PS4/PS Vita「ドラゴンクエストビルダーズ」レビュー

ドラゴンクエストビルダーズ アレフガルドを復活せよ

サンドボックス要素を上手に取り入れた快作

ジャンル:
  • ブロックメイクRPG
発売元:
プラットフォーム:
  • PS4
  • PS3
  • PS Vita
価格:
7,800円(税別)
(PS4)
6,800円(税別)
(PS3)
5,980円(税別)
(PS Vita)
発売日:
2016年1月28日

 スクウェア・エニックスは、プレイステーション 4/3、PlayStation Vita用ブロックメイクRPG「ドラゴンクエストビルダーズ アレフガルドを復活せよ」を1月28日に発売した。価格はPS4版が7,800円(税別)、PS3版が6,800円(税別)、PS Vita版は5,980円(税別)。ここでは、ネタバレを最小限にとどめるべく第1章を軸としたレビューをお届けする。

 「ドラゴンクエストビルダーズ」は、シリーズ第1作目のアレフガルド大陸を舞台としたブロックメイクRPG。キャラクター以外、フィールドに存在する“ブロック”を素材として、構造物やアイテムなど作り、壊し、改造し、世界を創り上げていく。パッと見、2009年のMojang「Minecraft(マインクラフト)」や2011年のRe-Logic「Terraria(テラリア)」などの“サンドボックス(箱庭型)ゲーム”を彷彿とさせるため「どこが違うの?」と疑問を抱く人もいるかと思われるが、そのあたりは追々触れていく。

 ゲームは、1986年にファミコンで発売された初代「ドラゴンクエスト」に登場する「アレフガルド大陸」が舞台。闇の王「りゅうおう」から「もしわしのみかたになれば世界の半分をやろう」といわれた主人公。ファミコンではもちろん断って倒してハッピーエンドを目指すのだが、ifストーリーである本作の勇者は「はい」と答えてしまい、闇の力に覆われたアレフガルドは荒廃の一途をたどることとなる。

 そんなある日、ひとりの若者がアレフガルドに降り立つ。若者は、アイテムや町を作る不思議な力を持っていた。プレーヤーは主人公の若者となり、荒れ果てた世界の復興を目指す。

【オープニング】

初代「ドラクエ」のif展開につき、冒険の舞台や世界観もそれに準じている。プレーヤーは不思議な力を持った若者となり、荒廃したアレフガルドの復興を目指す

 これは1章クリア後にわかることだが、本作は章だてでセーブデータも章ごとに独立しており、アイテムなどクリア時のデータは(ごく一部の例外をのぞき)次の章には持ち越されない。クリアすると「20日以内にクリアする」、「キャンプレベルを5にする」など、継続または新規リプレイ用の“チャレンジ情報”とフリープレイ用の“フリービルドモード”が出現するが、これらはクリア後のやりこみ&お楽しみ要素につき、まずは各章を順次プレイしていくことをオススメする。

主人公の設定は、性別、色(髪、肌、目)、名前がエディットでき、タイトルメニューからいつでも変えられる
ゲームは章立てでセーブデータは各章ごとに独立。クリア後は継続または新規リプレイ向けのやりこみ要素やメニューがアンロックされる

【チュートリアル】
昨今の「ドラゴンクエスト」シリーズらしく、ユーザーフレンドリーかつ丁寧なチュートリアルが用意されている。後述するが、箱庭的な細かさ以上に“手触り”や“とっつきやすさ”が重視されており「こういう細々したゲームは苦手なんだよなぁ」という人でも十分いける

第1章 メルキド編 ~「伝説のビルダー」として基礎を培う~

旅のはじまりは城塞都市「メルキド」

 チュートリアル後に扉を抜けて出た先は、初代ファミリーコンピュータ版では立ちふさがるゴーレムを倒さないと入れなかった城塞都市「メルキド」……だった場所。魔物との戦いで破壊しつくされ、もはや跡形もない。プレーヤーは大地の精霊ルビスにうながされ、セーブポイントとなる“拠点の旗”を中央部に打ち立て、ここをアレフガルド復興への第1歩と定める。

 旗を立てると、その光に導かれた最初の住人「ピリン」がやってくる。荒廃した世界で人々は物を作る能力を失って久しく、素材から物を作り出すという主人公に驚く「ピリン」。本作は、一定のイベントなどをクリアして増えていく「住人」たちの依頼をきいていくのが基本となる。

 復興は主人公ひとりの力ではかなわないため、ここではまず「ピリン」を住まわせるための部屋を作る。脳内に響くルビスの指示どおり、壊れた家屋を修理する主人公。続いて「明かりがないと部屋にならない」、「夜になったら寝られる場所が欲しい」という「ピリン」。再びルビスの指示により、石の作業台で「ふとい枝」から「たいまつ」を、町の周辺にある「じょうぶな草」から「わらベッド」を作り適当なところに設置していく。

 時間の経過で画面左上の「満腹度」がゼロになるとHPが少しずつ減っていくため、作業のかたわら自身の食べ物も調達または素材から料理で作らなくてはならない。なお、料理には、大前提として「料理専用の部屋」も作る必要がある。また、序盤や要所では「設計図」と呼ばれるアイテムが登場。この「設計図」を地面に敷くと“型紙”よろしくその場にペタリと付着。あとは記されたとおりにブロックを配置していくだけでいい。

町の中心に立てられた旗が拠点。見てのとおりセーブポイントも兼ねている

拠点の光を見てきたという最初の住人「ピリン」。ゲームの基本は住人たちの依頼をこなしつつ町を発展させていくことだ

部屋を作るときは高さ2ブロックの外壁、扉のほか、いくつかのアイテムが必要。設置物の種類や数により、宿屋、料理専用部屋、工房などに変化

最初にもらえる「ピリンの設計図」。町の敷地内であればどこでも建設可能。型紙の要領で地面に貼り付け、あとは図面どおりにブロックを設置。完成すると住人たちが主人公をサポートしてくれるようになる

 本作が楽しいのは、こうしてゲームを進めていくうちに増えていく住人たちが“主人公をサポート”してくれること。工房ではアイテムを、料理専用の部屋では料理を、それぞれ部屋に設置した収納箱に1日1個くらいのペースで入れておいてくれる。生産だけでなく、町がモンスターに襲われたときは、防衛のため一緒に戦ってくれたりもする。町の発展に比例して住人たちもより頼もしくなるため、交流と建築のサイクルが楽しくて仕方ない。

主人公だけでアレフガルド復活は不可能。住人を増やしてさらに町を発展させよう

 ゲームが進むと、やがて他のエリアに飛べる「旅の扉」が作れたり、あるいは入手できるようになる。住人の依頼、あるいは新たな素材やモンスターを求めて飛び立つことになるが、この“未知の領域に足を踏み入れる”瞬間は、何度やっても胸が高鳴る。ゲーム中はもちろん、全体進行も章立てのため、ある程度やりこんだところで展開が刷新される感じが実にいい。

 本稿冒頭で章立てごとにリセットと知り「えーっ、RPGって継続して積み重ねていくのが楽しいんじゃないの?」と思われた方もいそうだが、本作は「サンドボックスゲーム」要素を適度に取り入れたことで“スクラップアンドビルド”が苦痛どころか“至上の喜び”へと昇華されており、新たな展開に応じて再び物作りに励めることが、本当に楽しくて仕方がない。適度なタイミングで訪れるストーリー展開と章立てが「サンドボックスゲーム」タイプにありがちなマンネリ感を払拭する最高のスパイスとなっている。

シリーズのファンにはおなじみの「旅の扉」。初見の素材で新レシピを思いつくなど、未開の地は冒険の刺激で満ちている

「旅の扉」で飛んだ先に待っているのは人間だけとは限らない。さまざまな邂逅が待ち受けている

モンスターとのバトル! ~お目当てはドロップアイテム~

シンプル操作で熱いバトルが楽しめる

 本作はRPGながら、いわゆるレベルの概念がない。モンスターを倒しても経験値は得られず、主人公の強さは装備した武器と防具の性能に準じる。ヒットポイントは、依頼などをこなしてもらえる「いのちのきのみ」を食べることで5ずつ増えていく。

 さて……モンスターをいくら倒しても経験値は得られないが、唯一にして絶対的なメリットとして「ドロップアイテム」がある。何を落とすかはモンスターごとに決まっているため「旅の扉」など出先で新種をみかけたら、まずはアタック。町の発展に役立つものはもちろん、展開によってはモンスターのドロップアイテムが必要となるパターンも珍しくない。

 操作はアタックとジャンプを軸としたシンプルなもの。アクションRPGらしく“敵の行動パターン”と“弱点”を見切るのが戦いのコツ。基本は接近して敵の攻撃を誘い、そのすきに攻撃。モンスターに近づきすぎると接触ダメージを受けるため要注意。複数のモンスターに追い回されている状況でも、意識して攻撃を誘うことができれば多少アクションが苦手でも十分立ち回れる。

 なお、武器や防具には“耐久力”が設定されているため、常に予備を携帯しておくことをお忘れなく。死ぬと手持ちのアイテムを散乱させて町から復帰となるため「これ以上は危ない!」と感じたときは「キメラのつばさ」で瞬時に町に戻るといい。

レベルの概念はないため装備の性能がそのまま反映される
装備には耐久力がある。常に予備を持っておくのがオススメ

HPはイベントクリアなどで入手できる「いのちのきのみ」を食べると5増える
きずぐすりや薬草といった回復アイテムは重要。切らさないよう心がけたい

町がモンスターに襲われるイベントが発生。住人たちも一緒に戦ってくれるがのがいい。ちなみに本章最大の見せ場といえばもちろん……

箱庭要素を上手に取り入れた秀逸なアクションRPG ~初代「ドラゴンクエスト」要素もオールドファンの琴線を甘握り~

「サンドボックスゲーム」要素の適度なアレンジは見事というほかない

 最初にハッキリさせておくと、本作は冒頭で触れた「サンドボックスゲーム」の要素を取り入れているが、それがすべてではない。実は筆者も初出時に「えー、これってまるっきりアレじゃん」と誤解していたため偉そうなことはいえないのだが……「サンドボックスゲーム」はあくまでもフレーム、構成要素の一部であり、芯となる部分は「ドラゴンクエスト」シリーズらしい親しみやすい世界観とストーリー性に富んだRPGパートだ。

 体験版も配信されているため、対応プラットフォームをお持ちの方はそれをやるのが1番手っ取り早いのだが、いわゆる「サンドボックスゲーム」にありがちな「いきなり自由すぎて何をどうすればいいのかサッパリわからない」といった状況は、本作においては(RPG的な謎解きなどをのぞき)まずありえないといっていい。住人の依頼が複数並行するときはあるが、基本的にはそれをクリアして町作りを進めることでゲームが展開するため、自由度を満喫したいときはその合間に己の裁量でいくらでもできる。

 開発スタッフの卓越したセンスの賜物か、ストーリーを展開させていくうえで“押し付け感”がほとんどないのもいい。インタラクティブな要素を楽しみつつ自然にゲームが進んでいく感じが秀逸で、各パートの手ごたえやボリュームも多からず少なからず。ベタな表現で恐縮だが「止め時が見つからない!」状態。

 たまに悩むときもあるが、ここでも「サンドボックスゲーム」要素の導入が水際立つ。ただ悩むのではなく「ブロックをアレコレしながら」というのがポイントで、正解にたどり着いたときは文字どおり「パズルピースがドンピシャでハマった」かのような絶頂のカタルシスが得られる。

 初代「ドラゴンクエスト」をモチーフにしたゲーム内要素も、本作の注目点のひとつ。昨年頃より小学生の間で「マインクラフト」ブームが起こっていることもあり、パッと見で「小学生がメインターゲットかな」という先入観を抱く人もいそうだが、ゲーム自体「初代『ドラゴンクエスト』」をモチーフにしていることもあり、地名や人物、モンスター、そして何より欠かせない初期の傑作BGMの数々が、オールドファンの気持ちをこれ以上ないくらい高めてくれる。

 個人的なツボは、住人やモンスターとの会話。シリアスはもとより、細かく触れるとさすがにアレかなぁというギャグの数々は「ドラクエ」シリーズ以外の何物でもないウィットさで、プレイ中はニヤニヤがとまらず「やばい、こんな姿とても他の誰かには見せられない」というほど楽しませていただいた。

 このあたりはもう手放しで絶賛に近いのだが、少しだけ難点を言わせていただくなら、この会話のウィットさの裏返しになるだろうか。仕方ないこととはいえ、フリービルドモードではNPCとのキャラクター的な会話がない。本当に「惜しい!」の一言で、洞窟など閉所でのカメラ操作とあわせ、これさえ解消されれば100点どころか200点以上の手ごたえといえる。

 昨今「サンドボックス」タイプの作品は動画配信を見るだけで十分という方もいそうだが、本作は見る以上に“触る”ことで本当の魅力、楽しさにリーチできるし、恐らくは配信で十分という方も、本作に関しては見ているうちに身体の芯がムズムズしているのではないだろうか。筆者は、その衝動に素直になることを強くオススメしたい。ましてや「ドラゴンクエスト」シリーズのファンなら、いわずもがな、だ。

基本はあくまでも「ドラゴンクエスト」。アレフガルドを舞台にした初代要素もオールドファンにはたまらない要素。懐かしくも色あせない傑作BGMが俄然雰囲気を盛り上げる
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(豊臣和孝)