任天堂、Wii「THE LAST STORY」プレゼンテーションを秋葉原で開催

サプライズで岩田社長が登場!


12月27日 開催

【THE LAST STORY】
2011年1月27日 発売予定

価格:6,800円
   25,800円(THE LAST STORYスペシャルパック)

CEROレーティング:B(12歳以上対象)



 任天堂株式会社は、株式会社ミストウォーカーと共同制作したWii用RPG「THE LAST STORY」(ラストストーリー)を2011年1月27日に発売する。それに先立ち、報道関係者、流通関係者を集め、イベント「THE LAST STORY プレゼンテーション~新たなRPGを求めて~」を秋葉原UDX・AKIBA SQUAREにて開催した。

 登壇したのは、ディレクターを務めたミストウォーカーの坂口博信氏、サウンドを担当した植松伸夫氏、コンセプトアートを手がけた藤坂公彦氏、制作を担当した松本卓也氏。坂口氏による実機によるプレゼンテーションと、4人の登壇者によるオンラインバトルの実演、「カノン」さんによる主題歌のライブ、さらに、実機による試遊プレイという構成になっていた。この模様は任天堂のホームページおよびUstreamで配信された。

 まず登壇した坂口氏は、「久しぶりですが、楽しく製作することができました。この『THE LAST STORY』というタイトルですが、その名の通り、自分たちの120%の力を出して、それでだめなら最後の作品でもいいのかな、そういった決意で作りました。それが肩の力を抜いてくれたというか、それだけ製作に没頭できたところもありますし、あとは『THE LAST STORY』を手に取ってくれた方、触ってくれた方がどれだけ楽しめるのかが1番大事ですから、そこに純粋に没頭する環境でやれることができたと思います」と挨拶。プレゼンテーションがスタートした。ここからはこのプレゼンテーションの模様と、試遊でわかったことをまとめていく。




■ 仲間の掛け合いにライブ感覚が感じられる独特の作品

坂口博信氏

 ゲームの冒頭からスタートしたプレゼンテーション。本作の戦闘は基本的にリアルタイム。プレーヤーは主人公・エルザを操作する。文字+グラフィックスに加え、動画でも説明されるチュートリアルがところどころに入り、スキップも可能。Aボタンで障害物に隠れることができ、元の姿勢にはAボタンで復帰。スティックを入れながらAボタンを押すと、障害物を乗り越えることもできる。また、Bボタンを押している間はガードだが、この状態でスティックを入れると味方や敵、障害物を乗り越えることができる。

 本作はスティックを敵のいる方向へ倒すだけで攻撃ができる。マニュアルモードではAボタンで攻撃となる。「あまりアクションに集中するよりは、この部分(攻撃部分の操作)は簡単にして、よりRPG的なところで楽しんでいただきたいなということで、こうなりました」と坂口氏。

 Zボタンでの注目モードも用意されている。Aボタンでボウガンによる攻撃が可能。注目モードで何かが見つけられるときは画面左下に「SEEKアイコン」が点滅している。白く四角く表示されているボックスに視点を合わせると、選択肢が表示され、仲間に柱に魔法を撃ちこんで貰い、一気に敵を殲滅することなどができる。ここで自分が一緒に突っ込んでしまうと、破壊された瓦礫などに自分も巻き込まれてしまうという。

 しばらく移動するシーンが続くが、ここで気づかされるのが、仲間たちとの会話だ。ゲーム進行に合わせた内容をセットしているということだが、とにかくパーティメンバー全員がよくしゃべる。エルザと仲間の魔法使い・ユーリスが、2手に分かれた残りのパーティメンバー、セイレンとクォークと合流するシーンでも、広場に躍り出た瞬間に「おっせーよバカ!」(セイレン)、「こっちは俺とセイレンで片付ける! なんとか奴らを足止めしてくれ! 橋のアーチャーが敵を呼んでいる! 奴らを始末するんだ!」(クォーク)と矢継ぎ早に戦闘の指示が飛んでくる。このライブ感覚がこのゲームの1つの特徴だ。ここでも橋をユーリスに壊してもらい、一気に敵を殲滅できた。

 ここで魔法サークルに関する解説が行なわれた。ユーリスが放った炎の魔法は、地面に円を描いて燃え続ける。この中に入ると、エルザの剣に炎のエフェクトが付く。この状態では攻撃に炎の効果が加わる(敵の攻撃を受けると効果が消えるようだ)。ほかにも、攻撃を重ねることでチェーンがつながるなどの仕掛けがある。

 一定の場所を通過すると、中断セーブがオートで行なわれる。セーブポイントでのセーブもできるが、中断した場所からの再スタートも可能だ。このゲームでは、戦闘開始前に上空からの視点で敵の配置が見えるようになっている。これで戦略を立てて、攻略していきやすいように配慮されているわけだ。「地形へのインタラクションはこだわりたかったので、あちこち隠れたり、なるべく撫で回すように地形を移動したかった」と坂口氏はエルザを走らせながら述べた。物陰に隠れて敵の魔法使い(今回は回復魔法をつかう『ヒーラー』がステージ中央にいた)にダメージを与える「ウィザードキラー」をボウガンで発射。一気になだれ込んでカタをつける。


■ 敵の注目を一気に集める「ギャザリング」、使いこなせば効果絶大の「サークル」

最後は、「テンション技」などを使った派手なものになっていた

 本作では、敵が誰を狙っているかを示す線「ポインター」が表示されており、直接攻撃を行なうキャラクターだけでなく、後ろで魔法を詠唱しているキャラにもボウガンで攻撃しようとする敵などがいる。ここでエルザの能力「ギャザリング」が生かされる。「ギャザリング」発動中は、敵のポインターが一気にエルザに収束されるので、その間に仲間が魔法を詠唱する時間を稼ぐことができる。また、「ギャザリング」中は敵の行動が遅くなる効果もある。

 また、ところどころにおいてある砲弾は、赤い砲弾は爆発、白い砲弾はHP回復のサークルを発生する。Aボタンでつかんで、Aボタン長押し+スティックを倒して狙いをつけ、Aボタンを離すことで砲弾を投げる。

 ここで、巨大なボスキャラが登場すると、敵の攻撃をよける「ダイブ」のチュートリアルが出現。スティックを倒すときにAボタンを同時押しする。ボスキャラ戦では、Zボタンを押して注目モードにし、+ボタンを押すと弱点が表示、選択肢が登場する。ユーリスに頭を攻撃してもらい、一定以上のダメージを与えると、ボスキャラを橋まで誘導し、そこでユーリスの魔法で橋を壊してボスキャラを奈落の底へと叩き落すことができた。

 「ギャザリング」に関しては別にもう1つプレゼンテーションが行なわれた。坂口氏は、同じシーンを「ギャザリング」を使わないでプレイした後、「ギャザリング」を使ってプレイして見せた。さらに、魔法に関しても追加紹介。Aボタン長押しで魔法が使用可能。ユーリスが放った炎の魔法が着弾してできた「プロミネンスサークル」に、エルザの風の魔法サークルを重ねることで「拡散」させることができる。さらに、もう1人の魔法使いマナミアが放った回復系の「リカバーサークル」と、「プロミネンスサークル」の間に風の魔法サークルを重ねることで、2つのサークルの効果を同時に拡散できる。また、サークルには直接の効果だけでなく、副次的な効果もあり、「プロミネンスサークル」には「ガードブレイク」があり、この効果も拡散することでより広範囲の効果を発揮する。周囲の敵の防御力を下げながら、味方全員を同時に回復、弱った敵を直接攻撃で一気に殲滅できた。

 ほかにも、氷の魔法が使えるジャッカルのフリーズサークルに風の魔法サークルを重ねると、触れた敵はスリップし、その場で転倒する。また、風の魔法サークルは、敵のヒールサークル(HPを回復する)を拡散することで消去できる能力も持っている。

 中ボス戦では、針を周囲に撒き散らしてこちらを麻痺させてくる敵に対し、十字ボタンの上を押し、「コマンドモード」を実演。カナンに「ホーリー」の魔法を使ってもらい、それを風の魔法で拡散することで、キャラクターの周囲にバリアを張ることができる。


■ 細かく調整されたオプション

 坂口氏はオプション画面にも触れた。イベントシーンのスキップは「常に無効(OFF)」、「冒頭5秒間のみ無効(NORMAL)」、「常に有効(FAST)」の3つあり、NORMALとFASTではAボタンを押しっぱなしにすると早送りされる。カメラやZ視点も細かく調整可能だ。字幕が表示されていれば、早送りしてもある程度物語の筋は追えそうだ。また、イベントシーンではスティックを倒すなどすることで視点が少し移動できるなどの機能もある。

 エルザたちの拠点となる「ルリの街」の模様も紹介。そこでは、キャラクターのカスタマイズに関する紹介も行なわれた。装備は大きく上半身と下半身で設定するが、さらに「いろがえ」で、マフラーやベルトといったパーツごとに色換えができるだけでなく、つけはずして細かくカスタマイズが行なえる。衣装はキャラクターの能力に影響はなく、基本的に見た目の問題のようだ。さらに「当初からぜひやりたかった」と坂口氏が述べていたのが、裸の状態。女性モデラーが手がけたという、こだわりのある筋肉には、坂口氏も「いいデキかなと」とその仕上がりに満足そうだった。「マリオクラブでのテストプレイでも一時期は全員裸ではやった時期があった」という(笑)。


■ トークショーの後、サプライズゲスト登場!

植松伸夫氏
藤坂公彦氏
松本卓也氏

 ここからは、4人で壇上に上がり、トークショーが行なわれた。

坂口 まずは植松さん。今回私たち、「破局」しそうになりました。

植松 男女の仲じゃないんですけれども。この作品で初めて提出したメインテーマとバトルの曲と、街の曲の3曲は「ちょっと違う、ぜんぜん違う」とボツになりました。で、言い訳というわけじゃないけれども、僕もこの仕事を長い間やらせてもらっているじゃないですか。どこかで自分のパターンができちゃっているんですよ。こうなったときの曲はこんな感じ、っていうのが習慣になっちゃっていて、そこから抜け出せなかったんです。

坂口 そうすると、僕は習慣病を指導したんですね。申し訳ないです。

植松 僕も来年52歳になるんで、業界でも結構上のほうでしょ。そうなると、植松の今回の曲はああだったな、っていってくれる人が最近いなくなってきたの。久々に坂口さんに言われて、なんでボツにするかというのを長文のメールで送ってきてくれたじゃないですか。それを読んで、「ああなるほど」と。これまで坂口さんが作ってきたRPGというものとは全然違うものをやろうとしているんだ、ということをこっちで勝手に汲み取って、それで、自分がこれまで作ってきたゲーム音楽というよりは、多少映画音楽っぽい方に振ってみたら、気に入っていただけて。

坂口 なかなか大変でしたけれども、あの曲が来たときは感激しました。背筋がぞぉっとという感じで。

植松 1カ月ぐらいメールのやり取りが無かったよね。

坂口 本当にもう絶縁かと思いました(笑)。ちなみに植松さんはどの曲が気に入っていますか?

植松 歌も好きですし、でもやっぱり、メインテーマかな。メインテーマのメロディもあっちこっちのバトルの曲にさりげなく滑り込ませていて、ゲームを通してそのゲームの世界観を表わすメロディになっているかなと思って。坂口さんは?

坂口 全部好きなんですけれども、クォークとエルザが幼少期に出会うときに懐かしいメロディが流れるじゃないですか。あれだけで泣けますね。泣きたいときはアレを聞けばいいぐらい。

坂口 藤坂さんは後半、1人でこもって孤独な戦いをしていたんですが。

藤坂 初期にデザインのほうも大幅に変えたりしたことがあったので、すごく面白い時期だったんですけれども、そのとき結構イラストを描いちゃっていたんで「この野郎……」と思いつつも、そういうことがありつつ今の形に落ち着いたのが、いい具合にまとまってよかったなと。

坂口 ちなみに自分が描いたイラストの中で、お気に入りはどれですか?

藤坂 ロゴとメインで使ってもらっているエルザとカナン。あの2つは雰囲気が最初に伝わればいいなと思っていたので。ロゴは……坂口さん覚えてらっしゃいます? 深夜ほろ酔いで帰ってきて、明日か明後日には締め切りなんだけど、というときに指示出しして。その分もちゃんと入っていますので。

坂口 全然覚えてない。あと、パッケージの絵に仕掛けがあるんですよね。

藤坂 今回、任天堂さんのほうも特別なスリーブをつけてくれたので、ロゴのイラストのイメージでパッケージになっているんですけれども、スリーブをちょっとずらすとロゴとはちょっと……面白いなと思っていただければうれしいなと思います。

坂口 松本さんとは長いんですが。「ブルードラゴン」からなんで、もう8年になります。今回植松さんと破局になりそうでしたが、そういう意味では松本さんとは常に夫婦喧嘩している感じですよね。

松本 そうですね。でも、植松さんと坂口さんの破局を横で見ていて、「これは大変なものを引き受けちゃったぞ」と感じましたね。メインのお話以外のところも存分にやらさせていただいて、楽しかったですね。それで8年の夫婦生活も保ったかなと。

坂口 それから、最初の1年の実験段階ですよね。これが僕にとっては久しぶりで、「ファイナルファンタジーVII」のときに3DがRPGに入るにはどうしたらいいんだろう、ということで特別チームを作って以来で。あれがよかったと思うんですけれども。

松本 私たちもRPGは前回のプロジェクトで挑戦させていただいて、今回、坂口さんが新しい動きを絡めたものを作りたいという思いを聞いて、底に時間はかかるなと思いましたけれども、1年かかるとは……。その分他ではなかなかできないことをさせていただいたかなと思います。

植松 今回製作期間ってどれぐらいかかってるんだろう?

坂口 実質構想段階があったんで、4年ちょいぐらいはやってたんですかね。


■ 岩田社長登場に登壇者全員びっくり!

岩田 聡氏

 この後、5分間のマルチプレイによる「乱闘」が行なわれ、植松さんが勝利。そして、会場内にはどこかで聞いた声が……。登場したのは、岩田 聡任天堂取締役社長。朝は京都にいたという岩田氏だが、本当にサプライズゲストとして登壇した。岩田氏は4人にまず、「本当におつかれさまでした」とねぎらいの言葉をかけ、岩田氏のリードで再びトークが展開した。その様子は任天堂ホームページで展開中の「社長が訊く」のライブ版の様相を呈していた。

 「マリオクラブは9カ月動いていたんですよね。最長に近い記録じゃないですかね。マリオクラブの中の人たちには、終わるのが信じられないという人もいた。また、たくさん意見も取り入れていただいて」と岩田社長が水を向けると、「最後には開発の一員のような形で、何人か涙を流していたと聞きました。それが僕はとてもうれしかった」とまず坂口氏が応えた。

 岩田氏は続いて「1カ月の絶縁メールのやり取りは昔のことのようですか?」と植松氏に話を振った。「その間も別に仲が悪かったじゃないんですよ。次にどんな手を打とうかなと模索している時期で、坂口さんは「今は触れないほうがいいんじゃないか」って思っていてくれたんじゃないかなって」と植松氏が答えると、「通じ合っている感じがうらやましく思いました」と岩田社長。

 藤坂氏には「1回途中でシナリオをひっくり返して大変なことになったんじゃないかと思いましたが」と質問。藤坂氏は「デザインしているものって、(自分の)子供みたいな気分になるんですよね。大きく世界を作って形になってきたところだったので、ちょっと寂しい気もしたんですけれども、今思うとちょっとコアなほうに行き過ぎていた部分も多かったので、あれがあったからこそ、そして今もそれが完全に消え去ったわけではなくて、そのときの遺伝子は残っているので、結果よかったなと思っていますけれども。今は悔いなしです」と答えた。

 松本氏には「3年半前に『こんなものを俺たちはやらなきゃいけないんじゃないか』と思ったことは実現されたと思いますか?」と投げかけた。「作っている最中はあまり実感はなかったんですけれども、終わって今日、坂口さんのプレゼンを見て、3年半ですけれども、その間にチームメンバーも少しずつは成長していて、今見ていただいたものは全力のものだと思いましたので」と松本氏が答えると、「ゴールが決まっていないマラソンを走るのは大変じゃないですか。みなさんがぶれずに走りきったのが、1人のモノを作っていた人間としてすごく印象的に感じているんですね」と岩田氏が続けた。


トークショーの後、カノンさんのライブでイベントは締めくくられた

 最後は、登壇者全員が一言ずつコメントして締めくくられた。

植松氏「ゲーム作品としてもすばらしいものができたと思いますし、音楽としても自分ができるかぎりのものをやりきったと思います。発売日をぜひお待ちください」

藤松氏「なかなか新規タイトルが動くことは無いと思うんですけれども、参加できた幸運にすごく感謝しています。決して自己満足で作っている感じではなく、ユーザーの方に喜んでもらおうという気持ちでみんな作っていますので、ぜひ1度さわって見てください」

松本氏「走りきることができたのはみなさんのおかげであったり、自分のおかげだと思うんですけれども、きっと今のいろんなゲームの中で光り輝くものになるかなあと自信を持っておりますので、みなさん是非見てやって下さい」

坂口氏「岩田さんの“びっくり”が、意外と「THE LAST STORY」を象徴していますよね。いろんなびっくりがあって、いろんないい偶然が重なって、今回ここまで来れたかなと思います。なんとなくすごくそう思いました。作ってくれた人に感謝しつつ、僕らのものではなくて、楽しんでもらうためのものだと思っていますので、そのためにとにかく今回、丁寧に作りました。細かい誰も見ない壁の模様まで細かく作りました。そういったところの意気込みを、エネルギーを感じ取ってもらったらな、って思います」


(C) 2010 Nintendo /MISTWALKER

(2010年 12月 27日)

[Reported by 佐伯憲司]