推理アドベンチャーにアクション要素を融合させたハイスピード推理アクション。弾丸に見立てた証拠や証言を矛盾や嘘に対して撃ちこみ、相手を論破していく |
11月25日、株式会社スパイクから「ダンガンロンパ希望の学園と絶望の高校生」がリリースされた。本作は推理アドベンチャーにアクション要素を融合させたハイスピード推理アクション。推理アドベンチャーは好きだが、アクションは苦手という人やその逆の人でも遊びやすいように推理、アクションそれぞれに3段階の難易度が用意されている。
ロード時間を短縮できるデータインストールに対応。インストールには400MBの空き容量が必要。PSP-3000、SanDisk製 8GB Ultra II Memory Stick PRO Duo Rightの環境で、インストールに必要な時間は約10分であった。
本稿にはいくつかネタバレとなる情報が掲載されている。システムの紹介などではどうしても避けられないのだ。なるべく序盤かつ公式サイトでも発表されている程度になるようにしたつもりではあるが、その点はご了承いただきたい。
早速、本作の魅力を紹介していきたい。
■ 他の生徒にばれないように殺人を成功させなければ学園から脱出できない!?
舞台は、あらゆる分野の超一流高校生を集めて育て上げる為に設立された、政府公認の特権的な学園「私立希望ヶ峰学園」 国の将来を担う“希望”を育て上げるべく設立されたこの学園に、至極平凡な主人公、苗木誠もまた入学を許可されていた。 平均的な学生の中から、抽選によってただ1名選出された超高校級の幸運児として……。 入学式当日、玄関ホールで気を失った誠が目を覚ましたのは、密室となった学園内と思われる場所だった。 「希望ヶ峰学園」という名前にはほど遠い、陰鬱な雰囲気。薄汚れた廊下、窓には鉄格子、牢獄のような圧迫感。 何かがおかしい。 入学式会場で、自らを学園長と称するモノクマは生徒たちへ語りはじめる。 ――今後一生をこの閉鎖空間である学園内で過ごすこと。外へ出たければ殺人をすること。―― 主人公の苗木を含め、この絶望の学園に閉じこめられたのは、全国から集められた超高校級の学生15人。 生徒の信頼関係を打ち砕く事件の数々。卑劣な学級裁判。黒幕は誰なのか。その真の目論見とは……。 目に見えない敵との戦いが今、幕を開ける。 |
希望ヶ峰学園の学園長 「モノクマ」 CV:大山のぶ代 希望ヶ峰学園学園長と自ら称する、クマの形の動くぬいぐるみ。白い半身は普通の可愛らしい雰囲気だが、黒い半身は邪悪な表情をしている。生徒たちに秩序の保たれた学園生活を強制するも、ときにその秩序を乱そうとする行動に出ることもあり、その真意は不明だ。この極限状況を面白がっているようにも見える |
集められた超高校級の15人の高校生たち。玄関ホールに足を踏み入れた途端、気を失ってしまった彼らは学園に閉じ込められてしまう。困惑する彼らの前に突如現われた学園長を名乗るクマのぬいぐるみ「モノクマ」は“今後一生をこの閉鎖空間である学園内で過ごすこと。外へ出たければ殺人をすること”と告げる。当然のように反発する彼らだったが、モノクマへの暴力は死に繋がることを思い知らされる。とはいえ、殺人など起きるはずもないと思っていたある日……事件は起きてしまう。
殺人事件が発生すると開かれる学級裁判では、最終的に参加者全員の投票により、殺人犯を決定する。決定した人物が真犯人であれば真犯人のみが処刑され、真犯人でなければ真犯人以外の全員が処刑されてしまう。
この状況を作り上げた目的は? 黒幕は誰なのか? 殺人を犯さなければ脱出できない閉鎖空間という極限状況の中での少年少女たちを描いた物語となっている。
超高校級だけあって登場するキャラクターたちは個性があり魅力的。生徒だけで15人もいるが、プレイしていれば自然と名前を覚えられてしまうほどだ。演じる声優陣は、大山のぶ代さん、緒方恵美さんをはじめ一流揃いの豪華な面々。声優陣の豪華さから購入を決めたという人も少なからずいるのではないだろうか。
■ 殺人事件や学園の謎を解く学園生活パートと犯人を推理する学級裁判パート
ゲームは、殺人事件や学園の謎を解く学園生活パートと犯人を推理する学級裁判パートを繰り返して進めていく。学園生活パートはテキストアドベンチャーによくあるもので、アクション性は一切ない。学級裁判パートでは、学園生活パートで集めた証言や証拠を弾丸に見立て、学級裁判で飛び交う生徒たちの主張から矛盾点を見出し、撃ちこんでいく。こちらはアクション性に加え、制限時間が設定されている。
■ 謎を解き、他の生徒たちと交流を深める学園生活パート
学園生活パートでは、学園内を調査したり、生徒たちと会話しながら、殺人事件や学園の謎を解いていく。このパートには制限時間もアクション性もないので、じっくりと調査できる。
学園内の移動や調査の操作は簡単だ。廊下では、アナログパットで移動し、方向キーで照準を変更し、調べたい箇所や話したい相手がいれば○ボタンを押す。部屋の中では、アナログパットで照準を動かし、方向キーやL/Rボタンで視点を変更し、調べたい箇所や話したい相手がいれば○ボタンを押す。これらを繰り返し、証言や証拠を集めていく。必要な情報を全て集めると、学級裁判パートへと遷移する。
廊下を歩き、目的地へと移動。写真のようにマップを表示しながら歩くことも可能。メニューのマップからは特定のポイントに瞬時にワープすることもできる | 部屋を調べて、証拠を得る。調べられるポイントに照準が合うと、照準が変化するため、調べられるポイントを探すのにそれほど苦労はない | 会話中、紫色のワードが出たら、△ボタンを入力。こうすることで紫色のワードについて突っ込んで聞くことができる |
ゲームを進めていくと「自由行動」できる時間がある。自由行動中は、他の生徒たちと交流を深めることができ、仲良くなるとスキル(後述)を獲得したり、装備できるスキルの上限がアップしたりする。また、交流を深めた相手にプレゼントを渡せることがあり、相手の気に入るものをプレゼントできれば、より友好度が高まる。プレゼントは、モノモノマシーンというガチャガチャで得られる。モノクマメダルを集めた体験版のデータがあれば、序盤からモノクマメダルを持った状態でゲームが開始できるので、製品をプレイする前に体験版でメダルを集めておくのも手だ。
多くの人物と交流を深めたいところだが、自由行動は特定回数生徒と交流を深めることで終了してしまう。クリアまでに交流を深められる回数は一定なので、得られるスキルやスキルポイントの上限はプレーヤーによって異なってくる。ここで気になるのが全員と仲良くなれないのかという点だろう。これはクリア後のやり込み要素になっていて、クリア後には友好度やスキルの状態を引き継いだままチャプターを選択してプレイできるため、気になっていたキャラクターと親交を深めていくことももちろん可能だ。
学園生活パートは従来の推理アドベンチャーと基本的に同じなので、迷うことはないだろう。どこに他の生徒がいるのかはマップでわかるので、学園内を探し回ることもない。
■ 学園生活パートで得られた証拠や証言を元に真犯人を突き止める学級裁判パート
学園で殺人事件が発生し、その調査が終了すると始まる学級裁判。ここで真犯人を突き止めることができなければ、真犯人以外の全員が処刑されてしまう。
学級裁判開始前には弁論準備として、これまでに集めた証拠や証言を確認したり、セットするスキルを選ぶことができる。スキルにはスキルポイントが設定されており、スキルポイント上限までしかスキルをセットすることができない。スキルによって、裁判の難易度は大きく変化するため、上限いっぱいまでスキルをセットしておきたい。
ここでスキルについて簡単に紹介したい。スキルには、発言力(誤った発言をした際に減り、なくなるとゲームオーバー)がアップする「注目の発言力」、タイムリミットが増える「長考」といった裁判を有利に進められるもの、移動スピードがアップする「ランニング」、使用すると調査可能ポイントが表示される「観察眼」といった学園生活パートで活躍してくれるものなどが存在する。
裁判開始前にスキルをセット。照準のブレが少なくなる「冷静沈着」や集中力がアップする「抜群の集中力」など裁判で有効なスキルが多数存在する。交流を深めて多くのスキルをゲットしたいものだ | 学園生活パートで便利な「観察眼」。調査可能ポイントが一目でわかる優れもの |
弁論準備を終えると、本作の最も特徴的な部分であるハイスピード推理アクションが味わえる学級裁判が開廷する。
裁判でメインとなるのがノンストップ議論。ノンストップ議論では、生徒たちがリアルタイム・フルボイスで議論を繰り広げる。制限時間内に議論中の嘘や矛盾点の文字列に正しいコトダマ(証拠や証言)を撃ちこむことができれば次の展開へと進む。シューティングゲームのようなイメージだ。
コトダマの速度はそれほど速くないため、発射されてから到達するまで多少時間がかかる。これを考慮に入れつつ、動いている文字列に照準を合わせてコトダマを撃ちこまなければならない。ここで活躍するのがRボタンの精神集中。主人公の集中力が途切れるまでの間、スローをかけることができる。撃ちこむのが難しい場合に活用したい。
議論とは関係ない雑音セリフが出てくることがある。雑音セリフは○ボタンのサイレンサーで消すことが可能で、うまく消せれば制限時間が増える。だが、発言セリフに当たってしまうと制限時間が減ってしまう。雑音セリフにコトダマが当たるとかき消されてしまうので、嘘や矛盾点の文字列と雑音セリフが被っている場合には、雑音セリフを消してからコトダマを撃ちこまなければならない。多少忙しい入力が必要だが、精神集中を使えば、比較的楽に成功させられる。ちなみに難易度を1番低く設定しておけば、雑音セリフが出てくることはない。アクションが苦手な人でも安心だ。
また、ゲームが進むと手持ちのコトダマではどうやってもブレイクできないケースがある。その場合には△ボタンで他の生徒の発言を記憶して対処する。記憶したコトダマを嘘や矛盾点に撃ちこめばいいわけだ。議論を一通り見て、どうにもならないと思ったら、試してもらいたい。
これらを繰り返し、制限時間までに正しいコトダマを撃ちこめなかったり、発言力がなくなってしまうと失敗となる。失敗してもやり直すことができるので、何度もトライすればクリアできないなんてことにはならないだろう。
マシンガンバトルトークは、主人公と他の生徒による1対1の言葉の応酬戦。制限時間内に相手の発言力をなくせば勝利となり、自分の発言力がなくなると失敗となってしまう。照準の操作はなく、画面下に定期的に流れてくるテンポマーカーに合わせてボタンを入力する。リズムゲームを想像してもらうといいだろう。
テンポマーカーと入力マーカーが重なったらボタンを押すという単純なルールだが、押すボタンによって効果が異なり、状況に応じて入力ボタンを切り替える必要がある。○ボタンがロックオン、△ボタンがロックオンした発言を破壊、□ボタンでリロードする。相手の発言はジリジリと迫ってくるので、迫りきる前に破壊しないと自分の発言力が減ってしまう。複数の発言をまとめてロックオンして、破壊することも可能。残弾がなくならないようにリロードしながら、発言を破壊していきたい。
相手の発言力がなくなるとトドメの1撃が繰り出せる。照準を合わせる必要はないが、ノンストップ議論と同様にコトダマをLボタンで選択して撃ちこむ。撃ちこめる時間は短いので素早い入力が必要だ。失敗すると、相手の発言力が少し回復して、通常のマシンガンバトルトークが再開される。
ミスすることなく、テンポマーカー通りに入力し、相手の発言を破壊していくとコンボとなる。コンボが続くとテンポアップ。その分相手の発言を破壊できるチャンスが増え、与えるダメージも増加する。入力に失敗するとコンボが途切れ、テンポが遅くなってしまう。
Rボタンを押すと集中力を消費してフィーバータイムを発動できる。フィーバータイム中は、残弾が最大まで回復し、発言破壊時に残弾を消費しなくなる。さらに入力ミスしてもコンボが途切れないというメリットもある。逆に相手は集中力を消費してネガティブタイムを発動することがある。ネガティブタイム中はテンポマーカーが見えなくなってしまう。
タイミングを合わせつつも、状況を見ながら入力ボタンを切り替えなければならない上に、テンポアップの要素があるため、裁判中最もスピーディーな入力が要求される。危ない場合にはフィーバータイムを使って対処していきたい。なお、難易度を下げておけば、残弾が無限になるため、リロードの必要はなく、相手がネガティブタイムを使ってくることもない。
リズムゲームのようなマシンガンバトルトーク。タイミング良くボタンを入力し、コンボを決めて、早々に相手を論破したい |
大事な言葉を閃きそうになると閃きアナラグラムが始まる。画面左下の歯抜けになった文字列を埋めるように出てくる文字を撃っていく。正しい文字列を完成させれば閃きアナラグラム成功だ。
学級裁判が大詰めとなると、事件の全貌を明らかにするクライマックス推理がスタートする。事件を再現するマンガの空いている部分にコマを当てはめ、再現マンガを完成させる。制限時間はあるが、アクション性はない。事件の流れを頭に描いて、間違えのないように完成させよう。難易度を低くすれば、用意されたコマ数と当てはめるコマ数が同数になるため、事件の流れを正確に追えていなくても成功させやすくなる。
■ 最後に
練り込まれたストーリー、個性的な登場人物と、本作ならではの世界観が見事に構築されている。1つ1つの殺人事件の真犯人を追いながら、学園の謎を解いていくのが楽しく、先か知りたくて、寝る間を惜しんでプレイしてしまった。登場人物が魅力的なだけに、各キャラクターにスポットを当てたDLCが出てくれればと切望してやまない。CEROレーティング「D」だけあって、ポップな絵柄ながらキャラクターがおしおきとして殺されるシーンは目を覆いたくなるようなものもある。もっとオブラートに包んだ演出がされるのかと思っていたので、正直驚いた。
難易度にもよるだろうが、クリアまでは15時間~20時間程度とボリュームは十分。モノモノマシーンのガチャガチャ、生徒たちと交流を深めることで得られるスキルやスキルポイントといったクリア後のやり込み要素もきちんと用意されている。通常の推理アドベンチャーだと2周目のプレイは同じことの繰り返しになるが、本作にはアクション要素のある学級裁判があるので、難易度を変更してプレイすれば、これまでとは違った印象で楽しめる。
推理、アクション、それぞれに用意された3段階の難易度は設定に応じて大きな違いがある。難易度さえ下げれば、誰でもクリアできると言い切れるほど。アクションが苦手な人にもオススメできる。
推理アドベンチャーをベースにアクション要素を融合させた本作。あくまで推測だが、この2ジャンルを融合させた本作をリリースするまでには大きな苦労や迷いがあったのではないだろうか。単に2つのジャンルを融合させることは、思いつくのは簡単だし、それほど難しいことではないだろう。だが、融合させることで、それぞれのジャンルの長所が失われてしまったり、中途半端なものになってしまう懸念がある。「アクション性がないため、プレイスキルを問わない、じっくりと考えて謎を解ける」という従来の推理アドベンチャーの長所は、本作では失われている。「だからダメ」というわけではない。むしろ、失う点を補って余るほど、新しくも面白い体験を生み出すことに成功している。アクション性を持たせたことで、従来の推理アドベンチャーでは実現し得なかった、ストーリーにマッチした緊張感のあるゲームに仕上がっているのだ。この挑戦に賞賛を贈りたい。コレは買いである。
(C)Spike All Rights Reserved.
http://www.spike.co.jp/
□「ダンガンロンパ希望の学園と絶望の高校生」のページ
http://danganronpa.com/
(2010年12月2日)