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恐ろしくも美しい世界がXbox 360に降臨
知恵と勇気を試される傑作2Dアクション

「Limbo」

  • 開発元:Playdead
  • 発売元:マイクロソフト
  • プラットフォーム:Xbox 360
  • レーティング:CERO:D (17歳以上対象)
  • 価格:1,200 マイクロソフトポイント
  • 発売日:2010年7月21日(発売中)

 新世代2DアクションゲームのメッカとなりつつあるXbox LIVEアーケード。「Castle Crushers」、「BRAID」、「Shadow Complex」、「Trials HD」などなど、高評価の傑作ゲームに枚挙の暇がないほどだが、この7月21日、また新たな傑作アクションゲームが登場した。それが今回ご紹介する、デンマークの独立系スタジオPlaydeadが開発した「Limbo」だ。

 「Limbo」は2D横スクロールアクションの世界に物理現象の仕組みを持ち込み、手応えのあるアクションパズルを独特の緊張感の中で楽しませてくれる作品。白黒のモノトーンで表現されたシックで美しいグラフィックスが表現するのは、悪意と敵意に満ちて、一歩間違えれば簡単に死んでしまうという恐ろしい世界だ。プレーヤーは妹の行方を追うひとりの少年として、この世界で知恵と勇気を試していく。


【Limbo】
  • ジャンル:2D横スクロールアクション
  • ボリューム:3〜6時間
  • サイズ:117MB
  • 実績:200ポイント
  • オススメ度:★★★★☆
  • 物理演算を活用した独特の2Dアクションパズルが道中無数に用意され、手ごたえと達成感はかなりのもの。独特の雰囲気が醸し出す緊張感も素晴らしい。ゲームボリューム的にははもうひと押し欲しいところだったが、プレイ後は強烈な印象が残る


■ 離れ離れになった妹を探して……。少年の前途は死のトラップが溢れる未知の世界

森の中で少年が目覚める。周囲は完全に未知の世界だ
操作はたったこれだけ。シンプルな操作で奥深いゲーム性が実現されている
主人公の前途には危険なトラップが一杯だ

 2Dアクションの世界にリアルな物理演算処理を導入する試みは、独立系開発会社のゲームでは珍しいものではなくなりつつある。その中の1本である「Limbo」の凄いところは、2Dアクションならではのシンプルさを全く犠牲にすることなく、物理アクションパズルの面白さを芸術的雰囲気の中に取り込んでいることだ。

 「Limbo」の世界を旅する名もなき主人公を操作する方法は、アナログスティックによる左右への移動とAボタンでのジャンプ、そして物を掴んだり押したりするためのBボタンでのアクションだけ。操作がシンプルならば画面構成もまたシンプル。白黒のモノトーンで表現された世界は、どこか陰鬱な重苦しさを感じさせつつも奥行きがあり、その情報量は豊富だ。

 進む先には無数の「死のトラップ」が待ち構えている。足を踏み入れたら体全体を引き裂いてしまうベアトラップ、進めば溺れてしまう深い水の流れ、一刺しで主人公を捕食してしまう巨大グモ。敵意を剥き出しにして主人公に襲いかかる原住民からようやく逃れたと思えば、都市に入ると巨大な裁断機に体を引き裂かれそうになる。

 あの手この手で主人公を待ち構えるトラップを潜り抜けるためにキーとなるのはBボタン。Bボタンによるアクションを駆使して、物理オブジェクトがどう動くのか、どうすれば先に進めるようになるのかを試しながら解いていく。白黒のシルエットで表現された物理オブジェクトは、上述のベアトラップ、木箱、ロープ、岩、その他の様々な物体から、電気制御された機械類まで様々。何がどう作用し、どう動けば主人公の道を開くことになるのか、その組み合わせは常に新たな経験を与えてくれる。

 ネタバレになる恐れがあるので具体的な紹介は避けたいが、プレイ中の思考の広がり方はこうだ。木箱は高い場所へ登るための足場となり、水に浮かべれば向こう岸へ渡るための船となり、時にはその「重さ」が謎を解くカギとなる。ロープは伝って登り降りすることができるだけでなく、充分な重みをかければ軸を通して繋がった別の物が動くかもしれない。“腐った樹の枝”は飛び乗れば折ることができるだろう。ある種の機械を動かすために、目の前に居る動物が利用できるかもしれない……。すべての可能性に目を光らせることが求められる。

 白黒で表現されたシンプルな世界は、こういった意味で驚くほどの情報に溢れている。そしてプレーヤーの前途に用意された様々な環境は、それぞれに違ったパズルのメカニクスを提示して、心地良い達成感を与え続けてくれる。絶妙に構成された一連のシーンのおかげで、本作をプレイする数時間の間、謎解きへの興味が途切れることはない。


操作こそシンプルだが、環境とのインタラクションが多彩に表現されていることでプレイの幅は広い。行く先々のパズルを解くためにはできそうなことを全て試す必要があるだろう
落下死、溺死、圧死、轢死、感電死……。主人公の死因がこれほど多いゲームが今まであっただろうか。主人公が死んでしまうような原因が無数に散りばめられた世界。不安にかられつつも、この世界にのめりこんでしまう
巨大クモとの遭遇。しつこく主人公を追いかけてくるが、どうする?


■ モノトーンの世界に豊かな「色彩」を加えるのは、抜群のサウンドエフェクト

優れたサウンドエフェクトにより、白黒の世界ながら凄まじいまでの臨場感がある
謎の機械がどう作用するか、シーンに溢れる「音」がそのヒントを教えてくれる

 白黒の世界に実は多くの情報量がある、という「Limbo」の世界で重要な役割を伝えてくれるのがサウンドエフェクトだ。本作にはこれといったBGMは存在せず、プレイ中のほとんどのシーンで環境音だけが鳴り響いている。風が木々を揺らし、さざ波が岸辺を洗い、プレーヤーの踏み出す足が地面を蹴る。

 そうした静かで、少々不気味な環境の中で、何か重要なものが隠されているときには、やはり音によってヒントを得ることができる。木々のゆらめき、地面の材質、駆動する機械のきしむ音。重厚でリアル感のあるサウンドエフェクトが、白黒の世界に豊かな色彩を与えてくれているのだ。

 さきほど本作にBGMは存在しないと書いたが、一種の環境音楽的なものは含まれている。これは主人公の置かれた状況を示すために重要な役割を演じている。一見、何事もなさそうな場所で、突然、地鳴りのようなトーンが聞こえてくる。何か重要なことが起こりつつあるのだ。いわばホラー映画の演出に近い。

 環境音をベースとした、だがそれだけではないサウンドエフェクト。これが本作にもたらしている雰囲気には感動すら覚える。プレーヤーが置かれた不気味な静寂は、耳を刺激する派手な音楽には成し得ない種類の没入感を与えてくれる。独特の緊張感が周到に張り巡らされ、不安にかられたプレーヤーはパズルの解答を無意識に焦り、間違いを犯す。

 この点で本作は、ただの2Dアクションパズルに終わらないことに成功していると言えるだろう。最終局面をクリアするまでそう長い時間はかからないが、プレイを終えた後の印象は独特だ。難しいパズルを解ききった達成感もさる事ながら、何かひとつの重要な芸術作品を観終えて感傷にひたり、その世界を離れるのが名残惜しいような、後を引くものある。


異なる環境では異なる音が溢れ、また違った雰囲気をプレーヤーに伝えてくれる
先へ進むほどにプレーヤーを取り巻く環境は過酷に。そこで雰囲気をさらに盛り上げてくれるのは、やはり重厚なサウンドだ


■ 繰り返しプレイするための仕組みは不足気味だが、今後の広がりを予感させる作品

勇気を出してその先へ!

 ひととおりのクリア後もそれなりに「実績」がらみのチャレンジが用意されている。いずれも、各シーンに用意されているシークレットゾーンを見つけるというもので、丁寧にプレイすればそう難しくないものだ。唯一「5回以上死なずに通してクリアする」という実績だけは、それなりの研究と練習が必要になりそうではある。

 オンライン要素としては「クリア度ランキング」というものが用意されている。これは本編の進行度と「実績」のアンロック度合いによって決まるもののようで、いわゆるタイムアタック系のどこまでも突き詰められる種類のものではない。本作はリプレイ性を高めるということに関して、あまり関心がないようだ。

 本編そのものは、どこかで「ドハマリ」しなければ全体をクリアするのに数時間程度と、およそ長編映画を鑑賞するくらいのボリュームに収めらている。また本作は他のXbox LIVEアーケードタイトルで見られるような、クリア後もひたすらプレイを繰り返す種類のものでもないため、プレイボリュームは小さめだ。

 だがそれでも、本作をプレイして得られる強烈な印象は、それだけで1,200マイクロソフトポイントという価格を正当化して余りある。主人公の死亡シーンなどで四肢がバラバラになるなど残酷表現があるためCEROレーティングは17歳以上となっているが、傑作映画を劇場に観に行くような感覚で是非プレイして欲しいと思える作品だ。



(C) 2010 Playdead

(2010年 7月 21日)

[Reported by 佐藤カフジ ]