ゲームポット、WIN「Wizardry Online」発表会開催

遠藤雅伸氏、中村光一氏、山岡晃氏、伊藤賢治氏ら豪華ゲストが登場


5月21日 開催

会場:Venus Fort



 株式会社ゲームポットは5月21日、Windows用オンラインRPG「Wizardyr Online(ウィザードリィ オンライン)」の発表会をお台場Venus Fortにある教会広場にて開催した。

 この発表会では、新作である「Wizardry Online」の紹介と、「Wizardry」が30周年を迎えることを記念したトークイベントが開催された。


会場となったVenus Fortにある教会広場。「カント寺院」を思わせる雰囲気がよく出ている



■ 「冒険者に安全はない」。ロストありを確約した「Wizardry Online」発表会

「Wizardry」総合プロデューサーの岩原ケイシ氏
「Wizardry Online」イメージビジュアル

 「Wizardry Online」は、コンピューターRPGの元祖といわれる「ウィザードリィ」をオンラインゲーム化したもの。ゲームポットが2007年に発表し、ついに形になったタイトルである。開発は「エミル・クロニクル・オンライン」などオンラインゲームの開発実績を持つ株式会社ヘッドロック。企画・運営をゲームポットが担当する。

 まず本作のスケジュールについて、5月21日14時からクローズドβテスターの募集が開始された。応募者のうち先着10,000名は、5月28日と29日に行なわれる負荷テストに参加できる。それ以降も募集は続けられ、抽選で10,000名が6月中旬ごろに予定されているクローズドβテストに参加できる。弊誌でも1,000名分の専用募集枠を設けて募集しているので、こちらの記事からご応募いただきたい。

 発表会ではゲーム内容について、ゲームポットの「Wizardry」総合プロデューサーを務める岩原ケイシ氏が説明した。まず本作の方向性について、「短い時間でさっと楽しめるのが最近のトレンドだと思うが、あえてその逆を行く」と宣言。「ウィザードリィ」の伝統を守った高難度なゲームであることをアピールした。

 ゲームシステムは、プレーヤーが集まる街はMMO形式で、ダンジョンはMOの形式をとるという。しかしMOと言っても、1つのダンジョンに30人、あるいは100人というかなり大勢のプレーヤーが入ることになるという。ダンジョンは中を探索し、アイテムを収集して鑑定する、といったシリーズ伝統の流れを踏襲する。ただしダンジョンは1つではなく複数存在するという。

 ダンジョン内は1本道ではなく、スイッチを押さなければ進めなかったり、通せんぼしているNPCの依頼をこなさなければならない場所もある。「何も考えずに進めば、街に戻れなくなったりもする」という。ダンジョン内には高低差もあり、落ちるとダメージを受けることもあるなど、慎重な行動が求められる。

 高難度なデザインは、ゲーム開始直後からあるという。初めてダンジョンに入ってクリアするというのはまず不可能で、進めるだけ進んで何とか街に戻り、また少しずつ進んでいくことになるという。これも「ウィザードリィ」の伝統的なプレイスタイルだが、オンラインゲームとして考えると「最初のダンジョンすら1発でクリアさせてもらえない」というのは極めて異質だ。

 そして最大の注目点である、死んだときの処理。死んだキャラクターを復活させるのに失敗すると灰になり、さらに再度復活に失敗するとロスト(消滅)するというのが「ウィザードリィ」シリーズの鉄則だ。オンラインゲームである本作も、その仕組みを踏襲する。岩原氏は、「オンラインRPGは長い時間をかけてキャラクターを育てるが、それでも本作ではロストさせる。その緊張感がなければ『ウィザードリィ』を名乗れないと思う」と、この点を強調した。

 キャラクターが死んでしまうシチュエーションとしては、モンスターに倒されるのはもちろん、罠も下手をすると即死するという。またPKも可能で、いきなり殺されることもあるという。これはスタンドアローンの「ウィザードリィ」にはなかった要素だけに、さらに難易度と緊張感を高めることになるかもしれない。

 シリーズの伝統から外れた新たな試みもある。本作には、盾を構えるなどの単純なアクションが用意されている。中には「猛ダッシュで逃げる」というものもあるという。このあたりは1人で何とかするためというよりは、仲間を募って役割を決めて挑み、うまく立ち回ることが攻略のポイントになるそうだ。

 岩原氏は本作について、「冒険者に安全というものはない。いかに死なないように育てるかが重要。自分が本当に冒険者だったらこうなのか、と感じてもらえるようにしたい。途中で心が折れる冒険者も多いと思うが、だからこそクリアした時に強い達成感が得られるのでは。ゲームポットからの挑戦状と受け取ってトライして欲しい」と語った。

 岩原氏からは先述の負荷テストについても説明があった。負荷テストは、参加者がGMの指示に合わせて一斉に魔法を詠唱するなど、純粋なテストを目的としている。しかしダンジョンはルートを制限した簡単なものを用意し、戦闘も少しできるようにするという。モンスター2種類用意し、うち1つは強力なレッサーデーモンを配置するそうで、岩原氏は「思う存分殺されていただきたい」と語っていた。

 最後に質疑応答の時間が取られた。本作のターゲット層について尋ねたところ、岩原氏は「まずは『ウィザードリィ』のファンを集めたい。その後でオンラインゲームユーザー、そしてコンシューマーゲームのゲーマー層と呼ばれているところに訴求したい」と答えた。また正式サービス後の利用料金については、基本プレイ無料のアイテム課金制となる予定で、アイテムは能力を強化するアイテムなどさまざまなものを用意するとしている。


「Wizardry Online」の特徴として挙げられた3点。キャラクターロストを含め、シリーズの伝統を守りながらもオンラインゲーム化するという意思が現われている

【スクリーンショット】
オンラインRPGとなり、アクション性も取り入れられている。モンスターが徘徊し、多数の仕掛けが施されたダンジョンを、複数のプレーヤーが協力して攻略する

【プロモーションムービー】
プロモーションムービーは、ロックバンドのDIR EN GREYとタイアップ。代表曲「残」のアレンジ曲が使われている



■ 「ウィザードリィ」30周年トークイイベント・ピアノ生演奏に豪華ゲストが来場

ゲストの伊藤賢治氏。土屋玲子氏とともに「memento mori」を演奏した

 「Wizardry Online」の発表に合わせて、「ウィザードリィ」30周年記念トークイベントと、ピアノライブが行なわれた。

 ピアノライブでは、「ウィザードリィ」30周年に向けて再度認知を高めていこうという企画「Wizardry Renaissance」のメインテーマソング「memento mori」を、作曲家の伊藤賢治氏がピアノで生演奏した。演奏にはヴァイオリン奏者の土屋玲子氏も参加し、深く落ち着いた楽曲を披露した。

 演奏後、伊藤氏は曲に込めた思いを語った。「ファミコン版で作曲した羽田健太郎さんのイメージが強烈だった。私がゲーム業界に入って参考にさせていただいたのが、『ドラゴンクエスト』と『ファイナルファンタジー』、『ウィザードリィ』の音楽。とても思い入れのある作品だなと、演奏しながらそれを思い返していた」という。

 続くトークイベントには、著名なゲームプロデューサーが集まった。参加したのは、株式会社モバイル&ゲームスタジオ取締役会長の遠藤雅伸氏、株式会社チュンソフト代表取締役社長の中村光一氏、株式会社グラスホッパー・マニファクチュア プロデューサー・サウンドクリエイターの山岡晃氏、株式会社アクワイア プロデューサーの田村純一郎氏、フリーライターの忍者増田氏。

 まずは「ウィザードリィ」の魅力は何かというお題から。遠藤氏は「臨場感みたいなもの。グラフィックスはチープだけれど、切羽詰った緊張感がある。失敗するとロストするというのはただの確率だが、そこに何かあると思わせられる」と語った。

 中村氏は「Apple2で最初に遊んだ。当時は『ポートピア連続殺人事件』を作っていたが、それまでRPGを体験したことがなかったので、こんな面白い世界があるんだと初めて知った。その頃、堀井さん(堀井雄二氏)とも一緒に仕事していたので、次はRPGを作ろうと言いながら情報交換していた」という。そしてその後完成したRPGが「ドラゴンクエスト」である。

 山岡氏は「人生みたいなところ。パーティーを組んで、善と悪に分かれたり、乱数によって、いくら頑張っても強くならなかったり。遊んだのは学生の頃だったが、社会はこんなものなのかなと、ゲームではない何かを感じた。『ウィザードリィ』的な人生や考え方みたいなものはあるかもしれない」と述べた。

 続いてはゲームの開発について。ファミコン版の移植プロデュースを手がけていた遠藤氏は、「ファミコン版にする時、ウッドヘッドさん(原作の開発者)に『ファミコンではPascalでは動かないから無理』と言われた。しかし同じCPUなのだからできないわけがないと思い、プログラマのプライドに賭けて作った。実際、ファミコン版のほうがよくできてると思う。完成したらウッドヘッドさんがすぐ日本にやってきて、手を握って『グッジョブ!』と言われた」と、開発時のエピソードを紹介。

 またファミコン版は原作の3が2として発売されており、順番が異なる。これについては「2よりも3の方が面白いので、3を2として出していいかと確認して出した。コンセプトだけを継承してダンジョンを変えたりしていて、オリジナルとは違う。胸を張ってこちらの方が面白いと言える」と語った。

 アクワイアから発売されているプレイステーション 3版の「ウィザードリィ」については、田村氏が「PSNが止まっていてお届けできないので困っている」と前置きしつつ、「開発に当たり、新しい『ウィザードリィ』として、キャラクターのグラフィックスを強化したり、シナリオを搭載したりと、物語そのものを楽しんでもらおうとしている。PSNが復帰したらお楽しみいただきたい」と語った。

 続いては、クリエイターとして「ウィザードリィ」のどこに影響を受けたかという問いかけ。遠藤氏は「ドルアーガの塔」のアニメ作品を挙げ、「いくつかのパーティーが塔に挑むというところは影響を受けたと言えるかもしれない。『ウィザードリィ』が持っていたRPGの文化を継承している」と述べた。

 中村氏は「もちろん『ドラゴンクエスト』。戦闘や魔法の名前の付け方は影響を受けた」と答えつつも言葉を続け、「最初に影響を受けたのは『ポートピア連続殺人事件』。最初の被害者の山川の屋敷の地下に3次元ダンジョンを作った。ここには大事なメッセージもあるが、『もんすたあ さぷらいずど ゆう』と書いた(「ウィザードリィ」でモンスターから先制攻撃された時のメッセージ)。当時のお客様には理解してもらえなかったが、遠藤さんから電話がかかってきて『爆笑だよ』といわれた」と当時のエピソードを明かした。

 山岡氏は「サイレントヒル」などのホラーゲームの演出において影響を受けているという。「『ウィザードリィ』の初期のワイヤーフレームで、ビジュアル化されていない部分をユーザーが想像するところ。私のゲーム作り、音楽作りでも、音楽をあえて鳴らさないことで想像させたりと、空想力をユーザーさんに与える。説明するのではなく、隙をあげるということ」と語った。

 「ウィザードリィに今後求めるものは?」という問いかけもあった。遠藤氏は「『Wizardry Online』にはリセット技は付いてないと思うが、それはつまらない。確率で行なうゲームでは、その後リセットできる、このタイミングでリセットを許すということを考えながら作っている。リセットを押さないという縛りをかけてプレイするのは勝手だが、ぬるいプレイを許さない、高難易度のゲームなんか今時やらない。リセットを有料で売ってたら買うので、そうしてくれたら嬉しい」と、早速新作への注文をつけた。

 山岡氏は逆に、「ロストだけはどんどんして、消滅しまくって欲しい。これ以上ないほどハードで、お客さんに優しくないものを作っていって欲しい」とコメント。田村氏は「その部分は『ウィザードリィ』として重要な部分だと思う。PS3版の開発者にも、そこを救済したら『ウィザードリィ』じゃないだろうと言う人もいる。そこまで重要かと思う反面、私はキャラクターがロストするのはもったいないとも思うので、うまくやってほしい」と述べた。増田氏は「いつまでも無愛想で、ユーザーにこびない、かび臭いゲームであって欲しい。正統派の『ウィザードリィ』も残っているが、別の方向のはっちゃけた『ウィザードリィ』も見てみたい」と今後への期待を示した。

 中村氏は、「『ウィザードリィ』が世の中のRPGの元祖であり原点なので、これからも続いてくれることを願う。新作が出るたびに昔を思い出して、次のゲーム制作にまた繋がると思う」と語った。


遠藤雅伸氏。「ゼビウス」や「ドルアーガの塔」を開発し、ファミコン版「ウィザードリィ」の移植プロデュースも務めた中村光一氏。「ドラゴンクエスト」シリーズの開発者で、「サウンドノベル」シリーズなどアドベンチャー作品も手がける山岡晃氏。サウンドデザイナーとして多数のゲーム楽曲を手がける傍ら、「サイレントヒル」シリーズの制作総指揮も務めた
田村純一郎氏。PS3「Wizardry 囚われし亡霊の街」などのプロデュースを担当する、「Wizardry Renaissance」の柱を務める1人忍者増田氏。「ウィザードリィ」の関連書籍に古くから携わってきたフリーライターイベントの様子はニコニコ生放送で中継されており、ステージでは逆にその放送を見ながら進められた



ゲームポット代表取締役社長の植田修平氏

 発表会の最後には、ゲームポット代表取締役社長の植田修平氏が挨拶。「コンピューターRPGの元祖と言われるだけあって、多くのクリエイターに影響を与えたのだと実感した。『ウィザードリィ』のDNAを継承しつつ、新しい挑戦をしていきたい。とても緊張感ある、シビアなゲームに仕上がった自信作なのでその辺りをお楽しみいただきたい」と述べた。


(C)Gamepot Inc. "Wizardry(R)" is a registered trademark of IPM Inc. All rights reserved.
Licensed by IPM Inc. to Gamepot Inc. Wizardry Renaissance TM (C)2009 IPM Inc. All rights reserved.

(2011年 5月 21日)

[Reported by 石田賀津男]