(2012/12/28 00:00)
バンダイが12月14日に発売した「DX超合金魂 マジンガーZ」は、全高30cm、内部メカニックを再現、音声・発光ギミック内蔵という非常に豪華な作品である。そして「DX超合金魂 マジンガーZ」は、バンダイの技術を結集した作品と言える。「マジンガーZ」40周年を記念し、“超合金”というバンダイの看板とも言える玩具ブランドに、新しい流れをもたらす“記念碑”として「DX超合金魂 マジンガーZ」は開発された。
“超合金”というブランドはキャラクタートイの中では特別な存在である。そこに込められた技術、アイデアはその後のキャラクタートイに大きな影響を与えている。「DX超合金魂 マジンガーZ」もまた、これからのキャラクタートイの方向性を指し示す存在となっている。
また、今回は企画チームのメンバーであるバンダイコレクターズ事業部企画開発第二チームリーダーの河内保氏の説明を受けながら、「DX超合金魂 マジンガーZ」のギミックを楽しみ、その後気になる点をインタビューするという形で、作品の魅力と、込められた技術と開発者の想いに迫っていきたいと思う。
内部メカを再現、音声・発光ギミック内蔵の豪華モデル「DX超合金魂 マジンガーZ」
超合金というブランドとマジンガーZというロボットは、特別な関係にある。「超合金」はバンダイグループ(当時)の玩具メーカー“ポピー”で生まれた合金玩具のブランドで、その第1弾が「マジンガーZ」だった。マジンガーZは“超合金Z”という架空の金属で作られており、劇中でもその超合金による防御力の高さ、耐久力は当時の子供達に強い印象を与えた。
1974年に発売されたダイキャスト合金で作られた「超合金 マジンガーZ」は劇中の“超合金Z”製のマジンガーを手に持っているかのような質感・重量感が話題となり、大ヒット商品となった。そして“超合金”ブランドは、その後もキャラクタートイの代表的なブランドとして大きく成長し、様々なヒット商品を生み出していく。そして現在も超合金ブランドは残り続ける。
さらに1997年に大人に向けた本格合金フィギュアブランド「超合金魂」が誕生する。原作の雰囲気を最大限に活かし、多彩なギミックをその当時の最新技術をつぎ込んで再現するという方向性がファンの心を掴み、“大人向けホビー”が発展していく大きなきっかけとなった。この「超合金魂」の第1弾はやはりマジンガーZだった。その後「超合金魂」でマジンガーZはリニューアル版や、可動を追及したモデルが発売された。また可動とコレクション性、プレイバリューを追求する「スーパーロボット超合金」という新ブランドの第1弾もマジンガーZだった。超合金というブランドにとって、マジンガーZは常にチャレンジし続けるテーマとなっているのだ。
「DX超合金魂 マジンガーZ」は、30cmという巨大サイズに、全身の内部メカ構造を再現。装甲を外すことができるだけでなく、半身を装甲で覆った形にもできる。さらに主人公・兜甲児のセリフが飛び出す「発音声ギミック」、目が光る“光子力ビーム”、胸の放熱板が光る“ブレストファイヤー”を再現する「発光ギミック」を内蔵している。
しかし、発音声・発光ギミックは玩具では定番のギミックだが、プロポーションや可動を重視するユーザーにとっては大きな“不安材料”ともなる。例えば目を光らせるとなると、ギミックをどのように配置するのか、目にLED(発光ダイオード)をつけるとしたら、LEDに通電するためのコードが首を通ることとなり、首が動かなくなってしまうのではないか? あるいは音声ギミックの大きさはどのくらいなのだろうか? 昔の玩具では音声ギミックを内蔵するためにお腹がふくれた人形などもあったが、現代の技術は、それをどこまで縮小しているのだろうか? ギミック優先で、プロポーションがおかしくなってしまわないだろうか?
そうした不安を胸に、現代のバンダイの最新技術がもたらす、“2012年のマジンガーZ”はどのようなものなのか、実際に触ってみた。
重量と巨大感、劇中そのままの音声、これこそが“自分だけのマジンガー”だ!
最初に筆者の前に姿を現わしたのは巨大なパッケージだ。とにかくデカイ! サイズは54×32×42cm(幅×奥行き×高さ)でその大きさにまず驚かされる。バンダイコレクターズ事業部企画開発第二チームリーダーの河内保氏はその狙いについて「3万円を超える商品なので、それに見合ったインパクトのあるサイズとデザインにこだわりました」と語ってくれた。
パッケージの外箱はスリーブタイプとなっており、マジンガーZが描かれている外箱を外すと内部構造がわかるメカニカルモデルのマジンガーZのイラストが現われる。実際の「DX超合金魂 マジンガーZ」と同じ様に外装を外すと内部構造が見れるところが楽しい。そしてパッケージの中には驚くほどたくさんの箱が詰まっている。最も大きいのが、「格納整備基地」で、その他の箱にはマジンガー本体と、外装が分けて入れられている。外装はノーマルのものと、左右に分割された「ハーフカットモデル」のタイプが用意されている。
箱からマジンガーZを取りだし、最初にメカニカルモデル状態で立たせてみた。体中にぎっしりとメカが詰まっている。筆者はまさに“マジンガー世代”で、30~40年前の子供雑誌では、当時のスーパーロボットの内部メカニックが紹介されていることが多かった。「ここには予備燃料タンクが入っているのか」などアニメでは語られないロボットの設定を興奮しながら読んでいた記憶がある。
「DX超合金魂 マジンガーZ」のメカニカルモデルは、その記憶を思い出させる。上腕部に「ドリルミサイル」、腹部に「ミサイルパンチ」が内蔵されているのが見え、“全身に武器が搭載されている”というイメージをもたらす。内部メカは、“骨格”を感じさせると言うよりも、全体に網目構造の意匠があって、「ガンプラ」の“内部構造”とはまた違ったベクトルを感じる。見ていてワクワクする“謎の先進技術で作られた機械”という感じがするのだ。
ここから、河内氏に外装を取り付けてもらったのだが、河内氏は「オススメの取り付け方法があるんです」と語り、本体のサウンドギミックを使ってオープニングテーマ「マジンガーZ」を流しながら外装をはめていった。「こうするとテンションが上がるんですよね(笑)」といいながら外装をはめていく河内氏はとても楽しそうだった。見ているこちらも劇中の工場で組み上がっていくマジンガーZのイメージが重なっていく。ロボットアニメでは合体シーンで主題歌が流れるが、その雰囲気も感じた。この主題歌と共に組み立てる、という遊びはとても楽しかった。
外装はきっちりはまり、体を動かしても装甲は外れない。30cmというマジンガーZを手に持った感触はかなりの充実感をもたらす。外装はダイキャスト製でずっしりと重い。「大きなロボットをその手に持っている」という感触を実感させるものになっている。
次にポーズを取らせるため各関節を動かしてみる。脚の関節部分にはクリックが入り、しっかりとポーズが決められる。大きなサイズのロボットを動かしている感じが楽しい。内部ギミックが詰まっているにもかかわらず、腰もきちんと回転する。「スーパーロボット超合金」のように膝立ちまではできないものの、幅広いポージングが楽しめる。足首も可動範囲が広く、しっかりと接地する。またポーズを取らせるだけでなく、直立させた姿もカッコイイ。30cmの巨体ならではの、見上げる感じで下から眺めてみるのも楽しかった。
河内氏にこだわりのポイントを聞いてみたが、ギミックに関しては足首のシリンダーが可動に合わせて伸縮するところ、そして何度も試行錯誤した肘部分だという。通常、肘パーツは、可動するようにヒンジ(ちょうつがい)を外側に付けることが多いが、ヒンジが外側に付いていることで、外観が損なわれるというデメリットがあった。そこで「DX超合金魂 マジンガーZ」では、肘下部分にある「ロケットパンチ」のノズルを接続口にして、肘下と肘上のパーツが自然なフォルムで接続できるようにした。こうすることで外観を損なわない美しい腕の形を実現したという。
そして、サウンド、発光ギミックであるが、こちらは動画でお楽しみいただきたい。音を鳴らす順番や、曲と技のタイミングなど、ギミックと共に河内氏がこだわった“構成”にも注目して欲しい。
「DX超合金魂 マジンガーZ」のプロポーションは洗練されてかっこよく、メカニカルモデルはどこか懐かしい雰囲気も持っている。現代的なセンスと、過去の“科学への憧れ”が融合している作品という印象を持った。サウンド、発光ギミックなど、思わず笑みが浮かんでしまう楽しさがある。気軽にガチャガチャ遊ぶと言うよりも、飾っておいて、眺めて、「このマジンガーが家にあるんだ」という実感を噛みしめる、そういった作品だと感じた。