRA

 エクストラモードでは、各種達成率の閲覧、BGMやグラフィックの鑑賞、詰めチェスなどが楽しめる。発生条件はEPISODE:1クリアだ。

 エクストラモードを選択するとSOS団の部室に移動する。タッチした物によって各種機能が楽しめる仕組みだ。

  ・黒板:達成率と目的ルート一覧の閲覧
  ・本棚:入手したトピックとトピック発動時の会話の閲覧
  ・ラジカセ:ゲーム中に聞いたBGMの視聴
  ・PC(団長席):ゲーム中に見たイベントイラストの閲覧
  ・チェス盤:詰めチェスのプレイ
  ・団員:追加EPISODEの閲覧

 黒板では各EPISODEにおける全体達成率・分岐後の達成率の表示だけでなく、人員配置の全パターンから、どの組み合わせがプレイ済みかどうかまで表示してくれる。ここを確認してプレイすれば、ある程度時間はかかるものの誰でも達成率100%が狙える。

 チェス盤からプレイできる詰めチェスはなかなかの本格派。チェスのルール説明もしっかりしてくれるので、チェスを知らない人でも安心だ。出題者からの問題を一定数クリアすれば、次の出題者が解放される仕組みになっている。後半の出題は歯ごたえのある難易度になっているので、この手のゲームが苦手な人だと全問クリアは難しいかもしれない。

 団員をタッチすることで楽しめる追加EPISODEはファンには嬉しいところだろう。

EXTRAを選択するとSOS団の部室に移動する黒板をタッチすると各種達成率の一覧が閲覧できる。全ルート制覇を目指すならルート詳細確認をよく見て全てのパターンを網羅しよう
PCをタッチすればアルバムが閲覧できる。イラスト一覧から閲覧したいイラストを選択しよう。イラストの中には2画面を使ったものもある。絵のタッチに違和感を感じるのは筆者の気のせいだろうかラジカセをタッチすればBGMが視聴できる
本棚をタッチすれば各種トピックが閲覧できる。どの条件で取得できたものかもわかるようになっている本格派の詰めチェス。序盤は簡単だが、後半に出てくる問題は難易度が高い団員をタッチすれば追加EPISODEが楽しめる。全ての追加EPISODEを閲覧したいものだ


■ 最後に

 完全新作ストーリーとファンにはたまらない本作。フルボイスではないが重要な場面では喋ってくれる。この量のテキストをフルボイスにするにはDSでは厳しいのかもしれない。全EPISODEを通して1回楽しむだけならすぐにクリアできてしまうため、人によっては物足りなく感じてしまうかもしれない。ただ、全要素の達成率100%を目指すとかなりの時間遊べるため、ボリュームは十分といえるだろう。

 純粋にシナリオ進行を楽しみたい人にとって、解決パートは賛否が分かれそうだが、繰り返しプレイすることで楽になるように設計されているのが好印象だった。

 EXTRAの充実も嬉しいところ。達成度が事細かく閲覧できるのはありがたい。ただ、チェスについては解決パート同様賛否が分かれそうだと感じた。長時間1ゲームプレイするのではなく、ミッション形式で出題されるため、サクサク進めて楽しいと感じる人もいるだろうが、解決パートのようにプレイを繰り返しても難易度は下がらないため、チェスが苦手な人にとっては厳しい要素ともいえる。

 ファンはもちろんのこと、テキストアドベンチャーが好きな方にオススメしたい。


(C)2006 谷川流・いとうのいぢ/SOS団 (C)SEGA

(2009年 7月 29日)

[Reported by 木原卓 ]