★ オンラインゲームファーストインプレッション★
名作RPG、オンラインとなって新生
常に死と隣り合わせの中、信じられるのは己の腕と仲間
「Wizardry Online」
ジャンル:
アクションMMORPG
運営元:
ゲームポット
開発元:
ヘッドロック
対応OS:
Windows XP/Vista/7
利用料金:
無料(アイテム課金制)(予定)
発売日:
未定(6月18日、19日、25日、26日にクローズドβテスト実施)

 ファンタジーRPGの元祖「Wizardry」が、「Wizardry Online(ウィザードリィ オンライン)」として蘇る! 「Wizardry Online」は重厚な世界観、おどろおどろしい地下迷宮、そして死がすぐそこにあるきつめのゲームバランスを持った、ハードなアクションMMORPGだ。プレーヤーは富と冒険を求めて、ダンジョン深く分け入っていく。

 今回は6月25日~26日に行なわれたクローズドβテストで体験できた本作の基本要素と感触を紹介していきたい。作品全体から開発スタッフが、「このゲームでプレーヤーがどう遊んでくれるんだろう」という期待感を持っているのが感じられる。懐かしさと新しさ、こだわりが感じられる作品である。


■ 「Wizardry」の要素を取り組みながら、オンラインアクションRPGとして新生

キャラクター作成画面。5つの種族が用意されている
戦闘はアクション。距離を取ったりガードを使ったりスキルを活用するなど、うまく戦うためにはプレーヤースキルが問われる

 筆者にとっての「Wizardry」初体験は、パーソナルコンピューターが“マイコン”と呼ばれていた時代だ。その頃は「ロードス島戦記」のブームや、ゲームブック、テーブルトークRPG等が流行っていた時期で、「Wizardry」は“コンピューターで本格的なファンタジーRPGがプレイできる作品”として、当時の雑誌で絶賛され、ムック本などもたくさん出た。筆者はそのムーブメントに押され、「Wizardry」をプレイした。

 「Wizardry」で衝撃だったのが“自動でセーブされる”という点だ。きついゲームバランスなうえに、パーティーが全滅してしまった状況でセーブされてしまうと身動きが取れなくなる。このため、当時のプレーヤーはリセットボタンに常に手をかけプレイするスタイルを生み出した。

 いま思えば、リセットを押すのはゲームが提供するハードさを回避するずるい方法だったが、「何かあったらリセット」という認識を最初に作ったゲームだったと思う。そしてこの“裏技”をもってもゲームは難しかった。筆者は攻略本の袋とじのマップを横に置き、リセットボタンに常に手をかけ、ドキドキしながらゲームを進めていった。

 そして現在、「Wizardry Online」は、「Wizardry」の要素を濃密に取り入れながら、アクション要素の強いMMORPGとして我々の前に姿を現わした。「Wizardry Online」のキャラクター作成では、最初に種族と性別を選ぶ。種族は、人間、エルフ、ドワーフ、ノーム、ポークルがある。ドワーフは男のみ、ノームは女のみだ。クローズドβテストでは人間の男とエルフの女が選べた。

 種族と性別を選ぶと、「ボーナスポイント」が表示される。ボーナスポイントは初期ステータスに割り振るもので、数値はランダムに変わる。「Wizardry」では何十回と繰り返し、少しでも高いものにしていた。同様に本作でも何度も振り直すことが可能だ。初期ステータスと、「アライメント」によって、選択できる職業が変わる。今回は「ファイター」、「メイジ」、「シーフ」、「プリースト」が確認できたが、「ロード」や「ニンジャ」など、より強力な職業も用意されるのか気になるところだ。

 ゲームでは、簡単なチュートリアルもきちんと用意されている。NPCの基本的な役割を学ぶことができ、初期のダンジョンで戦闘の基礎を学ぶ。「Wizardry Online」はアクションMMORPGで、戦闘はリアルタイム。キャラクターの位置取りと、スキルを活用して戦っていく。

 初期のチュートリアルダンジョンを終えると、いよいよ本当の冒険の幕開けになる。「英雄の集う広場」に通行可能になり、そこには「ギルガメッシュの酒場」や、「冒険者の宿」など「Wizardry」で登場した施設も出てくる。冒険者達はここを拠点に、ダンジョンへと旅立っていくのだ。

 「Wizardry Online」は「Wizardry」の要素を積極的に取り入れている。オールドファンならば、ニヤリとさせられる要素に溢れている。しかし「Wizardry」が6人のキャラクターを作り、パーティーで進んでいくゲームに対して、「Wizardry Online」は、1人のキャラクターを操り、アクション要素で敵と渡り合う作品である。何よりもオンラインゲームである点で、ゲーム性は大きく異なる。本作は「Wizardry」のエッセンスを取り入れた新しいオンラインゲームであることをプレイして改めて認識できた。


ボーナスポイントと、種族固有の能力値を組み合わせてキャラクターを作る
港町イルファーロの入口と、最初のダンジョン「イルファーロ訓練所」でゲームの基礎を学ぶ
「英雄の集う広場」から、本格的な冒険の始まりだ。施設の名前は「Wizardry」と同じものだ


■ 暗く、危険なダンジョン。仲間との協力は必須

最初の本格ダンジョン「カリグラーゼ下水道」の入口は、多くのプレーヤーが集まっていた。奥に進むのにためらいのようなものが感じられた
街ではサブクエストが受けられる
パーティープレイを体験。今回はクリアを目指して奥に突きすすむ感じだった

 「Wizardry Online」のメインであるダンジョンは、MORPGのインスタンスのようにプレーヤーやパーティーのために生成されるものでなく、数十人が同時参加できるMMO空間になっている。数十のチャンネルが生成されており、パーティーで集まるには入るダンジョンのチャンネルを合わせなくてはいけない。

 最初の本格ダンジョン「カリグラーゼ下水道」の入口は、多くのプレーヤーがいたのだが、何となく入口でためらっているプレーヤーが多い気がした。筆者自身もすぐに奥に進めなかった。何故ならば「Wizardry Online」は“ダンジョンが怖い”のだ。暗く不気味な上に、闇の中にモンスターの姿がぼんやり見えていて、奥にはもっといそうで、命の危険を感じる。筆者と同じように感じる人はいるようで、入口にある無料でHPを全快できる「回復の泉」にすぐ戻れるところで戦っている人が多かった。この雰囲気は独特な気がした。

 意を決して前へ進もうにも、最初のモンスターでボロボロになる。ダンジョンではびっくりするほど死にやすい。しかし最初は復活できる「守護者の像」が各所に配置されていたため、死にながら少しずつ行動範囲を広げていくということができた。回復アイテムはドロップアイテムからの入手がメインで常に足りず、死んで体力を回復するのも有効だと感じてしまうほどだ。カリグラーゼ下水道にはトラップや仕掛もたくさんあり、ダンジョンの隅々まで探索し前に進んでいくことになる。苦戦しながらレベルを上げ徐々に奥へと進んでいくという感じだった。

 慣れてくると前に進むためにモンスターと戦わず逃げるのも有効だということも学んだ。このため、複数のモンスターを連れ回す「トレイン」になりやすかった。奥に進むためには、他のプレーヤーを露払いにして進む場合も少なくないのだが、モンスターは一定距離で追撃をやめるので、引き返してくるモンスターに襲われることもあり、かなりの緊張感だった。

 カリグラーゼ下水道では中盤に「ダンジョン攻略は1人では無理だ」という事実を突き付けられる。要所にはMOフィールドがあり、中にいるたくさんのモンスターを倒さないと先に進めないのだ。パーティーを募り、仲間を集めて力を合わせて戦わなければ越えられないゲームバランスだ。

 このため、本作はチャンネルを超えたパーティー募集機能を持っている。必要な機能も揃っていて、広くメンバーを探せるようになっている。しかし、実際にパーティーを組もうとすると意外に組みにくかった。まず募集が少なく、かなり先に進んでいる人の募集しかなかったり極端に目標を限っていたり、気軽に入れる雰囲気が少なく感じた。このためか無理にソロプレイを押し通す人も多い気がした。昨今のMMORPGはソロ指向が非常に強い。「Wizardry Online」では、まずプレーヤーの意識そのものを変えていかなくてはならないかもしれないと感じた。

 最初は多少苦労したが、何とかパーティーに参加することができた。シーフとファイターが2人ずつというパーティーだったが、多数の敵にはシーフのトラップが有効だったり、力を合わせる楽しさを体験できた。筆者はファイターで進めたが、面白いのが「ガードポイント(GP)」という要素だ。HPとは別のポイントで、右クリックで盾を構えているとき攻撃を受けるとGPが減る。GPが0になるとHPが減る。また相手がガード状態の時に攻撃をすると、武器の耐久力が減ってしまう。このため敵のパターンを読んで攻撃しなくてはいけない。またパーティープレイでは盾役に徹して、他の人はモンスターの後ろから殴る、という戦い方も有効だと感じた。

 ちょっと戸惑ったのは、筆者は「エバークエスト」などパーティープレイが必須のMMORPGの経験を元に、みんなが一丸となって進んでいくかと思ったが、リーダーが後ろを気にせずどんどん先に行ってしまったのだ。協力してモンスターを倒していくのではなく、チェックポイントを目指して、極めて効率的に進んでいくのである。この先を急ぐ感じは、「アラド戦記」などのアクションタイプのMOのプレイ感覚かもしれない。今回はそれでも何とかなったが、今後のダンジョンではかなり慎重に進まないといけなくなるのではないかと感じた。

 今回のテストでは、多くのプレーヤーがソロで進めるということが頭にあるためか、プレーヤーの中に回復役のプリーストが少なかったように思える。今後、回復役は必須となり、パーティープレイに長けた優秀なプリーストが、引っ張りだこになるだろう。「Wizardry Online」では、シーフが罠を警戒し、モンスターが出たときにはファイターが前に出て敵を引き付けるという濃いパーティープレイが体験できそうである。

 すぐに気がつくヒーラーや、敵のコントロールがうまいファイターといった仲間を見つける。もしくは、そういったプレーヤーを目指す、「エバークエスト」や、「ファイナルファンタジーXI」のような強い絆を求められるゲームになりそうだ。現在にあえてレガシーとも言える「人の繋がり」を求める作風には、好感を持った。


カリグラーゼ下水道へは接続チャンネルを選んで進む。さまざまな仕掛が行く手を阻む
要所ではMOフィールドで腕試しをさせられる。大量のモンスターが出現するため、ソロで進むのは難しい
奥はさまざまなトラップもある。アクション要素も期待できそうだ。パーティープレイでの連携も意識できればもっと楽しくなると感じた


■ ステータスダウン、ロストまであるゲームシステム。PKも可能な本作はどんな未来を描くか

蘇生は、一定の確率で失敗する可能性がある
PKになると体が赤く光る。テスト中にもうPKが闊歩していた

 「Wizardry Online」の大きな特徴に「死亡とキャラクター復活」がある。プレーヤーキャラクターのHPが0になると、死亡状態になる。このとき、プレーヤーは魂の状態となり、周りが灰色になる。このとき、光っている守護者の像に触れれば復活できる。ただし復活には“蘇生率”があり、「Wizardry」と同じように復活に失敗したときは、灰になってしまうのだ。

 初期段階では蘇生率は100%だが、ゲームが進み「ソウルレベル」が上昇すると、レベルキャップが開放される代わりに、復活に失敗して灰になる可能性が出てくる。灰になった状態でさらに復活に失敗すると、キャラクターはロスト(消失)してしまう。それでもソウルレベルは引き継がれ、セカンドキャラクターはチュートリアルなどはクリアしている状態になっている。それでも灰になったときの焦燥感はかなりのものになりそうだ。

 「Wizardry Online」では、死ぬと死体が残る。今回のテストでは守護者の像が近くだったのですぐ復活ができたが、遠い場合は他のプレーヤーに死体をあさられ、アイテムを奪われてしまうかもしれないのだ。アイテムを保持するため、仲間に死体回収を頼む、といった状況も生まれそうである。

 「Wizardry」を受け継ぐ要素としては、「レベルアップ時のステータス変化」もある。「Wizardry Online」では充分な経験値を得てもその場ではレベルが上がらず、それから休憩するとレベルが上昇するのだが、通常レベルアップするとステータスは上がるが、運が悪いと下がってしまうのだ。

 もしキャラクターの必要なステータスが深刻なほどに下がってしまったら……そのキャラクターはやはり、お蔵入りにするしかないのではないだろうか。「Wizardry Online」では、ロストしたり、レベルアップで弱体化したりと、他のオンラインゲームとはキャラクターの価値観そのものが異なる部分がある。まだこれから明らかにされるシステムの部分ではあるが、注目したいところだ。

 オンラインゲームならではの要素としては、ソウルレベル2からPKができる。迷宮の中ではもちろん街中でも可能だ。街中の場合はガードに見つかると攻撃されてしまうが、ガードのいない路地もあり、街でも注意が必要となりそうである。PKになると眼が赤く光り怪物のような外見になる。街と迷宮のみという本作の場合、PKが他のプレーヤーから逃げ回るのは難しそうだ。PKと、それを倒すPKKの戦いも頻繁に起こりそうである。

 強力な敵、何が待っているかわからない迷宮、そして常にすぐそこにある“死の恐怖”。「Wizardry」が持っていたエッセンスを再現しようという「Wizardry Online」は、MMORPGの“原点回帰”も狙っているように感じた。このゲームのバランスは厳しい。だからこそ、プレーヤー達の協力は必須であり、パーティーを組み、協力して進まなくてはならなくなるだろう。一方で、それでも現在のプレーヤーは、ソロを貫き通したり、スピード重視の高速クリアを目指したりといった挑戦をしそうで、このゲームがどういったものになるかはまだまだわからない。本作がオープンβテスト、正式サービスでどのようなプレーヤー社会を形成していくか、楽しみである。


サブキャラクターでエルフの魔法使いを体験してみた。敵との位置取りが重要な職業だ
死ぬと魂になり、死体は一定時間後他の人がルート可能になる。右はレベルアップ画面。必要な能力が上がらなかったり、下がることも


(2011年 7月 5日)

[Reported by 勝田哲也 ]