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Wiiゲームレビュー

坂口博信氏の最新作を徹底的にプレイ!
アクション性の高いバトルシステムが魅力の新感覚RPG

「THE LAST STORY」
(ラストストーリー)

  • ジャンル:RPG
  • 発売元:任天堂
  • 開発元:任天堂/ミストウォーカー
  • 価格:6,800円
  • プラットフォーム:Wii
  • 発売日:発売中(1月27日発売)
  • プレイ人数:1人(通信プレイ時2〜6人)
  • CEROレーティング:B(12歳以上対象)


 「ゼノブレイド」に続き、Wiiは短期間で新たな大作RPGに恵まれた。「THE LAST STORY(ラストストーリー)」。その生みの親は、数々の名作RPGを手掛けてきたミストウォーカーの坂口博信氏だ。

 本作のキャッチコピーは“新しいかたちのRPG”。これまでのジャンルの伝統を大切にしながらも、新鮮なシステムを盛り込んだRPG。アクション性の高いバトルシステム。そして、主人公が使える能力、敵の注目を引き付ける「ギャザリング」。さらに戦場に様々な影響を与える魔法サークルの概念。これまでのRPGになかったシステムの導入で新鮮さが感じられるが、果たしてそれが本当に面白さに繋がったのだろうか? 確認していこう。



■ RPGファンを裏切らない王道のストーリー

 「ラストストーリー」の舞台は大きな城がそびえ立つルリ島。その要塞ともいえる城はかつて魔道士が作ったと言われる砲台で守られている。この強力な武器さえあれば、帝国は無敵だといわんばかりだ。ルリ島を訪れたのは主人公のエルザを含めた6人の傭兵たち。その目標は島を支配するアルガナン伯爵の為に手柄を立てること。夢は伯爵に実力を認められ、正真正銘の騎士になること。モンスター退治で始まるエルザたちの冒険だが、あっという間に事態が予想不可能な方向へと進んでしまう……。

 「ラストストーリー」の物語にはRPGというジャンルの全ての“法則”が揃っているといえる。本作のストーリーは国家間の戦争や政略結婚など、定番のテーマを持っており、さらに坂口氏の作品に欠かせない、永遠の富を約束する“未知の物体”というテーマまでしっかりと入っている。クラシックでありながら、しっかりとした世界観の基に展開していくので、プレーヤーの興味は最後まで高く保たれる。キャラクター達のセリフも理解しにくい造語をあえて避け、誰もが理解できる言葉で成り立っている。

本作はストーリー的な前置きを省き、ダンジョンの中で始まる。ここで、バトルで使われる主なアクションのチュートリアルが流れる
ある程度ダンジョンを進んだところで、主人公たちの何日か前が明かされる。ルリ島を訪れた理由が、ここで初めてわかる。現在と過去を行き来するストーリーテリングが面白い


 ストーリーは豪華なプリレンダCGを使ったムービーシーンと、リアルタイムグラフィックスを使ったシネマティックシーンで語られる。オプションのカメラ設定を変更すると、シネマティックシーン中のカメラを左右に動かしたり、ズームしたりできるので、プレーヤーが監督であるかのようにシーンの演出に干渉することができ、新鮮な感覚で視聴できるようになっている。

 さらにシネマティックシーンが展開している時にプレーヤーの参加が求められる演出も見どころだ。例えば、エルザが星空を眺めていると、仲間の指示を聞きながらスティックを動かし、特定の星を探さなければならないといった、インタラクティブなシネマティックシーンもある。また、囚われたエルザが兵士達に連行されるシーンでもエルザの1人称視点になり、周囲の牢屋を見ながら進むことになる。プレーヤーの没入感が倍増するわけだ。

こういった演出のお陰で、臨場感が増し、プレーヤーは語られるストーリーに、より深く感情移入できると思う


 キャラクター達の心理描写は見事だと思うが、お芝居に関してはまだ改良の余地がある。セリフを言う時の口のアニメーションは少しロボット的。また、感動的なシーンが多く見られる本作だが、演出が絶妙なのに、その時のキャラクター達の表情は硬すぎる場面がよくある。口よりも感情を伝えられる瞳も生命感に欠けている。グラフィックスがリアルなだけに、お芝居にも、もっと力を入れるべきだったと思う。

 キャラクターについてもう1言。エルザの仲間たちの過去や性格をもっと掘り下げて欲しかった。ゲームをクリアしてまず感じたことは、エルザの仲間達のことをもっと知りたかったということ。どこから来ているのか、何の為に戦っているのか。もちろんある程度本編では明かされるが、せっかくのナイスキャラクターなので、もっと知りたいのが当たり前の気持ち。各キャラクターを重視したサブエピソードをもっと追加すればよかったのではないかと感じた。



■ RPG史上最高の街が誕生?

 「ラストストーリー」には街が1つだけある。複数の街への行き来が定番のRPGだが、今回1つの街に集中することで、他のタイトルで見られなかったディテールという要素に思う存分こだわることができたと思う。一言でいうと、本作の街は躍動感や生命感に溢れている。市場に入ると、商人たちの陽気な声がエルザを出迎え、Wiiリモコンやクラシックコントローラを握っているプレーヤーもその場にいるかのような錯覚に陥る。

 住人たち1人1人のアニメーションも見どころ。壁を修理している大工。噴水のふちに座って群がるハト達に餌をやっている老人。店の前でほうきを持って掃除しているおばさん。コロッセオの前で殴り合いをしている2人。城門前で楽器を弾いている吟遊詩人。無邪気にはしゃぐ子供達。遠くから聞こえる鐘の音。イタリアの中世的な村を思わせるような、本作の街のその素敵な姿と雰囲気にプレーヤーは絶対に癒される。

街での移動中に住人とぶつかったりすることもある。その時、町人は基本的に文句を言ってくるが、主人公の社会的地位が上がると、逆に謝ったり褒めたりしてくるのだ。住人たちの変わっていく反応を楽しむのも本作の醍醐味だ


 住人とのインタラクションも非常に面白いものになっている。全ての住人と会話できるわけでなく、「A」というマークが表示された人に近付いてAボタンを押すと、ちょっとした世間話から冒険に役立つ貴重なヒントまで聞くことができる。さらにその人々から依頼を引き受けることもある。例えば、市場では材料が足りない人に特定の食材を届けて欲しいといった依頼を引き受けることも。さらにショップが多いこの街では、トレードの概念もあって、ある店で安く購入したアイテムを他の店が高く買い取ってくれることもあるので、所持金を増やす貴重なチャンスにも恵まれるわけだ。

この人はチャームの矢を使って、好きな女性の心を射止めて欲しいと頼んできた。願いを叶えてあげると、実は……笑えるサブエピソードが満載だ!


 サブクエスト的な依頼が多く隠れている街だが、実は本作ではクエストの内容をまとめるメニューが存在しない。つまり、プレーヤーは依頼人の頼みを1つ1つ覚えなければならないということだ。賛否両論のシステムだが、これは開発チームの意図的な選択だったと思う。これで、1つ1の頼みをより大切に思えるようになる。1つの依頼を達成してから、次の依頼を探すといった感覚で、焦らずに街の秘密やサプライズを発見していく。

 さらに、街の探索で面白いのは、道端や路地裏に隠れたアイテム探しだ。裸眼で見えない秘密のアイテムだが、その近くを歩いていると画面の左下に「SEEK」アイコンが表示される。そこでZボタンを押すと注目モードに入り、周囲の様子を主観視点で詳細に調べられるようになる。地面に注目ボックスと呼ばれたカーソルが現われることがあり、それに照準を合わせると、秘密のアイテムが目で見え、拾えるようになる。それを拾うと、また「SEEK」を使って主観視点になり、連鎖で他のアイテムを発見できる、というチェインも発生する。

冒険に役立つレアなアイテムも見つけられるので、バトルの合間に街の路地裏に入って、注目モードで積極的に観察しよう!


 注目モード中に、バナナの皮を投げることもできる。通りがかりの人の足元を狙ってみると、その人が滑る場面が楽しめる。先日のプレゼンテーションでも「庶民に対して嫌味なことを言う貴族たちに投げつけてみて下さい」と坂口氏がおっしゃっていたが、早速僕もやってみた。そのコミカルなアニメーションを見るのは面白いことは面白いが、できればこのアクションも何らかの形でゲーム性に結び付けて欲しかった。

悪いやつにバナナの皮を投げたら、褒美がもらえるというシステムもよかったのではないだろうか?


 ネタばれになる恐れがあるので詳細は省くが、ストーリーの進行に伴って街の様子が微妙に変化していく。時間帯の変化もあり、夜の城下町が昼とまた違う味を醸し出しており、隅々まで再探索したくなる。前述したように住人たちのセリフもよく変わるので、その面でも開発者のこだわりぶりを窺えた。さらにゲームを進めると、城にもアクセスできるようになる。中世時代の建築を再現したその豪華な造りに目を見張るばかりだ。地面の反射効果や窓から差し込んでくる陽射しの特殊効果も見どころだ。

城のマップは非常に大きい。最初から全ての部屋に入れるわけでなく、ゲームが進むと、新たなエリアが通過可能になっていく


ストーリーの都合上、MAPで移動できない、あるいは戻ることのできなくなる場所が沢山出てくる。予め何かの警告があればよかったのだが……

 街や城のマップが広いだけに、移動にかかる時間は短くない。移動時間を短縮したいプレーヤーはメニュー画面にあるMAPという項目を選んで欲しい。MAP画面から目的地を選択すると、そこへ瞬間移動できる。ただし、ここでローディングが発生して何秒か待たなければならないので、正直、少しストレスを感じた。特に城内のエリアとエリアを行き来しなければならない場面では、ローディングが最も長く感じられた。何らかの工夫をしてローディング時間をもっと短縮して欲しかった。


■ アクションがウリの新感覚バトルシステム

 本作は、独自のバトルシステムがキモといっていい。従来のRPGで見られるコマンドメニューといった要素をなるべく抑え、スティックやボタンでのシンプルなアクションでバトルを進められるようになっている。スティックを敵のいる方向に倒すたけで剣での攻撃ができるという直感的な操作(『マニュアル』の場合はAボタンで攻撃)。敵を待ち伏せして隠れた位置から攻撃するという手軽なステルスアクションも用意されている。Aボタンで壁や障害物の後ろに隠れ、敵が近付いてきたら、ダメージ量が急激に増える「SLASH」という特別な攻撃を与えられる。さらにゲームが進むと、壁に駆け上がって飛び降りながら斬りつける「垂直斬り」というテクニックも獲得し、より一層アクション性に拍車がかかる。

敵の上に「SLASH」の文字が表示された状態でスティックの上とAボタンを押すと、「SLASH」を実行できる 隠れた場所から矢をおびき出すと、敵が「ALONE」状態になり、倒せば通常より多くの経験値が手に入る 「垂直斬り」を使って真上から攻撃を与えると、ダメージ量が圧倒的に増すボスも存在する


 RPGとは思えないほどの爽快感を味わえるとはいえ、アクションだけでは強力なモンスターとの戦闘では苦戦することになる。ここで、本作のバトルのキーワードである、「ギャザリング」というコマンドが出てくる。プレーヤーの操作する主人公、エルザがゲームの冒頭で「ギャザリング」という特殊な能力を授かる。好きな時にCボタンを押すだけで発動し、周囲の敵の注目を強制的にエルザのほうに集めることができる。その間に仲間たちは敵に邪魔されることなく攻撃や魔法の詠唱に集中できるわけだ。

ギャザリング発動中に仲間たちの魔法の詠唱速度が速くなるといった特典も付く さらにギャザリングを使えば、DOWNした仲間達を5回までパワーアップした状態で復活させることができる もちろん、ギャザリングを発動せとも戦えるが、その場合は仲間達の魔法詠唱が敵の攻撃で止められるので、苦戦を強いられることが多い


 ギャザリングをずっと使っていると、自分が受け身的な存在でしかないという疑問が浮かぶかもしれないが、実はエルザは誰よりも大事な存在といえる。例えで言うと、エルザはサッカーチームの監督と考えられる。敵たちの位置や仲間たちの行動をいつも観察しながら動かなければならないし、作戦がうまくいかないと思った時点で、瞬時に新しい指示を出さなければならない。

 例えば、Zボタンで注目モードに入ると、周囲に壊せそうな柱がないか調べられる。柱に現われる注目ボックスに照準を合わせると、エルザはそれに対し仲間に「魔法で壊せ」というような指示を与えられる。ギャザリングを発動すると、仲間は魔法を詠唱し、柱を壊し、敵たちが下敷きになって全滅するという理想の展開が実現する。頭を使えば、克服が難しい戦況さえ良い方向へと逆転する。

最初のチャプターで仲間との連係プレイが試される場面が多い。逆にいうと、中盤以降になると、頭を使う時間がないほどの混戦が増える


 ここで本作のバトルのもう1つの重要なキーワード、「魔法サークル」の概念も説明しなければならない。仲間たちが魔法を唱えると、地面に「魔法サークル」が現われる。その「魔法サークル」の中にいる敵が属性によって様々な影響を受けるし、プレーヤーも攻撃のダメージ量が増すというような特典を得ることがある。

 さらに、エルザは魔法サークルに対して「ウインド」の魔法を送ることができる。「ウインド」が魔法サークルに届くと、それが拡散し(拡散というのは、魔法サークルが消えると共に、その影響がフィールド全体に拡がること)、周囲の敵や仲間たちに一斉に多種多様な効果を与える。敵の防御力が下がるものから、仲間たちのヒットポイントが回復するものまで、拡散による効果は様々。積極的にそのシステムを利用することで戦況を有利に運べるだろう。「ギャザリング」と「ウインド」をマスターすると、苦戦が気持ちいい圧勝へと変わっていく。

「ギャザリング」はいつでも使えるが、「ウインド」はスキルゲージの1つの単位を消費する。エネルギーが溜まったら、迷わず使おう


 ゲームが進むと、コマンドモードも使えるようになる。主人公のHPゲージのすぐ下に表示されたスキルゲージが全て溜まる時に(4つの単位でできている)、十字ボタンの上を押すと、コマンドモードが発動できる。ここで、時間がストップし、戦場を見下ろす視点になる。敵の位置が再確認できるし、パーティー全員の魔法、そして、そのターゲットを自分で選択することもできる。ザコ敵との戦闘ではそれほど必要ないかもしれないが、ボス戦となると、その使用はカギとなることもある。

 ここで疑問が浮かんだ。もしかすると、オプションでバトルをアクションモードにするかそれともコマンドモードにするか、という2つのモードを用意したほうがよかったのではないかと。伝統的な感覚でじっくりとコマンドを選びたいプレーヤーはいつでも時間をストップできるコマンドモードを選べばいいし、逆にアクションを好む人は、スタンダードな遊び方でプレイすればいい。

 正直に言って、敵が多く存在する中盤の戦闘では、周囲の状況がはっきりわからない場面もあった。魔法のエフェクトやカメラの急な動きが邪魔をして、誰を攻撃しているのかはっきりしないときもあった。そこで、時間をストップし、周囲の敵の情報を再確認できればいいと感じた。結局、スキルゲージのエネルギーが足りなくてコマンドゲージが発動できない時は、剣で適当に近くの敵を攻撃しまくっている僕がいた。苦戦はするが、よっぽどの間違いをしないかぎり勝利はそれでも得られる。が、その勝利は自分の選択のお陰だったという気持ちにはなれない。混戦の時は戦況を思うようにコントロールできなかったことに対しては少しフラストレーションを感じた。

バトルが始まる前に見下ろし視点で敵の位置、種類、レベルは確認できるが、詳細な情報を確認するには注目モードに切り替え敵に照準を合わせなければならない。そうすると弱点が書かれたプロフィールウインドーが開かれる。しかし、その間は時間が止まらないから、敵に攻撃されることがある。時間を止めたほうがよかったのではないだろうか?


 バトルに対しての“反省点”があといくつかある。仲間の人工知能は高いが、好きなようにカスタマイズできないことは残念。そして、エルザ以外のキャラクターが操作できないところにも疑問を感じた。1周目ではエルザとギャザリングというコマンドに注目してもらいたい気持ちはわかるが、2周目では違うキャラクターで再挑戦したかった。

 チャプター1のダンジョンで、柱を壊して間接的に敵にダメージを与えるという周囲の環境を利用した戦闘があるが、ゲームを進めると、その頻度が少なくなるような気がした。僕の好みでは冒頭のバトルが1番バランスは良かった。ゲームが進むと混戦が増え、戦況が理解しにくいバトルが多くなるような気がする。ボス戦でも、例えば、腕や頭など、特定の体の部位をターゲットにすると、○○効果を与えたり、ダメージ量が増えたりするといった戦略性を上げて欲しかった。

 細かいことではあるが、「魔法サークル」がいくつもフィールドに重なると、どれに対してエルザがウインドを送ろうとしているのかわかりにくい場面もあった。重なるとなると、例えば、「魔法サークル」に別の「魔法サークル」を送ると、それらが合体して強力な「魔法サークル」が生まれるというような、組み合わせを楽しめるシステムにして欲しかった。



■ 誰もがわかりやすく、柔軟性の高い成長システム

 昨今のRPGで見られる傾向と違い、本作のキャラクター成長システムは非常に伝統的。一定のレベルを超えるとキャラクター達はそれぞれ独自の技や魔法を覚えていく。これで各キャラクターにくっきりと個性が付き、戦闘では役割分担という要素が重要視される。エルザがウインドを使えれば、仲間たちは火や氷などの魔法に特化している。さらにウインドの使い方次第では、仲間たちの魔法サークルに影響を与えられるので、様々な補助的な効果を引き起こすことができる。シンプルでありながら、とても奥の深いシステムといえるだろう。

魔法サークルの拡散で引き起こされる効果は、画面の下部に簡潔に説明されている


 装備品の強化システムに関しても申し分なし。街の鍛冶屋に行けば、冒険中に集めた素材を消費して武器や防具をレベルアップしていく。あるレベルを超えると、武器に新たなスキルが追加されるだけでなく、武器の名前自体が変わることもある。武器の名前が変わると、例えば攻撃力が300から800まで急激に上昇することもあるので、それを可能にするレアな素材を探すのも本作の大事な目的の1つだ。

 なお、ゲームが進むと“ある助っ人”を召喚することで、ダンジョンの中でも新しい武器の購入や強化というコマンドが使えるようになる。そのお陰で、ダンジョンを進みながら、その場で拾った素材を利用して装備品の強化が楽しめる。手強い敵が多く出現する終盤では、特に重宝するシステムだと思った。

武器や防具の強化に必要な素材が不足している場合、ダンジョンに再度挑戦して、見逃した宝物がないかチェックすればよい

 さらに初心者には、サモンサークルが役立つだろう。ダンジョンの地面にときどき赤いシンボルを見つけることがある。それはサモンサークルと言って、乗ったままCボタンを押すと、その場で敵の群れを召喚することができる。これで、パーティーが弱いと判断した場合、敵を召喚することで手軽にレベルアップできる。よくボス戦の直前に設置されているので、サモンサークルを発見したら経験値を稼ぐのが得策だろう。

 成長に影響がない要素だが、本作のメニューには「カラー」という項目もある。最初から用意されているカラー、それから冒険中に特定の素材を調合して手に入れる新しいカラーを使って、装備品の色を任意に変えることができる。さらに防具を構成するパーツを外すことで、キャラクター達のルックスを詳細に至るまでカスタマイズすることが可能だ。

 本作がMMORPGだったら非常に重宝するシステムではるが、ほとんどオフラインの冒険なので、キャラクターのルックスを変える必要性はそれほど感じなかった。設定はマルチプレイモードに反映されるのでいいが、こんなに細かいシステムが用意されたというのに、具体的な役割がないことをもったいないと思った。例えば、防具のカラーによって魔法サークルに追加効果をもたらすといった、ゲーム性に繋がるようなシステムだったら、もっと喜べたのかもしれない。

細かくキャラクターのルックスをカスタマイズできる点はありがたいが、ゲーム性における意味合いがあれば……




■ 2周目がプレイしたくなるやり込み要素とは?

 本作をクリアするのに費やした時間は約25時間。他のRPGと比較すれば少し短く感じられるが、長さよりも濃さが大切だと思うので、個人的には丁度いいと感じた。そして、ゲームをクリアしたといっても、やり残したことは必ずある。クリア直前の街に戻って、まだ見つけていない依頼探しに明け暮れるのが楽しい。

 例えば、既に制覇した幾つかのダンジョンに再挑戦することができる。モンスターや宝箱の配置が変わるので、新鮮な感覚でプレイするのはもちろんのこと、新たな宝箱も出現し、その中にレア度の高いアイテムが見つけられるので、やりがいがさらに増すといえる。

 他に街でのサブイベント的な存在として「闘技場」が挙げられる。ここでも難易度が少しずつ上昇していくシーズンと呼ばれる大会に参加でき、フィールドのモンスターを全て倒すと、スペシャルな褒美をもらえる。

 さらに、2周目ではキャラクター達は1周目をクリアした時点での状態を引き継げるので、戦闘を繰り返してさらなるキャラクターや装備品のレベルアップを図れる。なぜなら、2周目では特定のモンスターやボスが、強化されたバージョンで登場するからだ。ベテランプレーヤーにとって最高の挑戦になっていると思う。



■ 好きなキャラクターで対戦や討伐が楽しめるマルチプレイ

 本作にはマルチプレイモードも用意されている。選べるモードは2つ。友達との対戦が楽しめる「乱闘」と、他のプレーヤーと協力してボスを倒す「討伐」の2つだ。ちなみに「乱闘」では本編で見られたマップが再利用される。「討伐」では、本編にも登場した5つのボスと戦えるようになっている。

 とにかく「乱闘」は面白い。パーティー以外のサブキャラクターやモンスターも選択可能なので、バラエティーは非常に豊かだ。本編と違ったスタイルで戦いに挑めるのが新鮮に感じられた。さらに戦闘中に面白い実況が流れるので、参加者たちがさらに盛り上がることは間違いなし。

 しかし全てが朗報なわけではない。フレンドコードを選べば、好きなチームを作れるが、ランダムを使うと、自動的に対戦相手が選ばれる。相手のレベルが選べないので、お互いレベルの違いすぎる対戦になることが多い。始まる前から勝負の結果が一目瞭然なわけだ。レベルで相手を検索するというオプションがあったら、対等なマッチが実現したと思う。

 「討伐」に関しては、不満のほうが強かった。友達と協力してボスの討伐を試みるというアイデアはOKだが、問題は、選べるステージの少なさ。討伐できるのは5つのボスだけ。フィールドも5つなので、何回かやると必然的に飽きがきてしまう。

 個人的な要望としては、丸ごと1つのダンジョンを舞台にした討伐モードで遊びたかった。ダンジョンの各エリアで待ち伏せするザコ敵の群れを倒してから、ダンジョンの奥に潜むボスとの対決に挑む。敵やパワーアップアイテムの配置もランダムにすれば、毎回先の読めないようなスリルの高い討伐になっていたと思う。技術的にもできたはずだから、不思議に思って仕方がない。



■ 植松伸夫氏の魔法の音楽に乗せた意欲作

 最後にグラフィックスと音楽について感想を述べたい。Wiiの技術的な制限を考えると、これ以上に美しいグラフィックスは難しいと思う。街やフィールド、ダンジョンの1つ1つに独特の雰囲気があり、水面の反射効果に何度も見とれた。混戦になると、フレームレートが落ちる場面にも出くわしたが、総合的に考えると、大満足のグラフィックスだと思う。

星の輝く夜空が感動的なシーンを見事に演出する 大理石で出来た床のリアルな反射効果が、城内の豪華さを強調する 水面の素敵な反射効果はWiiの性能をフルに使っている


 そして、音楽もとてもスペシャルだ。坂口氏と切っても切れない仲にある植松伸夫氏の作曲したサウンドトラックはバラエティーに富んでおり、どのシーンも絶妙に盛り上げる力を持っている。特にオープニングで流れるメインテーマは勇壮で、感動をおぼえさせる。さらにボス戦での緊張感を煽る、叫び声が混じったヘビーメタル的な曲に興奮した。これまで携わってきたRPGとまた違ったスタイルで、植松氏にとっても記念すべき新たなスタートなのではないだろうか。


 アクションに重点を置いた今回のバトルシステム。RPGにしては型破りで、やりすぎと感じるユーザーも出るかもしれないが、僕は賞賛したい。前述したように、アクションパートと、時間が止まるコマンドモードとのバランスをもう少し調整する必要があるとは思うが、バトルの遊びやすさは確実なものだ。やはり、理想は2つのモードを提供することにあると思う。じっくりコマンドが選べるモードも追加されれば、誰もが完全に納得できるだろう。いずれにせよ、本作は続編を作って欲しい良作にはなったと確信している。

ジョン・カミナリ(芸名)
国籍:イタリア 年齢:35歳
職業:俳優、声優、タレント、テレビゲーム評論家
趣味:テレビゲーム、映画鑑賞、読書(山田悠介)、カラオケ
主な出演作品:銀幕版スシ王子!(ペぺロンチーノ役、デビュー作)、大好き!五つ子(アンソニー・ジャクソン役)、侍戦隊シンケンジャー(リチャード・ブラウン役)、ピラメキーノ(テレビ東京、月曜〜金曜 18時30分〜19時放送中)
ブログ:ジョン・カミナリの、秘密の撮影日記
 イタリアで6年間テレビゲーム雑誌の編集部員として働いたあと、新しい刺激を求めて2005年に大好きな日本へ。子供の頃から夢見ていた役者の仕事を本格的に始める。堤幸彦監督の「銀幕版スシ王子!」で個性的なマフィアのボス、ぺぺロンチーノを熱演。現在もTVドラマやTVゲームなどで、俳優・声優として活躍中。日本語を勉強し始めたのは23歳のとき。理由は「ファイナルファンタジーVII」や「ゼノギアス」などのRPGの文章を理解するため。好きなジャンルはRPGと音楽ゲーム。「リモココロン」のような個性的なゲームも大歓迎。お気に入りのゲームは「ゲームセンターCX」と「ワンダと巨像」。芸名はイタリア人の友達に、本人が雷のように予想不可能なタイミングで現われるからという理由で付けられた。将来の夢は、「侍戦隊シンケンジャー」に出演した時から大好きになった戦隊モノにまた出演すること

(C) 2011 Nintendo /MISTWALKER

(2011年2月28日)

[Reported by ジョン・カミナリ ]