★ Xbox 360ゲームショートレビュー★
バグダッドと東京を占領するエイリアンを倒せ!
新モードも搭載した“タワーオフェンス”ゲーム
「 Anomaly Warzone Earth」
ジャンル:
  • シミュレーション
発売元:
  • 日本マイクロソフト
開発元:
  • 11 bit studios
プラットフォーム:
  • Xbox 360
価格:
800マイクロソフトポイント
発売日:
2012年4月6日
プレイ人数:
1人
レーティング:
CERO:A(全年齢対象)

 日本マイクロソフト株式会社は4月6日、Xbox LIVE アーケードでXbox 360用シミュレーション「Anomaly Warzone Earth(アノマリー ウォーゾーン アース)」を配信する。価格は800マイクロソフトポイント(MSP、約1,120円)。CEROレーティングはA(全年齢対象)。プレイ人数は1人。開発はポーランドの11 bit Studios。ローカライズは英語音声、日本語字幕。

 カジュアルゲームには進軍してくる敵に対して砲台を設置して撃退していく「タワーディフェンス」というゲームジャンルがあるが、「Anomaly Warzone Earth」はその発想を逆転し、プレーヤーは戦車部隊を率いて、敵が待ちかまえるマップを突破していく、「タワーオフェンス」という新しいシミュレーションゲームである。

 すでにiOS版やWindows版では高い評価を受けている同作だが、今回、Xbox 360版オリジナルの新モード「タクティカル トライアルモード」をひっさげてXbox LIVEアーケード向けにリリースされたので、さっそく本作の魅力を紹介しよう。


■ 待ち受けるエイリアンを撃破して進め! 「タワーオフェンス」という新しいゲーム

落下した宇宙船の残骸を覆うように現れたドーム。中には何があるのか
マップ画面。最適のルートを選択する
リペアのアビリティ。一定時間マークの上のユニットの耐久力が回復する

 「Anomaly Warzone Earth」の物語は、2018年、地球に巨大彗星が接近しているのを感知したところから始まる。ところが衝突間近、人々は近付いてくる物体が彗星でないことを知る。それは巨大な破片、宇宙船の残骸だったのだ。その残骸は2つにわかれ、東京とバグダッドに落下した。その破片は地面に激突すると巨大なバリアをドーム状に張り巡らせてしまった。地球側はそのドームをAnomalyと呼んだ。

 バクダッドでAnomalyを調査していた軍は、バリアの薄い部分を発見した。そして、内部を調べるため部隊を送り込むこととなった。プレーヤーは送り込まれる部隊「第14部隊」の指揮官となり、部隊を導きAnomalyの中を進んでいくことになる。ドームに覆われてしまったバクダッド市内にはエイリアンによる砲台が設置されている。プレーヤーはルートを選択し、部隊を管理し、さらに様々なアビリティを活用して部隊を奥へと導いていく。

 「Anomaly Warzone Earth」は、「タワーオフェンス」という従来の「タワーディフェンス」とは逆転の発想によって作られたシミュレーションゲーム。2011年に、Windows版やMac版、iOS版、Android版などが発売されており、2011年のApple Design Awardを受賞している。GDC 2012でもとりあげられ、話題を集めたゲームである。

 「Anomaly Warzone Earth」ではプレーヤーは部隊が進むルートを設定し、部隊ユニットを選んで敵が待ち受けるバクダッド市内を進んでいく。ユニットには耐久力に優れる「タンク」や、攻撃力に秀でた「ミサイル」、パワーフィールドを張り巡らせる「シールド」、より強力だがコストが高い「ヘビータンク」などがある。

 敵は近付いてきた敵を無差別に攻撃してくる据え置き型の砲台だ。通常の砲台だけでなく、前方に強力なビーム攻撃を行なう「スコーチャー」、広範囲にダメージを与える砲弾を発射する「ベヒーモス」といった様々なタイプの敵が出現する。スコーチャーは強力だが砲台の発射方向を変えられないため、側面や後方からの攻撃が有効だ。このため、ルートの選択は、本作における特に重要なファクターとなる。

 プレーヤーは指揮官ユニットを自由に動かし、部隊を支援することができる。指揮官は様々なアビリティが使える。「リペア」はユニットを直すアビリティ。使用すると一定時間マップ上にマークが出現し、そのマークに触れたユニットの耐久力が回復する。「スモーク」は一定時間的の命中率を下げる効果がある。「デコイ」は敵の攻撃を引き付ける囮を出現させる。

 指揮官ユニットも敵に近付くと攻撃を受ける。指揮官ユニットのみ耐久力が自動回復するが、ダメージを受けすぎるとしばらく動けなくなってしまう。プレーヤーはリアルタイムでルートを選択し、常にユニットに気を配り、ベストのタイミングでアビリティを使っていかなくてはならない。アビリティには限りがあり、ムダ打ちすると後半でバテてしまうことになる。最も効率のいい使い方が求められる。

 ルート選択やユニット管理中はゲームが一時停止する。ここでじっくりルートを選択し、作戦を練ることができる。さらに本作には細かくチェックポイントが設定されているので、戦術をミスして部隊が全滅しても途中からやり直すことができる。シミュレーションというと敷居が高く感じる人もいるかもしれないが、ゲーム要素は徐々に増えていくバランスとなっており、難易度選択も可能で、初心者でも楽しみながらゲームを進め、ハイスコアを目指す楽しさを体験できる。

 ゲームでは「アビリティの補給」や、「資源」の確保も重要になる。アビリティはゲーム開始時などに投下される他、敵施設を破壊しても空軍が支給してくれる。進行していく軍隊を見守りながらアビリティアイテムを回収するのは結構忙しい。また、敵施設を破壊したりマップ上にある「カルサウルム」という物質を破壊することで資金が得られ、この資金でユニットを新しく買ったり、アップグレードをする。どのタイミングでどう強化するかは好みと戦い方で変わってくるだろう。


通常の砲台も、数が揃うと脅威となる。中央がスコーチャー、右がベヒーモスだ
アビリティのスモークと、敵の攻撃を引き付けるデコイ。右は壊すと資金が得られるカルサウルム
バグダッドに出現したドーム。侵入を試みる部隊に、稲妻が降り注ぐ
ドームの中は、多くの砲台が行く手を阻んでいた。部隊を導き、奥へと進む


■ 舞台は東京へ! パズル要素の強いやり応えたっぷりのオリジナルモードも搭載

資金を集め、ユニットをアップグレードしていく
破壊された東京タワー。東京マップは日本人プレーヤーに興味深い
オリジナルの「タクティカル トライアルモード」は、バーチャルシミュレーションとして戦っていく

 「Anomaly Warzone Earth」はバグダッドに発生したAnomalyの中を進んでいく。最初のステージはAnomalyに侵入するまで。ドームから稲妻が発射され、部隊の行く手を阻む。プレーヤーは刻々変わる状況に合わせてルートを変えなくてはならない。その後も、スコーチャーや、ベヒーモスの登場に合わせた戦い方や、アビリティの使い方など、徐々にゲームシステムを覚えていける。

 ステージもシールドを発生させる敵拠点との戦いや、制限時間内での戦いなど、次々と現われるステージにはふんだんにアイデアが盛り込まれており、プレーヤーを飽きさせない。また、エイリアン達に占拠されたフィールドはとても細かく描き込まれている。放置された車や、瓦礫に変わったビルといった廃墟に変わってしまった街に、禍々しい敵の兵器が居座っているのはSF映画そのままの光景だ。

 バグダッドの後は、東京に舞台が移る。破壊された東京タワーや「隅田川」といった地名が出てきたり、日本人プレーヤーには興味深い光景が連続する。そして「飛んでいる輸送機の安全なルートを確保する」など、ゲーム性もさらに凝ったものになる。ステージを進めていくことで、どんどんゲームにのめり込んでいけるだろう。

 ゲームモードもストーリーモードを進めていくことでその他のモードがアンロックされる。「バグダッド大混乱」は次々に現われる拠点をつぶしていくモードで、ストーリーモーどとは違った戦略が試される。制限時間内に敵を倒すのだが、効率だけでなく、次に繋げる為の資金の確保も重要だ。

 Xbox 360版オリジナルの「タクティカル トライアルモード」は、バーチャルシミュレーションとして戦っていくモード。このモードはパズル要素の強い、よりゲーム性に特化したモードとなる。「タクティカル トライアルモード」では、他のモードでは見ることができない、「破壊されると得られるアビリティ」も表示されている。

 資金は潤沢で、最初から充実した戦力で挑めるが、逆に使えるアビリティは少ない。このため、どの敵をどういう順番で倒すか、戦略性を問われることとなる。敵の密集しているところではアビリティが必要になる。どのタイミングでどうアビリティを使い、敵を攻めていくか、ストーリーモード以上に試行錯誤が必要となるモードだと感じた。

 「Anomaly Warzone Earth」は、ステージや各ゲームモードのスコアはインターネットランキングに登録されるので、1つのステージにこだわって攻略し、ランキング上位を目指すのも楽しい。難易度を上げるとスコアも上がるので、より効率のいい戦いを目指していける。じっくりやり込める作品だ。

 実際プレイすると、かなり「忙しい」ゲームだ。アイテムは取りたいけど、部隊はドンドン先に進んで行ってしまう。一瞬のためらいがミッションの失敗に繋がるため、気が抜けない。Aボタンでアビリティ、Xボタンで部隊管理、Yボタンでルート設定だが、瞬間的なルート選択が必要な場合もあり、焦ると違うボタンを押してしまうこともあった。また、ルート選択のみもう1度Yを押さないと通常画面に戻らないのだが、ここは他の操作と同様、Bボタンで戻る方が良かったかもしれない。

 難易度が高く感じる部分もあるが、だからこそうまくいったときの爽快感は強い。きつい戦場にあえて飛びこむか、それとも激戦区を避けてクリアを目指すか、葛藤しながらルートを選択する。時には必要以上の遠回りをしてしまうこともあるが、資金を得て、兵力を充実させられると「矢でも鉄砲でも持ってこい!」という気持ちになる。それでも油断するとあっという間に壊滅してしまうのだが……。ただ、チェックポイントから何度でもやり直しができるのは本作のハードルをかなり下げていると感じた。

 ステージごとの様々な条件はゲームを進めていく上での良いアクセントになる。さらに、制限時間などの“条件”を満たしながらどこまで高得点を目指すか、やりこむ意欲を刺激する。徐々にゲーム要素を覚えていける展開、多彩なアイデア、カジュアルながら深いゲーム性を持っている。多くの人に挑戦してもらいたいゲームだ。


バグダッドの奥はさらに激戦が待っている。狭い道を進むなど、地形も多彩だ
東京の都市部での戦い。自衛隊の協力も
傷ついた輸送機を護衛しながら進む。脅威となる砲台をつぶさなくてはならない
「バグダッド大混乱」は1つの大きなマップで、次々に現われる拠点をつぶしていく
バーチャルシミュレーションの「タクティカル トライアルモード」。アビリティをどう使うか、どのルートで進むか、戦略が大事となる

(2012年 4月 7日)

[Reported by 勝田哲也 ]