★海外ゲームレビュー★
突然変異男がNYの摩天楼を縦横無尽に大暴れ 時代が求めた究極のダイナミックアクション! 「PROTOTYPE」 |
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前代未聞の身体能力を持つ主人公が摩天楼の空を駆け巡る |
E3終了後の6月9日に欧米で発売された3Dアクションゲーム「PROTOTYPE」は、ゲームファンなら1度はプレイしておきたい傑作だ。謎のウィルスに汚染されつつあるニューヨーク・マンハッタン島を舞台に、突然変異を起こした男「Alex Mercer」が縦横無尽に摩天楼を駆け巡り、前代未聞のダイナミック・アクションを繰り出すというゲームである。日本市場から撤退したActivisionのタイトルであるため、日本語版の展開は見送られるか、あっても遅くなりそうだが、この夏ぜひプレイしてみてほしいタイトルだ。
本作の開発元、カナダのゲームデベロッパーRadical Entertainmentは、フリーローミング(自由探索)系アクション、いわゆる「GTA」ライクなゲームシステムの作品を数多く世に送り出してきたスタジオだ。これまではカートゥーンや映画をもとにした北米向けタイトルばかりを手がけてきたため、世界的にもいまひとつ地味な存在ではあったが、初のオリジナル作品となった本作「PROTOTYPE」で一躍注目を浴びる存在になろうとしている。その開発力は間違いなく世界のトップレベルだ。
簡潔に表現するならば、本作は「癖になるほどに心地よい痛快なアクション」と、「説得力のあるゲーム世界」が最大の特徴だ。常人を遥かに超える身体能力を備えたAlex Mercerの繰り出す多彩な動きと、緻密に再現されたマンハッタン島の街並みが、最新世代のゲームとして最高のインタラクティビティで表現されている。失った記憶を取り戻すため、破壊と殺戮の限りを尽くし、やがてプレーヤーはこの世界の虜となっていくことだろう。
■ ウィルスが生んだ大量破壊兵器Alex Mercer、癖になる痛快アクションの数々
マンハッタンの街並みが緻密に再現されている |
痛烈な一撃で戦車を破壊! |
聳え立つビルをひとっ跳び。ゲーム史上でも最高峰のジャンプ力か!? |
本作の主人公は、マンハッタンに発生した謎のウィルスの影響で殺戮マシーンと化した男Alex Mercer。名前以外の全ての記憶を失い、自己を取り戻すために軍や企業の私兵集団と壮絶な戦いを繰り広げていく。本作は、シングルプレーヤー専用のゲームとして、「GTA」スタイルのシームレスな都市景観を再現しており、沢山の通行人、車両行きかうマンハッタン島を縦横無尽に駆け巡ることができる。
そんな本作でプレーヤーを楽しませてくれるのは、主人公の繰り出す痛快なアクションだ。その動きは極めて多彩。突然変異体(ミュータント)であるAlex Mercerには、常人を遥かに超えた身体能力と、変幻自在のシェープシフト(変身)能力があり、身ひとつで様々な動き、攻撃を繰り出すことができるのだ。
その主人公の能力は大きく移動能力、攻撃能力、変身能力、軍事能力にわけられており、それぞれのカテゴリについて、スキルポイントにあたる「Evolution Point」を割り振るか、特定の人物を「CONSUME」(食い尽くす)することによって様々な能力や技を習得していく。ゲームの序盤でこそ各種の能力は限定されているが、成長を遂げるにつれて、地上で、空中で、考え付く限りの戦い方で敵を蹴散らせるようになる。
その中で本作全体のプレイフィールを司るのが主人公の移動能力だ。スキル的には走るスピード、ジャンプの高さといった基礎能力から、空中でさらにダッシュする「AIR DASH」、ムササビのように滑空する「GLIDE」など様々な技があり、操作方法をマスターするだけでもかなりの手ごたえがある。ダッシュボタンを押すだけでビルの壁面を登ったり、障害物を軽やかな身のこなしで避けてくれるほか、これにジャンプ、「AIR DASH」、「GLIDE」を組み合わせることで縦横無尽の移動が可能だ。
操作は簡単ではないものの、いったん慣れれてしまえば、これらの能力を組み合わせることで、20階建てのビルをワンジャンプで飛び越えたり、雲突くような摩天楼から摩天楼へ、着地することなく飛び移り続けたりと、前代未聞のダイナミックな移動アクションを心から楽しめる。移動しているだけで楽しいというのは、本作のようなフリーローミングスタイルのアクションゲームでは極めて大きな美点である。
マンハッタンを飛び回るだけでも気持ちよく、楽しい。本作においては移動だけでも爽快感を得ることができ、プレイが上達するほど満足度が増していく |
主人公の持つ変身能力で、様々な戦闘形態へ即座にチェンジできる |
「CROWS」形態で敵兵を切り裂く! |
「WHIP FIST」によるひと薙ぎで、周囲の敵を一網打尽 |
そしてさらに楽しみたいのが敵を蹴散らすための戦闘能力だ。主人公Alex Mercerはシェープシフト(変身)能力を持つ。戦闘形態は数種類あり、長い爪でソフトターゲットを切り裂く「CROWS」、巨大化した岩のような拳で装甲車両すら叩き潰す「HUMMER FIST」、鞭のように伸びる触手で周囲のものを一気に両断する「WHIP FIST」、右手が鋼も切り裂く強力な刃となる「BLADE」などがある。
全ての形態に複数の攻撃方法や強化項目があり、どのアクションもユニーク。一度身に着けた戦闘形態にはいつでも変身が可能で、敵の種類などシチュエーションに応じて常時切り替えて戦う。周囲にソフトターゲットが多いなら「WHIP FIST」でひと薙ぎ、あるいは装甲車両なら「HUMMER FIST」で対応、ヘリに空中戦を挑むなら「WHIP FIST」の長射程攻撃が覿面だ。
派手なアクションでバッタバッタと敵を倒しまくるだけのゲームかと思いきや、ステルス要素もあるのが本作の面白いところ。Alex Mercerは捕まえた相手を、一般人か軍人かによらず、体に取り込んで「CONSUME」(食い尽くす)することができる。そして食った相手の記憶を得ると同時に、その外観を寸分たがわずコピーすることができるのだ。これを利用し、敵の指揮官に化けて何食わぬ顔で基地に潜入するような展開も楽しめるわけである。
本作の多彩なアクションと戦い方の幅の広さは、プレーヤーを釘付けにしてしまう。ゲームの序盤こそ、限られた能力で戦うことになるためやや単調さを感じることもあるが、ほとんどの能力を身に着ける中盤以降は、陸と空を自由自在に駆け巡り、ヒーローモノのバトルアクションを全て詰め込んだかのようなAlex Mercerの戦いぶりに病みつきとなるはずだ。100メートルの大ジャンプから「HAMMER FIST」の落下攻撃を加えれば、主力戦車ですら1撃で粉砕だ。
このほか、戦闘形態と並列して選択できる2つの防御モード「シールド」、「アーマー」の選択により戦いの幅を広げたり、敵の車両やヘリを奪って暴れまわったりと、本作においてプレーヤーに与えられた自由度は果てしなく広い。敵は増援を呼びしつこく追い掛け回してくるが、全滅するまで戦い続けるもよし、分が悪くなったら素早い移動テクニックで摩天楼の影に隠れ、別人に変身してやり過ごしてもいい。すべてはプレーヤー次第、というゲーム性が大きな魅力である。
「HUMMERFIST」形態では装甲車両も粉砕することが可能。移動アクションと攻撃をうまくからめ、落下速度を最大限に引き出せばその攻撃力は絶大なものとなる |
「BLADE」は最強にして万能の攻撃形態だ。全ての攻撃が重く、命中しさえすればヘリコプターですら1撃で破壊できる。何より見た目がカッコイイので、ついつい多用してしまう |
防御形態としては前方を硬く守る「SHIELD」と、全身をくまなく防護する「ARMOR」がある。「ARMOR」時にはジャンプ力が下がり、「GLIDE」も利用できなくなるので、強敵を撃破しなければならないときに限って活用したい |
■ 記憶と過去を無くし、他人の人生を取り込んで「別の何者か」になってゆく男の物語
ファーストステージにて、シェープシフト能力を披露する主人公 |
場面は感染初日へ。検死中に突如よみがえった主人公は、全ての記憶を失ったまま街に消えていく |
本作はシングルプレーヤー専用のゲームであり、ゲームモードはマンハッタン島を舞台に展開するストーリーモードのみだ。物語は感染開始から18日目のマンハッタン島で始まる。謎のウィルスが蔓延し、感染したものは次々に自我をなくした凶暴なゾンビとなって市中を徘徊している。そんな中で、主人公Alex MercerはGunと壮絶な死闘を繰り広げていた。
チュートリアル仕立てで開始されるファーストステージでは主人公の全ての能力が解除されている状態で、戦車やヘリを相手に圧倒的な力で戦うことができる。10~15分ほどのバトルで本作のゲームシステムをなんとなく理解したら、次は感染開始直後のシーンが舞台となる。このとき、死の淵からよみがえったばかりの主人公Alex Mercerには、常人を超えた身のこなし以外に特筆すべき能力は発現していない。
時系列の進め方がやや唐突でお話としては難解になっているので、本作のストーリーを完全に理解するのは1回目のプレイでは難しいかもしれない。だが本作は、2周、3周とプレイし続けたくなるような深みがあるので、ゲームとしての面白さを楽しむうちに、ストーリーも完全に理解できることだろう。
冒頭、主人公の置かれた立場は謎に包まれている。知っているのは自分の名前がAlex Mercerであること、そして常軌を逸した能力を身に宿していることだけだ。生存本能に従うならば、自分を知る人物を片っ端から「CONSUME」し、自分の身にいったい何が起こったのかを解明していかねばならない。そうして序盤は、Alex Mercerが1人の兵士を「CONSUME」して得た記憶をもとに少しずつ進展していく。
敵兵を「CONSUME」することで記憶の断片を手に入れていく。それはやがて、Alex Mercerの人格を別の何者かに変えていくことになる |
アップグレード項目は多岐にわたり、ゲーム進行に合わせて多彩なスキルを習得していく |
「GENTEK」で出会う謎の少女。彼女は物語の鍵となる人物だ |
「GTA」ライクなフリーローミングシステムを持つ本作だが、メインストーリーはステージクリア形式で、シナリオドリブンでゲームが進行していく。主人公の成長もストーリーに応じて上限が伸びていく仕組みで、ミッションクリアや敵の撃破によって「Evolution Point」を得て、アップグレードによって能力を伸ばしていくことで、さらにプレーヤーの行動範囲が広がっていく。より快適にプレイするためには移動関係の能力を速めに向上させておくのがオススメだ。
序盤の展開では、主人公のAlex Mercerは、兵士から奪った記憶を頼りに実の妹と合流し、マンハッタン島に起きたことを少しづつ解明していく。その中で、遺伝子工学企業「GENTEK」と自分との間に、のっぴきならぬ関係が有ることを知るようになる。それは、自分自身と、マンハッタン島にはびこるウィルスの両方の原因につながるものだ。
それを明らかにするため、自分の過去に関係を持つ人物を次々に「CONSUME」していく主人公。だが次第に、Alex Mercerという、元の人格は薄れ、自分が何者かすらわからなくなっていく……。そして、Alex Mercerの存在を巡り、軍の活動はますます激しさを増していく。
ストーリーが進めば、当然ながら、戦闘も厳しくなっていく。序盤から中盤に掛けてプレーヤーの最大の強敵となるのは「HUNTER」と呼ばれる、大型クリーチャーだ。並みの装甲車や戦車を遥かに越えるタフさと、主人公を執拗に追いかける機動性を持つ化け物であり、かなりの打撃を与えなければ致命傷にならない。とはいえ基本的には主人公と同種であるらしい。瀕死の状態に追い込んでから「CONSUME」すれば体力を大幅に回復することができる。難所ではこれをうまく利用して粘り強く戦いたいところだ。
「HUNTER」との戦闘。大きく、タフで、1撃が重い。動きをよく見れば隙を見つけることができるので、的確に攻撃を叩き込もう。軍の兵士から奪った武器を使って戦うのも有効だ |
街中で軍に正体を見破られると、即座に応援を呼ばれて大激戦に。ゲームが進むほど軍が精強になっていく |
強化型兵士。人間とは思えない身体能力とタフさを兼ね備えており、2、3体と同時に戦うのは非常に危険だ |
戦闘形態の選択を賢く行ない、適切な手段で敵とわたり合おう |
ゲームの中盤に差し掛かると、いよいよ本作の醍醐味を存分に味わえるようになる。その理由は、主人公の能力が全カテゴリーに渡って制限解除され、「Evolution Point」さえ集めればほとんどのアクションを習得できるようになることと、それにあわせて敵のバリエーションも最大化してくるためだ。
特に中盤以降、軍が投入してくる強化型の兵士は難敵ばかりだ。「HUNTER」並みにタフである上、それぞれが感染者センサーを持っているので、他人に変身しても近づけば正体がバレてしまう。モタモタしていると援軍を呼ばれてしまい、あれよあれよという間に四方八方を敵に囲まれるということになりがちだ。多くの場合は敵を全滅させるか、遥か遠くまで逃げ回るかしか方法がない。どうやって切り抜けるか、プレーヤーの腕と判断を試すようなシーンが続出だ。
もちろん、この手のアクションゲームのお約束に従って、本作にも強大なボスとの戦いが要所・要所に配置されている。本作ならではの特徴としては、大抵の場合、強力な戦闘能力を持つボスキャラクターと同時に大量の一般敵兵の相手もしなくてはならないということだ。そこでプレーヤーは常に適切な戦闘形態を取ることを意識することになる。ボスに大きな一撃を与えるためには「HAMMER FIST」や「BLADE」を使い、一般兵士を一掃するには「WHIP FIST」を使ったりと、常にシチュエーションを判断する駆け引きだ。
さらに、ステージを進める毎に、マンハッタン島の状況も最悪になっていく。ウィルス発生の初日は数えるほどしかいなかった感染者の数は、6日、10日と時間が進むにつれて街中に溢れかえるようになり、やがて島の大半が感染地域となっていく。感染地域にはゾンビと化した市民があふれかえり、まだ正気を保っている市民が叫びを上げて逃げ惑っている。感染地域と軍のテリトリーが接触する場所では常に銃声が鳴り響き、摩天楼の底はまるで地獄の釜のようである。
したがって、ゲームが進むほどに軍の装備が本格的になっていき、プレーヤーの正体がバレてしまったときの対応も苛烈になっていく。俄然、一般人のふりをして難を逃れることの重要性が高まってくるため、変身能力をうまく使ってプレイを展開することが必須となるだろう。だがここまでくれば、どのような状況でどのような対応を取るべきか、即座に判断できるようになっているはずで、それにともなって本作のプレイが楽しくてしょうがなくなっているはずである。
そうして、かつてAlex Mercerであった男は、あまりにも多くの記憶を取り込み、別の何者かに変貌していく。マンハッタン島を覆う悲劇にケリをつけるときだ。全ての能力を開花させた主人公はもはや、ゲーム序盤とは別人だ。ジャンプひとつでビルを飛び越え、生身の体ひとつで戦車やヘリを次々に破壊していく。それでも倒すべき敵は強大である。ストーリーがフィナーレを迎えるまで、プレーヤーは大いに手ごたえのあるバトルを楽しむことができるだろう。
軍の基地を襲撃して破壊すれば、その地域における軍のパトロールを抑制できる。あらかじめヘリや装甲車を奪取しておくと楽に攻略できる |
ウィルス感染地域の中心にはゾンビの巣がある。これを破壊すれば周囲に跋扈するゾンビをしばらくの間無力化できる。静かに探索を行ないたいときは優先的に破壊しておこう |
時には軍とゾンビと三つ巴の戦いになることも。戦車やヘリが1番厄介なので、見つけ次第真っ先に破壊するか、変身して軍隊に紛れ込むのもいい。腕に自信があれば正面から戦ってもいいだろう |
■ ゲームのいたるところに配置された「やりこみ要素」。タイムアタックのチャレンジは相当楽しい!
マップ中には沢山のチャレンジが配置されている。メインミッションの合間に自由に挑戦可能 |
「WAR」、「KILL」系のミッションは戦闘効率が命。敵を倒しやすい場所にうまく誘導する必要もある |
「GLIDE」は降下精度を試すスポーツ的なチャレンジだ。ハイレベルなものになると、1メートルの誤差も許されない |
中盤から終盤にかけて大いに盛り上がるストーリーの傍ら、各ミッションの間、プレーヤーはフリーローミングモードで街を自由に探検することができる。そこで用意されているのが、本作の「やりこみ要素」というべきチャレンジの数々だ。
本作におけるチャレンジは大別して5カテゴリーが用意されている。移動のスキルを試す「MOVEMENT」、飛行と着陸の精度を試す「GLIDE」、特定の戦闘方法で可能な限り多数の敵を倒す「KILL」、軍かゾンビのどちらかの味方として勝利を目指す「WAR」、制限時間内に指定のターゲットをCONSUMEする「CONSUME」だ。
いずれのチャレンジもクリア成績に応じてブロンズメダル、シルバーメダル、ゴールドメダルの3種の達成度があり、ゴールド水準でクリアすることができれば最大の「Evolution Point」を獲得できる。その中で比較的オーソドックスなチャレンジである「WAR」や「KILL」は、戦い方さえ間違えなければ、数度の挑戦でゴールドメダルを狙うことができる。
そして何よりも奥が深く、病み付きになって挑戦してしまうのが「MOVEMENT」だ。これはいわゆるタイムアタックで、規定のチェックポイントを通過してゴールに到達するまでの移動時間を競うものだ。内容としては移動アクションが多彩な本作ならではのタイムアタックに仕上がっており、高低差がとてつもなく激しいものから、チェックポイントの間が1キロ以上離れているものなど、実に様々なコースが用意されている。
タイムアタックの基本は、各チェックポイント間をなるべくスムーズに、直線に近いラインで結ぶことだ。しかし、本作ではチェックポイントの間に超高層ビルが建っていたり、チェックポイント間の高低差が数百メートルもあったりと、一筋縄ではいかないものばかり。そこで、高層ビルの壁を走って登っていたところを、垂直ジャンプと「AIR DASH」を組み合わせて一気に最上階まで飛んだり、地上を走るようなシーンでも「GLID」で低空飛行して速度を稼いだりと、細かいテクニックが好タイムの秘訣になってくるのである。
タイムアタックでマスターした移動の技は、もちろんゲーム本編でも有効活用できる。特に垂直に大ジャンプするテクニックは、落下衝撃系の攻撃スキルを最大の効率で繰り出すために非常に有効だ。ひとしきり「タイムアタック」を楽しんだ後に本編のプレイに戻れば、ひとまわり正確さを増したテクニックで敵を翻弄できることだろう。このプロセスが、本作のプレイをより面白いものにしてくれている。
「MOVEMENT」のタイムアタックは非常に楽しい。序盤の移動スキルではゴールドメダルを取りにくいコースもあるので、うまくいかない場合はある程度ゲームを進めてから戻ってきてもいいだろう |
■ 新作の少ないこの時期にあって強い輝きを放つ傑作アクションゲーム
しかし、国内版の登場は「残酷表現」のため期待できなさそう?
アクションの爽快さは病みつきになるレベル。ついつい夢中になって遊んでしまう |
唯一の問題「残酷表現」。戦車を走らせるだけで大惨事に…… |
一般市民の密度が凄まじく、犠牲を出さずに戦うことは不可能。毎ステージ100人単位の巻き添えが出る |
本作は、アクションの多彩さと爽快さにおいて他の追随を許さないレベルにあるだけでなく、全体的にも少々荒削りながらカッチリとまとまっており、プレーヤーを大いに満足させてくれる傑作だ。確かにストーリーは少々わかりにくいし、フリーローミング系アクションゲームの宿命として戦闘その他の展開にやや大味な部分があるものの、気持ちの良い移動アクション、説得力のある街並みなど、根本的なインタラクティビティの良質さが本作のプレイを非常に濃密なものにしてくれている。
ただ、マルチプレーヤーモードなどオンライン要素が全く存在しないことは少し残念なところで、それならばゲーム中にもう少し色々な遊びがあればよかったとも思う。そう思うのは、本作のプレイが本当に楽しく、本編や多数のチャレンジをクリアしても「もっと遊びたい」と思わせてしまう、本質的な魅力があるからだ。
この6月、7月という時期は大作志向の作品がリリースされることが少ないが、本作はその中にあって極めて強い輝きを放っている。もし、大作が集中する秋口から年末にかけた時期に本作が登場していても、並み居る大作を押しのけて独自の存在感を示していたはずだ。開発元のRadical Entertainmentは、是非今後も注目していきたいと思う。
そこまで良質なゲームとなれば、是非日本語版の登場も期待したい、といいたいところだが、本作に関しては難しそうだ。何故かというと、とにかく「残酷表現」が凄まじいのである。本作は街中を大量の一般人や一般車両が通行しており、軍との戦闘を繰り広げれば否応なく沢山の犠牲者を出すことになる(ゲーム中、それは細かくカウントされる)。また、軍との戦闘は関係なく、平和な街角で意図的に殺戮行為を行ない、逃げ惑う市民を片っ端からあの世に送ることもできる。しかも、それがゲームの醍醐味に結びついている側面があるから困ったものである。
それだけならまだしも、「CROWS」や「WHIP」、「BLADE」といった切断系の攻撃を繰り出せば、人物は縦横にまっぷたつになって切断面がリアルに表現された肉片となるし、装甲車や戦車で歩道を走れば、大量の通行人がブチブチと血煙を上げて物言わぬ肉塊になっていく。死体に追い討ちをかけてバラバラに切り裂くこともできてしまう。ある意味、ウィルスに冒されて地獄の釜の底となった世界を完璧に表現しているといえるが、日本ではタブーとされる表現のオンパレードだ。
米国のESRBレーティングのM(17歳以上)は、表現の幅が非常に広いが、「PROTOTYPE」はその中でも最上位に位置すると考えられるタイトルだ。日本のレーティング基準ではCERO:Z(成人指定)の枠内でも収まらず、おおかた評価不能のため発売できないのが関の山だろう。国内版の発売のためには各種表現を徹底的に調整する必要がありそうだが、現時点で日本法人の存在しないActivision販売のゲームであるため、それも期待しづらい。したがって、本作は大人の海外ゲームファンが各個人で楽しむだけの作品になりそうである。秀逸なゲームであるだけに、この点は少々残念だ。
【スクリーンショット】 | ||
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http://www.radical.ca/
□「PROTOTYPE」の製品紹介ページ
http://www.radical.ca/prototype.cfm
(2009年 7月 3日)