★ Xbox 360ゲームショートレビュー★
回転させ、重ね合わせて道を見つける
2Dと3Dの狭間で遊ぶアクションアドベンチャー
「 フェズ」
ジャンル:
  • アクションアドベンチャー
発売元:
  • 日本マイクロソフト
開発元:
  • Polytron Corporation
プラットフォーム:
  • Xbox 360
価格:
800マイクロソフトポイント

発売日:
2012年4月13日
プレイ人数:
1人
レーティング:
CERO:A(全年齢対象)

 「フェズ」はカナダのPolytron Corporationが開発したアクションアドベンチャーだ。平面世界を“横回転”させることで、フィールドそのものを変化させ、探索していく。平面世界(2D)と立体世界(3D)が交差するという、斬新でユニークな作品となっている。

 そしてかわいらしいキャラクター、戦闘がないゲーム性、ほのぼのとした世界観と、女性プレーヤーにも魅力的な要素がたくさん詰まっいる。なにより、マップを隅々まで探索し、新たな道を見つけ、進んでいく。コンピューターゲームが持つプリミティブな楽しさを思い出させる、懐かしくて新しいゲームだ。

 本作は、GDC 2012で最近の日本のゲームについて、「Your games just sucks(日本のゲームはとにかく酷い)」とコメントし、話題を集めたPhil Fish氏が制作したゲームである。コアなネットユーザー、日本のゲームファンにとって、「そこまで言うFish氏のゲームは、どうなんだ」という気持をどうしても持ってしまうだろう。「フェズ」は、どんなゲームとなっているだろうか。


■ 回転させると世界が変わる。3Dフィールドを“平面(2D)”として道を見つけ出す、アクションアドベンチャー

飛び散ったキューブを集めるために、ゴメズは旅立つ
ゴメズの住んでいた街。ゴメズは平面世界の住人だった
破片を8個集めると小さなキューブに。とても嬉しそうな雰囲気が伝わってくる
左にあるのがブラックホール。宇宙の法則が乱れている

 「フェズ」の主人公はゴメズというキャラクターで、ドット絵で描かれたような2次元の世界の住人だ。彼はある日、不思議な「キューブ」を目撃する。そしてゴメズの目の前でキューブはバラバラになり、世界中に飛び散ってしまう。ゴメズは「ドット」と名乗る光に導かれ、キューブの破片を探す旅に出発する。

 キューブとの出会いにより、ゴメズは赤い“帽子”を手に入れている。この帽子を得たことで、ゴメズは世界を“回転”させる力を手に入れたのだ。2D世界に住んでいたゴメズは世界を回転させることで変化させ、道を作っていくことができる。キューブの分解によって、宇宙の法則が乱れ、ブラックホールがこの世界に広がろうとしている。ブラックホールを防ぐため、ゴメズはキューブを集めなくてはならないのだ!

 「フェズ」のルールは画面で見ると理解しやすいだろう。下の3つ並んだ写真を見て欲しい。左下の画像では壁に生えているツタを伝って移動できるのだが、どうしても真ん中のキューブの破片にはたどり着けない。ところが画面を回転させ、中央の画像のようにすると、さっきまで向こうの壁にあったツタが、今までつかまっていたツタと繋がり、移動できるようになるのだ。そして再び視点を回転させればあら不思議、右の画像のようにいつの間にかゴメズはキューブの近くのツタに移動してしまっているのだ。

 ここで大事なのは、ゴメズにとっては、世界は“奥行き”が存在しないということだ。我々の住む3次元の世界でも、横から見ると3つ並んでいる柱が、縦から見ると1本に見えたりする。「フェズ」の世界ではものが重なったように見えるとき、実際にそのまま全てのものが繋がってしまうのだ。このルールを利用して、画面の反対側に一気に移動したり、遠く離れているように見えるものを近づけたりできる。

 こう書くと難しいゲームのように感じるかもしれないが、最初は画面を回転させることで隠されたものを探す、というようなシンプルな要素から始まる。マップを回転させた時に宝物が出てくるのは、RPGで宝箱や収集アイテムを見つけたときの喜びに近いと感じた。実際、プレイステーションや、サターンが登場し、ゲームに3Dグラフィックスが取り入れられたころは、画面を回転させて隠されたものを探すゲームも多く見られた。本作はその頃の感触も思い出させてくれた。

 この世界は扉や「ワープゲート」でいくつもの小さなフィールドが繋がっており、各フィールドには様々な要素が詰め込まれている。画面を回転して探索だけで進めたものが、工夫をしないと進めなくなり、重ね合わせてフィールドを変化させるテクニックが必要となってくる。そして今までの知識を組み合わせ、試行錯誤しながら道を見つけていくようになるのだ。小さな成功体験が、やがて複雑なパズルを解き明かす“知恵”になってくるのが楽しい。

 また、本作の“かわいらしさ”も大きくプッシュしたい要素だ。欧米のゲームは派手だったり、残酷な表現が目立つゲームが多い印象があるが、本作の主人公ゴメズは大きな頭と短い手足でまるでぬいぐるみのようで、大変かわいらしい。何よりもキューブを揃えたときの笑顔が良い。この無邪気で楽しそうな笑顔が、プレイの意欲を後押ししてくれる。

 加えて、フィールドに小動物や虫がいるのがさらに平和な感じを強調してくれる。彼らはただの背景で、ゲーム性に何も影響しないが、とても心を和ませてくれる。戦闘要素もなく、プレーヤーはマップの探索にひたすら集中できる。じっくり、のんびり楽しみたいゲームである。


フィールドを回転させることで、離れていたツタが同じ軸に。上に移動し、もう1度回転させると離れたツタに移動している
足場がないように見えるところでも、回転させることで道が見えてくる
フィールドには様々な小動物がいる
フェズの世界は全てが四角い。右の夜空に浮かぶ星座まで四角だ


■ ふんだんにアイデアが盛り込まれたフィールド。「エッシャーのだまし絵」のような世界を探索する楽しさ

小さなキューブを集めることで道が開かれる
マップ画面では、フィールドの繋がりが確認できる
ゲートや扉をくくり、次のフィールドへ向かう

 「フェズ」では、フィールドを進んでいくと、様々な仕掛けが出てくる。夜空に溶け込んで見えにくい真っ黒な足場は、時々走る稲光でその姿を現わす。回転する足場や、乗ると崩れる足場もあって、ここではタイミングと正確な操作を試される。

 「旋回軸」というギミックは大きな柱を回転させる事ができる。柱についているハシゴの位置を合わせて、足場を回転させることで1本のハシゴに繋げたり、穴の位置を合わせることで隠されたドアを見つけ出したりする。ゲームは徐々に複雑になり、探索の楽しさと、うまくいったときの達成感を大きくしてくれる。本作には戦闘要素はなく、じっくりフィールド攻略に取り組むことができる。世界は広大であり、様々な“風景”を見せてくれる。

 そして、フィールドは森のような場所や、機械仕掛けの仕掛が多くある場所など、多彩なテーマがあり、中にはおどろおどろしい雰囲気の場所もあるが、全体的にのどかで、明るい場所が多い。フィールドのグラフィックスはシンプルだが味があり、ドット絵のように何もかもが四角い。夜空に浮かぶ星座まで四角いのが面白い。このグラフィックスのセンスと、フィールドによって変わるテーマが楽しい。時間によって背景が夜から昼に変化するところもある。扉をくぐると、まったく違う風景が広がっていたりする。“異世界”を探索していることを強く意識させられる。

 マップ画面を開くと各フィールドの繋がりや、隠された秘密が確認できる。最初は思うまま、次々とフィールドを進んでいたプレーヤーも、さらに前に進むため、各フィールドをより細かく探索するようになっていくだろう。繋がっている場所はマップから推測できるようになっており、例えば下に伸びている線でマップが繋がっている場合、フィールドの下の方に次のフィールドへの扉がある。まだ通ったことのない扉は閉まっているなど、探索に関しても分かりやすくするよう配慮されている。

 まずは細かいことを考えずどんどん進み、色々なところを見て、そこからよりフィールドの細かいところに目を向ける。「フェズ」はたっぷりやり込めるゲームだと感じた。ひたすら熱情に後押しされ、前に進んでいくゲームではなく、1つ1つ小さな作業を積み重ね、マップを全て埋めていくような、コツコツ積み重ねが好きなプレーヤーにぴったりのゲームだ。世界は謎に満ちていて、ゴメズの来訪を待っている。プレーヤーはマップの繋がりをチェックし、フィールドを何度も回転させじっくりと探索を行ない、世界に散らばるキューブを集めていくのだ。

 そして、筆者が一番面白く感じたのが、本作の中心である“2Dと3Dの境界線のようなゲーム性”である。3D空間では有り得ない繋がりが、平面化したときに生まれる。このアイデアは、一見するとちゃんとした立体画に見えるのだが、3次元での実現は有り得ないという、オランダの画家マウリッツ・エッシャーの描く、「エッシャーのだまし絵」そのままで、エッシャーが好きな筆者は、特に面白く感じた。

 本作では“2D”であることを強く意識することが、ゲームを進める鍵となる。マップは立体ではあるが、ゴメズが進むのはあくまで2D世界なのだ。実際の距離や位置ではなく、“見た目の位置”がとても重要で、それを活用して道をきりひらいていく。現実では有り得ない、本作ならではの“法則”を活用してゲームを進めていくのがとても楽しい。

 「フェズ」はメニュー画面や、キャラクターの吹きだし、ドットを意識したグラフィックスデザイン、ビープ音のような効果音など、意図的に8bit時代のゲームの雰囲気を取り入れている。その上で、開発者は自分なりの“ゲームの進化”を「フェズ」という作品で表現したのではないか。ゲームをプレイして感じたのは、開発者の過去のゲームへの深い愛情だった。だからこそ、「フェズ」はさまざまなゲーム要素を受け継いだ上で、新しさを提示しようという意欲に満ちたゲームだと感じた。

 Phil Fish氏は日本も含めたゲームという文化が好きで、深く愛している。そのことが本作をプレイすることで伝わってきた。そして文化を受け継ぎ、自分なりの理想を託して本作を生み出したのだ。より間口が広く、面白く、そして革新的なゲームを目指すFish氏だからこそ、GDCであのようなコメントをしたのだと思う。本作をプレイすることで、Fish氏の思いに触れ、自分なりのゲームへの思いが生まれてくると思う。そして欧米の開発者に再び衝撃を与えられるような、ゲームを、日本の開発者には生み出してもらいたいと思う。


レールに沿って上下に動く足場は、回転させることでレールを1本に繋げられる
稲光で見える足場。右は乗っていると崩れてしまう足場だ
自動で動く足場の場合、タイミングが重要になる
ゴメズは様々な場所を巡っていく。どんな風景が出てくるかも楽しみだ

(2012年 4月 13日)

[Reported by 勝田哲也 ]